http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/128.html
Tweet |
[エコノフォーカス]雇用絶好調でも、さえぬ消費
賃上げ力不足、貯蓄に回る
「経済の好循環」のカギを握る個人消費がさえない。前期比0.4%減に沈んだ2015年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)も個人消費が同0.8%減と数字を押し下げる「主犯」だった。雇用情勢は日銀の黒田東彦総裁が「完全雇用に極めて近い」というほど良く、本来なら賃金が上がり消費につながるはず。なぜ盛り上がらないのか。
(中島裕介、藤川衛)
雇用情勢は約20年ぶりの改善をみせている。労働力調査によると、完全失業率は15年10月に3.1%まで下がり、1995年以来の低さだ。
増税後回復せず
ところが、個人消費は14年4月の消費増税で急速に落ち込んだ後、回復せずL字の様相になっている。足元の家計の実質消費支出は、駆け込み需要が本格化する前の13年10〜12月期に比べ、4.3%も減ったままだ。
名目賃金の動向は悪くない。毎月勤労統計によると、15年の1人あたり現金給与総額は前年比0.1%増で05〜06年以来の2年連続プラスだった。だが、物価上昇分を差し引いた実質賃金は0.9%減と4年連続のマイナスだ。1%上昇した消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く)に賃上げが追いつかない。
トヨタ自動車4000円、日立製作所3000円――。15年春の労使交渉は過去最高のベースアップ(ベア)が相次いだ。実はこれは一部の大手の話だ。大手企業中心の経団連の調査でさえ、15年の定期昇給を除いたベアは0.44%。安倍政権が旗を振ったイメージほどには、賃金が伸びていないのが実情だ。
実質賃金が下がっているという批判に対し、安倍晋三首相は「パート労働者が増えて1人あたりの平均賃金は下がった。ただ(サラリーマンや公務員など)総雇用者の所得で見ることが重要だ」と繰り返し反論する。
確かに実質雇用者報酬は回復傾向が続く。15年10〜12月期は前年同期比で1.8%増。15年の配偶者の収入は前年比7.1%増の月平均6万4768円と過去最高だ。
国全体の家計の収入が増えるなか、同じような傾向で増えている数字がある。「貯蓄」だ。家計調査によると、収入のうち消費に回さなかった割合を示す勤労者世帯の貯蓄性向は26.2%で前年に比べ1.5ポイント上昇した。その分、家計が消費を減らしたことになる。
将来不安も響く
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「年々増える社会保障の負担が、財布のヒモを固くする」と指摘する。実収入に対する税や社会保険料など非消費支出の割合は、10年前に比べ2.8ポイントも上昇。社会保険料は月4.7万円から5.6万円に増え、将来への不安も大きい。
今後の焦点は日銀が導入したマイナス金利政策の影響だ。「住宅ローンや自動車ローンの金利低下で、消費増税後に落ち込んだ耐久財消費に再び火が付く」として貯蓄が消費に向かうとの見方はある。一方「『そんなに経済は悪いのか』と消費者心理を冷やす」(クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト)と懸念する声も多い。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
最低賃金上げ、先進国で相次ぐ
先進国で法律や条例に基づいて雇い主が支払わなければならない賃金の最低額が上昇している。米ニューヨーク州は2018年までに時給8.75ドル(約1000円)から15ドルまで1.7倍に増やす。ドイツも15年1月から最低賃金制度を導入し、時給8.5ユーロ(約1100円)に設定した。
安倍晋三首相も1月の施政方針演説で時給798円の最低賃金を「1000円を目指し引き上げる」と表明している。最低賃金が上がればパートなど非正規労働者の所得と消費の拡大を期待できる。安倍政権が目指す「同一労働同一賃金の実現」とも歩調は合う。
最低賃金引き上げはすでに雇われている人には朗報だが、企業にとっては人件費を増やす要因になる。新たな雇用を減らす方向に働く、というのが労働政策の常識だ。ただ「完全雇用」もささやかれる歴史的な労働需給の逼迫を考えればタイミングは悪くない。
各国が最低賃金を上げるのは格差是正が目的だ。政府の介入で経済のグローバル化にさらされる単純労働の賃金を上げ、生活保護など社会保障費の抑制や景気の浮揚につなげる思惑もにじむ。
[日経新聞2月22日朝刊P.3]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民106掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。