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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 長期金利がマイナスに!
http://wjn.jp/article/detail/6513323/
週刊実話 2016年3月3日号
前回、日本銀行のマイナス金利政策により、
「長期金利が近々にマイナスに突入したとしても、不思議でも何でもない」
と書いたが、2月9日、早くも長期金利がゼロの壁を突破し、金利が本当にマイナスになってしまった。
2月9日の国債市場では、取引開始直後から買い注文が殺到。あまりにも国債が買い込まれ、国債価格が上昇。長期金利の代表的な指標である10年物国債の利回りが、一時、マイナス0,035%まで低下してしまったのだ(終値はマイナス0.025%)。長期金利が0%を割り込み、マイナスに落ち込んだのは、わが国にとって初めての経験である。
長期金利がマイナスになったのは、わが国がスイスに次いで2カ国目になる。スイスは昨年1月15日、スイス国立銀行がスイスフランの対ユーロ為替レートを、1ユーロ=1.2スイスフランに固定し、無制限に介入を続ける為替方針を突然撤廃。スイスフランショック(スイスフランの暴騰)を引き起こしたときから、長期金利がマイナスの状況が続いている。
直近のスイスの長期金利は、マイナス0.307%で、マイナス0.035%を記録した日本と、低金利(というかマイナス金利幅)競争で激しいデッドヒートを繰り広げている。どちらの国が「民間に資金需要がないか」の競争をしているわけだ。
むなしいとしか言いようがない。
現在の世界では、中国を含む新興経済諸国の経済が失速し、先進国から投じられた資金が巻き戻ってきている。厳密には、資金が戻るのではなく、新興経済諸国の通貨が外貨に両替されているわけだが、金利が極端に低く、世界最大の対外純資産国である金主「日本国」にも資金が巻き戻り、円高になりやすい環境になっているのだ。
加えて、アメリカの2015年10-12月期の経済成長率が失速し、FRB(連邦準備制度理事会)が今後しばらくは再利上げをできないという思惑も、円が買い込まれる一因になっている。というわけで、2月9日にドル円の為替レートが1ドル114円台まで円高が進んだ。
円高になると、日経平均は下がる。何しろ、日本株の取引の71%(昨年実績)は外国人投資家によるものなのだ。外国人投資家は「外貨」でものを考えるため、円高になると日本株の「売り時」になる。さらに、日銀のマイナス金利政策により、銀行の収益が悪化することが見込まれ、銀行株を中心に日本株には「売り」が入りやすい環境になっているのだ。
ひどい話だが、日銀のマイナス金利政策を受け、銀行は預金者に負担を押し付けざるを得ない状況に追い込まれている。
横浜銀行と八十二銀行は、これまで0.025%だった満期まで1年の定期預金の金利を、普通預金の金利と同じ0.02%まで引き下げた。
りそな銀行は、満期2〜5年物の定期預金の金利を0.005%〜0.025%幅引き下げ、年0.025%に。ソニー銀行も、年0.020%だった普通預金の金利を大幅に引き下げ、年0.001%に。10万円を1年間、普通預金に置いたままだと、1円しか利息が付かない計算になる。
三菱東京UFJ銀行はマイナス金利政策を受け、大企業などの普通預金に口座手数料を導入する検討を始めた。すなわち、預金者に対するマイナス金利政策だ。
静岡銀行はインターネット専用のネット支店において、2月末までの予定だった定期預金のキャンペーンの受け付けを中止した。10万円以上を預けた場合、年0.330%の金利を付けるという商品だったのだが、「金利情勢の急激な変動で適用金利を見直す」とのことである。
2月8日には、ゆうちょ銀行までもが、通常貯金や定額貯金、定期貯金などの金利を一斉に引き下げると発表。日本銀行のマイナス金利政策は、もはや国内の各銀行が経営的に受け止めきれないほどの「重し」なのである。
というわけで、2月9日の日経平均は銀行株を中心に値を下げ、前日比918円下落の1万6085円にまで値を下げた。結果的に、日本円が「金(きん)よりも価値が高い」といわれている日本国債に殺到。日本銀行が量的緩和政策を継続しているため、
「日銀という最終的な買い手がいる」
という安心感もあり、今や海外投資家までもが必死に日本円建ての「日本国債」を追い求めている事態になっている。
そして、ついに2月9日、10年物国債の利回りが0%を切り、マイナスに突入してしまったわけである。
マイナス金利、つまりは額面よりも高い金額で国債が買われたため、満期まで保有していると損をする。とはいえ、何しろデフレ継続で民間の資金需要が乏しく、日本円のめぼしい投資先がないため、結局は資金が「日本国債」に向かわざるを得ないのだ。
「国の借金で破綻する」はずの日本国の国債が、長期金利でマイナス。乾いた笑いしか出てこない。
結局、デフレという総需要不足の国、つまりはモノやサービスの購入、あるいは消費・投資(同じ意味だが)が不足している国の政府が、デフレ対策を中央銀行に丸投げし、
「政府によるモノやサービスに対する消費・投資としての支出」
すなわち、財政出動から顔を背け続けてきた結果、政府、中央銀行共に「袋小路の終点」に追い込まれたというのが、現在の日本の姿なのだ。
それにもかかわらず、メディアや政府の諮問会議では、相変わらず“破綻脳”のコメンテーターや評論家、学者が幅を利かし、長期金利マイナスの国において「国の借金で破綻する」の大合唱を続け、愚かな政治家が影響を受け、唯一の正解である「国債発行と財政出動」にたどり着けない。
冗談でも何でもなく、心が壊れてしまった画家が描いたカリカチュア(誇張や歪曲を施した人物画)を見ているような「不気味さ」を感じる。全ての事実や指標が「国債発行と財政出動」を求めているにもかかわらず、大手マスコミや政界では誰も語ろうとしない。
この国は、狂っている。
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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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