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NTTドコモは家族でデータを分け合う低料金プランで他社と差別化する=5日、ドコモショップ五反田店(東京都品川区)
過激なスマホ販売競争、残る火種 政府介入に反発、進まぬ抜本改革
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160213-00000500-biz_fsi-nb
SankeiBiz 2016/2/13 09:16
総務省の携帯電話料金引き下げに関する作業部会の議論が終盤に入った昨年11月下旬、NTTドコモの幹部の車が官邸に入った。会ったのは菅義偉官房長官だ。幹部は「当社としては第1弾として0円端末をなくします」と説明。官房長官は「第2弾、第3弾もやるんですね」とその幹部に念押しした。これに対し、幹部の説明はこうだった。第2弾は2016年4月末の年度末決算会見で、第3弾は7月末の第1四半期決算会見で発表する。そして第4弾は、9月とみられるアイフォーンの次期モデル発売に合わせて行う−。ドコモは「第4弾」までの段階的計画を披露して官房長官を納得させた。
昨年9月の経済財政諮問会議で安倍晋三首相が「携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題」と発言し、高市早苗総務相に指示して始まった携帯料金引き下げ論議。黒子は元総務相でもある菅官房長官といわれる。昵懇(じっこん)のドコモ幹部を呼びつけたのは官邸主導を証明するものだ。
しかしその後、ドコモの「計画」は修正を余儀なくされたようだ。ソフトバンクが1月7日にデータ使用量1ギガバイトまでで定額通話ができる月額4900円のライトユーザー向け携帯料金プランを業界に先駆けて発表したからだ。「1ギガバイト、5000円以下」は作業部会でライトユーザー向けプランの例として示されていた。しかし予想外の速さでソフトバンクが発表に踏み切ったことで、「ドコモはどうするのか」との声が強まった。
ドコモは当初、家族向けにデータ使用量「7ギガバイト」をシェアできる低料金プランを想定していた。だが、競合に対抗するため、発表直前に「5ギガバイト」とシェアできるデータ使用量を若干減らしつつ、3人家族の場合1人当たり月額4500円と「赤字になりかねない」(ドコモ関係者)低料金に変更した。決め手は加藤薫社長の「この方が分かりやすい」との鶴の一声だった。
前出のドコモ幹部は1月29日、再び官邸を訪れた。加藤社長が同日午後3時の決算会見で新たな低料金プランを発表する直前のことだ。幹部は官房長官に「当社は他社と違うが、こういう形でいきたい」と説明。携帯電話料金の3社横並びに苦言を呈していた官房長官はうなずいた。
作業部会の取りまとめが大詰めを迎えた昨年12月上旬、米アップルのアジア担当副社長と日本法人トップが、総務省を訪れた。副社長は同省幹部に、アイフォーンは日本から買ったたくさんの部品でできていると説明。「必要な情報はいつでも提供します」と協力的な姿勢を示した。アップル幹部が総務省に出向いたのは、同省が携帯3社に要請した「実質0円」端末廃止がアイフォーンを狙い撃ちにしたのではないかという疑念を抱いていたからだ。
アイフォーンが多額の販売奨励金を注ぎ込まれて「実質0円」で売られ、日本のスマホ市場でシェア5割を占めているのは、アップルが、携帯3社に厳しい販売ノルマを課していることが要因。それはドコモで「スマホ販売の4割」とされる。総務省もその点を問題視したのは確実だ。
対応した同省幹部は疑心暗鬼のアップル幹部に、実質0円撤廃など一連の施策について「政府としては行き過ぎた不公平の是正とスマホの普及が目的だ」などと説明。2人は一応納得して引き上げた。アジア担当副社長は、作業部会の構成員も訪問。NTTドコモなど携帯3社にも連絡をとり、各社の製品担当者に「契約は守られるか」と確認したといわれる。「実質0円」がなくなってもアイフォーン販売が失速しないよう念押ししたもようだ。
調査会社のMM総研が今月9日に発表した国内携帯電話出荷台数は、アイフォーンが前年比10.6%減の1473万台で、08年の発売以来初めての前年割れだった。同社は「今回の施策でアイフォーンの販売はさらに落ち込む」と予想。「6s」の販売は世界的にも不振だとはいえ、アップルが“アイフォーン大国”の変節に神経をとがらせているのは事実だ。2月に入って「実質0円」の看板は店頭から姿を消したが、他社からの乗り換えを前提とした「乗り換え割引」を撤廃していないKDDIとソフトバンクは、実売価格が0円以下になるケースがあり、なお火種は残る。
しかも、途中解約に約1万円の違約金が必要な「2年縛り」の抜本改善は、総務省の是正方針が示されているにもかかわらず先送りのままだ。ドコモは無料で解約できる「更新月」を25カ月目の1カ月間だけだったのを3月から2カ月間に延長する方針。ソフトバンクは3月以降、KDDIは5月に同様の措置を行う。しかし、総務省が求めている2年縛りが発生しない料金プラン導入については、各社とも「検討中」の域を出ていない。「実質0円」も「2年縛り」もソフトバンクが06年から開始。ドコモとKDDIが追随して一般化し、スマホの普及に一役買った。一方で契約条件の分かりにくさが社会問題化。今回の携帯料金引き下げ論議につながった。
孫正義社長は10日の決算会見で、「ユーザーに良かれと思って始めた(「実質0円」や「2年縛り」の)サービスがけしからんといわれるので、じゃあ変えますと。でも本当に改善か改悪かはいろいろな議論がある」と述べ、政府の携帯市場介入策に疑問を呈した。2月以降、閑古鳥が鳴く販売店だが、3月にはアップルがアイフォーンの小型モデルを市場投入するとみられ、販売店のアピール合戦が再燃しかねない。総務省による監視が機能するのか、料金是正の第2弾、第3弾を各社が本当に打ち出すのか。今後も多くの課題が残されたままだが、販売正常化が遅れれば、「客の関心が通信以外にそれてしまうとまずい」(田中孝司KDDI社長)という心配が現実味を帯びてくる。
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