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ツアー客と遭遇した野生のマウンテンゴリラの親子。ゴリラは毎日移動しているので、どれくらい歩けば出会えるのかは運次第だ(撮影/大瀬二郎)
ゴリラが稼ぐ貴重な外貨 最貧国・ウガンダの今〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160214-00000001-sasahi-m_est
AERA 2016年2月8日号より抜粋
動物園で柵越しにしか見ることがないゴリラを間近で見られるツアーが、アフリカで人気という。参加すると、確かに貴重な体験だったが、自然保護のあり方も考えさせられる旅になった。
ベースキャンプを歩いて出発して約2時間、低木の森が突然、竹やぶに変わると、機関銃をぶら下げたパークレンジャーが立ち止まって前方を指さした。目をこらして見てみると、竹やぶに銀色の影が動く。大人のゴリラのオスの背中だ。
しばらくすると、好奇心満々で恐れを知らないぬいぐるみのような赤ん坊が、レンジャーの一人にじゃれついてくる。心配しているのだろう。オスより一回り小さいメスがやってきて、やんちゃな我が子をおんぶして引き下がる。まるで人間のしぐさを見ているようで、ハードなハイクの疲れは知らない間に消えていた。
ここは、東アフリカの内陸国、ウガンダの南西部に位置するムガヒンガ・ゴリラ国立公園。三つの火山と数々の湖に囲まれた、空想の世界のようなところだ。赤道に近いが標高が高いため、常に肌寒い。標高2千メートル以上の火山の中腹に、野生のマウンテンゴリラがグループで生息している。
このマウンテンゴリラは現在、880頭が残っていると推定されている。ルワンダ虐殺、コンゴやウガンダでの内戦などの数々の人間の紛争にさらされただけでなく、森林伐採や鉱物採掘による生息地の破壊、乱獲と密猟、感染病なども原因になって激減した。オスの性成熟は12〜15歳、メスは10歳ほど。出産も4年に1頭と、繁殖力は強くない。
ウガンダがマウンテンゴリラのツアーを始めたのは、主に外貨獲得のためだ。
ウガンダは80年代以降は経済成長が続いているものの、2014年の1人当たりの国民総所得はわずか670米ドル(約8万円)。世界銀行から、世界の貧しい国39カ国の一つに認定されている(14年)。
そんな最貧国の政府にとって、マウンテンゴリラトレッキングは貴重な収入源。一人600ドルで、生息地を案内してくれる。
周辺に住む人々もまた、貧しい。牧歌的な景色の広がる丘の上で、太鼓のビートに合わせてダンスが始まった。動物の皮で作られた伝統的な衣服を着て、やりの代わりに棒を持って踊っている男性もいる。小柄な彼らは、バトゥワと呼ばれるピグミー。狩猟と採集を生業とする民族グループの人々で、この地域の原住民だ。
ムガヒンガ地域は91年に国立公園に指定された。その北にあり、世界遺産にもなったブウィンディ原生国立公園と同時だった。自然保護地区の設立のために、バトゥワは立ち退きを強いられた。
先祖から受け継がれてきた自然公園内の土地の所有権は政府に認められず、賠償金もゼロ。長きにわたって、ゴリラや自然と共存してきたバトゥワの人々は、一夜で物乞いと安賃金労働を強いられる「自然保護による難民」になった。
人口が爆発的に増加しているウガンダで、自然公園以外の土地の大半はすでに耕作されている。残っているのは険しく、農耕に適さない丘陵地ばかりだ。バトゥワの人々は今、チャリティーによって彼らのために購入された土地で踊り、生計を立てようとしている。
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