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OECD、経済見通し下方修正で明らかになった日本の課題
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160228-00084588-hbolz-soci
HARBOR BUSINESS Online 2月28日(日)9時21分配信
2016年2月18日、経済協力開発機構(OECD)は「中間経済見通し」(出典:「OECD」)を公表した。これは、昨年11月のOECDによる経済見通し(Economic Outlook98)について、その後の新たな状況変化を織り込み、部分的な改定を行ったもの。
今回の「中間経済見通し」では、2016年の世界経済の成長見通しは2015年ほど高くならず、過去5年間で最も低くなる見込みだとされている。日本も含め、最近の低調な経済指標を踏まえて各国の経済見通しが引き下げられている。先進国の回復が非常に緩やかであること、資源価格低下による資源輸出国の低迷から多くの新興国の成長は低下しているとされている。
今回の「中間経済見通し」における主要国・地域の2016年、17年の実質GDP成長率は以下のとおり(カッコ内は昨年11月見通し)。
世界経済の成長見通しが、実質GDP成長率2016年3.0%、2017年3.3%と、ともに昨年11月の見通しから0.3%下方修正された低い数値の見込みとなった。
この点について、OECDは
“Trade and investment remain weak. Sluggish demand is leading to low inflation and inadequate wage and employment growth.“
(貿易及び投資は依然として弱い。停滞する需要は、低インフレ率や不十分な賃金・雇用の増加に繋がっている)
としている。
このような世界的な実質GDP成長率の低下見通しに対して、どのように対処すべきか? OECDは次のように主張、言い換えると、勧告を表明している。
“A stronger collective policy response is needed to strengthen demand. Monetary policy cannot work alone. Fiscal policy is now contractionary in many major economies. Structural reform momentum has slowed. All three levers of policy must be deployed more actively to create stronger and sustained growth.”
(需要を支えるため、より強力な協調的な政策対応が必要。金融政策だけでは機能しない。多くの先進国において財政政策は緊縮的であり、構造改革へのモメンタムは低下している。金融政策、財政政策、構造改革の3つのレバーをより活用して、強力かつ継続する成長を創出していく必要がある)
◆日本に対して「財政再建再考」を“勧告”
日本は、実質GDP成長率が2016年0.8%、2017年0.6%と、ともに昨年11月の見通しからそれぞれ0.2%、0.1%下方修正された。OECDは日本についてはこう評価した。
“In Japan, while the quarter-to-quarter profile is volatile, both private consumption and exports have been weak in recent months, reflecting on the trade side weaker activity in key trading partners and more recently the strengthening of the yen.”
(日本は、四半期の成長率の変動幅が大きい中で、輸出先国の弱い動きや最近の円高の影響により、民間消費、輸出ともに弱い動きとなっている。)
なお、日本が2017年0.6%へ実質GDP成長率が低下するのは、2017年4月に予定されている消費税増税(消費税8%から10%へ)の影響を受けることを考慮に入れているからだ。
さらに、OECDは、日本に対して
“Japan is tightening policy in its efforts to reduce the high fiscal deficit and stabilise debt-to-GDP dynamics. Meeting fiscal plans will remain challenging while nominal growth outcomes disappoint, hence pointing to the need for a new strategy.”
(対GDP比での債務残高を安定化させるため、日本は緊縮財政により財政再建を進めている。名目成長率が人を失望させるなかで、財政の計画を達成するのはチャレンジングである。したがって、日本は新たな戦略を必要としていると指摘する。)
と勧告している。
◆日本が採るべきソリューション
すなわち、OECDは日本に対し、名目GDP成長率がより高まるように、金融政策、財政政策、構造改革の3つのレバーを活用せよ、緊縮財政ではなく、新たな戦略を必要としているという主張がなされているのだ。
日本メディアでは、リフレ金融政策に対する批判、特に、マイナス金利が導入されてから、マイナス面ばかりが強調されているように筆者は感じている。
マイナス金利付き量的・質的金融緩和について、日本銀行は、“企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスク”(1月29日日銀声明)の顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することとした。日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく。また、この枠組みは、従来の「量」と「質」に「マイナス金利」を加えた3つの次元で、追加的な緩和が可能なスキームである。
日本銀行は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもと、“2%の「物価安定の目標」の早期実現を図る。”(1月29日日銀声明)としているように、追加的な緩和が可能で、設備投資や住宅購入、海外リスク資産への投資などにつながり、経済を活性化させ、物価上昇に寄与するプラス面を理解すべきである。
また、マイナス金利付き量的・質的金融緩和導入後、実質的には利下げであるにも関わらず、円高方向へ為替が動いたが、外部環境の要因によるものであるかもしれないので、様子を見守る必要があろう。マイナス金利付き量的・質的金融緩和だけだと、ロジカルには、円安方向に寄与するはずなのだ。
賛否両論あるものの、筆者としては、日銀は、黒田日銀になってから、やれることはやっていると感じている。今後も、マイナス金利の対象範囲の拡大やマイナス金利幅の拡大、および量的・質的金融緩和との合わせ技で、金融緩和を推し進めることが可能であると考えている。
一方、財政政策については、GDPギャップに比較して、緊縮財政が過ぎると言えるかもしれない。GDPギャップを埋める財政出動が求められよう。2017年4月の消費税増税の実施は、リスキーという認識が必要である。2014年4月の消費税増税のマイナスの影響はいまだ続いている。量的・質的金融緩和のプラスの効果を、消費税増税のマイナス効果が打ち消してしまった。そもそも、デフレ脱却していないのに、消費税増税をしていいものなのか? この点を政府は熟考すべきだろう。
構造改革、すなわち、成長戦略では、規制緩和が主となるが、長期の取り組みであり、短期的な効果を早急に期待するのは間違いであるが、しかし、やるべきである。
以上、筆者としては、OECDによる勧告は至極真っ当な内容であったように思える。
日本のメディアが、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を批判し、かつ、安倍政権が2017年4月に消費税増税に固執しているとしたら、現状の実質GDP成長率や物価上昇率を見ると、とんでもない間違いであることに気づくだろう。
<文/丹羽 唯一朗 photo by Ken Teegardin(CC BY-SA 2.0)>
ハーバー・ビジネス・オンライン
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