2016年02月15日 目先の底値に到達 反騰タイミングは従来通り3月との見通しを維持広木隆 日本株 底入れの水準 暴風雨のようなリスクオフの嵐が世界的に吹き荒れている。2月第二週(8〜12日)は世界の主要な株式市場は全面安となったが、なかでも日本株の下落率の大きさは群を抜いたものになった。世界景気減速懸念に信用不安も加わったことで、安全資産とされる円に逃避資金が流れ込み、円が急騰したことが日本株の重荷になった。日銀が導入したマイナス金利の負の側面ばかりが嫌気されている面もある。 従来から不安視されていた中国経済や原油安に加えて、新たな悪材料が次々と台頭し、まるで「複合株安」とでもいうような状況だ。従って、急落の背景にある要因が特定できない。リスクは定義できればリスクでなくなるという言葉があるが、今回の下げについて本当は何が原因で下げているのか分からない。だからいつまでたっても不安心理が解消できない。 この状況では底値の目途が立てにくい。業績に対する不透明感が強い局面ではPER(株価収益率)の有効性は高くないものの、株価から逆算すると、来期の予想業績として10%減益までは市場が織り込んだと言える。株価が1万5000円になって、標準のPER15倍を当てはめれば予想EPSは1000円だ。これは前期対比、約10%減益という水準である。 PERは元となる業績が安定性を欠いているので当てにならない一方、これまで企業が蓄積した純資産に対する倍率であるPBRは参考にできるだろう。日経平均が1万5000円を割り込んだ12日に、日経平均のPBRは1倍を割れた。PBR1倍割れというのはリーマンショック後やアベノミクス相場が始まる前の極度の低迷期に戻るということだ。コーポレートガバナンス改革や異次元緩和などアベノミクスのすべてを否定するような水準への回帰は行き過ぎであろう。 国際協調の行方 株価の調整度合いはじゅうぶんだが、問題は戻るきっかけだ。国際的な政策協調に期待がかかる。まずは26日から上海で開催されるG20が焦点となるだろう。ポイントは資本規制に関する議論だ。日銀の黒田総裁は、個人的な見解として「資本規制が為替相場の管理に役立つ可能性がある」と発言。もちろん中国を念頭に置いた発言である。 中国からの資本流出が市場の不安を助長させてきた点は否めない。これによって人民元に売り圧力がかかる。中国人民銀行が為替介入によって人民元を買い支えているせいで、外貨準備高はすでに2割も減った。人民元の崩落は免れないとみて、人民元売りのポジションを持つ(あるいは、そうほのめかす)ヘッジファンドが後を絶たない。 こうした投機筋の動きに対して、中国人民銀行の周小川総裁は「投機筋には為替市場のムードを主導させない」と述べ、人民元の空売りを仕掛けているとされる国際的なヘッジファンドなどをけん制した。昨日の日経新聞がそう伝えている。 周総裁は、「国境をまたぐ資本移動は正常の範囲内にあり、人民元の下落が長く続く基礎はない」とも語ったとされる。だとしたら、容易に資本規制など打ち出せるのだろうか。 これまで世界は中国の資本取引について、自由化、国際化を訴えてきたし、中国もその方向を志向してきた。人民元のSDR採用はそのひとつのマイルストーンであった。なのに、ここにきて資本規制を求めるのは中国の資本取引自由化の流れに掉さすものだ。世界の資本市場が動揺しているから、といって、それではあまりにご都合主義ではないか。背に腹は代えられぬということと割り切るしかないのだろうが。 リスクシナリオは中国が資本規制についてなんら政策も声明も発表しなかった場合だ。G20という舞台で中国が世界からの要請に背を向けた格好となる。市場に1987年のブラックマンデーの背景を連想させはしないか。ブラックマンデーが起きた直接の要因はいまだに解明されていないが、背景のひとつに当時世界経済のリーダー国であった米国と西ドイツの金融政策を巡る対立が浮き彫りとなったことがある。市場は国際協調体制の歪みを不安視したのだ。 その観点から、G20は市場が立ち直るきっかけとして期待される反面、不調に終わった場合は大きなリスクとなる。 原油価格下落も最終局面か 相場が立ち直る、もうひとつのきっかけは原油価格である。悪材料の複合的な重なりで見えにくくなっているが、そもそもの悪材料のひとつである原油価格の下落に耐性というか抵抗力がついてきたように思える。というのは、WTI先物は相変わらず安値更新が続いているが、エクソンなど大手石油株は底堅い動きとなっているからだ。代表的なシェールガス企業のチェサーピークエナジーに債務再編のうわさが出て株価が急落するなかのことだ。こうした話が出てくるということは今回の原油価格の下落もいよいよ最終局面に入ってきたと市場が認識し始めたのかもしれない。 このタイミングで、産油国間で減産協調を模索する動きも報道されている。そもそも産油国間での協調が進まない背景のひとつに、米国のシェール企業潰しという思惑がずっと取沙汰されてきた。 今の相場は見渡せば悪材料だらけだが、そのなかで敢えて変化の兆しを探していくことが重要な局面だろうと思う。 https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html Vol.352:特別号:金融当局の政策とは逆に動く通貨と株価>
テーマ:金融商品の相場における、織り込み理論 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・ HP: http://www.cool-knowledge.com/ 無料版の登録/解除: http://www.mag2.com/m/0000048497.html 有料版の登録/解除: http://www.mag2.com/m/P0000018.html 感想/連絡:yoshida@cool-knowledge.com Systems Research Ltd. 吉田繁治 42389部 おはようございます。年初来、世界の株価が、暴落と言える動きを しています。中国と新興国の成長の低下、FRBの利上げ、原油と資 源価格の急落、ユーロの不良債権とドイツ銀行の経営不安など、そ の都度の理由が言われます。 それぞれの理由が成立します。世界の株や通貨市場では、1億人以 上の参加者がいて、皆、それぞれの理由づけをした上での予想から 今日の売りか買いかを決めているからです。 この中で注目すべきは、米国FRBの利上げ(15.12.16)と、今年1月 29日からの日銀のマイナス金利政策にもかかわらず、通貨とドル金 利の相場が真逆に動いていることです。 【円とドルの、奇妙な動き】 昨年12月には〔$1=121〜123円〕だった円は、マイナス金利の発 表後(1月29日〜)、一時、111円の円高に転じました。政策的な利 下げがあったのに、円が急騰するという奇妙なことが起こったので す。 (注)ドルに対する1円の上昇は、日経平均株価では300円から400 円の下落に対応しています。10円で3000円から4000円です。 円高で株価が下がるのは、日本の株式市場の売買でほぼ70%を占め ている海外ファンドのHFT(High Frequency Trading:超高速売 買)が、「円高→日本株売り」、「円安→日本株買い」とプログラ ミングしているという要因が大きいでしょう。 ◎円が10円(8%)も上がると、円高という要因だけで、日経平均 で3000円から4000円(15%〜20%)の下落になる傾向があります。 ドル/円の変動率の2倍から2.5倍の変化を日経平均はしているので す。 海外からの日本株の売買では、「円/ドル相場」が先に見えます。 日経平均CFD(差金決済取引)の、株価と円/ドル相場の、刻々と変 わるリアルタイム罫線の動き(10秒)を見ているとかります。相場 の動きは、「円/ドル相場→株価」です。先に円が変わります。通 貨の1円の変動に対して、日経平均が300円から400円という変化で す。 http://nikkei225jp.com/chart/ 現在は113.9円と、土曜日の政府・日銀の通貨介入(円の先物売 り)によって約3円、円安に戻してはいます(2月14日:午前)。 「円/ドル相場」はどう動いているのか。 ここを探求せねばならないでしょう。 【大きな疑問】 利下げは金融緩和ですから、普通なら通貨は下がります。日本の場 合、円安です。ところが今回、日銀のマイナス金利の決定とともに、 逆の円高に向かっています。なぜこんな現象が起こるのか? 121円から111円は10円(8.3%)という大きな変化であり、裏で数 十兆円の「ドル売り/円買いの超過」がないと起こりません。これ は、日経平均を3000円〜4000円も変化させます。 生じているのは、金利が下がる円が買われ、金利が上がるドルが売 られるという逆転した動きです。なぜ、奇妙な現象が起こるのか。 【株価も、利下げとは逆の動き】 日本の株価も同じです。一般に、利下げ(つまり金融緩和)がある と株価は上がります。 【期待収益率と株価】 〔株価=企業の次期予想純益×PER倍率〕です。これは、〔株価= 企業の次期予想純益÷期待収益率〕に置き換えることができます。 この期待収益率は、PER倍率の逆数です(1÷PER倍率=期待収益 率)。次期予想純益に対するPERを15倍とした場合、15の逆数の期 待収益率は〔1÷15=6.67%〕になります。この意味は、市場は株 を買うとき、6.67%の利回りを期待しているということです。 金利が下がると、市場が株価に寄せる期待収益率は利下げの分、下 がります。このため企業の予想純益が同じでも、金融緩和があると 株価は上がります。 【日経平均の25%の暴落】 ところが日経平均(225種)は、2015年12月の水準だった約2万から、 2月12日(金曜日:終値)は1万4952円へと約5000円(25%)も下げ ています。(注)日曜日の午前の、日経平均先物は1万5477円へと 500円戻しています。 円と株価は、FRBの利上げと日銀のマイナス金利とまるで逆の動き です。この理由は何かを、探求するのが本稿です。 理由を考えるのは、今後の予想に当たって、素材になるものを決め るためです。 【ご案内】 昨年12月に新刊になった拙著、『膨張する金融資産のパラドックス (矛盾)』は、金融資産(=金融負債)が、所得とGDPの増加より 大きいことが8年から10年から15年続くと、増えた貸付けの不良化 から、次の大きな金融危機がサイクル的に起こることを論証したも のです。 今回の通貨の動き、株価の下落、ドイツ銀行の危機に象徴される ユーロの危機も予測していると気がつきましたので、改めてご案内 します。自己宣伝ではありますが、皆さんの参考になると思います。 (アマゾン↓) http://www.amazon.co.jp/gp/product/482841858X/ref=s9_simh_gw_p14_d0_i1?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=desktop-1&pf_rd_r=0FPAGY3X2PBZXW2BFQ7K&pf_rd_t=36701&pf_rd_p=263612849&pf_rd_i=desktop ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.352:特別号:金融当局の政策とは逆に動く通貨と株価> 2016年2月15日:無料版特別号 【目次】 1.織り込みという現象の増加 2.円、株価、金利(国債価格)の動きの解釈 3.円と日本の株価の関係:「円安→株価上昇」、「円高→株価下 落」の同調 4.日銀のマイナス金利の後、円高に向かった理由 【過去の有料版の目次案内】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.織り込みという現象の増加
【織り込み現象の増加】 最初に結論を言うと、世界的に過剰な流動性(マネーの量)と、大 きくなったファンド・マネーのため、通貨・株・債券・金利を売買 する金融市場で、「織り込みの現象」が強くなっていることです。 ◎(定義)織り込みとは、相場に影響のある将来の要因を、市場の 主要なプレーヤーが「起こったものと仮想」して売買し、それが現 在の価格に反映されることです。 (1)例えば、米国FRBによる、ほぼ2か月後の利上げが確実である と市場の多数派が予想しているとします。 ↓ (2)そうすると、世界の外為市場では、ほぼ2ヵ月後の利上げを織 り込んで、ドル買い(=他の通貨売り)が増え、利下げはまだして いない今日のドルが上がります。 つまり、多数派の将来予想が通貨、株価、債券価格(国債や社債)、 そして金利の、今日の相場に反映します。これが織り込みです。 【織り込みが起こる理由】 織り込みが起こる理由は、金融商品(通貨、株、債券、金利、デリ バティブ証券)の売買は、売買差益であるキャピタルゲインの利益 を目的にしたものだからです。 株を買う目的は、会社の経営に参加することではない。経営には興 味がない。株の売買で利益を出すことです。利益は〔売る価格−買 った価格〕です。 安いときに買い、高いときに売ることが、株を買う人が目的にして いることです。同じ金融商品である通貨、債券(国債や社債)、金 利、デリバティブ証券においても同じです。 ▼織り込みの実際 【原則1】将来の予想を、現在の価格に織り込む行動 安いとき買うには、2ヵ月から数か月先の、株価を上げる要因(次 期予想純益、商品需要の増加、通貨、金利)が予想はされているが、 まだ株価は上がっていない時期に買わねばならない。 通貨でも同じです。ドルの売買では、ドルを上げる要因が実現して ない時期に買う必要があります。 雇用、景気、中国のドル売り(外貨準備の売り)の動きから見て、 2015年12月16日のFRBの利上げは、確実になったと予想できる。 ・現在は10月であり金利はまだ上がっていない。 ・しかし12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げが決定すれば、 ドルが買われて上がるだろうと予想できます。 金融商品の売買で利益を出すには、安いときに買い、高いときに売 らねばならない。実際の利上げの前後にはドルは買われて上がるだ ろう。上がったあとのドルを買っても意味はない。 金利はまだ上がっていない。予想される利上げがまだ確定してはい ない現在(15年10月〜11月)がドルを買う機会になるだろう。 事実、米ドルは、利上げ確定前の2015年10月中旬から11月にかけて 買い超が起こり、実際に上がったのです(後述)。 【原則2】この織り込み現象があると、影響する要因が実現する前 後から、価格は逆に動く 利上げなどの、金融商品の価格に影響を及ぼす要因が実現したとき や実現が確実になったときは、どうなるか。 【最近のドル指数での、織り込みの確認】 織り込み現象がある金融商品の場合、利上げ前に上がっていたドル は、利上げ前後には利益確定のために売られるものが増え、逆に下 がる動きになることが多い。(事例:ドル指数) http://jp.investing.com/quotes/us-dollar-index-advanced-chart 上記のドル指数(世界の通貨に対する実効レート)でのドル価格を 見てください。2015年12月1日に100に高くなっていたドル指数は、 12月16日の利上げを決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の前に、 98に下がっています。 15年10月、11月には、利上げ予想からドル高を予想して買い超にな っていたドルが、早々と利上げ前の12月3日から利益確定の売りた めに、売り超に転じたからです。 こうした動きが起こるのは、相場を主導しているヘッジファンド等 が安いときに買ったものを(10月、11月)、高くなったときに売っ ているからです(12月)。 あらゆる金融商品の、相場の価格は売買で決まります。上がるとき は買いが増えて買い超になっていて、下がるときは売りが増えて売 り超になっています。 【織り込みが剥がれた後は、更に将来の2、3か月を予想した次の織 り込みへ】 2015年12月に利上げされた後のドルは、今度は、2016年3月のFOMC (連邦公開市場委員会)による金利政策がどう向かうかの予想で動 くように、変わります。 2015年12月16日のFOMCの時点では、FRBの議長は、景気次第ではあ っても、2016年に年4回(0.25%×4回=1%)の利上げに向かうと 示唆していました。 【起こった変化】 ところが年初からの、中国株ショック、原油資源安、新興国の成長 率低下(投資の引揚げ)から、世界の株価は全面安の様相を呈しま す。このとき16年3月のFRBの利上げはないという市場の見方に転じ ます。 2016年の世界景気の低迷予想が浮上し、16年6月のドルの利上げも ないだろうという見方に転じたのです。 このため、年初のドル指数(実効レート:98〜99.5)は、日銀のゼ ロ金利突入後に、96付近にまで下げたのです(16年2月12日)。 【まとめ】 2015年10月から2016年2月までの、世界の通貨に対するドル指数の 動きは、「2か月くらい先のFRBの金融政策」を予想した価格織り込 みの行動です。 このため利上げでドルが下がり、利下げ予想でドルが上がるような、 逆の動きになります。 繰り返せば、金融商品の売買の目的は、価格差のキャピタルゲイン を得ることです。このため、安いうちに買って、高くなれば売る 「織り込み」の行動が増えているのです。 ■2.円、株価、金利(国債価格)の動きの解釈 金融政策が、以前より注目されるのは、マネー量の増加によって多 様になっている金融商品(通貨、株価、金利、債券、デリバティブ 証券)を動かしているからです。 1990年代まで外為の売買をする人は、少なかった。今、個人のFX (レバッジがかかる外国為替証拠金取引:口座数で約150万)も日 常化しています。 株式取引では、総口座数は4500万ですが、同じ人を名寄せしが上で、 売買の活動している人は700万人と言われます。 (注)欧米の新聞で、Mrs.ワタナベと言われるのは、日本人の個人 投資家のことです。 ▼円と金利(国債価格)と株価の動き 次は、昨年の12月から現在までの、円、長期金利、日経平均での織 り込み現象を見ていきます。円と日経平均も、ドルと同じように、 マイナス金利とは、逆の動きをしているのです。 【日本】 15年12月 16年2月1日 2月14日 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ・ドル/円 120.5円 121.1円 113円 ・長期金利 0.25% 0.22% -0.03% ・日経平均 1万8982円 1万8000円 1万5777円 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (注)2月14日のドル/円と日経平均は、日曜日の午後6:30時点で す。 ▼ドル/円の、奇妙な動きの背景 まず円ですが、15年12月に〔$1=122円付近〕だった円は、FRBの 利上げ後、まず117円にまで5円の円高になりました(16年1月21 日)。 ドルの利上げで、円安になるべき円が、円高(ドル安)に向かった のです。この間、世界の通貨に対するドル指数は99付近であり、変 化はありません。つまりFRBの利上げ後、普通なら下がるべき円が 上がったのです。 なぜこういったことが起こったのか。 【1.利上げにもかかわらず、米国の長期金利は下げた】 FRBによるFF金利(銀行間の短期金利)の利上げの後、上がるべき 米国の長期金利は、逆に2.3%(12月29日)から1.7%(2月10日) に向かって下がったからです。 http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=USGG10YR%3AIND 【ドルの長期金利が下がった理由:海外からの米国債の買いの増加 】 米国の長期金利がなぜ、0.6ポイント(2.6%に対して26%)も下が ったのか。FRBの短期金利の利上げにより、新興国から米国に還流 したドルと、中国の華人資本による「ドル買い/元売り」により、 米国の長期債が買われて国債価格が上がったからです。 (注)特に中国からは、1か月$1000億(12兆円)の速度で、民間 による「ドル買い/元売り」の資本流出が起こっています。 こうしたドル国債の買いのため、金利2.6%のドル10年債の価格は、 〔(1+2.6×10年)÷(1+1.7%×10年)=1.26÷1.17≒1.077〕 に上がったのです。残存期間10年の$100万の長期国債が、107.7万 へと7.7%も上がるのですから、大きな上げです。 (注)市中の金利は、国債価格で決まります。事例の2.6%の金利 の10年債($100万:残存期間10年)が、債券市場で買い超になっ て$107.7万に上がると、長期金利は1.7%に下がります。わずかな 金利の変化で、長期債は大きく流通価格が変わるのです。 【2.ドルの長期国債が上がったので、ドルの長期金利は下がった】 ドルの国債価格が上がると、金利は下がります。上記のブルーム バーグの金利チャートは、逆に見ると、米国の国債価格の上昇を示 すものになります。 FRB利上げ後、逆にドルの長期金利は下がったのです。原因は、 FRBによる利上げの中で、リスク資産(株)からドル国債に移動す るマネーの動きが起こったからです。ドル国債が買われて価格は上 がり、長期金利は下がるという動きを生みました。 【3.ドルの長期金利が下がったため、 ドル売り/円買いが起こった】 このドル金利の低下は、円に対しては「ドル売り/円買い」をもた らし、FRBの利上げの後に、逆に円高になるという動きが生じたの です。 FRBが短期金利を上げたのに、海外からのドルの長期債の買いが増 えて金利が下がり、ドルの長期金利の下落が0.6%と大きかったた め、円に対しては、大きな円高になっています。 国際資金市場を動く過剰な流動性(マネー)が、以上のように、複 雑な動きを生んでいます。 ■3.円と日本の株価の関係:「円安→株価上昇」、「円高→株価下 落」の同調 【1日80兆円の、円の売買がある】 世界の外為市場での通貨の売買は、1日に$5兆8290億(約700兆円 :2013年:BIS)です。これは年間ではなく、1日の売買高です。通 貨は、巨大に売買されています。 通貨別ではドルが1位(43%)、2位ユーロ(17%)ですが、円の構 成比も11.5%と高い。円は1日に〔700兆円×11.5%=80.5兆円〕も 売買されています。一方で東証での1日の株の売買額は3兆円です (2016年1月:東証)。株の26倍以上の売買があるのが円です。こ のため、円相場のほうから、株価相場に行く傾向が生じのです。 【日本の株式の売買では、70%を外人投資家が行っている】 日本株の売買3兆円のうち70%(2.1兆円)は、海外投資家(ヘッジ ファンド等)のオフショアからの売買です。日本株が上がる週は、 オフショアからの3000億円〜5000億円の買い越しがあります。これ は、海外からの売買ですから、「円/ドル」の売買を伴うものにな っています。 下がるときは、逆に2000億円から5000億円の売りになっています。 日本株は、残念ですが国内勢力(個人+金融機関+事業法人)の売買 は30%しかなく、海外からの売買で、価格が決まっている市場です。 以下は、株価が約20%下がった、2016年1月の投資主体別売買です。 【投資主体別の週間買い超/売り超 :16年1月と2月の1週:単位億円】 自己 個人 外人 信託 事業 他金融 (日経平均) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜 1週 -3764 5814 -4471 345 608 617 (-1337円) 2週 -2915 2566 -2109 1200 378 483 (-549円) 3週 -1165 277 -1902 1821 238 636 (-189円) 4週 207 -685 -2073 2707 -86 -93 (+560円) 1週 3078 1941 -6112 252 311 356 (-1984円) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 合計 -4559 9913 -16667 6325 1449 1999 1万4952円 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (注1)自己は証券会社の自己売買:個人は個人投資家:外人は外 人投資家:信託は信託銀行:事業は、事業法人:他金融は、銀行・ 生保・他の金融機関、元データは東証。 http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html (注2)証券会社の自己売買には、日銀による株ETFの売買に相当す る現物株の売買分を含んでいます(年間3.3兆円の枠)。信託には、 年金基金による買いが含まれています(総枠25%:32.5兆円)。わ が国株式市場は、2014年10月以降は、政府のPKO(価格維持作戦) が大きくかかかった官製相場です。日経平均2万円超えは官製相場 がもたらしたものです。 ◎上表を見れば明らかなように、年初来の外人の売り超(1兆6667 億円/5週)が、わが国の株価を20%下げた主因です。 【国内の個人投資家の売買は、逆張りの傾向】 700万人の国内個人投資家は「株価が上がる週は売り、下がる週は 買うという逆張り」をする傾向が強い。年初来、株価が大きく下が る中で、個人は9913億円を買い越したのですが、この買い超は、下 がる株の買いですから、上げるものではない。 【官製相場の売買は信託銀行経由】 信託銀行は、公的年金基金と公務員共済年金の株式投資を受託して います。これも下落への対抗としての6325億円の買い超ですが、外 人売りが強く、上げることはできなかったのです。 【株価は、70%の売買を行う外人投資家に依存】 外人が70%を占める売買構造からもわかるように、わが国の株式市 場は、上がるのも下がるのも、外国人投資家、新聞では投機筋と言 われるヘッジファンドの売買に依存しています。株の売買が海外か らのものであるため、日本株の売買には、必ずほぼ同時に「外為市 場での円/ドルの売買」が関係しています。 【高速プログラム売買:100万分の1秒単位】 この日本株のプログラムによる高速売買は、わが国でも株式市場の 売買の60%以上を占めるように増えています。このHFT(100万分の 1秒単位の高速売買)では、「円高→日本株売り」、「円安→日本 株買い」としているのです。以上が1円の円高に、300円から400円 の日経平均下落が対応している理由です。 日本の、トヨタを筆頭にした主な上場企業(約1700社)の売上のう ち平均で50%は海外です。輸出と海外での売上は、ドルで計算され ます。このため、円安になると円換算での売上と利益が増え、円高 になると売上と利益が減る構造があります。2000年代は、海外事業 の売上が増えたため、円安/円高が、上場企業の利益をもっとも大 きく左右する要素になったのです。株価=次期予想純益×PER倍率 (13〜17倍)です。 円高と予想されると、次期純益が減る予想になり、株価が下がるの です。 わが国では、「円高→株価下落」、「円安→株価上昇」が、同調し て、同時化しています。(注)休み明けの今日(2月15日:14:40 pm)は〔$1=113.9円〕の円安に戻り、日経平均は1万5872円へ と、金曜日より円/ドルでのほぼ2.5円分(940円)上げています。 主因は政府の介入です。 http://nikkei225jp.com/chart/ 2010年代では円高・円安が、株価を左右する構造ができあがってい ます。それなら、その円高・円安は、何を織り込んで生じているの か? ■4.日銀のマイナス金利の後、円高に向かった理由 利下げがあれば、その通貨は下がります。ましてやFRBは15年12月 にドルの利上げをし(12月16日)、その後に日銀は円をマイナス金 利にしました(1月29日)。普通なら金利が下がった円は、相当な 円安になるはずです。ところが実際は120円を大きく割り、一時は 110円にもなった円高です。 解くかぎは、FRBの利上げ後の、ドルの長期国債(10年債)の利回 り、つまり長期金利の変化にあります。ブルームバーグのグラフが 分かりやすい。 http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=USGG10YR%3AIND 15年12月16日 16年1月1日 2月11日 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 米国の長期金利 2.30% 2.27% 1.66% 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 FRBが0.25%の利上げを決めた日の長期金利(10年もの国債の利回 り)は、2.3%でした。3%くらいはあった米国にしては、低い金利 です。FRBが利上げをすれば、普通は長期金利も0.25%上がって、 2.55%くらいになるはずです。ところが金利の上昇はなく、16年1 月1日は2.27%でした。 そしてその後は、1.66%に向かって、逆に0.61%下げたのです。0. 61%gは大きな変化でないように見えます。しかしこの0.61%は2. 27%に対しては27%の変化であり大きい。 また現代金融は、信用借りを膨らませるレバレッジです。10倍のレ バレッジで取引していれば、0.61ポイントの金利変化は、10倍の6. 1%に相当します。 申し上げたいのは、超低金利の時代には0.61ポイントの金利変化は 大変化です。FRBの利上げ(0.25%)のあと、ドルの長期金利は逆 に0.61ポイントも下がるという変化をしているのです。 どうしてこんなことが起こったのか? 理由は、以下の3つです。 (理由1)FRBの利上げの後、新興国に投資・投機されていたドルが、 新興国通貨を売って、米国回帰をしていること。そのドルで、長期 国債が買われ、価格が上がり、金利は下がっている。 (理由2)新興国のうち、もっとも大きな中国は、民間が、1ヵ月に $1000億(12兆円)レベルの「ドル買い/元売り」を続けているこ と。これは、中国からの資本流出です。このドルで、ドル国債が買 われていること。 (理由3)超低金利の日本の金融機関は、円国債を日銀に売って得 た円で、ドルの利回りのあるドル長期債を買っていること。 2016年は、ドル長期債への世界の需要が高まっているのです。国債 は買いの増加で利回りが下がります。長期債の利回りが、その国の 長期金利のベースになります。 加えて2016年は、年初から、原油・資源の下落を含んで、世界経済 と米国経済の低迷が予想されるようになってきました。このため、 2016年に予想されていた、米国FRBの4回の利上げ(3月、6月、9月、 12月の各0.25%)が後退し、むしろ、利下げや米国もマイナス金利 に向かうかもしれないという予想に変わってきています。 以上が、1月1日の米国長期金利2.27%が、2月11日には1.66%に下 げている理由です。 ◎上がっているドルの長期国債を買った金融機関とファンドは、 16年3月と6月に予定されていたFRBの利上げの停止を織り込むと同 時に、逆の利下げやマイナス金利すらあるかもしれないと期待し始 めています。この期待(予想)が、上がった米国債を買わせていま す。 FRBが利下げをすれば、米国債の流通価格は、今より上がります。 もし、数か月先にFRBの利下げがない情勢(米国景気の好転、原油 価格上昇、ドルの大きな下落)になると、ドル国債は売られて価格 は下がり、ドル金利は上がります。 国債の売買もレバレッジの投機で、売買差益を得る行為ですから、 安いとき(金利が高いとき)に買い、上がったとき(金利が下がっ たとき)の売るという原則は、株価と同じです。 米国の利上げとともに、逆に、ドルの長期金利は2.27%から1.66% に下がりました。日銀は1月29日に、マイナス金利(-0.1%)を導 入したのですが、米ドルの金利低下が大きかったので、逆に円買い (円国債買い)が起こって、円は逆に、1ドル121円付近から110円 台に下がっています。 この円高のため、株価が20%以上下がったのです。株価は、円相場 の従属変数になっています。将来の、日米の金利を織り込む円相場 の変化で、株価が変化するということです。 【日本のマイナス金利に、拡大予想がある】 現在、円国債の金利は、1年債は-0.177%で、8年債(-0.006%)ま でマイナス金利です。10年債でやっと0.013%であり、20年債で0. 824%です。現在の国債金利では、近い将来、日銀のマイナス金利 がマイナス1%にまで進むと予想されています。 金融機関は、マイナス金利で、発行額面より高い国債を買っていま す。理由は、経済の停滞から、日銀は、マイナス金利を拡大するだ ろう。マイナス金利が大きくなれば、国債価格は一層上がるという 期待が、金融機関にあるからです。つまり、すでにマイナス金利の 高い国債を買っている金融機関は、現在の国債価格に、2ヵ月ある いは3ヵ月先の日銀による利下げ(マイナス金利の拡大)を織り込 んでいます。 【まとめ】 ◎本稿では、金融商品(株、債券(国債・社債)、金利、デリバテ ィブ証券)の売買において生じている「2ヵ月から3か月先のイベン トの織り込みの現象」について書きました。 (1)株価、金利、国債価格が、現在の価格に何の要素を織り込ん でいるかを見極める。 (2)価格に織り込まれた要素は、経済・金融情勢の変化によって、 今後、どう変わるかを予想する。 これが、金融商品の価格を予想するということです。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述のとき、より的確に書く参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、多くの希望がある共通のものは記事に反映 させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 http://www.mag2.com/m/P0000018.html 米リセッション入りリスク増大、市場混乱が引き金 By GREG IP 2016 年 2 月 15 日 13:12 JST 米国はリセッション(景気後退)に向かっているのだろうか。市場はそう示唆している。 ダウ工業株30種平均は12日時点で2015年5月につけた過去最高値から12.7%安の水準にある。安全逃避先としての需要が高い米国債の利回りが低下する一方、高リスク債券の利回りは上昇し続けている。そして、原油価格は約12年ぶりの安値を記録した。 とはいえ、経済指標からはリセッション入りの気配は見受けられない。1月の雇用の伸びは堅調で、雇用主は人員補充に苦労している。 こうした乖離(かいり)は、調査研究機関コーナーストーン・マクロが発表している二つの指標にはっきりと表れている。株式市場や社債利回りといった金融指標から算出される一つ目の指標によると、米国がリセッション入りする確率は現在50%。だが、融資延滞率や実質賃金などのマクロ経済指標に基づくもう一つの指標では、この確率はわずか28%だ。 当然ながら、市場がリセッション入りを読み誤ることは多い。しかし、市場の悪化が原因で経済がリセッションに陥る場合もある。景気は金利や所得など量的要因だけでなく心理の変化によっても左右されるため、景気の転換点は予測できない。この心理に影響を及ぼすのが市場だ。企業は市場からのシグナルを手掛かりに投資や雇用の是非を判断するからだ。つまり、リセッションの懸念は自己成就的である可能性がある。 ENLARGE 【上】米リセッション入りの確率(黄:市場関連指標に基づく確率、オレンジ:マクロ経済指標に基づく確率)、【下】左からドル円相場、10年物米国債利回り、NYMEX原油価格、ダウ工業株30種平均(いずれも2月11日時点) 投資家の心理を圧迫しているのは経済成長や原油価格への懸念だけではない。政策への不安もある。米連邦準備制度理事会(FRB)は追加利上げを推し進めるのか。中国は再び人民元の切り下げを実施するのか。英国は欧州連合(EU)を脱退するのか。米国民は既存の経済秩序をひっくり返そうとする大衆主義の大統領を選ぶのか。政策の不確実性が「リスクプレミアム」を生み、それが株価や債券価格を押し下げている。 経済に重圧がかかっていることは確かだ。輸出低迷やエネルギー設備の受注急減を背景に製造業は明らかにリセッションの状況にある。カーライル・グループのジェイソン・トーマ氏によると、国内総生産(GDP)に占める設備投資の割合は2008年時点でわずか6%だったが、09年にはGDPの減少幅の50%近くが設備投資の落ち込みによるものだった。これは景気循環に影響する。企業は機械設備などの購入を簡単に取り消したり延期したりするからだ。一方、住宅や自動車の購入といった個人消費も自由裁量によるものだが、こちらは相対的に堅調さを維持している。 今のところ、景気全般に関しては腰折れには至っていない。1月の雇用統計では、非農業部門就業者数が前月から15万1000人増加し、平均的な労働者の労働時間が増えたことから全体の週平均労働時間は昨年7月以来の大きな伸びとなった。また、1月に増加傾向にあった新規失業保険申請件数は2月6日までの週に急減した。 もちろん、市場の混乱が家計資産の目減りや企業向け融資の減少を招き、経済成長を押し下げる可能性はある。FRBが10日公表した半期に一度の金融政策報告を見る限り、企業が融資を受けられなくなるような危機が起きている証拠はなく、短期金融市場は正常に機能している。そして大半の世帯にとって、株安による資産の目減りは昨年の住宅の値上がりほど重大なことではない。 それでも、エネルギー関連企業の社債などの利回りはデフォルト(債務不履行)の可能性だけでは説明がつかないほど大きく上昇しており、銀行は貸出基準を引き締め始めた。 このような金融環境の変化は消費者や企業の動向を大きく変えることにもなり得る。スタンフォード大学のロバート・ホール経済学教授は2年前に発表した論文で、従業員を1人雇うことは機械設備を一つ買うようなものだと指摘した上で、将来見込まれる利益を現在価値に割り引く際に用いる「割引率」が、想定されるリスクの増加に伴い上昇すると、そうした投資の利益率は低下すると説明している。つまり、株価の下落と失業率の上昇はどちらもリスク回避志向の拡大と割引率の上昇を反映しているため、同時に起きることが多いというのだ。 相場の下落、心理の悪化、景気低迷は相互に影響し合う可能性がある。そのような悪循環をきっかけにリセッション入りの恐れが生じれば、中央銀行が介入してサーキットブレーカーの役割を担う。だが最近では、中銀が使える政策手段は限られている。 米連邦準備制度理事会(FRB)がまだ非常ボタンを押していないのも無理はない。米経済が完全雇用に近づく中、FRBは昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げ、2016年に合計1.0%の追加利上げを行う方針を示唆した。投資家はFRBのイエレン議長が先週の議会証言でこの追加利上げの計画を否定することを期待していたが、今更驚くことではないものの、そのような判断は「時期尚早」で利上げは「あらかじめ決められた」路線にのっとったものではない、というのが議長の発言だった。 それでも、FRBの政策に関して心配なのは、利上げを見送るかということよりもむしろ、必要に応じて利下げに転じなおかつ十分な効果を生むことができるかどうかだ。日本銀行は1月29日、欧州中央銀行(ECB)が2014年に実施したようにマイナス金利の導入を決定した。理論的には、マイナス金利の導入は投資家心理を改善させるはずだ。政策金利がゼロに達しても中銀にまだ他の政策手段があることを示しているからだ。だが、投資家は困惑しているようだ。マイナス金利は実際に景気支援になるのだろうか。あるいは、単に銀行の利益を圧迫するだけなのだろうか。 政策をめぐる不透明感がもたらす悪影響は他にもある。欧州銀行株が大きく売られているのは、一部の銀行を対象に規制当局が資本バッファー維持のために強制的に債券を株式に転換させるのではないか、という株式の希薄化に対する懸念が広がっているからでもある。皮肉なことに、当局がこうした株式への転換を政策手段の一つに加えたのは、金融危機が起きたときに納税者が支援負担を強いられないようにすることが目的だった。だがエバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は、政策効果は「景気循環を増幅させる」もの、つまり景気への負荷を緩和させるどころか増大させるものだと指摘する。株式市場で狙い撃ちされている銀行は融資に消極的になりやすい。 その上、今年は政治的不透明感も薄れるどころか深まる見通しだ。まず、英国が欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を実施する公算が大きい。英国がEU脱退を決めれば、スコットランドが住民投票で英国からの独立を図るかもしれない。米国では、大統領選の候補者氏名争いの第2戦となる9日のニューハンプシャー州予備選で、共和党は富豪の実業家ドナルド・トランプ氏が、民主党はバーニー・サンダース上院議員が勝利を収め、11月の本戦で革新的な経済改革を公約に掲げる大衆主義の大統領が選出される可能性がある。 コーナーストーン・マクロの政治アナリスト、アンディ・ラペリエール氏は「(米大統領)選挙が極端な結果になれば株式市場にとって大きなリスクが生じるが、投資家はその可能性を排除できない」と言う。 関連記事 • 米リセッション入り確率、21%に上昇=WSJ調査 • 米新規失業保険申請、先週は1.6万件減の26.9万件 • 投資家が今年注目すべき7つのこと http://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BW387B_LIOND_16U_20160211184221.jpg
米リセッションの主な警報、まだ鳴らず By GENE EPSTEIN 2016 年 2 月 15 日 15:05 JST 株式の弱気相場から信用スプレッドの拡大に至るまで各種の金融指標が、リセッション(景気後退)の可能性を示唆している。それに反し、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)の指標は正反対の信号を送っている。 経済指標の中で最も基礎的な失業率を見てみよう。11日付のウォール・ストリート・ジャーナルの社説は、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が「失業率を厳密に追うケインズ派経済学モデル」に固執していると苦言を呈した。 イエレン議長の場合、この批判はもっともかもしれない。だが、目先の経済見通しの主要指標として失業率を取り上げる上で、ケインズ派の信奉者である必要はない。そしてこれまでのところ、失業率は心強い兆候を示している。 金融指標は有益である一方、誤報を発することも多い。一例を挙げると、リセッションの前には毎回、株式市場がリセッション間近という警報を発する。 問題は、リセッションが起きない場合でも株式市場がしばしば同じ警報を発することにある。教訓となった誤報は1998年晩夏、アジアの経済破綻がきっかけで生じた株価の暴落だ。それから数カ月後、相場は回復して高値を更新した。リセッションはやってきたが、始まったのは2001年で、これこそ株式市場が「オオカミ少年」となった分かりやすいケースだ。 リセッション入りについては失業率も間違った警報を発したことがあるが、このところ長期間は全く警報を鳴らしていない。その理由は次のように説明できる。 まず、1948年以降の毎月について、失業率の3カ月前との変化を計算した。例えば、今年1月の失業率は4.9%で、昨年10月の5%と比べると変化はマイナス0.1%となる。昨年12月の5%も、同年9月の5.1%と比較するとマイナス0.1%だった。これを1948年までさかのぼって計算した。 注目すべきは以下の点だった。過去1年間、実際にはここ3年にわたり、この変化がプラスとなった月はなかった。ゼロの月も若干あったが、大半の月は失業率の着実な低下をうかがわせた。失業率の変化が最後にプラスとなった月は2013年1月で、その時の失業率は8%だった。 これはシャーロック・ホームズの「吠えなかった犬の推理」に似たケースと言える。というのも、かつてはリセッションが迫ると失業率は一貫して警報を発していたためだ。1948年以降の期間と言えば、第二次世界大戦後に生じた11回のリセッションを全て網羅する。そして各リセッションまでの1年間には、3カ月前と比較した失業率が少なくとも1回、通常は複数回プラスとなっていた。 08年1月に始まった直近のリセッション前の1年間を見ると、失業率がプラスとなったのは7回に達した。07年1月の失業率は4.6%で、同年12月には5%へ上昇していた。景気縮小の前に失業率が上昇するのは、労働市場がリセッション前のかすかな揺れを感じ始めるためだ。 経済がリセッション入りしている場合、あるいはリセッションが間近である場合、失業率の上昇でそれを把握できることになる。昨年11月の失業率は5%だった。つまり、3カ月前と比較した失業率が数年ぶりにプラスになるには、2月の失業率が5.1%となる必要がある。それでも誤報となる可能性はあるが。 関連記事 米リセッション入りリスク増大、市場混乱が引き金 米リセッション入り確率、21%に上昇=WSJ調査 株安が先か、不景気が先か
米国債、当面は最良の投資先 By AMEY STONE 2016 年 2 月 15 日 15:12 JST いつもは穏やかな米国債市場だが、先週は大荒れの一週間だった。安全逃避の買いが膨らむ中、指標となる10年物米国債利回りは11日朝方の取引で1.53%というあぜんとするほどの低水準をつけたが、その後上昇に転じ、前週末12日は終値ベースで1.73%だった。 それでもこれは年初の2.23%よりも0.5%低い。年初時点では、米連邦準備制度理事会(FRB)による極めて緩やかな利上げが見込まれる中で利回りはやや上昇する、と予想されていた。 状況が変わるのは何と速いことか。金利ストラテジストらの頭には突然、10年物米国債利回りは実際にどこまで下がるのか(今や一時的な1%割れもあり得そうだ)、そしてFRBはマイナス金利政策の導入を余儀なくされはしないかという大きな疑問が浮かぶようになった。 FRBのイエレン議長は先週の議会証言で、緩やかな利上げの道筋をたどる方針を引き続き示唆しつつも、必要ならマイナス金利の導入を検討する考えを明らかにした。 幸運にも米国債を保有している債券投資家にとって、現時点で米国債を手放す理由はない。イーグル・アセット・マネジメントの債券部門責任者、ジェイムズ・キャンプ氏は「世界中(の投資家)が米国債を保有したがっているのだから、少しでも保有していることを喜ぼうではないか」と言う。 世界の市場情勢を見る限り、米国債に対する甚大な需要は収まりそうにない。他の先進国の国債利回りは米国債よりもはるかに低い。ドイツの直近の10年物国債利回りはわずか0.25%で、日本の同利回りは先週の取引で一時的に初めてマイナスをつけた。HSBC証券の金利ストラテジスト、ラリー・ダイヤー氏によると、11日に米国債が大きく買われたのは、誰も売ろうとしない中で流通量が少ないことが一因だった。 株式やハイイールド債などの持ち高を減らしたい投資家にとって、わずかな利回りを得るためでなく、安全な退避先として米国債を買うことは道理にかなう。モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、ジム・キャロン氏は「米国債は効果が期待できる非常に数少ないヘッジ商品の一つだ」と指摘する。 市場が真のショックに見舞われれば、米国債への需要はさらに急増し、10年債利回りは一段と低下する可能性がある。ダイヤー氏によると、FRBは銀行ストレステスト(健全性審査)で、同利回りが0.2%?0.5%に下げた場合をシナリオの一つとして想定している。同氏は、実際にそうなればFRBは緩和政策に転じるだろうが、「だからといってフェデラルファンド(FF)金利がマイナスになるわけではない」とし、「願わくはそのようなシナリオが現実のものにならなければよいのだが」と話す。 ダイヤー氏は10年債利回りが今年末に1.5%をつけるとの予想を堅持している。この予想は昨年11月時点では非常に強気な姿勢に見えた。 利回りの急低下を招いた要因はまだ消えていない。世界各国で経済は減速し、多くの中銀が利下げを進めている。中国は依然として世界景気の鍵を握る不確実要素であり、大幅な原油安が進む中で多くのエネルギー関連企業は赤字に陥っている。今年はハイイールド債のデフォルト(債務不履行)が相次ぐ見通しだ。 一方、イエレン議長はリスクを十分認識していることを明らかにしているが、FRBは正式には利上げ計画を撤回していない。今のところ、米経済は個人消費に支えられて順調に成長し、雇用市場も健全性を維持している。 オッペンハイマーファンズの最高投資責任者(CIO)、クリシュナ・メマニ氏は目先の大きなリスクとしてFRBの失策の可能性を挙げ、「雇用指標が今後も堅調に推移し、市場の低迷をよそにFRBが引き締めを進めれば、大きな間違いとなるだろう」と指摘する。FRBはおそらく賃金の伸びが少し上向いたことで良しと認め、利上げをやめるというのが同氏の予想だ。 原油相場が落ち着き、FRBが利上げ路線を撤回すれば、投資家は今よりも安心してリスクを取るようになるだろう。社債の投資妙味が増し、米国債は割高感が増すかもしれない。だが、そうなるのはしばらく先になりそうだ。キャンプ氏は「10年の投資で利回りが年率1.5%などという商品よりも高い収益が得られる投資先がいずれ現れるだろう」としつつも、「だが当面は(米国債利回りの)その水準で満足できるはずだ」と指摘する。 関連記事 市場の混乱続くか−景気変調めぐる議論に拍車で 米リセッション入りリスク増大、市場混乱が引き金 市場の混乱続くか−景気変調めぐる議論に拍車で 金利先物市場ではFRBの年内利上げ見送りが織り込まれている
By MIN ZENG, CORRIE DRIEBUSCH AND MIKE CHERNEY 2016 年 2 月 15 日 13:14 JST 更新 市場関係者らは再び慌ただしくなりそうな1週間に身構えている。世界経済が変調の兆しを見せているのか、あるいは金融市場でそうした兆しが見られるだけなのかをめぐって議論が激しさを増していることも、相場をさらに不安定にさせそうだ。 今年の株式相場は軟調で、景気敏感銘柄とされる銀行株、自動車株、消費関連株が特に売られている。一方、安全性の高い国債は価格が急騰し、米国債の10年物利回りは年初来で0.5%余り低下した。 いわゆる信用スプレッド(米国債よりもリスクが高い債券を買う投資家が要求する上乗せ利回り)が上昇していることもあり、こうした相場展開はリセッション(景気後退)入りを示唆しているのではないかとの声が多く聞かれる。 だが投資家の間では、米経済がリセッション(2四半期連続のマイナス成長)入りの危機にあるようには全く見えないとの声が多い。むしろ、米経済はペースこそまちまちでも拡大を続けているとみている。事実、何か月も雇用が着実に伸び、直近では12日発表の1月の小売売上高が予想を上回った。市場がリセッション入りのシグナルを発することに頼っている向きは、中銀が緩和局面に入る前と違って経済内部の健全性をもはや反映していない機能不全の指標に注目している恐れがある、との声もある。 アナリストや運用担当者は、こうした議論が展開され、株式や債券、為替の値動きがさらに大きくなることで、ボラティリティーは高まり続けると予想している。 ヘッジファンドのナインアルファ・キャピタルの共同創業者、ジェイソン・エバンズ氏は、市場は不安定状態にあるとし、「人々はただ、いま何が起きているかを把握できていない」と述べた。同氏はドイツ銀行とゴールドマン・サックス・グループで米国債取引部門責任者を務めた経歴を持つ。 13兆ドル規模の米国債市場のボラティリティー(変動率)を測る代表的な指標は先週、1年ぶりの高水準に達した。JPモルガン・グローバルFXボラティリティー指数によると、為替市場のボラティリティーは2011年末以来の高水準に達している。 シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX、恐怖指数)は先週上昇したが、それでも昨年8月に付けた直近の高水準を大きく下回ったままだ。 このことから、経済成長への不透明感がくすぶり、非伝統的な金融政策手段が国際金融システムに及ぼす影響も見通しにくい中、資産をどう配分すればよいか運用担当者がますます頭を悩ませていることが分かる。 先週末12日の米国株の反発が短命に終わるのではないかと懸念する声もある。春節(旧正月)のため1週間休場していた中国市場が15日に再開し、ここ最近の他市場の下げに追い付こうとする可能性があるためだ。同日の米国株式市場および債券市場はプレジデンツデーの祝日で休場となる。 ウォーラックベス・キャピタルのシニアバイスプレジデント、ジム・ライアン氏は「中国で何か動きがありそうな気がする」とし、そうなっても米市場は16日まで反応することができないと述べた。 15日にはさらに、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が欧州議会の委員会で証言する。ドラギ総裁は1月、3月のECB理事会で追加緩和に踏み切る可能性を示唆していた。 米連邦準備制度理事会(FRB)は17日、1月26日・27日分の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を公表する。市場関係者らは、昨年12月に9年ぶりの利上げに踏み切ったFRBに追加利上げする意欲があるか手掛かりを探そうとするだろう。 また、19日には米労働省が1月の消費者物価指数(CPI)を発表する。アナリストらにとっては、FRBの目標とする2%を3年8カ月連続で下回っているインフレ率が少しは上昇したかを確認する新たな機会となるだろう。 FRBの金利政策に対する予想が反映される金利先物市場では、年内の利上げ見送りが織り込まれている。 市場の混乱を受け、FRB関係者らは、経済成長と雇用拡大は着実に進みインフレ率は緩やかに上昇するという見通しを数カ月先まで維持することができるか再検討しつつある。関係者らは今のところ、景気拡大が続き金利は上昇するとの見方を維持しているが、イエレンFRB議長は先週の議会証言でどんな選択肢も排除しない考えを強調した。 レイモンド・ジェームズの債券資本市場責任者、ケビン・ギッディス氏は「足元の相場が不安定な要因の大半は、市場とFRBの考えが明らかに乖離(かいり)していることにある。一方は正しく一方は間違いだと経済指標が証明するまでこうした状況は続きそうだ」と述べた。 米国は経済成長率が金融危機前の平均水準を下回っているにもかかわらず、一部の尺度で見ると大国の中では最も健全な状態を維持している。このように経済に関する明確なシグナルが不足していることなどを反映し、市場の混乱が短期間ないし無傷で終わると考える向きはほぼいない。 ペイデン&リゲルのマネジングプリンシパル、ジム・サーニ氏は「これは後になってみれば一時的な動きだったと振り返ることになるのだろうが、それでも6カ月以上は続くとみている」とし、市場は米大統領選が行われる11月まで不安定な展開が続くだろうと述べた。 米経済については「非の打ち所がないわけではないが、足元はしっかりしている」と評した。 関連記事 金融市場動揺【特集】 欧州銀行株、いまが絶好の買い場か 世界の市場で何が起きているのか−5つの背景 低金利が米経済に及ぼす深刻な影響 Business | 2016年 02月 15日 18:02 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:日本勢のドル調達コスト一段高、米5年債投資は一時「逆ザヤ」
[東京 15日 ロイター] - 日銀のマイナス金利導入を受けて、本邦勢によるドル調達コストが一段と上昇している。これまで投資対象として人気があった米国債5年物の利回りを一時上回り「逆ザヤ」水準に達した。世界的な金融規制強化や邦銀のドル資金借り換えニーズの高まりが大きな背景だが、邦銀の信用リスク悪化も一因となっている。 <4年3カ月ぶりの高水準> 円投/ドル転スワップによるドル調達コストは15日、3カ月物で115ベーシスポイント(bp)で推移している。この水準は、欧州債務危機が深刻化していた2011年11月以来4年3カ月ぶりの高さだ。 同調達コストは9日に130bp付近まで拡大し、5年物米国債の利回り(1.2%付近)を上回る水準となり、事実上、本邦勢のヘッジ付きの米国債投資は逆ザヤとなった。 本邦勢が外貨建て資産に投資する際、通常は、コマーシャルペーパー(CP)や譲渡性預金(CD)など短期債務の発行や、債券レポ取引、為替スワップ取引等を利用して為替リスクを回避する。 ただ、2014年7月に米国証券取引委員会(SEC)が公表した米国のMMF(マネー・マーケット・ファンド)の規制強化に伴い、邦銀のCPやCDの主要な買い手だった米MMFからのドル資金供給は極端に細った。 一方、米国債レポの規模は、金融規制の影響で大幅に減少。結果的に重要性が増した円投/ドル転スワップ(円資金を担保にドル資金を調達する取引)では、マイナス金利導入以降、本邦勢のドル調達コストが顕著な上昇圧力に直面している。 <邦銀の信用リスク悪化も一因> 邦銀の信用リスクの悪化も一因だ。前週には一部欧州銀の経営への不安が高まるなか、思惑先行的にマイナス金利による邦銀の収益圧迫という懸念が高まってしまった。 「足元では、昨年11月に借りたドルの短期資金の借り換えニーズが集中。加えてマイナス金利導入を受けて、邦銀のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドが急上昇していることが、ドル調達コストの上昇圧力となっている」と、SMBC日興証券・シニア金利ストラテジストの野地慎氏は分析する。 マークイットによると、三菱東京UFJ銀行の5年物CDSスプレッドは13日時点で160.124/180.124bpの気配。 三井住友銀行の5年物CDSスプレッドは、15日時点で168.754/188.754bpの気配。邦銀のCDSスプレッドは、マイナス金利導入後に急騰し、3年超ぶりの高水準となっている。 スワップ取引でドル供給/円運用サイドとなる欧米銀は「バーゼル3など金融規制の影響で、信用リスクにはナーバスにならざるを得ない状況」(外資系金融機関)といい、対邦銀とのスワップ取引には後ろ向きな機関が多い。 <「得する」海外勢はJGB投資> 一方で、一部の外銀は、裁定機会を利用して日本国債(JGB)での運用を拡大しているもようだ。 欧米金融機関は、円投/ドル転スワップで発生しているベーシス(ドル調達の上乗せ金利)のおかげで、マイナス50bp程度で3カ月物の円資金を調達できる。こうして調達された円資金を、マイナス12.5bpの利回りのJGB5年物で運用すれば、十分に運用利益を確保できることとなる。 市場では、日銀のマイナス金利導入後も円高・株安が生じていることから「近い将来、マネタリーベース目標の引き上げが、マイナス金利のさらなる引き下げと同時に行われる可能性が高い」(野地氏)との見方も広がっている。 日本の短期金利低下や日銀の総資産拡大は、ドルを中心にした外貨調達コストの上昇につながる。 日銀のマイナス金利導入の目的の一つは、国内金融機関のポートフォリオ・リバランスの促進だったが、結果的に外債投資が行いにくくなるなど、一部では「逆目」の現象も出始めている。 (森佳子 編集:伊賀大記) http://jp.reuters.com/article/dollar-yen-idJPKCN0VO0TB?sp=true Business | 2016年 02月 15日 16:59 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:縮む個人消費、「官製春闘」の成果実らず
[東京 15日 ロイター] - 2015年の個人消費が実質国内総生産(GDP)ベースで306.5兆円と、安倍晋三内閣が発足した12年の308.0兆円から1.5兆円縮小した。 3年連続で政府が賃上げ増を働きかけかたが、消費活性化にはつながっていない。原油安効果などで名目GDPは増加したものの、企業の内部留保が積み上がるだけで、消費増に波及していない。足元の市場で動揺が広がっており、先行きの不透明感が高まっている。 <消費の流行にも変化> 15日発表の15年10─12月期GDPは、個人消費悪化を主因に2四半期ぶりのマイナス成長となった。個人消費は306.5兆円と、12年の308.0兆円から縮小。東日本大震災のあった2011年の301.2兆円以来の低水準だ。 2013年当時、「プチぜいたく」と呼ばれた消費トレンドと、最近の状況は様相が違う。 例えば、流行している口紅の色合いの変化は女性なら敏感にわかるはずだ。資生堂(4911.T)によれば、13年秋冬は「資生堂・ラッカールージュ413」のブライトレッドの口紅が人気だった。真紅に近い色味の流行は、バブル期以来と言われていた。価格はやや高めの3500円(税抜き)。 今シーズンの注目色は「マキアージュ・デュアルカラールージュ10番」。色味も質感もすべて主張し過ぎないのが主流となっている。唇の自然な赤みを再現する発色が特色のこのシリーズ、価格は店舗によっても異なるが、ほぼ2700円(税込)。 好まれるワインの銘柄も大きく変化している。2015年の年間ワイン輸入量は、初めてチリワインがフランスワインを抜き、トップに躍り出た。 キリンホールディングス(2503.T)は、チリワインの人気について「コストパーフォマンスがいい。低価格戦略ということで300円台、400円台という品ぞろえに力を入れている。日本とチリのEPA(経済連携協定)も低価格の要因の一つ」(広報)と、価格面の要因を挙げる。消費の現場では、再び節約志向が息を吹きかえいているように見える。 <3年連続の官制春闘の成果実らず> 政府の当初のシナリオでは、原油安の恩恵で企業収益が拡大して「官制春闘」を賃上げ増につなげ、増税や物価高で目減りした実質賃金を押し上げ、それをテコに消費が回復するシナリオを期待していた。 また、原油価格低下による「交易損失」の減少幅は、15年に前年比7兆円のとなり、国内企業は14年以降、四半期ごとに過去最高益を更新するところが続出した。 ところが、所得面では「実質総雇用者報酬」が消費増税前の水準に戻らず、家計は増税や円安転嫁の物価高を克服できていない。 その要因の一つとして指摘されているのが、日本全体でみるとベースアップ拡大の動きが期待ほど広がらなかったことだ。 日本総研・調査部長の山田久氏によると、ボーナスに比べてベースアップによる消費への影響度は数倍に上る。しかし、雇用維持を優先する日本では、労使とも企業負担の大きなベースアップには抑制的だ。 ベア率は大企業でせいぜい0.7%程度。雇用の7割を占める中小企業でベースアップを実施したのは、2015年で全体の18%に過ぎない(経済産業省調べ)。 さらに賃金水準の低い非正規雇用者の比率が4割まで拡大し、人手不足で雇用にタイト感は生まれても、安心感にはつながっていない現実もある。 <名目値は拡大しても、実質は1─3月期も低調に> 他方、目立つのが名目GDPの拡大だ。この3年間ほぼ右肩上がりで拡大、伸び率は5%と実質値の1.7%に比べると大幅だ。 その理由は、輸入金額の減少により付加価値金額が大きくなったからだ。1─3月期も原油価格の一段の下落が、名目値にはプラス効果だ。 しかし、日本企業の多くは、コスト減を生産増や設備投資、人件費増にはあまり回さず、キャッシュポジションを積み上げた。その結果、付加価値増には結び付かず、実質GDPが名目に比べ、伸び悩む結果となっている。 ニッセイ基礎研究所・調査室長の斉藤太郎氏は「いくら名目金額が膨張しても、実体としての経済活動が活発化していないのでは、ほとんど評価できない」とも指摘する。 みずほ総研・シニアマーケットエコノミストの末広徹氏も「1─3月期は、世界経済の減速も意識され、実質GDPはせいぜい1%成長程度とみている。10─12月期のマイナス1.4%を取り戻せるとは思わない」と予想。1─3月期は暖冬の反動やうるう年効果で個人消費が反発するとみられるものの、輸出の悪化幅が大きくなれば、2四半期連続マイナス成長の可能性も否定はできないとみている。 16年は世界経済減速が意識され「下振れリスクが出てきた」(政府筋)だけに、2四半期連続のマイナス成長を回避できるか、政府の経済政策は、正念場を迎えそうだ。 *見出しを修正しました。 (中川泉 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/gdp-abe-idJPKCN0VO0IF FX Forum | 2016年 02月 15日 18:01 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:株反発は本物か、リスクオフ転換の鍵=岩下真理氏 BY 岩下真理 SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト [東京 15日] - 日銀のマイナス金利導入から2週間。為替市場では、リスク回避の円高から米国不安・米利上げ観測後退のドル安に変貌しながら、ドル円は11日に一時110円台に突入した。日銀の奇策で円高を阻止したのはわずか2日、先週は11円程度の円高進行を招いてしまった。 その後、12日発表の米1月小売売上高が市場予想を上回ると、米国経済に対する過度な悲観論は和らぎ、週明けには114円近辺まで戻している。一方、日経平均の12日終値は1万5000円割れまで急落。経済最優先を掲げる安倍政権にとって、2014年10月のハロウィーン緩和前の水準まで株価が急落したことに、危機感は強まっているだろう。 12日、安倍首相は黒田日銀総裁、浅川財務官と会談した。週明けの日経平均は、米株反発の流れと政策期待もあって1万6000円台回復と大幅上昇したが、日本だけで何ができるかだ。それでも日本は今年、主要7カ国(G7)議長国であり、この危機対応でリーダーシップを示すチャンス到来とも言えるが、実際にはどれだけ米国と中国に働きかけられるかだろう。 筆者が考える処方箋は、まず中国が景気対策として具体的な財政出動を発表すること、加えて人民元を安定化させる意向を強く示すことだ。さらに、日米欧中銀が行動の伴った協調姿勢を明確に示すことも必要だろう。 報道によると、20カ国・地域(G20)の協議では新興国の資本流出への対応が焦点になる見通しだ。黒田総裁が、1月のダボス会議で個人的見解として「中国の資本規制が為替相場の管理に役立つ可能性がある」と発言したのも、一案の提言だったことがうかがえる。 一方、周人民銀総裁は直近のインタビュー記事で、元売りをけん制しつつ外貨準備で相場を支える余地があると示唆。G20会合では、金融市場の混乱に対して協調姿勢は確認されようが、先進国と新興国との利害が一致しない面も多く、この会合で市場が期待するような具体策が示されることは難しいだろう。 昨年9月のアンカラG20会合時も、根本的な解決に向けて、米中にボールが投げられた格好だった。他方、中央銀行サイドでは、すでにドラギ欧州中銀(ECB)総裁は3月緩和の可能性を示唆しており、物価見通しの下方修正に伴ってマイナス金利のさらなる引き下げに踏み切る可能性は高い。日銀も危機的な状況であれば、追加緩和を辞さないはずだ。 米連邦準備理事会(FRB)は、昨年12月時点での年4回の利上げペースの見直しを、3月発表の新たなドットチャートなどで示すと予想する。その一連の流れにおいて、何らかの協調姿勢を示す工夫が求められよう。 <日本経済は持ち直すのか> 15日朝に発表された日本の10―12月期実質国内総生産(GDP)1次速報は、前期比マイナス0.4%、年率マイナス1.4%と2四半期ぶりのマイナスとなり、市場予想平均の年率マイナス1.2%からやや下振れた。 一部予測にあった年率マイナス2.0%台まで落ち込まずに済んだが、中身を見ると解せない部分がいくつかある。最大の下押し要因は個人消費(寄与度マイナス0.5%)であり、次に輸出(同マイナス0.2%)も足を引っ張った。その一方で押し上げたのは、輸入減少(同プラス0.3%)と設備投資(同プラス0.2%)だ。 筆者は関連統計から、輸出はプラス、設備投資はマイナスを見込んでいたので、この2項目の動きは予想外だった。前者は日銀の実質輸出入と真逆の動きであり、為替換算時のズレがあるにせよ、多少なりとも季節調整の歪みがあるのかもしれない。 後者は各種設備投資計画の強さとは整合的とはいえ、資本財や建設財出荷の動きと大きく異なり、ソフトウェア投資の押し上げが読み切れなかった部分もありそうだ。3月1日発表の10―12月期法人企業統計の数字次第で、同月8日発表のGDP2次速報では多少の修正があるだろう。 今回、個人消費は前期比マイナス0.8%と、7―9月期同プラス0.4%から大幅マイナスに転じた。暖冬の影響もあって衣服とガソリンが落ち込み、テレビも低迷したようだ。雇用者報酬の前年同期比は実質プラス1.8%と3期連続のプラスでプラス幅も拡大。毎月勤労統計が示す鈍さよりも所得環境の改善を物語っている。だが、所得面の後押しがあっても、天候要因や先行き不安に伴う節約志向が強ければ、消費は低迷する。 同じ10―12月期実質GDPの前期比年率の伸びは、速報値で米国がプラス0.7%、ユーロ圏がプラス1.1%だ。日本のマイナス1.4%はかなり弱い。それでも10―12月期は過去の数字であり、重要なのは1―3月期以降に持ち直していけるかだ。 10日発表のESPフォーキャストの2月調査(回答期間は1月27日から2月3日)では、予測平均で10―12月期の落ち込み(前期比年率マイナス0.76%)から1―3月は持ち直す姿(同プラス1.44%)が示されている。過去20年間、5回ある閏年の1―3月期はいずれも年率プラス2%以上の高成長となっている。今年も1―3月期の生産計画が強めスタートであり、その後、自動車関連工場の火災で下振れやむなしだが、10―12月期の反動増は期待できる。 ただし、懸念されるのは、年明け以降の海外経済の先行き不透明感および急速な円高・株安進行が、企業行動や消費に悪影響を及ぼさないかだろう。 <必要なのは政府と日銀の合わせ技> 日本発の悲観論にならないため、今後、政府の対応として考え得る対策はまず為替介入だ。11年には、8月4日と、10月31日から11月4日に、日銀の追加緩和とセットで為替介入が実施された(後者の為替介入は10月27日の追加緩和後の週明け以降に実施)。ドル円の当時の水準(75円程度)に比べ、現水準はまだ耐久力があるようにも見えるが、調整スピードの速さに危機感は強まっている。 次に考え得る対策は、5月の伊勢志摩サミットの前に肉付けをするとしている成長戦略の具体化、補正予算の編成、消費増税(17年4月)の先送りだろう。財政再建を進める上で消費増税先送りは将来世代への負担先送りにすぎず、避けたいものの、最後は政治決断となる。 2月3日の黒田総裁の講演で、最後の決め台詞は「できることは何でもやる」だった。日銀のマイナス金利導入の失敗は、金融機関の収益減少懸念がもたらす銀行株下落という波及経路の悪影響を甘く見ていたこと、欧米の信用面にも不安を広げてしまったことだ。マクロ面の効果はかなり時間が必要であり、マインド面にもマイナス作用となりかねず、市場はあっという間にダメ出しをした状況だ。 よって、日銀の次なる追加策としては、すぐにマイナス金利を深堀りしていくよりも、昨年12月の補完措置を活用する形で、再び量で攻める国債買い入れの増額(実弾20兆円)や、銀行保有株の売却再開の延期などを決定した方が得策だろう。 そもそも、量とマイナス金利の両立は難しいと筆者は考えており、量的・質的金融緩和(QQE)の枠組み自体を変えないのなら、当面はこれ以上、マイナス金利に触らないという勇気ある決断も必要ではないか。すでに緊急の金融政策決定会合の観測も出始めているが、日銀の独走では一過性で終わる可能性が高い。 やる以上はムダ撃ちにならないよう、政府との合わせ技(為替介入、経済対策とのポリシーミックス)やG7の国際協調の一環として行うなど、効果的なタイミングと組み合わせ手段を検討すべきだろう。 *岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) *本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-mari-iwashita-idJPKCN0VO0OF ユーロ圏インフレ率予想の下方修正続く、原油の下げ響く−チャート 2016/02/15 18:59 JST
(ブルームバーグ):エコノミストらはユーロ圏の今年の平均インフレ率がわずか0.5%との見通しを示し、前月調査時の0.8%予想から下方修正した。2017年の予想は1.5%で据え置いている。原油価格が2015年5月の高値から半分余り値下がりしたことや、ドルと人民元に対するユーロの強さが今年の見通しにさらに影を落とした。インフレ期待は欧州中央銀行(ECB)が目安とする2%弱を下回る水準にとどまっている。 原題:(BN) Euro-Area Inflation Revised Down as Oil Continues to Fall: Chart(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Joshua Robinson jrobinson37@bloomberg.net;ニューヨーク Andre Tartar atartar@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Marco Babic mbabic@bloomberg.net 更新日時: 2016/02/15 18:59 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2L0DZ6TTDS801.html 中国株:休場明け下落、金融や工業安い−香港H株は5カ月ぶり大幅高 2016/02/15 18:12 JST (ブルームバーグ):春節(旧正月)連休明け15日の中国株式相場は下落して取引を終えた。香港上場の中国本土企業の株価は上昇した。 上海総合指数は前営業日比0.6%安の2746.20で終了。産金会社の株価が上昇したが、金融や工業関連が下げた。同指数の年初来の下落率は22%と、世界の主要株価指数でギリシャ株に次いで2番目に悪い。 パートナーズ・キャピタル・インターナショナル(香港)の温天納(ロナルド・ワン)最高経営責任者(CEO)は、中国の投資家が「非常にボラティリティ(変動性)の大きかった先週の各国市場に追随した」と指摘。ただ、下げは「それほど大きくない。上海総合指数は2500あたりで一定の支えを得る可能性がある」と述べた。 上海総合指数はこの日、一時3%安まで下落する場面があったが、徐々に下げ幅を縮小した。CSI300指数は前営業日比0.6%安で終了。一時は2.6%下げていた。 香港市場は上昇。ハンセン中国企業株(H株)指数は前週末比4.8%高と、約5カ月ぶりの大幅高で引けた。ハンセン指数は3.3%上昇。カジノ株や中国の保険株が買われた。 原題:China Stocks Drop as Markets Reopen; Yuan, Hong Kong Shares Jump(抜粋) http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2KGT26KLVR601.html 中国の亜邦投資控股集団、CPが不履行−会長が調査対象に 2016/02/15 18:33 JST (ブルームバーグ):中国の染料・塗料メーカー、亜邦投資控股集団のコマーシャルペーパー(CP)が不履行となった。同社の会長が当局による調査の対象となり、資金調達が難しくなっていた。習近平国家主席による反腐敗運動に伴う投資リスクが浮き彫りとなっている。 上海清算所への亜邦投資の届け出によれば、同社は9日に期限を迎えたCP(利率7.95%)の元利2億1590万元(約38億円)について支払いできなかった。同社の会長が当局の調査への協力を求められた後、一部の銀行が同社に対する融資を引き締めたという。 原題:Chinese Dye Maker Defaults After Chairman Assisted Probe (1)(抜粋) http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2KY8V6JTSE801.html
きょうの国内市況(2月15日):株式、債券、為替市場 2016/02/15 16:20 JST
●日経平均1000円超高、TOPIX上げ08年10月来−円高一服と急落反動 (記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい) 東京株式相場は4営業日ぶりに大幅反発。日経平均株価は1000円超上げ、TOPIXは2008年10月以来の上げ幅と上昇率を記録した。米国消費統計の堅調や欧州の銀行株上昇、為替の円高一服、原油市況の大幅高から過度のリスク回避姿勢が後退、直近急落の反動もあり、銀行や保険など金融株、輸送用機器やゴム製品など東証1部33業種は全て高い。 TOPIXの終値は前週末比95.95ポイント(8%)高の1292.23、日経平均株価は1069円97銭(7.2%)高の1万6022円58銭。TOPIXの上昇率は08年10月30日(8.3%)、上げ幅は同14日(115.44)以来の大きさ。日経平均の上げ幅が1000円を超すのは昨年9月9日(1343円)以来となる。 しんきんアセットマネジメントの鈴木和仁シニアストラテジストは、「日本株は米経済や欧州不安で悲観に傾いていたが、不安材料をつぶす動きや指標が出てきている」と指摘。ボラタイルな状況からまだ警戒は解けないが、「不安感が強かった分、多少なりとも落ち着いていくのではないか。今までのリスク回避一色という動きではなく、リバウンド局面に入ったと感じている」と話した。 東証1部33業種は保険、ゴム、証券・商品先物取引、空運、陸運、その他金融、機械、卸売、輸送用機器、銀行が上昇率上位。東証1部の売買高は32億8018万株、売買代金は3兆1537億円。上昇銘柄数は1874、下落は55にとどまった。 売買代金上位ではトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、ソニー、JT、野村ホールディングス、パナソニック、三井物産、三井不動産、東京海上ホールディングス、ブリヂストンが高い半面、15年12月期が10%を超す営業減益だった楽天、16年2月期利益計画を減額したイオンは安い。 ●長期金利が2週ぶり高水準、株高や20年入札に向けた売り−オペ下支え (記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい) 債券相場は下落し、長期金利は2週間ぶり高水準まで達した。前週末の米国債相場の下落や国内株価の大幅上昇に加え、明日に20年債入札を控えた売りが優勢だった。半面、日本銀行が長期国債買い入れオペを実施したことが下支え要因となった。 現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前週末午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)高い0.08%で開始し、0.095%と2日以来の高水準を付けた。午後に入ると0.08%まで戻した後、0.09%を付けている。新発20年物の155回債利回りは横ばいの0.80%で開始後、0.82%と2日以来の水準まで上昇した。新発30年物の49回債利回りは1.5bp高い1.16%と、1月29日以来の高水準を付けた。 長期国債先物市場で中心限月3月物は、前週末比1銭安の151円10銭で開始し、151円24銭まで上昇した。再び下げに転じ、16銭安の150円95銭まで下落した。午前の日銀オペ通知後に一時プラスに転じたが、再び水準を切り下げ、結局は7銭安の151円04銭で引けた。 DIAMアセットマネジメントの山崎信人上席ファンドマネジャーは、「明日20年債入札があるほか、18日の5年債入札も視野に入り、ポジション調整の動きとなっている」と話した。日銀の国債買い入れオペについては、「5−10年ゾーンは良好だったが、短いゾーンがやや弱い結果だった」と分析した。 日銀が実施した長期国債買い入れオペ3本(総額1.27兆円)の結果によると、残存期間5年超10年以下の応札倍率は1.87倍と、昨年3月19日(1.77倍)以来の低水準となった。一方、1年超3年以下は3.42倍、3年超5年以下は4.11倍と、ともに前回から上昇した。 ●円が全面安、対ドルで一時114円台−世界的な株反発でリスク回避緩和 (記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい) 東京外国為替市場では円が全面安となり、対ドルで一時3営業日ぶりの1ドル=114円台まで下落した。世界的な株価の反発で過度のリスク回避ムードが和らぎ、円を売る動きが優勢となった。 午後4時10分現在のドル・円相場は113円90銭前後。朝方にはドルが伸び悩む場面も見られたが、前週末の欧米株に続いて日本株が大幅反発し、春節明けの中国株も底堅く推移する中、午後には一時114円10銭と10日以来のドル高・円安水準を付けた。円は主要16通貨全てに対して前週末終値比で下落。世界的なリスク回避ムードの高まりを背景に先週は全ての通貨に対して上昇し、11日には対ドルで一時2014年10月末以来となる110円台まで円高が進んだ。 外為どっとコム総合研究所の石川久美子研究員は、先週末の欧米株が堅調で、春節明けの中国としては「自分たちがいない間にリスクオフムードも一巡してしまった感が出ていると思う」と指摘。もっとも、為替も株も「これまでの下げに対する調整反発の範囲」を出ておらず、このままリスクセンチメントが好転していくかは分からないと語った。 安倍晋三首相は15日の衆院予算委員会で、「急激な相場変動は望ましくないと考えている。財務大臣には引き続きしっかりと見てもらい、必要に応じ適切に対応してもらいたい」と述べた。 ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.12ドル台後半から一時1.1206ドルまでユーロ売り・ドル買いが進み、同時刻現在は1.1209ドル前後。一方、ユーロ・円相場は1ユーロ=127円台前半から一時127円96銭まで円売りが進んだ。 記事に関するブルームバーグ・ニュース・スタッフへの問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net 山中英典 更新日時: 2016/02/15 16:20 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2KNDC6K50XS01.html 円が全面安、対ドルで一時114円台−世界的な株反発でリスク回避緩和 2016/02/15 16:13 JST (ブルームバーグ):15日の東京外国為替市場では円が全面安となり、対ドルで一時3営業日ぶりの1ドル=114円台まで下落した。世界的な株価の反発で過度のリスク回避ムードが和らぎ、円を売る動きが優勢となった。 午後4時10分現在のドル・円相場は113円90銭前後。朝方にはドルが伸び悩む場面も見られたが、前週末の欧米株に続いて日本株が大幅反発し、春節明けの中国株も底堅く推移する中、午後には一時114円10銭と10日以来のドル高・円安水準を付けた。円は主要16通貨全てに対して前週末終値比で下落。世界的なリスク回避ムードの高まりを背景に先週は全ての通貨に対して上昇し、11日には対ドルで一時2014年10月末以来となる110円台まで円高が進んだ。 外為どっとコム総合研究所の石川久美子研究員は、先週末の欧米株が堅調で、春節明けの中国としては「自分たちがいない間にリスクオフムードも一巡してしまった感が出ていると思う」と指摘。もっとも、為替も株も「これまでの下げに対する調整反発の範囲」を出ておらず、このままリスクセンチメントが好転していくかは分からないと語った。 安倍晋三首相は15日の衆院予算委員会で、「急激な相場変動は望ましくないと考えている。財務大臣には引き続きしっかりと見てもらい、必要に応じ適切に対応してもらいたい」と述べた。 15日の東京株式相場は4営業日ぶりに大幅反発し、日経平均株価は前週末比1069円97銭高の1万6022円58銭で取引を終えた。一時は上昇幅が1200円を超える場面もあった。米国の米小売売上高が予想を上回ったことや原油相場の大幅高を受けて、欧米株が反発した先週末の流れが続いた。 春節明けで動向が注目された中国株式相場も下落して始まったが、その後下げ渋る展開となった。石川氏は、「中国の貿易収支の中身は良くなかったが、上海株も下げ幅縮小方向で、株が堅調に推移していることの方を取ってしまった感じ」と説明。その上で、ドル・円については115円までしっかり戻せるかが大きなポイントになってくるとし、115円台にしっかり乗せ切れないと「もう一度円高方向に転換してしまう可能性がある」と指摘した。 中国が15日発表した1月の輸出(人民元建てベース)は前年同月比6.6%減少で、輸入は同14.4%減少と1年3カ月連続の前年割れとなった。 一方、朝方発表された日本の昨年10−12月期の日本の実質国内総生産(GDP、速報値)は、前期比年率1.4%減と事前予想(同0.8%減)を下回り、2期ぶりのマイナス成長となった。 クレディアグリコル 尾形和彦チーフエコノミストは、消費が予想より下振れしたほか、純輸出の寄与度が予想外に小さく、特に財・サービスの輸出がマイナスの伸びとなったのはサプライズだったと指摘。「今回の結果を受けて、日銀の金融政策の見方については、メーンシナリオは6月の追加緩和を維持するが、3月もしくは4月の追加緩和の可能性も排除できない」と語った。 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン外国為替部の村田雅志通貨ストラテジストは、日本株は上昇しているものの、「日本経済のリセッションリスクが意識されやすい」とし、「政府・日銀の対応期待が出やすい状況」と指摘。「ただ、本当に政府・日銀が対応できるのか、来週のG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁)会議を控えて、動きづらいのではないか」と語った。 ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.12ドル台後半から一時1.1206ドルまでユーロ売り・ドル買いが進み、同時刻現在は1.1209ドル前後。一方、ユーロ・円相場は1ユーロ=127円台前半から一時127円96銭まで円売りが進んだ。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2K77Y6JIJUO01.html 通貨安を希求する日本やユーロ圏の願い、経常黒字がくじく 2016/02/15 12:15 JST
(ブルームバーグ):市場が急落に見舞われた際、為替投資家が他の何よりも手掛かりにしようとする数字がある。 それは各国・地域の経常収支だ。金利や経済成長、またはインフレ格差に基づくバリュエーション(評価)といった通常の為替変動要因ではない。2016年に入り対米ドルで上昇している円やユーロ、スイス・フラン、スウェーデン・クローナなど主要7通貨はいずれも経常黒字国・地域の通貨だ。 現在のような状況では、これらの国・地域の一部が導入したようなマイナス金利では、通貨上昇に歯止めをかけることはできない。だが、通貨高は経済成長を損ないかねないため、こうした国・地域には大きな問題となる。 ナショナルオーストラリア銀行(NAB)の通貨戦略グローバル共同責任者、レイ・アトリル氏(シドニー在勤)は「リスク市場の地合いが好転するまで、経常黒字国の通貨は上昇圧力にさらされるだろう」と分析した。 通貨高は世界の純債権国・地域が直面する試練を浮き彫りにする。世界的に経済成長が鈍化する状況で、これら各国・地域は輸出競争力の低下を招く悪いタイミングで資金を引きつける形となっている。 みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、「単純に経常黒字とは円を買いたい人の方が円を売りたい人より多い状態で、本当はそれが尊重されるべきだ。リスクが取れない世の中になってくると本当の地力の部分しか残らなくなる」と指摘。投機で「ギャンブルする人がいなくなるとこれくらいの水準になるということだ」と語った。 円やユーロといった低金利通貨のレパトリ(本国への資金環流)が進んでいる可能性を示す兆候として、キャリートレードのリターンはこのところの市場の混乱の中で低下。ドイツ銀行のG10FXキャリーバスケットは今年に入って4.8%低下と今世紀最悪のスタートとなっており、09年以来の低水準に近づきつつある。 ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キット・ジャックス氏は「不透明感が強い時には、資金は本国に向かう傾向がある」との見方を示した。 原題:Curse of the Current Account Blights Weaker-Currency Wannabes(抜粋) 更新日時: 2016/02/15 12:15 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2KGAS6JTSEJ01.html
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