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マイナス金利反対派は、銀行の利益代弁者と金融政策への理解が不十分な人たちである
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160219-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 2月19日(金)12時20分配信
日本銀行は1月29日、マイナス金利を導入することを決めた。具体的には、日銀の当座預金を3段階に分け、それぞれの階層に0.1%、0%、▲0.1%を適用する。
日銀が当座預金に付利したのは、2008年10月からの補完当座預金制度である。導入時は、補完貸付制度の金利がコールレート(金融機関同士の短期資金貸借市場における金利)の上限、当座預金の金利がコールレートの下限という意味があった。もっとも、当座預金の付利は「市場機能への配慮」と表現されており、銀行の収益確保という側面があった。
その直後、FRB(米連邦準備制度)の事実上ゼロ金利を受けて、コールレートの誘導金利は0.1%まで下がった。その時点で、日銀当座預金への付利について、金融政策上の意味はなくなり、銀行への支援(お小遣い)だけになったと筆者は思った。しかも、導入時に「臨時かつ時限的な措置であること」とされていた。
日銀当座預金への付利0.1%は、金融緩和効果を減殺してきたので、これまでも問題になっていた。日銀は黒田東彦日銀総裁の前任である白川方明総裁時代、国債買いオペの対象は中短期債であった。金融機関は低利の中短期債を日銀に売却して、その代わりに日銀当座預金で運用しているという状態だった。
日銀による国債買いオペとは、そもそも日銀が金融機関から国債を取り上げて、その代わりに収益ゼロのキャッシュを与えて、金融機関はキャッシュのままでは収益が上がらないので、収益を稼げる貸出や株式への投資を促そうというものだ。そのためには、当座預金への付利が障害だった。
マイナス金利の賛否については、銀行への支援(お小遣い)を重視する人は反対し、デフレ脱却のために金融緩和を重視する人は賛成する。
●日銀政策決定会合での議論
それがはっきり出たのが、1月28、29日の日銀金融政策決定会合における採決だった。賛成は、黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員。反対は、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員。白井委員は学者出身であるが、石田委員、佐藤委員、木内委員は民間金融機関出身である。賛成に民間金融機関出身者はいない。賛成委員は黒田体制になってからの任命、反対委員は前の白川体制での任命である。会合における議論の内容が公表されたので、委員がどのような問題意識を持っているのかを解説しよう。
まず、賛成委員の意見としては以下がある。
「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』は、イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れと合わせて、予想実質金利を一層引き下げる効果を発揮する」
これは、量的緩和を正確に理解している。実は量的緩和の本質はシニョレッジ(通貨発行益)であり、政府紙幣の発行と同じだ。現在の日銀当座預金への付利はシニョレッジを減少させている。これをマイナス金利にすれば、シニョレッジの増加になり、ひいては予想インフレ率の上昇、予想実質金利の低下になる。
また、「日銀当座預金全体ではなく、一定額以上にマイナス金利を適用するという階層構造方式によって、金融機関への過度の負担を避けつつ、金融緩和効果を強化できる」という意見もあった。これは、金融機関への配慮であり、マイナス金利に反対するなという意味だ。
一方、反対委員の意見は以下である。
「量的・質的金融緩和を補完するための措置の導入直後のマイナス金利導入は、資産買入れの限界と受け止められるほか、複雑な仕組みは混乱・不安を招くリスクがあり、かえって、金融緩和効果を減衰させる惧れがある」
これは、日銀金融政策委員としては情けない意見だ。マイナス金利はすでに海外で導入されているので、きちんと勉強している金融関係者なら理解している。よくわからないから反対というなら、日銀政策委員の資質を欠いている。
次のような反対意見もあった。
「マネタリーベース増加目標維持とマイナス金利導入は論理的整合性に欠ける。……マイナス金利は実体経済への効果の割に市場機能や金融システムへの副作用が大きく、効果と副作用のバランスを欠く」
付利されたマネタリーベースではシニョレッジが少なくなる。この点から、この委員は量的緩和を正確に理解していない。それに、意味不明な「副作用」である。これは金融機関の収益が減るということなのに、恥ずかしくていえないのだろう。この委員は、単なる金融機関の利益代表にすぎず金融政策の理解も不十分なので、日銀金融政策委員に不適格だ。
●反対者は金融機関の既得権を優先
最新の日銀の資金循環勘定に基づき、預金取扱機関と保険・年金基金のそれぞれについて、資産項目を現預金、貸出、国債、その他有価証券等、対外投資等、その他に分けてみよう。
預金取扱機関で、現預金が403兆円と、全体の資産1826兆円のうち22%を占めているのは驚くほかない。このうち日銀当座預金は250兆円である。この数字の異常さは、保険・年金基金の現預金は23兆円で全体の資産594兆円のわずか4%であるのと比べると一目瞭然だ。
マイナス金利は、金融機関のポートフォリオを改善できるので、賛成者はそれを進めようとする。一方、反対者は金融機関の既得権を守ってポートフォリオの改善には消極的である。
あるマスコミの人にいわれたが、ほとんどの識者はマイナス金利に反対らしい。反対する多くのエコノミストや学者は、在籍する企業の親会社が銀行だったり、金融業界とつながりがある。
マイナス金利は、欧州では古くから採用されている。欧州の銀行がどうかといえば、マイナス金利になっても、貸出レートは十分に利ざやを取れるものになっていて経営面で問題が生じているという話はあまり聞かない。
欧州の銀行で問題ならずに、日本の銀行だけで問題になるとは奇妙なものだが、もし日本で銀行の経営問題になったとしても、種々の仕組みがあるので、預金者、取引先企業、銀行労働者にはあまり迷惑がかからない。
実際、筆者はいくつかの地方銀行救済に従事したことがあるが、銀行はなくならずに、銀行経営者が交代するケースがほとんどだった。こう考えてくると、マイナス金利に反対する人は、銀行経営者だけを守る人になってしまう。それでいいのだろうか。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)
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