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JR東日本が発行するSuicaカード
JRがSuicaのデータを無断で販売、スーパーが妊娠を察知…利用される個人情報
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13775.html
2016.02.14 文=井手秀樹/慶應義塾大学名誉教授 Business Journal
IoT(Internet of Things:モノとインターネットの融合)やビッグデータの利活用が、新産業の創出、生産性の向上、業務の効率化に役立つといった効果が明らかにされている。
IoTが広がり、インターネットに接続されたデバイスが、私たちの日常生活にあふれている。インターネットに接続された電気製品、無人飛行機の遠隔操作という技術まで登場している。従来は通信とまったく関係のないものまでも、通信と結び付いているのである。
また、ビッグデータが収集、分析、利用されることによって、新たな商品開発、ビジネスなどが生まれている。グーグルやアマゾンなどの巨大なネット上のプラットフォームが日々収集する人間の活動データはすでに分析され、市民生活や企業活動を支援することに活用されている。たとえば、おすすめ商品の表示がそうである。個人情報を管理するだけの時代は終わり、その情報をいかに分析するかを競う時代になっている。
さらに、M2M(Machine to Machine)サービスが展開されている。自動車メーカーなどが提供するテレマティクスサービス(カーナビゲーションなどの車載端末と携帯電話ネットワークを利用してさまざまな情報を提供するサービス)などがある。個々の通信を行う際に人が操作することなく、機器間でネットワークを介して通信を行うことにより、情報を収集したり機器を作動させたりすることができる。
■個人に影響
IoTやビッグデータで、個人がまったく予測しないところで、個人情報が収集、分析、利用、蓄積、提供され、情報収集時には明らかにされていない価値が、利用のプロセスで新たな価値を生み出し、同時に個人に影響を及ぼしている。
米国で次のような事例が報道された。高校生の娘宛にスーパーから送られてきたベビー服のダイレクトメールを父親が受け取り、父親が抗議した。しかし、過去の妊娠者の購入履歴のデータと照らし合わせ、購入品目から予測したスーパーの分析は正しく、実際に娘は妊娠していた。スーパーよりも遅れて父親は妊娠を知ることとなったという。
オランダでは、カーナビ会社がスピードの出しやすい場所を示すカーナビのデータを、監視カメラ設置に役立てるために警察へ販売したことが問題とされた。日本でも2013年にJR東日本がSuicaのデータを日立製作所に販売して、本人の知らないところで同意もなしにデータが移転されたことで、プライバシーが侵害されるということが問題となった。
IoTやビッグデータの利活用が、各種ビジネスの発展に不可欠であるが、一方で利活用の壁となるのが、「通信の秘密」と「プライバシー・個人情報保護」である。通信の秘密に関する情報でも、一定の範囲で利活用が進められている。たとえば、携帯電話の位置情報を警察の捜査活動等に利用することや、ウェブサイトの閲覧・購買履歴に基づいた行動ターゲティング広告への利用などである。
また、スマートメーターは、単に電力節約のみならず、自治体による孤独死問題にも利用することができる。電力の利用状況を注視しておけば、迅速な救済につながるわけだ。他方でスマートメーターは悪用される可能性もある。電力データにより、就寝時間や留守もわかる。実際、米国では電力データが読み取られ、空き巣などの犯罪も報告されている。リアルタイムに送信される電力データから個人や家庭の生活リズムまで明らかとなり、プライバシー侵害のリスクが生じる。
縁もゆかりもない他人が通信システムへの不正侵入等によりネットワーク上の情報を取得する機会は、物理的に増大している。ベネッセコーポレーションの個人情報漏えい事件などにみられるように、消費者がプライバシーへの漠然とした不安感を抱いているなかで、ビッグデータの利活用と個人情報の保護の適正なバランスが重要である。
(文=井手秀樹/慶應義塾大学名誉教授)
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