News | 2016年 02月 24日 14:38 JST 関連トピックス: トップニュース 焦点:急減する中国外貨準備、いつ限界水準に達するか [北京 24日 ロイター] - 中国の外貨準備はなお世界最大規模を誇るが、資本流出に伴い急スピードで減少しており、中国政府は遠くない将来に人民元の切り下げ、あるいは資本統制への逆戻りを強いられるとの見方が一部で浮上している。 中国の外貨準備は1月に995億ドル減って3兆2300億ドルとなった。2014年半ばに比べると7620億ドル減と、スイスの国内総生産(GDP)を上回る規模で減っている。 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は先週、「財新」のインタビューで資本流出について、ドル高を背景とした国内企業によるドル建債務の返済と対外投資による部分が大きいと指摘。債務返済は間もなく底を打つし、対外投資は歓迎すべき動きだと擁護してみせた。 大半のエコノミストは、中国の外貨準備にはまだ大きな余裕があるとの見方に同意しているが、一部には数年後と言わず数カ月後にはブレーキを踏む必要が出てくるとの見方もある。 外貨準備の減少ペースが加速したのは、人民銀行が海外の投機売りや国内の資本逃避に対処し、人民元買い介入を行ったためだ。
外貨準備はなお巨額だが、中国ほどの規模の経済だと、輸入や対外債務の返済に多額の準備が必要になる。その上、外貨準備の内訳が流動性の低い資産であれば、その要請にすぐには答えられない。 中国の外貨準備の構成は国家機密だが、複数の当局者は、ドル以外の通貨の価値がドル建てで減少していることも、準備高減少の一因だと話している。 ソシエテ・ジェネラルは、国際通貨基金(IMF)の指針では中国にとって安全といえる外貨準備の最少額は2兆8000億ドルで、現在のペースで減少を続ければ間もなく到達するとみる。 同社は「向こう数カ月中に到達すれば、投機的な売りが押し寄せ、人民銀行は降参して人民元レートを市場に委ねるしかなくなる」としている。 これに比べ、G20(20カ国・地域)のある中央銀行副総裁はもっと楽天的で「(安心できる最少額が)どのくらいか分からないが、2兆8000億ドルよりずっと少ないことは確かだ」と述べた。 <魔法の数字は存在せず> HSBCのアナリストチームは理論上2兆ドルで十分だと見ているが、減少を続ければ国内投資家が脅えて海外への資金移動を加速させる恐れがあるため、中国当局が手をこまねいているとは考えにくいという。 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の新興国市場通貨ストラテジー・グローバル統括、ウィン・シン氏によると、中国の外貨準備は1年5カ月分の輸入をカバーできる水準であり、短期対外債務の外貨準備に対する比率は25%にとどまる。新興国として安全な水準と考えられる3カ月と55%よりもはるかに良好だという。 シン氏は「われわれが新興国に適用しているどんな尺度で見ても、中国の外貨準備は十分すぎるほどだ」と話した。 中国のシンクタンクのあるエコノミストも「3兆3000億ドルもあって何を心配する必要があるのか」と同意する。「中国の対外純債権は1兆5000億ドル、貿易黒字もまだ6000億ドル程度ある」 外貨準備が2025年までに2兆ドルに減ったとしても、「まだ安全、健全だ」とこのエコノミストは語った。 ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシン氏は、安全な水準は、究極的には特定の比率というよりも市場心理で決まると指摘する。 「魔法の数字は存在しない。大きな部分を占めるのは信頼感だと思っているが、中国の政策担当者は信頼感の回復につとめて力を入れている」という。 人民元売りを公言しているヘッジファンド、オムニのポートフォリオマネジャー、クリス・モリソン氏は「このゲームは期待と信頼感がすべてだ。市場が底をのぞいたが最後、信頼感は総崩れになる。3兆ドルを下回った時がその分岐点だと私は考えている」と話した。 (Kevin Yao記者) http://jp.reuters.com/article/analysis-china-foreign-reserves-idJPKCN0VX0BY?sp=true Business | 2016年 02月 24日 15:34 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス ドル111円後半で上値重い、政策期待の後退が重し
[東京 24日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点に比べ、ドル安/円高の111.76/78円だった。株安・原油安で弱い地合いの中、週末に控えるG20での政策協調や日本の当局による政策発動への期待が後退。上値は重く、111円後半でのもみ合いが続いた。 早朝、米大統領選の民主党最有力候補ヒラリー・クリントン前国務長官による通商政策に関する米紙への寄稿が伝わり、ドル売り/円買いが徐々に広がった。同氏は、日本や中国が為替操作を行っているとの認識を示した上で、自身が大統領に就任した場合は対抗措置を検討する考えを示した。 クリントン氏の主張を受けて市場では「日本の当局は円高への政策発動がしにくくなる」(国内金融機関)との見方が広がったという。G20でも「為替相場について、過度の変動は好ましくない、などの建前以上のことは出てこない、との見方を強めた」(外銀)という。 市場が関心を寄せていたフィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長の発言は「市場予想にほぼ合致する内容。3月に(米国が)利上げできそうもないという見方を裏書きした」(国内銀行)とされ、相場反応は限られた。 午前中は112円付近でのもみ合いが続いたが、米原油先物や日経平均株価は上値が重く、ドル/円も午後にかけてジリ安に推移し、2月12日以来となる安値111.63円まで一時下落した。その後、やや値を戻し111円後半でもみ合い、方向感は出なかった。 目先は月末フローや週末のG20をにらんだ相場が想定されるが、きょうのアジア時間は動意に乏しいとみられている。 市場では相場反転の目先の材料が見当たらない上、G20での政策協調や日本の当局による政策発動への期待が後退してきたとして、「週後半にかけ、上値の重い展開が続くのではないか」(国内金融機関)との声が出ていた。 ユーロ/円は一時、前日安値123.09円を下回り、2013年4月以来の安値123.04円をつけ、安値圏での推移となった。 ドル/円JPY= ユーロ/ドルEUR= ユーロ/円EURJPY= 午後3時現在 111.76/78 1.1013/17 123.09/13 午前9時現在 111.90/92 1.1021/25 123.33/37 NY午後5時 112.09/11 1.1018/23 123.51/55 (為替マーケットチーム) http://jp.reuters.com/article/tokyo-fx-idJPKCN0VX0HV?sp=true Business | 2016年 02月 24日 11:51 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 最近の市場混乱、米経済への影響判断は尚早=FRB副議長
[ヒューストン 23日 ロイター] - フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長は23日、最近の世界の金融市場の混乱が米経済に多大な影響を与えるかどうかは、まだ不透明との見解を示した。 ヒューストンで開催されたエネルギー関連の会合でフィッシャー副議長は「もし最近の金融市場の動向が、金融状況の持続的な引き締めに結びつくのならば、米国の成長・インフレに影響し得る世界経済の減速を示唆している可能性がある」としたうえで、「しかし、同様の不安定な動きはここ数年にもあった。米経済への影響はほとんど見られていない。予期しない影響を判定するのは時期尚早だ」と語った。 12月の米利上げ再開以降、世界市場が混乱したことで、投資家の多くは早期の追加利上げ観測を後退させ、3月の利上げの可能性はほぼない、と予想されている。 副議長はこの点には直接言及しなかったが、判断を急ぐ必要はないとし、労働市場が一定期間完全雇用よりも進んだとしても、その状態は「適切だ」との考えを再度示した。 労働市場が完全雇用より「若干進んで」も、労働力に再度加わることを目指す人や、より長時間働きたい人に機会を与えるほか、FRBの2%のインフレ目標達成を支援する、との認識を示した。 理論的には、完全雇用よりも進んだ状態はインフレを加速させ、FRBは即座の対応を迫られることになる。ただ、FRBは、現在の原油安がインフレ率に及ぼす影響を見極めようとしている。 http://jp.reuters.com/article/frb-idJPKCN0VX041 Business | 2016年 02月 24日 11:57 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 財政健全化避けて通れない、経済成長進め着実に取り組む=麻生財務相
[東京 24日 ロイター] - 麻生太郎財務相は24日の衆院財務金融委員会で、日本の債務残高の対国内総生産(GDP)比が高水準にあると指摘したうえで、「財政健全化は避けて通れない」と強調した。経済成長を進めながら財政再建に取り組むとし、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化達成に向けた意欲を示した。原口一博委員(民維ク)への答弁。 http://jp.reuters.com/article/aso-gdp-idJPKCN0VX06U Business | 2016年 02月 24日 11:38 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 市場変動で経済・物価に悪影響あれば、躊躇なく対応=日銀総裁 [東京 24日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は24日午前の衆院財務金融委員会で、マイナス金利政策の導入以降も金融市場の変動が続いているとし、市場変動によって日本の経済・物価に悪影響があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく政策対応を検討すると語った。前原誠司委員(民主)への答弁。 総裁はマイナス金利導入以降も国際金融市場の変動が続く中で「投資家のリスク回避姿勢が過度に広がっている」とし、世界的に株価が軟調に推移し、ドル安傾向が続いているとの認識を示した。背景には、原油価格の下落や中国経済の動向のほか、欧州の銀行セクターへの懸念や米金融政策の先行き不透明感の強まりなどがあると指摘。市場動向を「今後も注視していく」姿勢を強調した。 金融政策運営は「為替や株をターゲットにすることはない」としながらも、金融市場の変動によって日本の経済・物価動向に悪影響があれば「ちゅうちょなく対応策を検討する」と追加緩和も辞さない姿勢を示した。 現状は「2%の物価安定目標は道半ば」とし、「テーパリングや利上げをすればどういうことになるかを議論することは適切ではない」と指摘。 現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)は実質金利の低下を通じ、「企業や家計の経済活動を刺激し、物価上昇率が高まっていく経済の好循環を作り出すことが目的」と述べ、「今反対のことをすれば実質金利が上がってしまい、経済にマイナスの状況が出てくる」との見方を示した。 *内容を追加します。 (伊藤純夫) http://jp.reuters.com/article/boj-k-idJPKCN0VX01V Business | 2016年 02月 24日 11:23 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス QQEで金融機関貸出に一定の伸び、効果発揮している=黒田日銀総裁
[東京 24日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は24日の衆院財務金融委員会で、量的質的金融緩和(QQE)に関し「実質金利がこれだけ下がり、(金融機関の)貸出も中小企業向けを含め2%台の伸びになっている」と指摘し、一定の効果があるとの見方を示した。原口一博氏(民維ク)への答弁。 http://jp.reuters.com/article/qqe-kuroda-idJPKCN0VX05D Business | 2016年 02月 24日 11:18 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 世界経済への懸念は「行き過ぎ」=JPモルガンCEO [23日 ロイター] - 米金融大手JPモルガン・チェース(JPM.N)のダイモン最高経営責任者(CEO)は23日、現在の世界経済をめぐる懸念の広がりは、スイスで先月開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で出席者が過剰なまでに懸念を口にしていた状況を思い出させると語った。 CEOは投資家向けの年次会合で「出席者たちはいつも間違っている。2007年と08年に参加した当時、彼らは間違った考えをしていた。09年になると、世界全体の状況に完全にパニックに陥っていた」と発言。 「誰もがリスクの専門家になった。口にするのは『不安』ばかり。公式機関が出すどのリポートにも懸念の文字が並ぶ。行き過ぎている」と語った。 http://jp.reuters.com/article/jpmorgan-outlook-davos-idJPKCN0VX056 40年物の円・円スワップレートが国債利回りより先に1%割れ 2016/02/24 15:54 JST (ブルームバーグ):40年物の円・円スワップ金利が1%を割り込んだ。バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストによると、スワップ市場では外国人主導の取引で国債よりも金利の下げ圧力が強く、30年や40年物では国債が割安化している状態が続いている。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O31HOE6S972B01.html 長期金利が過去最低、オペで需給逼迫確認−超長期ゾーンの買いが波及 2016/02/24 15:49 JST (ブルームバーグ):債券相場は上昇し、長期金利は2週間ぶりに過去最低水準を更新した。日本銀行が実施した国債買い入れオペで超長期債の需給逼迫(ひっぱく)が示されたことで超長期債利回りが最低を更新し、長期ゾーンにも買いの動きが広がった。 24日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値と横ばいのマイナス0.005%で開始。午後に入ると水準を切り下げ、9、10日に付けたこれまでの最低(マイナス0.035%)を下回り、マイナス0.055%まで下げた。新発20年物の155回債利回りは0.60%、新発40年物の8回債利回りは1.035%まで下げ、ともに連日で最低を記録。新発30年物の49回債利回りは6.5bp低い0.915%まで低下し、2013年4月5日となる最低更新となった。 バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「40年スワップは足元で1%を割り込んでいる。30年や40年ゾーンでは国債利回りよりスワップレートの方が低く、特に40年はその乖離(かいり)幅が大きく、日本国債はスワップ対比で割安化している状態が続いている」と指摘。「アセットスワップ、スワップでヘッジしてキャリーを確保することが難しく、アセットスワップの需要は10年や20年が多い。30年や40年は生保など絶対水準バイヤーが多いセクターだったので金利低下局面で利回り低下が遅れやすい傾向があった」と話した。 長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比2銭高の151円62銭で開始。いったんは横ばいの151円60銭まで伸び悩んだが、すぐに水準を切り上げた。午後に入ると一段高となり、結局は38銭高の151円98銭と、この日の高値で引けた。 三井住友アセットマネジメントの深代潤債券運用グループヘッド国内債券運用担当は、「原油安や円高・株安が止まりそうで止まらないので、債券保有ニーズが減らない。為替相場の動向を背景に早い段階での日銀追加緩和が期待されている。3月にマイナス金利を拡大する可能性は低いとみているが、追加緩和が期待されている」と話した。 日銀買い入れオペ 日銀が今日実施した今月8回目となる長期国債買い入れオペ4本(総額1.26兆円)の結果によると、残存期間25年超の応札倍率が1.73倍と同ゾーンで最低となり、売り圧力の弱まりが示された。10年超25年以下と3年超5年以下も低下した。 三井住友アセットの深代氏は、日銀買いオペについて、「売る物がなくなってきている印象。マイナス金利政策が長く続くのであれば、投資家は、今、売らなくても良くて長く持っていた方が良いとの発想になりやすい」と分析した。 23日の米国債相場は上昇。米10年債利回りは前日比3bp低下の1.72%程度で引けた。原油先物相場の急落と米株式相場の下落を受け、米国債への逃避需要が強まった。この日の東京株式相場は下落。日経平均株価は同0.9%安の1万5915円79銭で終了した。一時は300円近く下げる場面があった。東京外為市場では円が一時1ドル=111円台後半まで上昇している。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、「今日の債券市場では、海外で進んだ株安・円高・原油安を受けた流れになっている。内外の金融資本市場の地合いはまだ固まったとはいえず、リスク回避のムードが勝っている」と話した。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2ZPQ06JTSEA01.html
円がほぼ全面高、世界経済の先行き不安で買い優勢−対ドル111円後半 2016/02/24 15:42 JST (ブルームバーグ):24日の東京外国為替市場では円がほぼ全面高。原油安や英国の欧州連合(EU)離脱懸念、朝鮮半島をめぐる地政学リスクなど世界経済の先行き不安を背景に、リスク回避に伴う円買いが優勢となった。 ブルームバーグのデータによると、円は主要16通貨中15通貨に対して前日終値比で上昇。ポンドが対ドルで2009年3月以来初めて1ポンド=1.4ドル台を割り込む中、ポンド・円は13年10月以来となる1ポンド=156円ちょうどまでポンド安・円高が進んだ。 ドル・円相場は1ドル=112円台前半から一時111円64銭と、14年10月末以来となる110円台を付けた11日以来の水準までドル安・円高が進行。午後3時35分現在は111円93銭前後となっている。 バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイ外国為替本部の岩崎拓也営業本部長は、人民元安や原油安を受けた株安、リスクオフで円高となっているが、それ自体は新しい話ではなく、今週はむしろBrexit(英国のEU離脱)リスクなどを受けた欧州通貨経由のクロス円(ドル以外の通貨の対円相場)の押し下げ圧力がドル・円の重荷になっていると説明。「全体的に市場のリスク許容度も、リスク選好度も収縮している中で、ドル・円は下落リスクが高まっている」と語った。 ユーロ・円相場は一時1ユーロ=123円03銭まで下落し、日本銀行が量的・質的金融緩和の導入を発表した13年4月4日以来の円高値を更新。一方、ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.10ドル前半と前日の海外市場で付けた3日以来のユーロ安水準(1.0990ドル)付近でもみ合った。 23日のニューヨーク原油先物相場は急反落。サウジアラビアとロシアが先週合意した原油生産を1月水準で維持する案について、イランのザンギャネ石油相は「話にならない」と一蹴した。サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は米テキサス州での会議で、同国は原油生産を削減しないとの考えを表明した。原油先物相場はアジア時間24日の時間外取引でも下落している。 前日の欧米株式相場に続き、24日の東京株式相場も下落。中国の上海株は前日終値を挟んで上下に振れる展開となっている。 中国人元は対ドルで下落。中国人民銀行(中央銀行)は23日に人民元の中心レートを6週間ぶりの大きさで引き下げたが、この日も0.04%元安方向に設定した。 三井住友銀行市場営業部NYトレーディンググループの柳谷政人グループ長(ニューヨーク在勤)は、米経済に対する見通しも暗くなってきており、原油生産会社を中心とするデフォルト懸念や欧州の銀行クレジット懸念などネガティブな材料が目白押しと指摘。そうした中、ドル・円は週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を前に「介入を入れるわけにはいかない」というところを突かれているとし、「下値を警戒した方がいいと思う。前回の安値(110円99銭)を更新する可能性も高い」と語った。 韓国ウォンは対円で13年10月以来の水準まで下落。韓国は北朝鮮の挑発が「独裁体制の崩壊を早める」と警告した。国営朝鮮中央通信(KCNA)は23日、米韓の特殊部隊が北朝鮮に対する「高密度の攻撃」を実行に移す兆候が見られれば、北朝鮮が両国に対する先制的な攻撃に踏み切ると、同国軍最高司令部の声明として報じた。 ポンドは主要16通貨全てに対して下落し、対ドルでは一時1.3965ドルまで値を切り下げた。JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジスは、英国のEU離脱の可能性はそれほど高くないとみているが、国民投票まで不透明感が強く、「ポンドの売り圧力が続くだろう」と予想。「英国は海外からの資金流入が大きく、対外ポジションが脆弱(ぜいじゃく)なので、ヘッジのポンド売りが出やすい」と語った。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O30VMV6K50Y501.html 日本株続落、円高警戒の輸出・素材、市況安の資源売り−内需は下支え 2016/02/24 15:30 JST (ブルームバーグ):24日の東京株式相場は続落。為替の円高推移や原油価格の急反落を受けた景気・業績への警戒が強まり、自動車や電機、機械など輸出関連、鉄鋼や化学など素材株、商社や鉱業など資源株に売りが膨らんだ。 TOPIXの終値は前日比6.64ポイント(0.5%)安の1284.53、日経平均株価は136円26銭(0.9%)安の1万5915円79銭。 三井住友アセットマネジメントの金本直樹シニアファンドマネージャーは「1ドル=110円なら来期は輸出関連の減益は間違いなく、内需中心にベアが厳しくなれば実体経済への影響が出て企業業績全体でも増益になるかは微妙」だと述べた。このため、今後の為替レンジが「110−115円か、購買力平価の適正水準まで修正される100円−110円になるのか」と警戒する。 この日のドル・円相場は、午後に入って1ドル=111円60銭台まであり、きのうの海外時間に付けた円安値の111円78銭からさらに円高が進展した。原油安や英国の欧州連合(EU)離脱懸念などから、リスク回避による円買いが強まった。 23日のニューヨーク原油先物は4.6%安の1バレル=31.87ドルと反落し、9日以来の大幅安。サウジアラビアとロシアが先週合意した原油生産を1月水準で維持する案について、イランのザンギャネ石油相は「話にならない」と一蹴。サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は米テキサス州での会議で、同国は原油生産を削減しないと述べた。 日本銀行の企業短期経済観測調査(短観、昨年12月調査)によると、大企業・製造業の2015年度下期の想定為替レートは1ドル=118円となっている。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、110円を超える円高となれば業績に対する見方を変えなければならず、今はそのぎりぎりに近いところにきているとした上で、「為替で業績が不安、原油安で世界経済の先行きが不透明とあって、日本株を買う材料がない」と語る。 チャート上は、日経平均は2月1日高値の1万7905円から12日安値の1万4865円までの下げ幅の半値戻しである1万6300円台が市場参加者の間で意識されており、前日まで3度同水準で上値を抑えられている。その半面、世界的な市場の落ち着きとともに投資指標面からみた割安感に投資家の目が向きやすくなってきたほか、週末には20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会合を控えている事情もあり、朝方の売り一巡後に主要株価指数は下げ幅を縮小した。SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は、現在の日本株の状況を「試験で0点だった子供が10−20点取れるようになった。進歩だが、合格点ではない」とたとえていた。 そうした動きで明暗となったのが流動性別指数。東証1部で時価総額や流動性が最も高い30銘柄で構成するコア30指数が0.5%安、それに続くラージ70は0.8%安、ミッド400指数も0.4%安だったが、時価総額が相対的に小さい銘柄で構成するスモール指数は0.04%高とわずかにプラスを維持した。「大型は外需企業が多く、需給面からも海外からの売りが出てくるサイズ。それに対して中小型は国内の内需が多く、円高の外的要因を受けづらい上、原油安でエネルギーコストも低下する」と、三井住友アセットの金本氏は分析していた。 東証1部の業種別33指数は海運、機械、電機、鉱業、電気・ガス、鉄鋼、卸売、化学、輸送用機器、食料品など22業種が下落。水産・農林やその他金融、小売、パルプ・紙、銀行、石油・石炭製品、建設、不動産など11業種は上昇。東証1部の売買高は22億530万株、売買代金は2兆2324億円。上昇銘柄数は767、下落は1041。売買代金上位ではKDDI、JT、マツダ、三菱商事、ダイキン工業、三菱重工業、ヤマハ発動機などが安い。ソフトバンクグループやセブン&アイ・ホールディングス、ケネディクス、アイフルは高い。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O30URP6K50Y901.html
マイナス金利も急上昇リスクに備え走れ、円債から株に−CLSA (2) 2016/02/24 14:09 JST
(ブルームバーグ):「もしあなたがファンドマネージャーで、資産の大部分を債券で保有し株をほとんど保有していない場合は、歩かずに走れ」ーー。CLSAの日本担当ストラテジスト、ニコラス・スミス氏は、日本銀行によるマイナス金利政策下の債券利回りはいずれ急上昇(価格は急落)する恐れがあるとして、債券を売って株式に移行する必要があると話す。 スミス氏は「国債は安全資産、株式は危険」という定説に反して、「債券利回りがゼロを下回ったら、利回り上昇に伴う価格下落に備えヘルメットをかぶった方がいい」と注意を促す。かつて国債利回りが5〜6%あった時代は「7割を債券、3割を株式に当てていれば、元本を心配することなく運用ができた」と、ブラックロック・ジャパンリテール営業部門長の浜田直之マネージングディレクターも振り返る。 日銀のマイナス金利政策を受け、24日の国債市場では午前10時55分時点で年限10年以下ですべてマイナス金利となった。日銀の買い入れと政府の発行減で国債は品薄感があるため、金利上昇(価格下落)の兆しは見えないが、生命保険協会の筒井義信会長は、日銀の姿勢について「物価上昇のトレンドを逆戻りさせないという非常に強いコミットを感じさせる」との見方を示す。黒田東彦総裁は3日の講演で、「できることは何でもやる」と述べ、2%の物価目標の実現に強い意欲を示していた。 消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は最新の昨年12月時点で前年同月比0.1%上昇にとどまっているが、ブラックロックの浜田氏は、「日銀の覚悟というのを過小評価しない方がいいかもしれない」と指摘。消費者物価が目標に近づいて来るなどと「インフレ率が新聞をにぎわすようになると、投資家の行動が変わる可能性がある」とみている。 国債での運用は困難 運用資産の42%を日本国債が占める国内生保は、金利低下が長引けば保険契約者に約束した利回りの確保が難しく、逆ざやが発生する可能性が大きくなっている。生保協の筒井会長は「日本国債中心の運用は困難」と外国債券や社債、インフラ関連や成長分野への投資など、さらなる投資分散が必要と言う。 2015年11月に上場したかんぽ生命保険は、同年12月末時点で総資産82兆7000億円のうち国債が55%を占め、地方債と社債を合わせると約74%が国内債券。同社は3カ年の中期経営計画で、運用の多様化に向け内外株式や外債などリスク性資産の比率を同年12月の6.4%から、18年3月期までに10%に高める方針だ。 タンス預金 超低金利下で資産運用に悩んでいるのは、プロの機関投資家だけでなく、個人も同じだ。日銀が公表している15年9月末の資金循環統計(速報)では、個人金融資産のうち債券が前年同月末に比べて11.3%減の25兆円、株式・出資金は0.2%減の163兆円に対し、現金・預金は887兆円と1.9%増加し、全体の53%を占めた。 国内2位の資産運用会社、DIAMアセットマネジメントの西惠正社長は、マイナス金利の導入が成功して日本経済がデフレから脱却し2%のインフレに向かって行く場合は、「預金者は預金から、よりリスク性のある運用へシフトしていかないといけないことがより明確になる」と述べた。 浜田氏は、デフレの時代はタンス預金しておけば「物価が下がりデフレ率という利息がついていたと考えることもできる」と話すが、仮にインフレ時代に突入したら、タンス預金は「インフレ率という管理コスト」を払うことになると言う。「お金にもコストがかかることを絶対忘れてはいけない」。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2ZENY6JTSFB01.html
次のウサギまで2週間−失望させない緩和策を市場はドラギ総裁に期待 2016/02/24 11:34 JST 記事をメールで送信 記事を印刷する 共有/ブックマーク ShareGoogleチェックTwitterシェア (ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、自らの同僚と投資家のどちらも動揺させることなく、金融刺激策を強化する方法を決定するために残された時間は、あと2週間だけとなった。 ECBの政策担当者は3月9、10日にフランクフルトで政策委員会を開き、現行のマイナスの中銀預金金利と月600億ユーロ(約7兆4000億円)の債券購入プログラムが、消費者物価押し上げに十分かどうか検証する。中銀預金金利の少なくとも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加引き下げが既に市場に織り込まれており、量的緩和(QE)のカスタマイズがどのように行われるかが、市場関係者が気をもむ最大の焦点だ。 ドラギ総裁はECBがマンデート(責務)の範囲内でどこまで踏み込むか制限はないと述べているものの、マイナス金利はリスクを伴い、QEの拡大も口で言うほどは簡単ではない。3月の政策委では、昨年12月の政策調整が市場に失望をもって迎えられたような事態を回避する一方、ドラギ総裁が障害を克服できると投資家を納得させる微妙なかじ取りが求められる。 オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、ジェームズ・ニクソン氏は、QEの拡大について「極めて困難だろう」と指摘。「このような状況に置かれた場合にドラギ総裁がよくやるように今度も袋から別のウサギが出てくるか、非常に興味深いのではないか」と述べた。 債券購入プログラムでは、経済規模に応じて定められたECBへの出資比率(キャピタルキー)に基づき、各国の公的セクターが発行した債券の購入額が決まる。最大出資国であるドイツが購入分の多くを占める現状に対し、ECBがキャピタルキーを撤廃する可能性も取り沙汰されている。 原題:Draghi Has Two Weeks to Devise ECB Plan That Won’t Let You Down(抜粋) http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3134D6TTDSJ01.html
アジア拠点ヘッジファンドが運用成績上位−パニック気味市場を好機に 2016/02/24 11:44 JST (ブルームバーグ):中国市場の混乱は世界中の投資家を動揺させてきたが、上海に拠点を置くヘッジファンド運用会社グリーンウッズ・アセット・マネジメント(景林資産管理)創業者の蒋錦志氏は、そのボラティリティ(変動性)の高まりに収益獲得の機会のにおいを嗅ぎ取った。 中国株式相場が10年ぶりの大きさで変動した2015年、蒋氏の「ゴールデン・チャイナ・ファンド」は約22%のプラスリターンを確保。ブルームバーグがまとめた昨年の世界のヘッジファンド運用成績ランキング(運用資産10億ドル=約1120億円以上)トップ50の上位に入った。同ファンド以外にもアジア拠点のファンドが3本、10位以内に入っている。 アジアでは08年の金融危機後にヘッジファンド運用会社が数多く設立された。アジアを拠点とするファンドの力強いパフォーマンスは、域内ヘッジファンド業界の成熟を示す。 蒋氏は「われわれは相場下落時には市場を注意して見てきたが、決してパニックには陥らなかった。株式相場は時々、上下にオーバーシュートする傾向があるが、それが起きた場合は市場の失敗を活用したいと考えている」と話した。 原題:Asia Hedge Funds Top Rankings as Jiang Pounces in Panicky Market(抜粋) ニュース一覧 JPモルガンのダイモンCEOが昨年分ボーナスを11.2億円増やす方法 クレディSのボマリト氏が休暇中に死去−信用リスク評価責任者、45歳 欧州エアバス:15年通期は1.6%増益−A350の納入増などが寄与 ゴールドマンのライスナー氏が退職−マレーシアのビジネス育成に貢献 海運王フレドリクセン氏、原油下落でもサケ養殖への投資で恩恵 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O314CS6K50YM01.html 日銀の政策、何でもありの世界へ 日銀は国債などを買い入れるために年間80兆円のペースで新たに通貨を供給している。写真は韓国・ソウルの韓国外換銀行に積み上げられた1万円札の束(2014年2月)
By JAMES MACKINTOSH 2016 年 2 月 24 日 15:54 JST そちが呼びたいなら「ナンセンス」と呼ぶがよい。だがわらわが聞いたことのあるナンセンスに比べれば、これなんか辞書なみに正論じゃ。ルイス・キャロルの児童小説「不思議の国のアリス」の続編、「鏡の国のアリス」に登場する赤の女王はそう言った。 「不思議の国のアリス」の冒頭でアリスはウサギを追って穴に飛び込み、どんどん底へと落ちていった。ここ数年の中央銀行がまさにそうだ。まず政策金利を過去最低まで引き下げ、次に国債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを実施、そして超緩和政策は日本では不動産投資信託(REIT)と株式ファンドの購入へと発展した。さらに、マイナス金利政策の導入によって中銀はいまや、金利が「下限ゼロ」を割り込むというかつてはほぼ不可能と考えられていたことを何とかやり遂げている。 現代の中銀が住む「鏡の国」では、現金の廃止についてさえも金融当局上層部が真剣に議論するなど、タブーとされる政策はほとんど何もない。 まだ検討されていない構想が一つある。日本銀行は紙幣を印刷して原油を買うべきだという意見だ。これはナンセンスどころではない、それ以上にばかげた意見のように聞こえる。だが、朝食前に六つの不可能なことを信じたことがあると言っていたアリスのように、中銀関係者らも信じることの力を確信しているとすれば、もはやこうした構想もあり得ないことではないように思える。そして、そう思えること自体、有益な発見だ。 【左】中銀資産残高の対GDP比率(赤:日銀、黄:ECB、青:FRB)、【右】日銀の資産内訳 ENLARGE 【左】中銀資産残高の対GDP比率(赤:日銀、黄:ECB、青:FRB)、【右】日銀の資産内訳 日銀が抱える問題を考えてみよう。日銀は国債などを買い入れるために年間80兆円のペースで新たな通貨を供給している。これは過去最大級の規模での紙幣増刷だ。時価総額でみると、日銀はすでに国債発行残高の3分の1近く、株式の約2%、ETF(上場投資信託)の約半分をそれぞれ保有している。 それにもかかわらず、日本のインフレ率はずっと低空飛行を続けている。1月のマイナス金利政策発表以降も円高が進み、日銀の目標とする2%までインフレ率を押し上げることは一段と難しくなっている。 日銀の黒田東彦総裁は23日、マネタリーベースの拡大だけでインフレ目標を達成できるかは疑問との考えを示したものの、3月の追加行動の可能性を示唆する兆しはいくつかある。明らかな選択肢は金利のマイナス幅拡大だが、資産買い入れの増額とさらなる財政出動も合わせて実施される可能性がある。 ただ、マイナス金利政策は銀行への打撃など良くない副作用を伴う。また、国債供給には限りがあるかもしれない。野村証券の推計によると、今後3年間で日銀が買い入れることのできる国債は236兆円にとどまるという。銀行や保険会社が保有している国債の売却に消極的だからだ。HSBCは、最悪の場合、年内に日銀は月間目標額を購入することが厳しくなるとみる。 こうした推計は悲観的過ぎかもしれない。外国資産の買い入れという選択肢もあるのは確かだが、実現はかなり難しい。直接の為替操作は昨今、外交上の理由から日本のような大国が絶対にやってはいけないことだ。このため、スイス国立銀行(中央銀行)がユーロ圏加盟国の国債を購入しているように日銀が米国債を買うという策は現実的ではない。 もっと極端な選択肢もある。政府支出の資金を直接提供することや、金利のマイナス幅がさらに広がるよう銀行紙幣を廃止することなどだ。いずれも政治的に受け入れられない策だ。 これらの政策と比較すると、紙幣の増刷による原油購入には大きな利点がいくつかある。 一つ目は、外交に危険な影響を及ぼすことなく日銀が直接、円相場を押し下げることができるという点。原油はドル建てで取引されるため、原油を買うドルを調達するには円を売る必要がある。日本が原油輸入を増やすことに米国が反対するとは思えない。 二つ目は、日銀が買い手に加わることで原油価格の押し上げが期待できる点だ。日本の消費者はこれを良しとしないかもしれないが、投資家はリスクを取るべきか判断する上での目安として原油価格に注目している。今年に入って原油は、株式から国債、為替に至るまであらゆる市場の鍵を握る重要な要素となった。トレーダーは原油価格を手掛かりにするからだ。例えば、原油が安くなると安全逃避先として円が買われる傾向があり、23日も同じ流れだった。こうした市場への影響力を踏まえると、原油の買い入れには円安を招くという、債券買い入れを上回る力があると言える。 三つ目は、日本が石油をほぼ全て輸入に頼っており、平均的な輸入国よりも備蓄日数が少ないという点。石油備蓄が増えれば、投資の下支えにもなるだろう。 四つ目は、原油価格は2008年につけた史上最高値の4分の1の水準まで下落しており、いまが買いの好機との議論が成立しやすいことだ。 一方、大きな難点が一つある。「不思議の国のアリス」に登場するいかれた帽子屋マッド・ハッターが思いついたアイデアのように聞こえる、というだけの問題ではない。 残念ながら、日銀が望むペースで長期にわたり買い入れるだけの十分な原油は世界には存在しない。原油市場は巨大だ。イランの増産で見込まれる市場への追加供給量は年間約80億ドル相当だが、中銀の買い入れはもはや10億ドル単位の話ではない。原油市場全体の規模は年間で約1兆2000億ドル相当だが、日本が買えるのはそのうちのごく一部だ。もちろん、原油価格を押し上げれば押し上げるほど投じる金額も増えるが、目標額には到底及ばないだろう。 日銀はマイナス金利をさらに引き下げる見通しだ。また、買い入れの継続に伴い流通市場の国債が枯渇しないことを願っている。アナリストの間では、日銀が買い入れ対象となる資産を拡大するとの予想もある(原油よりも土地や株式の可能性の方が高そうだ。原油はまだ高級ワインと共に、検討しない資産リストに含められている)。 あるいは、HSBCのチーフエコノミスト、ステファン・キング氏が言うように、日銀はいずれ、他に何が買えるかという議論から、これらの非伝統的な政策が果たして機能するかという問い掛けに移行する可能性がある。 日本の金融政策はナンセンス、つまり意味をなさないことと意味あることを区別しづらい段階に達した。おそらくじきに西欧諸国の金融政策もそうなるだろう。 関連記事 【寄稿】円売り介入のリスクとは 日銀マイナス金利、裏目に出た円安誘導の意図 世にも奇妙な日本国債のマイナス利回り http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AG567_STREET_16U_20160223155111.jpg
産油国の苦境、長期化の見込み By IAN TALLEY 2016 年 2 月 24 日 16:02 JST
原油価格が22日に急反発した背景は、需給が来年均衡に向かうという国際エネルギー機関(IEA)の最新見通しと、輸出国が近く増産凍結で合意するとの期待だったかもしれない。だが、産油国はこれに浮かれすぎてはならない。 市場のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を見ると、22日の動きは弱気相場における一時的な上昇にすぎないことが確実のようだ。 まず、国際通貨基金(IMF)が最後に予想を下方修正して以来、世界経済の見通しは悪化しており、需要は抑え込まれている。次に、産油国は生産を減らすかもしれないが、生産能力は緩やかにしか低下しないだろう。過去に供給過剰が生じた際に明らかになったように、需要と生産能力の大きな格差が、多くの場合は長期にわたって価格の大幅な持ち直しに歯止めをかける。 IEAは需給バランスが来年改善するとの期待を高めた。だがその舌の根も乾かないうちに、米シェールオイル生産が減少して主要輸出国が減産で合意したとしても、足元の供給過剰が解消するには数年かかる可能性があると警告した。 ハーバード大学のベルファー科学・国際関係研究所でシニアフェローを務めるレオナルド・マウジェリ氏は、産油国は減産で合意したとしても、その順守に苦しむだろうと指摘している。 季節的要因で消費が増加すれば、価格は上向く可能性が高い。米国などが生産抑制を示唆していることもあり、一部の人は最悪期が過ぎたと確信するかもしれない。 マウジェリ氏は最新のリポートで「こうした類の安心感は、産油国のさらに思い切った行動に歯止めをかける可能性がある。各国は市場がようやく機能しているため、減産に向けて厳しい合意を模索する必要はないと確信する恐れがある」と述べている。 原油安は長期化が予想されている 原油安は長期化が予想されている イランは数年に及ぶ制裁を経て増産を要求しており、合意の可能性はすでに薄れている。生産枠の割り当てを無視してきた石油輸出国機構(OPEC)の歴史はさておき、各国は景気見通しの悪化でコミットメントを守るのが一段と難しくなっている。 また、かつて実施した多額の投資は2017年も引き続き価格を圧迫する公算が大きい。マウジェリ氏によれば、石油メジャー(国際石油資本)の大部分は、承認が完了していない探査・開発プロジェクトに絡む資本や事業費の削減を発表した。 マウジェリ氏によると、世界の石油生産は2015年末時点で日量9850万バレル程度と、需要を日量300万バレル余りも上回った。サウジアラビアが利用を自制している、あるいは政治的・技術的問題により一時的に止められている日量450万バレルの余剰生産能力は、この計算に含まれていない。 現在の原油安を2012年に予想したマウジェリ氏は、「多くの企業や国が支出予算の削減を発表したが、すでに進めている投資を打ち切ったケースは実際ほぼない」と述べた。 生産コストもここ数年で低下しており、減産のさらなる妨げになっている。 一方、原油消費は価格の大幅な上昇を正当化できるほど伸びていない。マウジェリ氏によれば、需給の均衡を達成するためには、今年の需要を日量250万バレル、来年を200万バレル引き上げる必要がある。これに対し、過去5年間の年間平均は日量90万バレル増に満たず、昨年は170万バレル増だった。 原油価格は1980年代に急落した後、約20年にわたり停滞が続いた。 マウジェリ氏は「需要が実際急激に伸びない限り(その可能性は低そうだが)ファンダメンタルズは変わらない」とした上で、「各地で生産がやや縮小しているにもかかわらず、世界の石油生産、生産能力、在庫は消費の伸びと比較して極端に高い水準にとどまるだろう」と指摘した。 関連記事 米インフレ見通し、原油価格ゼロを示唆=連銀報告 原油、減産はないが増産凍結に向け努力=サウジ石油相 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MT241_OilPri_NS_20160224030352.jpg
ドイツ経済の構造変化、世界経済の成長問題を反映か ENLARGE ドイツの総合電機大手シーメンスの生産工場(ドイツ、アンベルク) PHOTO: ZUMA PRESS By RICHARD BARLEY 2016 年 2 月 24 日 16:14 JST 体の模様を変えられないヒョウと異なり、ドイツ経済の姿には変化が見られる。ただ残念なことに、世界経済も豹変(ひょうへん)したようだ。 2015年10-12月期のドイツ国内総生産(GDP)の内訳を示すデータが、そうした状況を鮮明に映し出している。内需は旺盛で、成長率への寄与度は0.8ポイントとなった。しかし、純輸出が重荷となり、成長率を0.5ポイント押し下げた。 結果として、10-12月期の前期比成長率はわずか0.3%にとどまった。 特筆すべきは、輸出が前期比0.6%減とマイナスに転じたことだ。財の輸出の落ち込みはそれを上回り、同1.7%減となった。ドイツは欧州の輸出大国で、輸出が国内経済を支え続けているというイメージと食い違う。 ENLARGE 国内総生産(GDP)に対する寄与度(青:純貿易、赤:内需) むしろ、この3年間にドイツの経済成長を主にけん引したのは輸出ではなく内需で、世界的な金融危機前の姿から大きく様変わりした。内需主導の経済モデルに転換すべきとの声に答える変化だが、世界経済の状況も心もとなくなっている。 これは23日発表された注目度の高いIfo企業景況感指数が発信しているメッセージでもあるようだ。ドイツ企業は現在の事業環境に満足している様子だが、見通しは急速に悪化しており、特に製造業者の懸念が大きかった。 このことが浮き彫りにしているのは、中央銀行と政治家は世界的な問題にどう対処すべきか、という目下の政策課題だ。2008年?09年の世界的な景気後退後の回復は、世界的な広がりを見せることはなく部分的な回復にとどまった、というのが正直なところだろう。 まずユーロ圏で危機が発生し、次に中国を代表とする新興国の問題が明らかになった。そして今や米国をめぐる懸念が取りざたされている。各国はそれなりに政策対応を講じているが、各国間で協調しない限り、その効果は期待できないかもしれない。 関連記事 ? OECD、政府投資支出の拡大呼び掛け−世界経済見通しは下方修正 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MS730_German_G_20160223074425.jpg ブラジルが直面する高インフレと景気後退の二重苦 ブラジルは1930年代以降で最悪の景気後退を経験している(写真はサンパウロのショッピング街)
By PAULO TREVISANI 2016 年 2 月 24 日 15:34 JST 【ブラジリア】首都近郊のアグアスクララスで食料品スーパーを経営するエデル・レオーニ氏は、インフレ(物価上昇)とリセッション(景気後退)の二重苦を実感している。 食品価格が急騰したため、ブラジル政府が23日に発表した2月半ばのインフレ率は前年同期比10.84%と12年ぶりの高水準に達した。失業率が上昇し、おびえた消費者が支出を減らす中、レオーニ氏は次第に少なくなる客に費用を全部転嫁することはできないと言う。 ある暖かい朝、彼の店にはほとんど客がいなかった。同氏はこの1年で5人の従業員を解雇したが、売り上げは8.5%減少した。経営コスト全体が19%上がっていて、客寄せのための値下げはできないと言う。 ブラジルの物価は20年間、比較的安定していたが、かつて同国を悩ませた高インフレが戻ってきた。年率6%未満の物価上昇率にようやく慣れつつあったところだったが、2015年は2桁の10.7%に急上昇した。ブラジル政府はインフレ目標を4.5%に置いている。 ブラジルの消費者物価(前年同月比)の推移。-インフレ率は過去10年余りで最高の水準に達している。 ENLARGE ブラジルの消費者物価(前年同月比)の推移。-インフレ率は過去10年余りで最高の水準に達している。 ゴールドマン・サックスの中南米担当チーフアナリスト、アルベルト・ラモス氏は23日の顧客向けリポートで、ブラジルの「インフレ見通しは依然として極めて厳しく、当局はインフレを制御して期待を落ち着かせることに徐々に困難を感じるようになっている」と述べた。 ブラジルは90年代初頭、年率5000%というハイパーインフレを経験している。当時は、昼食と同じものを夕食に同じ値段で食べられるか予想もできない状況だった。94年から一連の経済措置を講じた結果、インフレ率は06年には3.14%まで低下した。 だがここにきて、ブラジル中央銀行が指標金利を14.25%に引き上げても物価は上昇し続けている。この政策金利は世界最高水準だ。 現在のインフレ問題は、少なすぎる財に対する金余りという昔ながらの図式にはあてはまらない。問題の発端は、同国政府が燃料とエネルギーに助成金を出していたことにある。財政の悪化に伴い、ルセフ大統領は助成金の廃止を余儀なくされ、15年の物価急騰に至ったのだ。ガソリンとバス運賃が跳ね上がり、電気料金は51%上昇して企業や家計の資金繰りに大きく食い込んでいる。 そこに通貨安が加わる。国内外の問題が通貨レアルを圧迫し、15年にレアルはドルに対する価値を3分の1失った。この結果、輸入物価が急速に上昇した。 国内各地で発生した干ばつや洪水も、食品などの値上がりにつながった。例えばタマネギは1年前よりも85%高くなっている。 物価指標の取り方も一因だ。ハイパーインフレ時代の遺物として、給与の大半と地代、年金などがインフレ指標の構成要素に含まれ、継続的な物価上昇サイクルを加速させている。 加えて、国内総生産(GDP)比10.3%相当と過去最大に達した財政赤字を埋めようとした政府の増税がある。これによりたばこ、ワイン、電子機器、化粧品などさまざまな製品やサービスが値上がりした。 さらに、中央銀行がインフレ抑制にしっかり取り組んでいないと感じられることも問題だ。一部のエコノミストは、インフレが再燃したにもかかわらず中銀が12年に政策金利を過去最低の7.25%に長く据え置き過ぎたと非難している。 中銀は13年4月に長い利上げ局面を開始し、2年間で16回利上げした。だが、物価上昇圧力は依然として衰えず、中銀の信頼は弱まった。中銀は現在、16年末のインフレ率を6.5%弱と予想しているが、大半のアナリストは8%程度を見込んでいる。 関連記事 ジカ熱流行、ブラジル観光に大打撃か http://si.wsj.net/public/resources/images/WO-AZ516_BRINFL_16U_20160223182407.jpg EU離脱危機、英中銀に警鐘
By PAUL HANNON 2016 年 2 月 24 日 14:00 JST 英国の欧州連合(EU)離脱は突如、極めて現実的な脅威となった。EU残留の是非を問う国民投票は6月23日に行われる。22日の市場の反応を踏まえると、英中銀イングランド銀行にとってこれからの数カ月は慌ただしいものとなるかもしれない。 キャメロン首相が3年前に実施を約束して以来、投資家は国民投票に警戒の目を向けている。同首相とEU首脳は、英国の有権者にEU残留支持を促すべく策定された一連の特別措置をめぐり、ここ数カ月交渉を続けてきた。 この交渉が19日に合意に達したことを受け、与党・保守党の有力議員は自身の立場を明らかにしている。有力政治家の1人であるロンドンのジョンソン市長は21日、EU残留に反対を表明した。 22日の外国為替市場では、英ポンドがドルに対し2%下落。1営業日の下げ幅としては2009年初め以来の大きさを記録した。 イングランド銀行の対応として可能性が高いのは様子見だろう。ポンド安はインフレ目標の達成に一役買い、小幅な利上げを支持する材料になるかもしれない。だが、国民投票に向けて運動が白熱し、世論調査で残留派と離脱派の優勢が変わるにつれ、ポンド相場は何度も浮き沈みする可能性が高い。 22日の市場の動きを受け、あらためてイングランド銀行は投票後に備えることとなるだろう。さほど予想外ではなかったジョンソン市長の離脱支持表明がポンドにこれほどの打撃となるなら、実際の投票で離脱が決まりでもすれば、そこで生じる混乱は計り知れない。 イングランド銀行はスコットランド独立をめぐる住民投票への準備を一部参考に、緊急時の対応をまとめている。 英国は1975年にもEUの前身である欧州共同体(EC)からの離脱をめぐり同様の投票を実施した経験がある。その後、世界は大きな変化を遂げた。国際間の資本移動が始まったばかりの世界では、ポンド相場の下支えには数十億ポンドで十分と考えられていたかもしれないが、現在はEU離脱が投票で決まった場合、政策当局がポンド安を食い止めるためにできることはあまり多くなさそうだ。 金融危機以降、中央銀行は多くの使命を背負ってきたが、有権者による重大かつ国家の存在に関わる選択の結果を中央銀行が中和できる、などとは誰も考えないだろう。イングランド銀行が1992年に明らかにした通り、政策金利を15%へ引き上げても、すぐ再利下げがあると投資家が確信していれば大して効果は出ない。イングランド銀はむしろ、ポンドが急落した場合でも金融システムがこれに対応できるかどうかに焦点を絞る公算が大きい。 イングランド銀行はひとたび騒ぎが収まれば、インフレ目標の達成という平凡な仕事に戻り、目標を下回るより上回る危険性の方が高いことに気づくだろう。景気減速下で利上げするとすれば、難しい判断になりそうだ。 ジョンソン市長が投票を左右する可能性は低い。だが、22日にポンドが急落したことはまさに、英中銀が6月24日に置かれているかもしれない状況の厳しさを強調している。 関連記事 英中銀、ポンド安受け利上げすべきか不透明 英国EU離脱問題、不透明感で英ポンド急落 英中銀、緊急時対応まとめる−EU離脱問う国民投票控え 英EU離脱問題特集
原発輸出を目指す中国 「華龍1号」売り込む
By BRIAN SPEGELE 2016 年 2 月 24 日 14:58 JST 【深セン(中国)】中国は、世界の原子力業界で顧客から輸出国にシフトしたいと思っており、同国初となる先端的な原子炉の輸出を目指している。世界の大手原子力企業は既に低迷状態にあるが、中国の進出により、さらなる競争に直面することになりそうだ。 中国の国営企業2社は、海外での販売を念頭にチームを組み、国産原子炉「華龍1号」を設計した。2社のうちの1つである中国広核電力(CGN)は23日、ケニア、ロシア、インドネシアなどの企業幹部数十人のほか、外交官やジャーナリストを同社の大亜湾原子力発電所に招き、華龍1号を輸出したいと宣伝した。 CGNの国際事業担当幹部は、新型原子炉の世界市場でどのくらいのシェアを獲得したいか尋ねられ、「多ければ多いほど良い」と答えた。 この動きは中国と原子力業界にとって転換点となる。中国は過去30年間、米国に本拠を置き日本が所有するウエスチングハウス・エレクトリックや、フランスのアレバといった原子力大手にとって大きな市場になっていた。中国各地には1990年代以降、30基を超える原子炉が建設された。それらは外国の設計・技術に依拠したものだった。 折しも多くの国々は原子力のリスクとコストを、天然ガスおよびその他の燃料と比較検討し直している。国際原子力機関(IAEA)によると、中国国内では現在20数基の原子炉が建設中だが、これは世界で建設中の全原子炉の3分の1以上を占める。 この建設の規模が大きくペースも速いため、CGNなどの中国企業にとっては、国内市場で経験を積み、原子炉の部品、技術とシステムを開発するスキルを身に付ける機会になった。この経験は、中国の労働コストと資本コストの安さと併せて、中国の新型原子炉・華龍1号を海外の顧客にとって魅力的にする可能性がある、と業界の専門家は指摘している。 各国の原発状況 業界団体「世界原子力協会(WNA)」の中国代表を務めるフランソワ・モラン氏は、「今は華龍1号を宣伝する絶好の時期だ」と述べ、「彼らにはチャンスがある」と話した。 もちろん、売り込みを売り上げに結び付けるまでには時間がかかるし、華龍1号が海外で成功する保証はない。海外での原子炉建設をめぐる協議は暫定的なものにとどまっているケースが多く、しかも、初の華龍1号が中国で稼働し始めるまでにはあと何年かかかるだろう。 しかし、華龍1号は、中国の原子力業界にとって輸出のバリューチェーン(価値連鎖=商品が顧客に届くまでの間、どこでどれだけの価値が生み出されていくかをとらえる手法)を上げるという点で大きな躍進となる。CGNと中国核工業集団が共同開発したこの原子炉は、HPR1000とも呼ばれており、ウエスチングハウスのAP1000といった「第3世代原子炉」と似た仕様を持つ。 前出のCGNの国際事業担当幹部は、この新型原子炉モデルの開発について、中国の原子力業界が1990年代以降に遂げた技術の躍進を反映していると述べた。 同幹部は「HPR1000を開発できたのは、経験を蓄積し、その経験を新技術に組み込む方法をわれわれが知っていたからだ」と話した。 関連記事 中国、国産初の原子炉建設を認可 「華龍1号」 中国、アルゼンチンの原子炉建設で合意 原発建設の国産化進める中国 http://si.wsj.net/public/resources/images/BT-AH159_CNUKES_16U_20160223150606.jpg JPモルガン、怖いのは原油安より低金利 ENLARGE JPモルガン・チェースは、今後の収益に対する最大の脅威は超低金利だと述べた PHOTO:AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES By AARON BACK 2016 年 2 月 24 日 12:56 JST 銀行株の投資家にとって極めて恐ろしいのは、見えない悪材料(これが原油急落に関係していればなおさらだが)がどこかに潜んでいるのではないか、ということだろう。だが、先行きの見えないエネルギー関連のエクスポージャーをめぐる悪材料の中、最も恐ろしいのは、実は投資家にもすでに見えている「低金利」という怪物だ。 JPモルガン・チェースは23日開催した投資家向け年次説明会で、今後の収益に対する最大の脅威は原油安でなく超低金利だと述べた。この低金利という脅威が近いうちに解消される気配は全くない。 確かに原油安も懸念材料ではある。説明会でJPモルガンは、この1-3月期にエネルギー関連勘定で損失準備金として5億ドル(約560億円)を積み増す予定を明らかにした。原油価格が今後1年半、1バレル=25ドル付近で推移すれば、さらに15億ドルの引当金が必要になる。この見通しは、これまで株価を急落させてきた投資家をさらにおびえさせるものとなった。 しかし、長期的利益に対しては、金利が抑制されていることによる打撃の方がはるかに大きい。説明会に出席したマリアン・レイク最高財務責任者(CFO)が示したチャートは、今後避けられない損失の規模を示していた。今年に入ってから利回りが急降下していることを考えると、望ましくない予測だ。 ここで、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後数年の金利見通しへの見方を示した最新の「FRB理事と地区連銀総裁の政策経路見通し」のペース通りに利上げすると想定してみよう。昨年12月の時点でFRBは、年内4回の利上げとその後の追加利上げを示唆していたため、フェデラルファンド(FF)金利は、現在の0.375%から18年末には3.25%程度になると予想される。 この明るいシナリオなら、JPモルガンの18年の純金利収入は約100億ドル増となる。 しかし、残念ながらこの予想は日を追って現実味を失っているようだ。 ENLARGE JPモルガン・チェースの純金利マージン(四半期ベース) 市場は既に、大幅に緩やかな利上げペースを予想している。つまり今年の利上げは見送られ、17年と18年にそれぞれ0.25%ずつの利上げが1回行われると予想しているのだ。この「ハト派のFRB」シナリオで進行した場合、JPモルガンは18年に純金利収入が約60億ドル増えると試算しており、そうなれば純利益は約3分の1増加する。 ただ、18年末までFRBが利上げしない(可能性は低いが非現実的とも言えない)というシナリオを想定した場合、JPモルガンは、それでも資産構成の調整などで純金利収入を増やすことが可能だとしている。だが、増加額は約35億ドルにとどまる。 これでも収入が減少するよりは好ましいが、投資家を銀行株に引きつけるに不十分であり、同行のバリュエーション再評価には全くつながらないだろう。 結局、FRBの利上げをめぐる見通しが好転するまで、銀行株は低迷を続けそうだ。 関連記事 ? マイナス金利で深まる景気減速懸念 ? 米FRB特集 ? FRBの翌日物レポ枠、外国公的機関の利用急増 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MS945_JPMHER_M_20160223141803.jpg 市場混乱の影響、評価「まだ早い」=フィッシャーFRB副議長 By BEN LEUBSDORF 2016 年 2 月 24 日 11:50 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)のフィッシャー副議長は23日、最近の金融市場の混乱が米国経済に与える影響について、評価するのは「まだ早い」との考えを示した。 副議長はヒューストンで行った講演の草稿で、「最近の金融市場の動向により、金融が持続的な引き締め状態になっているとすれば、米国の成長やインフレにも影響するような世界経済の減速を示唆している可能性が高い」としつつ、「ただ、2011年下期を含め、同じように変動の大きい時期がここ数年続いているが、経済への明確な影響はほとんど見られていない。16年に入ってから7週間にわたり市場の変動性が拡大したことの影響を評価するにはまだ早い」と述べた。 今回の発言は、次回3月15日・16日の連邦公開市場委員会(FOMC)まで3週間という時期に行われた。FRB関係者らは次回FOMCでの利上げを明確に否定してはいないものの、イエレン議長をはじめとする関係者はこのところ慎重な発言をしている。また、民間のエコノミストらは3月の会合では利上げが見送られると予想している。 フィッシャー副議長は次回のFOMCについて、関係者らがどう行動するかについては何も言えないとした上で、「その理由は、これまで強調してきたように本当に知らないからだ。世界は不確実性の中にあり、それは時として他のどの時代よりも大きい。金融政策担当者にとって本当に確実なのは、今後起きることは現在の予想と違う場合が多い、ということだけだ」と述べた。 今回の講演は、1日にニューヨークで行ったものに沿った内容となっている。 15年後半の経済成長は鈍化したが、副議長は23日の講演で「1月の支出を示す経済指標は1-3月期の成長加速を示唆している」と指摘した。また、賃金の伸びや食料品とエネルギーを除いたコアのインフレ率が加速している兆しが見られると語った。 「しかし(この『しかし』が私たちの仕事では多いのだが)、原油安が続いていることは、総合インフレ率が2%を回復する時期は以前の予想よりややずれ込む可能性が高いことを示唆している」との見方を示した。 さらに、年初から通常見られないほど世界の金融市場で変動性が高まっていることについては、「中国の現状に加え、原油など資源国が輸出する国際商品(コモディティー)価格の下落による影響を中心に、世界の見通しに対する懸念の高まりを反映している可能性が高い」との見解を示した。また、これ以外の要因としては、「欧州と日本の経済成長見通しが修正されていること、そして米国の国内総生産(GDP)と生産性の伸びが引き続き極めて低調だとみられていること」を挙げた。 関連記事 金融市場の変動、米経済への影響不明=FRB副議長 米インフレ見通し、原油価格ゼロを示唆=連銀報告 米FRB特集
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