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26、27日に上海で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議。行く手には早くも暗雲が…〔photo〕gettyimages
中国、「上海G20」取材を制限 〜こんな稚拙な対応で経済危機を乗り切れるはずがない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48000
2016年02月23日(火) 町田徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■前代未聞のメディア制限
世界的な株安など市場の混乱を収束に向かわせるために、国際的な「政策協調」という特大バズーカの導入が期待されているにもかかわらず、26、27の両日、上海で開催される「20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議」の行方に早くも暗雲が漂ってきた。
開催国の中国が、「受け入れ態勢に限界がある」として、取材を認める海外メディアの記者数を大幅に制限していることが明らかになったからだ。
今回のG20は、世界的な金融市場の混乱の元凶として、中国経済の大幅減速や人民元の急落などが “ヤリ玉”にあがる可能性が高い。耳を疑うような話だが、これが中国政府のメディア受け入れ制限に繋がったらしい。
だが、G20のような国際会議で取材記者数に制限を加えるなど、前代未聞の珍事だ。
中国政府がG20の議長国を務めるのは、今回が初めて。言論統制がまかり通るお国柄のためか、国際会議での初歩的なメディア対応ひとつできないことが明らかになった格好である。
今回の中国発の経済危機は、リーマン・ショックを上回りかねない事態として、難しい舵取りが求められ始めている。この程度のメディア対応で躓くようでは、問題の本質的な部分で然るべき対策を講じる能力を期待することは難しいだろう。
中国財政省による海外メディア受け入れ制限の問題は、先週半ば(2月19日夜)、日本経済新聞や産経新聞がインターネット版で報じた。
一部引用すると、「中国財政省はインターネット経由でG20取材の記者登録を受け付けた。だが、日本を含むG20メンバー国のメディアで、登録申請したものの『承認しない』と拒否される記者が続出した。中国財政省は『受け入れ態勢の限界』を理由に、記者の人数に制限を加えていることを認めた。承認状況はまちまちで、統一された基準はないもようだ」という。
■これまでの経済危機との違い
私は30年強にわたって、何度も世界的な金融市場の動揺を取材してきた。1987年のブラック・マンデー、1990年のバブル崩壊、1997年のアジア通貨危機、2001年ごろのITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショック、今回の中国経済危機といった具合である。
そこで、指摘したいのが、今回の中国発の経済危機の特色だ。「経済統計が出鱈目」とされてきた中国固有の問題が重なって、従来のどの経済危機より実態が掴みにくく、不安を増幅しているということだ。
こうしたケースでは、事態を収束させるために、通常のケース以上にきめ細かいディスクロージャー(情報開示)が必要になる。
ところが、中国政府は、不用意に海外からの取材記者の受け入れを大幅に制限するという、真逆の対応を打ち出してしまった。
これでは、市場が抱く疑心暗鬼が増幅されてしまい、事態がさらに悪化するという悪循環に陥りかねない。
■稚拙な対応
一方、これまでに報じられた、中国当局によるG20対応の内容の稚拙さは、目を覆いたくなるようなものだ。
その第1が、国営新華社が20日付で「正式決定」と伝えた、証券監督管理委員会の肖鋼主席の更迭だ。
昨年夏から繰り返し急落した中国株市場の混乱の責任を問うたもので、相場急変時に取引を強制終了する「サーキットブレーカー」制度が混乱を増幅した事態のけじめをつけさせたという。
だが、問われているのは、中国経済の実態そのものであり、実態を映す鏡に過ぎない株式相場を力づくで安定させようとすること自体が、危機対応の経験不足を裏付けるものと言わざるを得ない。
第2が、各国の構造改革を相互に評価する仕組みの構築を、中国当局が議長国として提案しようとしているという話だ。そうすれば、「市場混乱の原因」として、中国が矢面に立たされる事態を回避できると考えているという。
だが、そうした逃げの姿勢では、世界の投機筋から中国が引き続き標的にされかねない。
残念だが、冒頭の取材規制や予想される無策が災いして、もはや、今回のG20財務相・中央銀行総裁会議で大きな成果を期待するのは難しくなっている。G20後は、折に触れて、市場が急落を繰り返しても何ら不思議のない時期に突入することになる。中国政府の責任は重大だ。
今年9月に、同じ中国の浙江省杭州で開催が予定されている、G20首脳会議に向けて、仕切り直しを模索すべきだろう。
■金融市場の混乱をこれ以上放置するな
中国問題は深刻さを増している。不良債権の温床とされる理財商品の市場規模はすでに1.7兆ドルとされ、リーマン・ショックの引き金になったサブプライムローンの当時の市場規模(1.4兆ドル)を大きく上回っている。
製造業では、鉄鋼でピーク時に日本の8〜9倍と言われた過剰生産設備の償却が進んでいない。
造船業でも、上場造船8社のうち売上高で4位につける「江蘇舜天」がようやく先週、上場造船会社として初の法的整理を申請、破産手続きに入ったものの、同社は2015年9月末の負債総額が83億元(約1500億円)、債務超過額が約5億元に達していた会社だ。構造改革の遅れは目を覆いたくなる状況だ。
煽るつもりはないが、かつてのアジア危機の際のような資本の逃避の再発が、絵空事と言い切れなくなっている。現在はまだ世界一を誇るとはいえ、中国の外貨準備は1月末に3.23兆ドルと、ピークだった2014年6月末に比べて2割も減った。
それゆえ、G20の財務相、中央銀行総裁会議で、最も協調導入が期待されているのが、中国からの資本流出をこれ以上顕在化させないための規制策の導入だ。
日銀の黒田総裁も、1月のダボス会議で、中国を念頭に「為替相場の安定性を維持しながら必要な金融政策を進めるためには、資本規制を行うことに一定の合理性がある」と訴えた。また、日銀は、中国との間で、金融危機の際に米ドルなどを相互に融通し合う通貨交換協定の復活について「現在、中国との間で対話中」(黒田総裁)である。
加えて、G20では各国が、それぞれ努力して国情に応じた成長維持をコミットすることが期待されている。中国については、出鱈目とされる経済指標を整備して不良債権や過剰生産設備の実情を開示したうえで、数年計画できちんと解消する道筋を示すことが求められているのである。
また、新興国や産油国は世界的な資源安への対応、欧州は金融危機という古傷からの早期脱却、米国は急ぎ過ぎた利上げ路線の見直しが不可欠になっている。
年初から続く世界的な金融市場の混乱をこれ以上放置するのは、無責任だ。
日本は、今年、5月に伊勢志摩サミットを開催するG7議長国である。
今回の失態によって中国がG20議長国として機能しないことが明らかになった以上、日本はG7主導の国際協調を実現するため、指導力を発揮する責務がある。それは、古参の経済大国の使命でもあるはずだ。
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