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コラム:マイナス金利、20の疑問(下)=河野龍太郎氏
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/646.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 2 月 18 日 01:10:50: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


「コラム:マイナス金利、20の疑問(上)=河野龍太郎氏(ロイター)」
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/602.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 2 月 16 日 19:33:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU

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FX Forum | 2016年 02月 17日 21:53 JST
コラム:マイナス金利、20の疑問(下)=河野龍太郎氏

[東京 17日] - 黒田日銀はどこまでマイナス金利を拡大するのか。マイナス金利政策は日本経済にいかなる影響を与えるのか。パート1に続き、疑問に答える形で日銀の金融政策のリスクを分析する。

<マイナス金利政策が消費増税先送りを助長する恐れ>

Q11)さらなる付利引き下げのタイミングは。

日銀は当面、マイナス金利政策導入の市場への浸透度合いやその副作用を見極めようとする。よほどのことがなければ、次回3月の決定会合で追加緩和に向かうことはないだろう。

しかし、筆者は、国際金融市場の動揺がいずれ追加緩和を余儀なくさせると考えている。仮に国際金融市場が小康を得るなら、国内均衡の観点から利上げが必要と考える米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに向かうだろうから、安定してもそれは一時的で、動揺はすぐに再燃する。ドルベースの過剰債務、過剰ストックを抱える新興国や資源国は、ドル金利の上昇には耐えられない。中国についても米国の利上げがもたらす、さらなるドル高には耐えられない。

一方、FRBが完全に利上げを中断することがあるとすれば、それは、米国経済が後退リスクに直面するケースである。中国の人民元問題は落ち着くかもしれないが、今度は米国の後退リスクそのものが国際金融市場の新たな動揺を招く。

いずれにせよ、円高圧力が一段と高まれば、政権からプッシュされ、副作用が大きい政策しか残っていないとしても日銀は静観するわけにはいかないだろう。不確実性は大きいが、今年6月会合で付利を20ベーシスポイント(bp)引き下げてマイナス0.3%へ、来年にも20bp引き下げてマイナス0.5%にすると予想している。

Q12)効果不足を理由にマイナス金利を中止することはないのか。

その可能性は小さい。リフレ派の論理からすれば、円高になり、株価が下落しているのは、副作用のせいではなく、金融緩和が足りないからということになるはずである。「効果が現れないのは、金融緩和が足りないから」というのが、彼らの口癖だった。もし黒田日銀体制の考え方がリフレ派理論に基づくものなら、付利の引き下げは効果が現れるまで継続されるだろう。

結局、量的・質的緩和(QQE)と同様、大きな効果が得られないまま、その限界に達するのではないか。もちろん、日銀がリフレ派に占拠されていないとしても、大衆民主主義の下で、中央銀行は有効な手段が尽きてしまったとは簡単には言えないから、副作用が多少大きくても、限界まで政策が追求される可能性が高い。

ただ、副作用は決して小さくないのだから、政策に限界はないと強弁するのではなく、中央銀行は魔法の杖を持っていないと、そろそろ真実を語るべきだと筆者は考えるが、どうだろう。

Q13)さらなる付利下げは賛成票を得られるか。

1月会合での決定は、5対4というギリギリの票決だったが、マイナス金利導入に反対した委員のうち、白井委員は3月末に、石田委員は6月末に任期満了を迎える。意見の多様性を求める委員会制の本来のあり方からは望ましいとは言えないが、政治的には黒田総裁を支持する人が後任に選ばれるのだろう。

ただし、石田委員はいわゆる「銀行枠」であって、後任もメガバンク出身者だとすれば、その委員が銀行業績に悪影響をもたらすさらなる付利の引き下げを積極的に支持するとは考え難い。次回以降の票決は6対3となるのだろうか。あるいは、銀行枠が一時凍結されるのだろうか。

Q14)どこまで付利を引き下げるのか。

上述したように、マイナス金利は、金融機関の収益にダメージを与え、信用仲介機能を毀損する恐れがあり、マイナス幅が大きくなればその危険性は高まる。また、あまり大幅なマイナスにすると、現金保有を助長するに終わり、金利押し下げ効果が減殺される。現金への選好が強まれば、強い景気抑制効果が現れる。このため、中央銀行は、付利をどこまでも引き下げられるわけではない(理論上、制約の1つは現金にマイナス金利が付かないことである)。

日銀は1月末の政策決定に際し、自らがまとめたQ&A方式の文書で、スイスがマイナス0.75%、スウェーデンがマイナス1.1%、デンマークがマイナス0.65%まで引き下げていることを紹介し、少なくともマイナス1%程度までの引き下げ余地があることを匂わせた(2月11日にスウェーデンはマイナス1.25%への引き下げを決定している)。

しかし、欧州中央銀行(ECB)の大規模緩和によるユーロ安・自国通貨高に翻弄される周辺の小国と、経済規模が大きく、かつ実質実効為替レートが歴史的低水準にある日本とを同列に扱うべきではない。日銀が深いマイナス金利へと踏み込んで行けば、通貨戦争を激化させる恐れがある。うまく行く場合でも、結局、国際資金フローに大きな歪みをもたらし、金融的不均衡が蓄積されるリスクがある。

Q15)黒田日銀総裁のサプライズ重視策は有効か。

黒田総裁はサプライズを好む。しかし、理論的にサプライズを重視する政策は、政策の予見可能性を低下させ、資産市場のボラティリティーを高め、政策効果を削ぐため、全くの逆効果である。

1980年前後にマクロ経済学を学んだ政策当局者の一部に、「合理的期待」の政策インプリケーションを誤って解釈し、事前に織り込まれた政策は効果がなく、サプライズ政策のみが有効と勘違いする人が存在していた。事前に織り込まれる過程で、政策効果が広がり、政策実行の際には、すでに全てが資産市場に織り込まれているのを効果がないと勘違いしたわけである。

実際には、政策当局が政策ルールを明確にした上で、景気物価の情勢判断や見通しを示し、それを元に市場が政策当局の意図を的確に読み取り、将来の政策経路が資産価格に織り込まれれば、政策効果をより高めることができる。逆に中央銀行総裁の発言を信頼しない人が増えれば、政策効果は減殺される。

Q16)マイナス金利導入の財政への影響は。

上述したように、マイナス金利導入の実体経済へのプラス効果は、極めて限定的だが、1つ確かな効果は、政府の借入コストを一段と引き下げることである。

2月9日に10年国債金利は初のマイナス圏に突入し、政府にとって追加的な借入コストはゼロないしゼロ未満という状態になった。議会制民主主義の下で、政治的な財政膨張が生じた場合、唯一の膨張の歯止めになるのは長期金利の上昇だが、日銀の極端な金融緩和でこうした警報装置は全く機能しなくなっている。政府の資本コストがゼロ以下まで限界的に下がったことで、政治家は財政に対する市場からの信認と好意的に受け止め、結果的に財政規律はますます弛緩するだろう。

成長期待の低下から資本コストが低下しても民間支出は簡単には刺激されないが、便益を受ける世帯と返済を負担する世帯が異なる公的支出の場合、決定主体である政治は資本コストの低下に敏感に反応する。世界経済の先行きへの下振れリスクが大きく高まっていることを大義名分に、10%への消費増税(17年4月)が再度先送られる可能性も十分に考えられる。

金利が上がるリスクがますます小さくなったと判断されれば、人々に痛みをもたらす増税は、政治的に先送りされやすい。QQEに続き、マイナス金利政策を採用したことが、またしても消費増税の先送りを助長する恐れがある。

Q17)マイナス金利政策は「金融抑圧」の一形態か。

日本経済の最大の問題は、人口動態に根差した公的債務の膨張である。人口ボーナス時代に作られた財政制度、社会保障制度の改革が人口オーナス時代になっても先送りされているから、財政赤字(構造的財政赤字)が改善しないのである。

安倍政権は、増税や社会保障関係費カットなどの財政調整ではなく、成長を高めることで公的債務問題を解決することを志向しているが、現実には潜在成長率を大幅に引き上げるのは困難であり、安倍政権の掲げる2%の潜在成長率の達成は現実的ではない。

筆者は、アベノミクスの帰結は、その意図は別として、金融抑圧に堕し、インフレタックスによる公的債務の圧縮につながると考えていた。ただ、当初からそのリスクを意識してはいたが、外部環境の悪化で、当面はインフレの引き上げが困難になっている。しかし、インフレがさして嵩(こう)じなくても、金利が一段と低下すれば、公的債務の負担は軽減できる。結局のところ、公的債務がこれだけ膨張している中で、財政調整を選択せず、インフレタックスによる実質的な公的債務圧縮も困難なら、金利をさらに引き下げるしかない。

つまり、今回の日銀によるマイナス金利の決定は、金融抑圧政策の文脈の中で、捉えておく必要があるだろう。財政調整が選択されず、過大な公的債務が存在する中で、グローバルな環境がインフレ的である場合にはインフレタックスによって、グローバル環境がデフレ的である場合にはマイナス金利によって、実質公的債務負担が削減されていくということなのだろう。

<ソフトランディングにはG4による第2プラザ合意が不可欠>

Q18)各国からの批判が日銀追加緩和のハードルにならないのか。

一段の付利下げのハードルとなり得るのは、米国や中国などからの日銀の実質的な円安誘導への批判の高まりかもしれない。もし、世界経済全体のソフトランディングを図ろうとするなら、FRBが利上げを当面中断する一方、日銀やECBも追加緩和を控え、ある程度の通貨高を受け入れることが望ましい。

しかし、ECBも3月に追加緩和に向かうことがほぼ確実な情勢であり、近い将来、そうした国際協調政策が採られる可能性は高いとは言えない。

むしろ、筆者が強く懸念しているのは、日銀やECBのマイナス金利政策の追求が中国の人民元の大幅切り下げを誘発することである。中国政府は、日銀やECBが通貨戦争を激化させた結果、自らが人民元の大幅切り下げに追い込まれたと主張するのではないか。

Q19)国際協調政策は機能しないのか。

世界経済のジレンマは、米中の二大経済大国が自国の国内均衡を優先した政策を追求すると、国際経済や国際金融市場に大きな緊張ないし大きな動揺をもたらすことである。

国内均衡を目指し米国が利上げを続ければ、バブル崩壊による過剰債務を抱える新興国、資源国の調整は困難を極め、同時にドル高進展が人民元問題を深刻化させる。国内均衡を目指し中国が人民元の大幅切り下げを行えば、世界経済に大きなデフレ圧力を撒き散らす。ソフトランディングを図るのなら、第2プラザ政策として日米欧中の「G4」による国際協調政策が不可欠である。

具体的には、前述したように、1)FRBの利上げの中断、2)日銀とECBの追加緩和の自制と、ある程度の通貨高の甘受、3)中国の人民元の大幅切り下げ回避と資本規制のもとでの緩やかな人民元切り下げ、4)追加財政による通貨高の悪影響の吸収、などが協調政策として必要となる。

ただ、対外要因で国内政策を縛られることを各国の中央銀行は強く嫌う。よほどの大混乱が事前に生じなければ、国際協調政策は実現しないのではないか。国際協調政策が取られる蓋然性は30%程度にとどまると考える。

Q20)国際協調政策の副作用は。

仮に国際協調政策が採用される場合、世界経済がソフトランディングに向かうとしても、それで全ての問題が解決されるわけではない。国内均衡と矛盾した政策が取られることで、米中では新たな不均衡が生じるリスクが高い。

世界的にディスインフレ傾向にあることを前提にすると、米国では緩和継続による過剰流動性が株式市場、住宅市場に流れ込み、新たなバブルが生まれる可能性がある。日欧のマーケットでもそうした動きが観測される可能性がある。

中国については、追加財政で景気が支えられるとしても、それによって資源配分が歪み、潜在成長率の低下に歯止めがかからない恐れがある。人民元の大幅切り下げを回避するための資本規制も、当然にして市場規律を損なう。

マクロ経済のボラティリティーを抑えるべく、ソフトランディングを志向することは政策的に妥当だが、あくまで時間を買うに過ぎない。国際協調政策を模索する動きも出てきたが、ソフトランディングを好感し各国の株価が上昇すれば、政策当局がそれに慢心して必要な改革が進まず、中長期的にはさらに大きな問題を抱え込むのがこれまでの経験だったことを肝に銘じておくべきだろう。

*前編はこちらです。
「コラム:マイナス金利、20の疑問(上)=河野龍太郎氏(ロイター)」
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/602.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 2 月 16 日 19:33:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-ryutaro-kono-boj-idJPKCN0VQ07O?sp=true

 

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コメント
 
1. 2016年2月18日 01:41:29 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[281]

マイナス金利政策が問題の一因か
スコット・A・ マザー

景気刺激とインフレ率の押し上げという点で、マイナス金利政策の効果は次第に低下していますが、政策立案者は、この政策が経済および市場に与えるリスクを著しく過小評価している可能性があります。
マイナス金利政策は、ここ数ヵ月の金融市場の不安定化の一因であり、世界的な金融状況の引き締めにつながるかもしれません。
さらにマイナス金利政策は課税と同様の効果もあり、貯蓄者や投資家は低い利回りで将来に備えることを与儀なくされます。
世界各国の中央銀行はマイナス金利政策の実験的な導入へ傾斜を強めていますが、その効果は不透明で、現状では金融市場を動揺させているように見えます。

当初、政策効果が不透明であり、担保価値を損なう恐れがあるとしてマイナス金利政策には否定的でしたが、2014年には欧州中央銀行(ECB)が、先月には日本銀行がマイナス金利を導入し、デンマーク、スウェーデン、スイスの中央銀行の仲間入りをしました。今では、米連邦準備制度理事会(FRB)まで、政策の可能性を探る段階を超えて、マイナス金利導入に備えているように見えます。(一例を挙げると、1月末に公表されたFRBが想定する2016年の銀行のストレステストには、「最悪のシナリオ」として、米国債の短期物の利回りが−0.5%にまで低下するシナリオが含まれていました。)

いまや多くの中央銀行がマイナス金利政策を実行する能力と意思を持っていることは明白ですが、この政策の景気刺激とインフレ押し上げ効果は甚だ不透明です。むしろ、政策立案者は、この政策の経済的リスクを著しく過小評価している可能性があります。

ニュー・アブノーマル
中央銀行は、マイナス金利政策があくまで伝統的な金融政策の延長線上にあることを印象づけようとしているように見えます。「ノーマル」な金利サイクルでは、中央銀行は名目金利と(インフレ調整後の)実質金利を押し下げるために政策金利を引き下げます。最終的な狙いは、債務者の負担を軽減し、投資のハードル・レート(最低収益率)を引き下げることにあります。そこには、金利が低下することは(マイナス金利ですら)常に景気刺激的であり、金利が上昇することは常に景気を抑制する要因になるとの考えがあります。しかしながら、金利が低下し、その状態が長期化すると、リスクが急激に高まる恐れもあります。

史上初の事態であるため、事実に基づいて反証するのは困難ですが、景気刺激とインフレ率の押し上げ、あるいは将来の成長率やインフレ率の期待の押し上げという点で、これまでのところマイナス金利政策の目立った効果はないように見えます。むしろ金融市場では、こうした実験的な動きは苦肉の策以外の何物でもなく、金融・経済の安定性を損ないかねないとの見方が増えているように見えます。

金融市場を動揺させかねないマイナス金利政策の負の外部性とは、どのようなものなのでしょうか。

市場
少なくとも、ここ数ヵ月の金融市場の不安定化の一因はマイナス金利政策にあると言えます。そして、中央銀行の現在のドグマに反し、マイナス金利政策は、むしろ世界的な金融状況の引き締めにつながる可能性があります。マイナス金利政策によって国債の利回りが低下するのは間違いなく、これ単独では金融状況の緩和を示しますが、金融状況全般については逆の影響を引き起こしている可能性があります。具体的には、クレジット・プレミアム、株式のリスク・プレミアムが拡大し、ボラティリティが高まり、ストレスの高まった銀行システムからの信用が受けにくくなっている可能性があります。

さらにマイナス金利政策は、目標インフレ率に対するリターンの期待を高めるどころか、金融資産に織り込まれているインフレ期待を低下させる方向に作用する可能性があります。そもそも名目の国債利回りは、予想されるインフレ調整後の「実質」利回りと、期待インフレ率の2つの要素に分解することができますが、2つの正確な比率は科学的に決められているわけではなく、個々の投資家が自身で判断することになります。政策立案者は、利回りの低下分がすべて実質利回りの低下を示すものであり、インフレ期待を反映した名目利回りの低下を示すものではないことを願っているのです。

しかしながら、これは現実的だとはいえません。政策金利をマイナスにした結果、名目の利回りが低下する場合、その一部は実質利回りの低下から期待インフレ率の低下へ波及すると考えられます。中央銀行がこれをコントロールすることはできません。このプロセスは、そもそも正確なものではないのです。マイナス金利政策と名目の利回りの低下は、結果的に中期から長期のインフレ期待を抑えてしまう可能性があり、これは、インフレとインフレ期待を目標に近づけるという、中央銀行の政策目標と真っ向から対立するものです。

加えて、マイナス金利政策は、ポートフォリオの投資判断を通じて金融システム全体のリスク回避傾向と不確実性を高める可能性があります。金利がゼロないしマイナス圏に突入することで、実は「最も安全」な資産であるはずの国債や高格付け債のリスクが高まっているのです!利回りがマイナスに押し下げられたため、これらの債券を仮に満期まで保有し続けた場合、損をするのは確実になります。これは要するに、無リスクとみられる国債や高格付け債が金融システムから除外され、よりリスクが高い、期待リターンがマイナスの資産に取って代わられていることになるのです。こうした状況を受けて、インカムの損失を穴埋めするため、一部の投資家はより多くのリスクを取る可能性もありますが、それ以外の投資家は確実にリスクの引き下げを迫られるでしょう。

マクロ経済への影響
マイナス金利政策は、いわゆる通貨戦争を再燃させており、通貨の水準とボラティリティに多大な影響を与えています。競争力を確保するため自国通貨の上昇を抑える近隣窮乏化政策は、保護主義と国家主義的な政策への回帰を加速させる恐れがあり、これは世界経済成長のマイナス要因になります。

またマイナス金利政策には、金融システムに与える悪影響もあります。銀行の利ざやが縮小し、その収益性の低下から債務と株式のスプレッドが拡大するので、資本コストが上昇します。銀行はこうしたコストを消費者や企業に転嫁しようとします。その結果、信用を引き締め、貸出金利を引き上げることになり、それが経済成長の重石となります。保険会社や年金基金も、ポートフォリオの将来の利回り低下で、保険契約者や年金受給者へ約束した利回りを実現することが難しくなるため、ストレスにさらされます。

最後に、マイナス金利は課税と同様の効果もあり、貯蓄者や投資家は低い利回りで将来に備えることを余儀なくされます。そうなれば貯蓄率が引き上げられ、当面の景気をさらに悪化させる恐れがあります。

マイナス金利政策に代わるもの
以上を要約すると、中央銀行の政策手段としてのマイナス金利は、景気の刺激とインフレ率の押し上げという点で効果を失いつつあり、一般に認識されている以上に金融システムのリスクになる可能性があります。よりノーマルな政策金利への回帰で、よりノーマルな経済とノーマルなインフレ期待への回帰を促す方が望ましいと言えるでしょう。

すぐにはそうならないとしても、(例えば、クレジットと株式を対象にした資産買い入れや、インフレ目標の引き上げなど)クレジットと株式のリスク・プレミアムを直接引き下げることにより、金融状況の緩和に重点を置いた金融政策の方が、コストとリスクが未知数で、これまでのところプラスよりマイナスの影響が大きいゼロ金利政策よりもはるかに効果的だと言えるでしょう。

ピムコジャパンリミテッド
https://japan.pimco.com/JP/Insights/Pages/Negative-Interest-Rate-Policies-May-Be-Part-of-the-Problem.aspx

 


マイナス金利 低く留まる当座預金への適用対象(大前研一)

【日銀】マイナス金利 導入当初は適用対象10兆円 〜日銀〜

 日銀は3日、金融機関が日銀に預ける当座預金へのマイナス金利の適用対象が、16日の導入当初は10兆円程度になる見通しを示しました。対象が狭くても市場での金利はマイナスに向かうと判断したものです。
 いわゆるマイナス金利効果は、円高と株安でどこかへ消えてしまい、バズーカではなかったということです。日銀の当座預金残高は250兆円あり、そのうち10兆円だけマイナス金利で、全体がそうなるわけではないのです。

 全てがマイナス金利なら話は違いますが、10兆円か、多くても30兆円というのでは、発表に値しないくらいの微細なことではないでしょうか。それでも預金金利まで下げた銀行が幾つかあり、こんなのは犯罪だと叩きのめさないといけませんが、安倍首相はやっていません。これは大山鳴動して何も出てこなかったという典型的な例だと言えます。
【中国】4カ月で10地域が最低賃金を最大3割引き上げ
 日経新聞は2日、「減速中国、賃金は上昇続く」と題する記事を掲載しました。景気の減速にもかかわらず、中国10の省や直轄市が、1月までの4ヶ月間で最低賃金を最大3割引き上げたと紹介。労働力人口の減少で働き手が不足している上、中央政府が国内の不満を抑えようと地方政府に賃上げを迫っていることが要因です。
 こうしたこともあり、人民元は弱くしなければ輸出競争力がないのです。広東省の東莞などはもうほとんど空っぽになってしまいました。深圳もそうですが、台湾企業が多くなっています。今話題になっているホンハイも深圳で大きくなった企業ですが、たまらず成都に主力を移しました。

 結局、中国は人件費をこうして人為的に上げていくので、最低賃金の推移を見ると2006年からすでに4倍にもなっているのです。地域によって差があり、成都あたりへ行けばまだなんとかなると言われていますが、それでもまた同じようなカーブで賃金は上昇していきます。しかも、地方政府も中央北京も、人民を喜ばせるためには人件費を上げるのだと動いているのです。それによって、ソロス氏ではありませんが、本来なら為替の方を調整しないといけないわけですが、人民にとって為替はそれほど関係がないので、賃金が上がっているとぬか喜びをするわけです。
 しかし実は、人民元が弱くなれば輸入品の価格も上がるのです。それでも見かけの給料が上がった方が喜ぶということならば、賃金一本に絞って、人民元の方はフロートにし、管理をやめるくらいのことをしないといけないのです。私はそれで1ドル=12元くらいというのが輸出競争力を維持する水準だと言っているのです。すでに逃げてしまった企業は無理ですが、今苦しんでいる企業をなんとか救済してあげることは可能なのです。
 ただ、あと3年もすればもう誰もいなくなるでしょうし、その時はもう手遅れということになると思います。また、その受け皿として、ベトナムが良いのか、ミャンマーが良いのかという議論がありますが、広東省だけで6000万人なので、タイやベトナム、ミャンマーなどはとても中国全体の受け皿にはなれないのです。人口だけで言えばバングラデシュは1億5000万人ほどいるので何とかなりますが、インフラが全くないので難しいのです。中国の受け皿として間に合うようなところはなかなかないのが現状です。
 また、中国の場合には腐敗がひどいと言われていますが、その点は進出した会社にとってはあまり関係がありません。進出した会社はやりたいことを言えば、交渉は表向きストレートに進むのです。しかし一方、ベトナムやミャンマーなどでは、裏の方から進出した会社に対して認可を早く取るので、これをくださいなどという話になるのです。中国の場合には我々もストレートに進めることができ、薄々は裏の動きが見えるものの気にする必要はありませんでした。それで中国には皆気持ちよく進出して行ったのです。
 フィリピンは今はかなりよくなりましたが、マルコスの時代にはマルコスの使いが来て、次にイメルダの使いが来る、そして25%乗せろなどという感じでした。バングラデシュやタイは比較的少ないものの、ミャンマー、ベトナムはひどい状況になってきています。そうした意味で中国は、自分たちの中でやっているだけなので、入ってきた者も一緒に犯罪に引きずり込むようなことは少ないと言えます。
【イタリア】不良債権の証券化で合意 〜伊政府、欧州委員会〜
 イタリア政府とヨーロッパ委員会はこのほど、銀行の不良債権処理に向け、債権を証券化することで合意しました。イタリアの金融機関は債務危機まで健全経営を維持してきましたが、不況の長期化により不良債権が増加。処理に追われる銀行の貸し渋りで景気が低迷する悪循環に陥っており、これを改善し経済の回復につなげたい考えです。
 イタリア経済は日本の半分ほどの規模ですが、45兆円の不良債権があります。欧州各国の不良債権比率を見ると、キプロスは論外ですが、スロベニア、アイルランドなどは20%を超え、かなり深刻な状況です。それとほぼ同じような水準でイタリアの不良債権比率も高くなっています。イタリアはギリシャ危機の時に、ポルトガル、スペインとともに騒がれました。

 その後、スペインは大分後退し、今ではオーストリアよりも不良債権比率は低くなっています。しかし、ポルトガル、イタリアはまだ高く、連鎖反応する可能性があるという状態です。イタリアが燃えてしまうと経済が大きいのでヨーロッパとしては手が付けられなくなることから、債権を証券化しても良いということにしたのです。そうすることで貸し渋りを改善し、経済が回るようにしてあげるということが狙いです。
 不良債権は、結構良い利率で証券化するとそれを買ってくれる人がいます。イタリアそのものが破綻するということになればリスクは100%になりますが、ギリシャの時もそうでしたが、やはり今は金利が下がっているので、5%から10%くらいの利回りで動くとなると買う人がいるのです。
 もちろんリスクはありますが、EUがイタリアを絶対に破綻させないと覚悟を決めれば、ただ単に金利の高いおいしい商品ということになり、金持ちの中には、ごく一部そういうものを入れる人が出てきます。10%くらいなら確実に入れ、5%くらいから組み込んでくると思うのです。そうしたことから、証券化を欧州委員会が承認してやったわけですが、イタリア問題に火が付かないようにするための苦肉の策とも言えます。

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座  学長
大前 研一

2月7日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

その他の記事を読む

日銀のマイナス金利導入決定(大前研一)

http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160217-2/ 


 

本田内閣官房参与:中国のハードランディング、可能性が高い
2016/02/17 20:32 JST
    (ブルームバーグ):安倍晋三首相の政策ブレーン、本田悦朗内閣官房参与は、中国がハードランディングに陥る可能性が高いとし、中国経済は厳しい調整期を経る必要があるとの見方を示した。
本田参与は16日遅くに東京都内でインタビューに応じ、中国経済は供給過剰の状態にあり需給の調整は衝撃をもたらすと想定され、「ハードランディングの可能性が高い」と語った。中国では自国通貨安定のために金融政策が利用されており、「量的緩和に向け金融政策を使うことができない」ため、問題はさらに深刻だとも指摘した。

本田参与は人民元の変動相場制採用を促し、そうしなければ中国経済は供給過剰の問題でかなりの期間、苦しむことになるだろうと述べた。「中国の経済ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)が良好だとは本当に思えない」とし、中国は大規模な構造改革を実施する必要があると語った。

原題:High Chance of China Hard Landing, Says Adviser to Japan’s Abe(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net
更新日時: 2016/02/17 20:32 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2OTQP6S972S01.html


人民元安に賭ける投資家、重要なのはタイミング
中国に極めて悲観的なヘッジファンド
2016.2.18(木) Financial Times
(2016年2月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

人民元と円の直接取引、6月1日から開始 安住財相
多くのヘッジファンドが人民元安に賭けている〔AFPBB News〕
映画「マネー・ショート:華麗なる大逆転」は、住宅バブルの資金供給に使われた債務証券の値下がりに賭けるヘッジファンド・マネジャーを中心に展開する物語だ。その主人公が抱えるジレンマが、香港の同業者の心の琴線に触れている。

2008年の世界金融危機に至った実際の出来事をベースにしたこの映画に、中国の人民元が今後数カ月でどこまで下落するかを予測しているヘッジファンド・マネジャーたちが共感を覚えているのだ。

2月初めにゴールドマン・サックスが開いたマクロ・コンファレンスの会場の片隅で、顧客であるヘッジファンドの社員とゴールドマンのトレーダーたちが人民元相場について意見交換をしていた。現在は1ドル=約6.57人民元だが、これが同8人民元に下がるまでどれぐらい時間がかかりそうか、というテーマだ。

また、多くのプライベート・エクイティ会社幹部が人民元のヘッジを始めている。以前は、投資先の中国企業の人民元建て売上高をわざわざヘッジしたりはしなかったが、今日では高いコストを払ってでもやろうとしているのだ。

オルタナティブ投資の運用責任者はほぼ全員、中国の経済と株式市場の今後について容赦ないほどに弱気である。人民元については、それに輪をかけて悲観的だ。しかし彼らは、最高に優れたファンダメンタル分析を手にした投資家であっても、売買のタイミングを間違えれば破産しかねないということも承知している。

中国人民銀行の意図は何か?

ゴールドマンのコンファレンスにおける会話の大半は、中国人民銀行の意図についてのものだった。投資家の間では、輸出業者は比較的早い時期にオフショアのドル建ての売り上げを国内に持ち込まざるを得なくなるとの予想が非常に多い。中国の貿易黒字は膨らみ続けているが、その一方で外貨準備高は減ってきており、輸出業者は明らかにドルを外国で蓄えているからだ。

中国の銀行は法人顧客に対し、顧客が今年受け取るドルは前年よりも減る見通しだと伝えている。金利がいよいよ高くなるドル建ての借り入れを返済するためのドルについても同様だという。

中国の外貨準備高は1月だけで995億ドル減少した。2014年6月のピークから累計で7700億ドル減った計算だ。昨年12月の実績と合わせれば、2カ月間で2074億ドルが流出したことになる。

「現在の外貨準備高は3兆2300億ドルだから、まだかなりの軍資金が残っているとはいえ、ここ数カ月間の外貨準備高の急激な減少ペースは、たとえ短期間でもとにかく持続不可能だ」。IHSグローバル・インサイトのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、ラジブ・ビスワス氏はそう語る。

資本流出を区分けするのは難しい。一部は、まだ続いているキャリートレードの巻き戻しだし、一部は中国企業の対外債務の返済に回っている。

思慮深い多角化を、資本逃避と区別するのも難しい。

それから、新たに手に入れた「おもちゃ」を管理する能力の有無にかかわらず、中国の民間企業、国有企業が海外でますます大規模な買収を行っている論理的な根拠を、一体どう理解すればいいのだろうか。

資本投資を食い止めるために人民銀行にできることは、もっとたくさんある。1つは、大半の元売りが集中し、金利が上昇した結果、オンショア市場よりはるかに高くなっているオフショア市場を廃止することだ。国がひとたび通貨の自由化に動いたら、通貨統制を再び敷くのは難しいが、不可能ではない。

日本にも大きな影響

中国などへの投資は、いよいよ最終的には中央銀行を先読みすることになりつつある。それも通貨のポジションに関してだけではない。日本株を例にとってみよう。ドル建ての投資家にとっては、日本株は素晴らしい成績を上げたかもしれないが、円をヘッジしていなければ、昨年のリターンはマイナスだった。

また、人民元の描く軌道は、中国の国境を大きく越えたところにまで影響を及ぼす。人民元の弱さは、日銀がマイナス金利導入を決断した1つの要因だったと言える。その過程で円が一時的に下落した。

この決断は、日本国内の輸出業者を支えるために通貨安を誘導する日本の政策を元安が脅かしていることから、日銀総裁が中国に資本規制を導入するよう提言した後に続いたものだ。

昔は、中央銀行は最後まで自国通貨の下落を望まない存在だった。それが今では、通貨安の最大の応援団のように見える。また、貯蓄から生じる所得の減少に沿って生活水準が低下した人々にかかるコストなど気にしてもいない。

申年の今年、こと中央銀行に関しては、「言わざる」を貫くのが次第に難しくなっている。

By Henny Sender

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46101


所得倍増に邁進、中国の賃金上昇はいつまで続く?
中国のビジネスリスク(4)〜労務問題
2016.2.18(木) 茂木 寿
(写真はイメージ)
中国におけるビジネス上のリスクについての4回目は、中国の労務問題を取り上げる。近年の民意向上などに伴う労働者の権利意識の高まり、労働需給の逼迫、労務コストの高騰、労働争議の頻発など、労務問題は中国で活動する日本企業の最大の経営上の問題の1つとなっている。

今回は労働人口、労働法令、賃金、労働争議などを中心に俯瞰してみたい。

労働人口の減少と人件費の高騰

少子高齢化の進展に伴い、中国の労働人口は減少する傾向となっている。国際基準(15〜64歳)による労働力人口は2016年にピーク(10億935万人)を迎えるとされており、青壮年(20〜39歳)人口については、2002年にピーク(4億5610万人)を過ぎている状況である。

そのため、今後、労働人口の逼迫化という可能性が指摘されている。それに伴い、人件費のさらなる高騰の可能性もある。

また労働人口の減少に伴い、失業率は低下傾向にある。都市部における失業率は2008年後半からの世界的な金融危機の影響を受け、2009年は4.3%まで上昇したが、その後の経済回復に伴い、2010年には4.1%に低下し、その後もこの水準で推移している。

(中国における失業率に関する統計は、国際的な失業率の算出方法とは異なり、都市部の一定の条件を満たした者、つまり「15歳〜64歳の都市戸籍を有し、就職サービス機関に登録した者」に限られている。そのため、農民工の就業実態は、これに含まれていない)

近年、少子高齢化の進展に伴い、農村部からの余剰労働力供給が不足し、2012年において、15歳〜59歳の生産年齢人口が初めて減少に転じた。また、就学率・進学率の上昇、政府主導の中西部開発等による内陸部の産業発展とそれに伴う労働力需要の増加などにより、沿海都市部へ出稼ぎに出る農民工の割合は減少傾向となっている。そのため、東部沿岸部を中心に、昨今では「招工難」(労働者募集難)と言われる一般ワーカー労働者の不足が顕在化している。

また、農民工の劣悪な労働環境を回避する動きもあり、2013年の労働契約締結率は41.3%となっている。社会保険制度への加入率も極めて低く留まっており、労災補償等の公的社会保障を十分に受けられない状況にある。

これらの農民工を巡る問題は、社会の不安定化につながる可能性がある。そのため、中国政府は労働契約締結率、社会保険加入率の向上を図るとともに、労働保障監察機関による賃金不払事案の取締りを強化するなど、農民工の権利保護対策に重点的に取り組んでいる。2014年3月に公表された国家新型都市計画(2012〜2020年)では、都市部の農民工に対する公共サービス(教育・就職・医療・養老)などを強化することが盛り込まれた。

なお、JETROの「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2015年12月)」によれば、クラス別の採用難として、一般スタッフ15.8%、中間管理職24.2%、一般ワーカー23.2%、技術者24.3%となっている。他の新興国に比べても一般ワーカーは採用が難しい状況である。

頻繁に変化する労働法令

中国は建国(1949年)以来、「労働者」「農民」が主体の社会主義体制であり、そこには「経営者から労働者を守る」という概念がなかった。そのため、企業(国営企業)における労働基準及び労使関連については、主に行政命令という形が取られていた。

しかしながら、1978年の改革開放路線への移行に伴い、「労働者を守る」という観点から、1994年7月5日に建国以来初の労働法が公布(1995年1月1日施行)された。その後、外資を含めた民間企業活動の活発化に伴い、以下のように関連法令の制定が次々に進められている。

・失業保険条例(1999年1月22日施行)
・安全生産法(2002年11月1日施行)
・最低賃金規程(2004年3月1日施行)
・労働契約法(2008年1月1日施行)
・就業促進法(2008年1月1日施行)
・障害者保障法(2008年1月1日施行)
・労働争議調停仲裁法(2008年5月1日施行)
・社会保険法(2011年7月1日施行)
・中国内で就業する外国人の社会保険加入に関わる暫定弁法(2011年10月15日施行)
・労務派遣暫定規定(2014年3月1日施行)等

95年に施行された労働法には、労働契約違反の罰則等がないなど労働の保護が不十分であるとの反省から、これを補完する形で2008年に労働契約法が施行された。この法律では、一定の条件の基、労働者が希望すれば固定期間のない労働契約を締結しなければならないことが定められた。

しかしその結果、企業側は派遣労働者を大幅に増加させることとなった。そのため、今度は派遣労働者の要件を厳しくする改正労働契約法が2013年7月1日に施行された。さらに、労務派遣暫定規定(2014年3月1日施行)では、派遣労働者の具体的な雇用比率が定められた。

このように中国の労働法令は頻繁に書き換えられ、今後も大きく変化する可能がある。また、正規雇用の増大と労務コストの高騰の可能性、労働者の権利意識の高揚に伴う労働争議増加の可能性などのリスクも大きく、注意が必要である。

中国政府が掲げた所得倍増計画

労務コスト面のリスクは賃金の上昇である。

中国政府は2011年3月に採択された第12次5カ年計画(2011〜2015年)において、都市と農村住民の収入を年平均7%以上増加させ、10年後に倍増させる目標を掲げた。また2012年2月には、「就業促進計画」(2011〜2015年)において年間の最低賃金上昇率を13%以上にすることが盛り込まれた。これに伴い、法定最低賃金の引き上げが加速化した。

例えば、2011年から2012年のベースアップ率は11.0%、2012年から13年が9.2%、2013年から14年が8.5%、2014年から15年が7.9%、2015年から16年が6.7%と高い上昇率となっている(JETROの「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2015年12月)」)。

また、2015年10月の中国共産党第18期五中全会において採択された第13次5カ年計画(2016〜2020年)草案においては、2020年までに、国内総生産(GDP)と国民1人当たり所得を2010年比で倍増するとしており、今後も賃金上昇が継続する可能性が高い。

ちなみに、JETROの「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2015年12月)」によれば、製造業作業員の平均月額給与は424ドルであり、アジアの新興国の中では最も高くなっている。

また、経営上の問題として中国おいて最も高い数値となったのは「賃金の上昇」(84.28%)であった。この数値は他のアジア諸国と比べても突出しており、中国における賃金上昇が日本企業の経営に甚大な影響を与えていることを物語っている。

外資系で労働争議が増加

既述の通り、昨今の労働者の権利意識の高揚、2008年に施行された労働契約法および労働争議調停仲裁法などに伴い、中国では労働争議が急激に増加している。中国政府が発表している労働争議受理件数は1994年が1万2368件に過ぎなかったが、2007年には35万182件に達し、両法が施行された2008年には69万3465件にまで達している。その後も60万件台で推移しており、中国において非常に労働争議が多いことが分かる。

企業形態別(2010年)では民間企業が全体の約半分の52%を占め、その次に外資系企業が14%で続いている。とくに外資系企業の発生件数は年々増加傾向をたどっている状況である。日本企業でも大きなストライキが発生し、日本でも数多く報道されているが、外資系企業の場合、大規模化することが多く、終息に長時間を要することが多いと言われている。また、原因別では労働報酬、社会保険、労働契約の解除等、労働者の利益と直接かかわっているものが多い。

また、自社の待遇には大きな問題がなかったのに、同じ工業団地の別企業で発生したストライキが自社に波及することも多く、日本企業にとっても予断を許さない状況となっている。また、昨今は日本企業が中国現地での活動を再編・縮小する傾向も見られるが、その場合、高い頻度で労働争議が発生している。

ちなみに、2010年から2011年にかけて、中国の日本企業においてストライキが頻発したが、2012年1月に在北京日本大使館が発表したアンケート結果によれば、発生原因として約7割の企業が「コミュニケーションの不足」を挙げていた。対策としても約7割の企業が交流(食事会・運動会・旅行等)/面談・ヒアリング/説明会の開催を促進するといった「従業員とのコミュニケーションの充実」を挙げている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46084

 

欧州の銀行株下落:恐怖の嵐
2016.2.18(木) The Economist (英エコノミスト誌2016年2月13日号)

欧州各国の銀行は、金融界で発生した新たな嵐の真っただ中にいる。


2016年の幕開けは世界の株式市場にとって荒れ模様だったが・・・ (c) Can Stock Photo
2016年の幕開けを世界各国の株式市場にとって絶望的だったとすれば、銀行株はまさに大惨事と言うべき状況だ。金融株の株価は年初から米国で19%下落している。他の国の落ち込みはさらに激しい。日本の銀行株は年初から36%と急落した。イタリアの銀行株は31%マイナスとなり、ギリシャの銀行株に至っては60%という恐るべき下落を見せている。


欧州全体の銀行株指数は24%のマイナスとなり、2012年夏の急落時に記録した最低値に迫りつつある。

2012年当時は欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁がユーロを救うために「必要なあらゆる措置」を取ると言明するまで、ユーロ圏が崩壊の瀬戸際に立たされているように見えた。

脆さが露呈した欧州の銀行

欧州での株安は、中小の銀行だけでなく、大手銀行をも巻き込んでいる。影響を受けている銀行の中には、ソシエテ・ジェネラルやドイツ銀行のようなユーロ圏内のメガバンクも含まれる。両行の株価はともに、2月の第2週に数時間で10%下落する場面があった。また、バークレイズ(英国)やクレディ・スイス(スイス)など、ユーロ圏外の大手銀行も株価が落ち込んでいる。

欧州各国の銀行については、ここ数年で資本増強と規制の厳格化という2つの施策を通じた体質強化が図られており、それだけに今になってこれほどの脆弱さを露呈していることは、残念と言うほかない。

ユーロ圏の銀行は世界金融危機が始まった2007年からECBが銀行監督を統括するようになった2014年にかけて、2500億ユーロ以上の新株発行を実施している。ECBは銀行監督業務の開始に先立ち、ユーロ圏の130の有力銀行について財務状況をチェックしたが、この時点で判明した資本不足はごくわずかなものにとどまっていた。

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[あわせてお読みください]
効き目を失うマイナス金利 (2016.2.17 Financial Times)
経済の危機的状況が見えない世界の指導者たち (2016.2.16 柯 隆)
欧州金融市場、戻って来た「有害な双子」 (2016.2.16 Financial Times)
欧州の中央銀行家、過去を通しておぼろに見える影 (2016.2.9 Financial Times)
欧州の多重危機は偶然の産物ではない (2016.1.5 Financial Times)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46102



Falling bank shares
A tempest of fear

European banks are in the eye of a new financial storm
Feb 13th 2016 | From the print edition
Timekeeper

IF THE start of the year has been desperate for the world’s stockmarkets, it has been downright disastrous for shares in banks. Financial stocks are down by 19% in America. The declines have been even steeper elsewhere. Japanese banks’ shares have plunged by 36% since January 1st; Italian banks’ by 31% and Greek banks’ by a horrifying 60% (see chart). The fall in the overall European banking index of 24% has brought it close to the lows it plumbed in the summer of 2012, when the euro zone seemed on the verge of disintegration until Mario Draghi, the president of the European Central Bank (ECB), promised to do “whatever it takes” to save it.


In this section
A tempest of fear
Slaves of the markets
A hedge against ignorance
Discomforting brew
Girl power
Taxing times
Optimising romance
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The distress in Europe encompasses big banks as well as smaller ones. It has affected behemoths within the euro area such as Societe Generale and Deutsche Bank (see article)both of which saw their shares fall by 10% in hours this weekas well as giants outside it such as Barclays (based in Britain) and Credit Suisse (Switzerland).

The apparent frailty of European banks is especially disappointing given the efforts made in recent years to make them more robust, both through capital-raising and tougher regulation. Euro-zone banks issued over 250 billion ($280 billion) of new equity between 2007, when the global financial crisis began, and 2014, when the ECB took charge of supervising them. Before taking on the job, it combed through the books of 130 of the euro zone’s most important banks and found only modest shortfalls in capital.

Some of the recent weakness in European banking shares arises from wider worries about the world economy that have also driven down financial stocks elsewhere. A slowdown in global growth is one threat. Another is that the negative interest rates being pursued by central banks to try to prod more life into economies will further sap banks’ profits. A retreat in Japanese bank shares turned into a rout following such a decision in late January. Investors in European banks fret not just about lacklustre growth but also a possible move deeper into negative territory by the ECB in March. On February 11th Sweden’s central bank cut its benchmark rate from -0.35% to -0.5%, prompting shares in Swedish banks to tumble.

But the malaise of European banking stocks has deeper roots. The fundamental problem is both that there are too many banks in Europe and that many are not profitable enough because they have clung to flawed business models. European investment banks lack the deep domestic capital markets that give their American competitors an edge. Deutsche, for instance, has only just resolved to hack back its investment bank in the face of a less hospitable regulatory environment following the financial crisis.

And there are still too many poorly performing smaller banks within national markets. Although this year’s share-price declines have been steepest in Greece, these largely reflect renewed political tensions over implementing the country’s third bail-out. The banks arousing fresh concern are those in Italy, whose troubles go beyond an excess of them. One specific worry is the dire state of the country’s third-biggest (and the world’s oldest) bank, Monte dei Paschi di Siena, which has long been in intensive care and whose share price has fallen by 56% this year. Its woes reflect poor governance, a problem that plagues Italian banks, many of which are part-owned by local, politically connected foundations.

A more general worry is that Italy’s banking sector as a whole is weighed down with bad loans which have built up during recent years. Although Italian GDP has been expanding since the start of 2015, it is still around 9% lower than its pre-crisis peak in early 2008. This has hurt Italian firmsand their pain has been transferred to the banks that lent to them. Gross non-performing loans amount to 360 billion (18% of the total), of which 200 billion are especially troubled.

There is nothing new about Italy’s high level of non-performing loans; if the recovery can be sustained they should eventually start to come down. Moreover, over half of the sourest loans are covered by provisions, which means that the potential bill is more manageable, at around 90 billion rather than 200 billion. What has changed this year is a new European approach to tackling troubled banks, which shifts the burden for bail-outs from taxpayers to creditors who are “bailed in” when big losses arise. These rules, which have come fully into force this year (a few countries applied them in 2015), mean that senior bondholders and depositors with balances above 100,000 can be stung when banks are resolved.

Bank bonds are generally held by institutional investors who can look after themselves, but in Italy around 200 billion are in the hands of retail customers who were lured to invest in them until 2011 by favourable tax treatment. These retail bonds would be vulnerable if banks run short of capital after big write-downs.

This danger was highlighted late last year when four small banks were rescued in a rush to avoid this year’s more stringent bail-in provisions. That process ensnared retail bondholders holding junior debt, who could already be bailed in under the previous rules. One committed suicide. The furore has unnerved Italians. Ignazio Visco, governor of the central bank, has said that a less abrupt transition to the new bail-in regime would have been better.

The strict rules have also curtailed the ability of the Italian government, led by Matteo Renzi, to calm nerves by excising the bad loans from the banking system. Instead of setting up a state-backed “bad bank” to remove them, Mr Renzi has had to adopt a feebler approach in which the government will guarantee the senior tranches of securitised bundles of the bad loans. Investors plainly doubt this scheme will help much, to judge by the performance of Italian bank shares.

Frustration with European constraints on Italy’s attempt to sort out its banks is one reason why Mr Renzi has been making barbed attacks on the German way of running the euro area. Such political tension is adding to jitters about Italian banks. Portuguese banking shares have also tumbled, in part because a new left-of-centre coalition government alarmed international investors by its decision to impose heavy losses on some senior bank bonds late last year. In seeking to transfer the risk of failing banks away from taxpayers to creditors, European policymakers may have thought they were depoliticising the banks. In the euro-zone periphery, however, politics is never peripheral.

From the print edition: Finance and economics

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米鉱工業生産:予想上回る上昇、製造業は昨年7月以来で最も高い伸び
2016/02/18 01:05 JST

    (ブルームバーグ):今年1月の米製造業生産は前月比で拡大し、2015年7月以来で最大の伸びを示した。
米連邦準備制度理事会(FRB)が17日発表した1月の製造業生産指数は前月比0.5%上昇。前月は0.2%低下(速報値は0.1%低下)した。全体の鉱工業生産指数(製造業、鉱業、公益事業の生産を対象、季節調整値)は市場予想を上回る0.9%上昇(前月は0.7%低下)だった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想では製造業生産指数が0.2%上昇、鉱工業生産指数は0.4%の上昇だった。
1月の製造業生産は消費財の大幅な伸びに支えられた。消費財は耐久財・非耐久財のいずれも拡大した。
公益事業生産は5.4%上昇。これは2009年12月以来で最大の伸びだった。前月は2.9%低下した。鉱業生産は前月から変わらず。
1月の鉱工業設備稼働率は77.1%と、前月の76.4%から上昇した。製造業の設備稼働率は76.1%と、3カ月ぶりに前月比で上昇した。
製造業のうち消費財生産は1月に1.6%上昇と、5カ月ぶりの上昇。自動車・同部品は2.8%上昇。自動車・同部品を除く製造業生産は前月比0.3%上昇。前月は横ばいだった。
統計の詳細は表をご覧下さい。
原題:Manufacturing Production in U.S. Increases by Most Since July(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2P7DRSYF01T01.html

 
米住宅着工件数:1月は3カ月ぶり低水準に減少−許可件数も落ち込む
2016/02/18 00:08 JST

    (ブルームバーグ):1月の米住宅着工件数は市場予想に反して減少した。
米商務省が17日発表した1月の住宅着工件数(季節調整済み、年率換算、以下同じ)は、前月比3.8%減の110万戸と、3カ月ぶり低水準。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は117万戸だった。前月は114万戸(速報値115万戸)に修正された。
着工件数の先行指標となる住宅着工許可件数は1月に0.2%減の120万件だった。
一戸建ての着工件数は前月比3.9%減の73万1000戸。変動の大きい集合住宅は3.7%減って36万8000戸。
地域別では全米4地域全てで減少。最も大きく落ち込んだのは中西部で12.8%減。このほか北東部で3.7%、南部で2.9%、西部で0.4%それぞれ減った。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Housing Starts in U.S. Drop to Lowest Level in Three Months (1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Michelle Jamrisko mjamrisko@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Carlos Torres ctorres2@bloomberg.net
更新日時: 2016/02/18 00:08 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2P4O1SYF01V01.html



米生産者物価指数:1月は予想外の上昇、食品が値上がり
2016/02/17 23:33 JST

  (ブルームバーグ):1月の米生産者物価は前月比で市場の予想外に上昇した。食品価格の上昇がエネルギーの値下がりを補った。
米労働省が17日発表した生産者物価指数 (PPI)は前月比0.1%上昇。ブルームバーグがまとめた市場予想の中央値は0.2%低下だった。前月は0.2%低下。
1月のPPIは前年同月比では0.2%低下となった。 
食品価格 は1%上昇と、昨年5月以来の大幅な伸び。前月は1.4%低下だった。エネルギー は5%低下。前月は3.5%低下だった。
食品とエネルギーを除くコアPPI は前月比0.4%上昇した。市場予想は0.1%上昇だった。前月は0.2%の上昇。コアPPIは前年同月比では0.6%上昇した。
食品とエネルギー、商業サービスを除いたPPI は前月比0.2%上昇で、前月と同じ伸び率だった。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Wholesale Prices in U.S. Unexpectedly Rise on Higher Food Costs(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Victoria Stilwell vstilwell1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Carlos Torres ctorres2@bloomberg.net
更新日時: 2016/02/17 23:33 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2P33Y6KLVRG01.html


 


人工知能が株式市場で存在感、学識者驚く的中率68%−将来8割可能も
2016/02/18 00:00 JST

    (ブルームバーグ):将棋や囲碁の世界でプロを撃破する人工知能(AI)が、株式市場でも存在感を見せ始めた。株価指数の騰落予想における的中率は現在7割近くとなっており、将来的には8割まで確率を上げることが可能、とAIモデルを研究するストラテジストは言う。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の瀬之口潤輔シニアストラテジスト(49)は、AIを使って日経平均株価の水準を予測している。月次データを基に分析し、毎月10日を基準日に高安を調べると、2012年4月からことし2月までのトータル的中率は68%だった。

「モデルツリー」と呼ばれるAIの分析手法は、過去数年間の市場データパターンからいくつかの局面を作成、局面ごとに重要な経済指標を選び、株価を予測する。最適なサンプル期間と経済指標を毎回選び直すため、市場に変化が起きた場合でも柔軟に対応できる点が特徴だ。

瀬之口氏は的中率について、「上がるか下がるかなので50%が基準になり、そこからどれだけ高められるか。今まで出てきたモデルは57−58%で、今回70%近くまで持ってきたのは飛躍的な進歩」と話す。精度の向上に関しては、「人工知能の動きがちょうど株価の動きに合っている」とみている。

同氏が使うデータは、米国の供給管理協会(ISM)製造業景況指数や日本の景気ウオッチャー調査など国内外の経済指標、市場価格など92種類。200種類のモデルの中で最も当たったルールを採用し、モデルを毎月選び直す作業もAIが行う。全モデルの過去48カ月(4年)のバックテストを行い、最も結果の良いもので49カ月目を予想、49カ月目終了時にまた一から選定し直すを繰り返す。こうした過程で、「ルールが1年に1回か2回大きく変わる。それがマーケットの構造変化」と瀬之口氏は言い、直近では15年1月に大きな変化があった。

将棋「電王戦」は10勝5敗、囲碁は初のAI勝利

慶応義塾大学理工学部で機械学習を専門とする櫻井彰人教授は、経済専門家による国内総生産(GDP)統計の予測的中率は50%とされ、ほとんど当たっていないと指摘する。7割に迫る瀬之口モデルの的中率は、「株価や為替など参加者が非常に多く、公平と考えられるマーケットの予測としてはそう簡単に得られない値。かなり高いと言わざるを得ない」と評価。データ使用期間の変更や良質なデータ抽出力の高さが成功の背景にあるとみる。

櫻井教授はAIの現状について、「カバーしている範囲が広く、使われている技術もさまざま。よく使える場所とそうでない場所がある」と説明。ルールが明確で、ランダム性のないゲームの世界は人工知能が強い分野であり、「オセロやチェス、将棋まで人間に伍(ご)するようになり、最近は囲碁も人間と同じまでになるのではないかというところまできた」と言う。

一方、経済予測は「どんどん変わっていく世界。ゆっくり変わることもあれば、一気に変わることもある」とし、起こっている事象の裏側にあるメカニズムも認識する必要があり、それが継続、変化したかどうかも予測しなければならない難しさがあると述べた。

日本将棋連盟とドワンゴの共催でプロ棋士とAIが対局する電王戦は過去4回開かれ、通算成績はコンピューター10勝、プロ5勝、引き分け1。AIの勝率は6割2分5厘となっている。囲碁では米グーグルがことし1月、同社開発のコンピュータープログラム「AlphaGO(アルファ碁)」と過去3度欧州チャンピオンとなった中国人プロ棋士が昨年10月に対局し、アルファ碁が5戦全勝、初めてAIがプロに勝利したと発表した。

確率向上はコンピューターの容量次第

瀬之口氏によると、株式市場では高頻度取引(HFT)や商品投資顧問(CTA)などの超短期取引でAIが使われている。ある銘柄の0.1秒後を予想する際、数秒前のティックデータや板情報のパターンなどを調べ、「こういう板情報なら0.1秒後はこうなる、というような使い方は結構盛んにされている」が、1カ月先などの分析は精度が低く、「ほとんど実用には用いられていない」と言う。
自身が開発したモデルの実績を携え、瀬之口氏はこれまでおよそ40社の機関投資家を訪問した。今までの手法では正確な予想ができなかったことで、「過去のパターンから人工知能が予想すれば、精度が上がると感じている人が多い。人工知能のプログラムを見せてほしい、一緒にやりたいというリクエストも多かった」と明かす。

もっとも、AIによる予想は計算量が多く、コンピューターの能力に左右されるため、現時点では取り込むデータに限界がある。「良いモデルを選ぶことはできているが、それを選ぶまでに1、2カ月かかり、その間負けてしまう。良いモデルが選ばれたら、しばらく当たりだす」と同氏。コンピューターの容量拡大などで改善が図られれば、前月比の高安を的中させる確率は「80%近くまで上がる可能性が十分ある」としている。

瀬之口氏は、外資系証券の銀行アナリストを経て日本銀行に入行、11年に三菱モルガン証に入った。金融業界の分析を担当する傍ら大学関係者とも協力し、株価予想モデルの開発を一貫して続けている。従来的な回帰・統計分析に限界を感じ、AIを使って予測精度を向上させる研究を重ねており、13年には筑波大学で人工知能の博士号も取得した。現在は、静岡県立大学で金融政策論と国際金融論を教える。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2FEUQ6TTDS801.html


 

2016年・2017年の中国景気の見通し(2016年2月版)〜経済構造改革が一段と進むなかで、成長率が6%台前半に鈍化
http://www.yokohama-ri.co.jp/html/report/pdf/china1602.pdf


イラン、産油量据え置きに合意 サウジなどと協調へ
テヘラン=神田大介2016年2月18日01時23分

 原油の増産に前向きだったイランが17日、産油量を据え置くとしたサウジアラビアやロシアなどの合意の提案を、受け入れる意向を表明した。16日にサウジなど4カ国が合意したことを受け、説得を受けていた。中東の産油国とロシアを中心に、生産調整の協調が一歩前進した。

サウジやロシアなど主要産油4カ国、生産据え置きで合意
 石油輸出国機構(OPEC)に加盟するサウジ、カタール、ベネズエラと、非加盟のロシアの4カ国は、ほかの産油国が同意することを条件に、生産量を1月の水準から増やさないことで一致した。これを受け、ベネズエラとカタールの担当相は17日、テヘランでイランとイラクの担当相に合意への協調を求めた。

 イランのシャナ通信によると、同国のザンガネ石油相は会談終了後、「イランは原油価格を改善する動きを支持する。OPEC加盟国、非加盟国との協力を歓迎する。ドーハでの(4カ国による)決断を支持する。だが、今後に向けた第一歩に過ぎない」と述べた。また、詳細は明らかではないが、「制裁解除後のイランの地位についても話し合い、現実的なアプローチがなされた」とも述べ、参加国からイランの待遇で特別な条件の提示があったことをうかがわせた。

 ただ、今回の合意は、すでにOPECやロシアで過去最高水準にある1月の生産量の水準を据え置くだけで、減産ではない。それでも、原油先物価格が下落し始めた2014年半ば以降では、主要な産油国の間では初めての具体的な合意になり、市場では原油先物価格が値上がりした。この先、減産などさらなる生産調整が進み、供給過剰や原油安に歯止めをかけられるかが注目される。(テヘラン=神田大介)
http://www.asahi.com/articles/ASJ2L04SGJ2KULFA035.html


日証協 MRFにはマイナス金利を適用しないで
2月17日 22時22分

日銀のマイナス金利の導入で、投資家が取り引きに使うお金を一時的に預ける際に利用する、最も基本的な投資信託=MRFの運用が難しくなっていることについて、日本証券業協会は、日銀に対してMRFで預かっている資金を、日銀の当座預金に移す場合はマイナス金利を適用しないよう求めていることを明らかにしました。
MRFは投資家が証券会社の口座の中で、株式などの取り引きに使うお金を一時的に預ける最も基本的な投資信託です。短期の国債などで運用していますが、利回りがマイナスになる国債が続出するなど、元本を維持するための運用が難しくなっています。
これについて日本証券業協会の稲野和利会長は17日の会見で、「MRFは決済機能があり、その運用が困難になれば個人投資家に甚大な影響を与えるため、政策的な対応が必要だ」と述べ、日銀に対してMRFで預かっている資金を、日銀の当座預金に移す場合はマイナス金利を適用しないよう求めていることを明らかにしました。
また、稲野会長は、日銀からの回答を得られていないとしたうえで「元本割れした場合には運用会社が補填(ほてん)することが可能だが、緊急避難的な対応であって、MRFに代わる金融商品を考えないといけない」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160217/k10010413001000.html



[FT]ドラえもんが教えるマイナス金利の痛手
2016/2/17 14:43日本経済新聞 電子版
Financial Times
 元祖人気アニメシリーズ「ドラえもん」のマンガ第30巻で、ドラえもんは現代の日本にそっくりな世界に連れていかれる。そこは、明らかにおかしな状況のなか、最も長く眠った人が最も尊敬される世界だ。16日からスタートした日本のマイナス金利政策(NIRP)は、この世界とどこか似たような場所へ我々を連れていってしまった。

■マイナス金利に対応できないコンピューターシステム

日銀のマイナス金利政策が実施され、マイナスを表す赤字で記入された調達希望の金利(16日、東京都中央区の東京短資)
日銀のマイナス金利政策が実施され、マイナスを表す赤字で記入された調達希望の金利(16日、東京都中央区の東京短資)
 NIRPの奇妙さは、至るところに転がっている。例えば、不動産投資信託(REIT)のGLP投資法人が野村証券と交わした借入金に関わる金利スワップ契約だ。GLP投資法人は4700万ドルの借り入れについて、年間約5000ドルの金利を受け取る。また、マネー・マーケット・ファンドは、運用会社からNIRPの適応除外を求める声がある中、新規の購入停止や繰り上げ償還が相次いでいる。さらには、ゆうちょ銀行が突如、「安定的な運用ができない」との懸念を理由に「JP日米国債ファンド」の販売取りやめを決定した。

 メガバンクの少なくとも2行が、コンピューターシステムがマイナス金利に対応できないと認めたときには、その不安な事態を想像できたにすぎなかった。

■指数連動型の投資が悪化の要因

 しかし、日本の根本的な状態がよりおかしかったことは、NIRPのかなり前から明らかだった。東証に上場する株は、単に価格を基準として取引されるようなコモディティー化が進み、貪欲な日本の個人投資家は、純資産9000億円の日経平均株価指数に連動するレバレッジ型の上場投資信託(ETF)を世界で最も取引高の多い投資信託に押し上げた。かなり目を見張る光景だ。先進国の2000社以上で構成される東証は最近、あるストラテジストが「ばかげている」と説明し、ほかのストラテジストがもはや説明がつかないと認める状況の中で乱高下している。東証株価指数(TOPIX)は1週間のうちに13%下落し、その後結局1日で8%の上昇に転じた。

 この動きの背景には数多くの要因があるが、とりわけ(日本に限ったことではないが)債券や株式、原油、為替などの間で高頻度取引(HFT)や人工知能を活用したアルゴリズム取引による相関性が高まっていることがある。しかし、それを許容してさえも日本は他に類を見ないほど相反する二つの見方に振れやすい。つまり、見かけ上はたいした理由もなく、アベノミクス、円や中国に対して、あるときは評価したり―そしてあるときは手を引いたり―する。この多くは、取引の75%を占める外国人投資家の仕業のようではあるが、個人投資家が好むレバレッジ型のETFは、明らかに事態を悪化させる要因だ。

 ドラえもんは結局、居眠り運転の車の事故に巻き込まれたのを機に、眠りをあがめる世界から戻ってくる。日本の投資家たちも、手痛い形で教訓を学ばなければならないかもしれない。

By Leo Lewis

(2016年2月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO97368930X10C16A2000000/



2. 2016年2月18日 03:20:06 : KjqUxmQ16w : wESne@GnN9E[17]
アメリカ経済が、
12月の金利引き上げで、
全業種不況になったので、
2月10日の暴落が始まった。

アホたちは、
マイナス金利は、金融緩和と思っているが、

イエレンFRB議長は「中央銀行が国債を買い占めれば、本来は市場に回るはずの国債利回りによる金融機関の収益を、中央銀行が吸い上げていることになる。
短期では国債買取が市場への資金投入になっても、長期では市場の引き締め効果になってしまう。だから付利は正当化される」と

説明している。

つまりマイナス金利は、
実は金融引き締めになる、
とFRBは考えているので、

アホたちに
ユダ金の怖さを教えて、
ユダ金の団体であるFRBが、
羊毛刈り
を、自分たちは継続中だと公表しているのよね〜〜!

これ解っているかな〜〜?


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