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長期金利までマイナスに沈んだ(2月9日、撮影:尾形文繁)
マイナス金利で証券投資が止まってしまう! 証券会社から黒田バズーカ礼讃の声が消えた
http://toyokeizai.net/articles/-/104665
2016年02月11日 浪川 攻 :東洋経済 記者
日本銀行によるマイナス金利政策の導入を受けて、証券業界に苦悩の色が増している。短期の貯蓄商品、MMF(マネーマーケット・ファンド)が逆ザヤとなり、各社が取り扱い停止に追い込まれ、一部は償還に踏み切ることとなったが、これは厳しい事態の氷山の一角にすぎない。ビジネスモデルの根幹が揺らいぎかねないのである。
MMFに類似する安定的な投信商品であるMRF(マネーリザーブ・ファンド)もMMFと同様に、逆ザヤとなる運用構造を抱え込んでいる。だが、証券各社はいまのところ、MRFの取り扱い停止には二の足を踏んでいる。「顧客資産を預かるというビジネスの基本構造に関わる」(大手証券幹部)からだ。
■個人投資家の資金の受け皿が割れる?
証券各社は個人投資家から投資に振り向ける資金を総合口座で受け入れて、そこから株式、投信などを購入している。その総合口座はMRFで運用しており、株式、投信などが売却された場合には、売却代金が自動的にMRFの購入に回るスウィープシステムが採用されている。いわば、MRFは株式などの購入・売却代金の受け皿商品であり、顧客預かり資産の保管商品になっているわけだ。
したがって、逆ザヤからMRFの取り扱いを停止することとなれば、証券各社は個人投資家の預かり資産の受け皿を喪失することになりかねず、顧客資金を自社に引き留めることすらむずかしくなる。そのために、運用が逆ザヤに陥って採算が取れなくなっても、MRFを販売し続けるという選択をせざるを得ない。
もし、MRFの取り扱いを停止するなら、次善の策として想定されるのは顧客預り金として、信託銀行を使って自社資金と厳格に分ける分別金管理だ。すでにMRFでは受け入れていない法人の投資資金は、この分別金管理の方式がとられており、証券会社のバランスシート上では顧客資金分別金信託として計上され、信託銀行に信託されている。
分別金信託は、いつでも解約して現金化できる流動性の高さが重視されているため、通常、特定金外信託や金銭信託が活用されている。信託銀行は高い流動性の維持のために、安全で安定的な預金などの運用手段をとっている。そのため、信託に移すと、次には、信託内の運用の逆ザヤという問題が生じかねない。
元本保証の金銭信託(合同運用指定金銭信託)を除くと、信託は実績配当であり、損失を信託銀行が補てんすることは禁じられているため、顧客分別金信託が信託保管しているなかで目減りしていくことすら想定される。
一方、元本保証の場合には、信託銀行が逆ザヤによる損失を甘受せざるをえなくなる。そこで、早くも一部の信託銀行は「新たな手数料の設定の打診を非公式ながら持ちかけている」(中堅証券)と言う。
信託銀行が新手数料で逆ザヤ分を埋めるのであれば、逆ザヤ分の損失は実質的には証券会社が負担するという構図になる。それが法人資金のみならず、個人投資家の投資資金まで分別金信託となれば、証券各社の負担は大きく跳ね上がるにちがいない。
■自己資金の運用も細っていく
各社が頭を痛めているのはそれだけではない。証券各社は「現金同等物」「現預金」で巨額の自己資金を保有している。これは、ブローキングビジネス(取引先の間や取引先と市場をつなぐ)において、いったん自己で引き受けるために必要となる資金の外部調達の返済見合いで保有しているものだ。たとえば、その金額は野村ホールディングスでは2015年12月末時点で1兆8709億円にものぼる。
もちろん、その巨額資金を現金で眠らせているわけではなく、「現金同等物」といえる安全で短期の運用に回している。預金、コールマネー、レポ(有価証券担保貸付)などだ。しかし、マイナス金利の導入によって、レポ金利はマイナスに転じ、有担コールレートはわずかにプラス状態にあるとはいえ、今後はマイナス化する懸念も出ている。預金のマイナス金利化は回避できても、それに代わって新たに手数料の形で課金される雲行きになりつつある。
つまり、自己資金の「現金同等物」「現金・預金」も保有する限り、目減りが避けられなくなる恐れが生じていることになる。
株式市場急落、個人投資家は凍りついた(2月9日、撮影:尾形文繁)
■証券業界"我が世の春"は終わったのか
おまけに、今、株式市場はマイナス金利導入後に混乱を極めたため、顧客の投資は凍り付いており、証券会社の収益はガタ落ちしている。そのうえ、実質、腹切りと言える顧客資金管理のコスト、自己資金の運用の低下が加わりかねない。
「口座維持手数料など新規の手数料設定で、少なくとも、顧客資金管理から生ずる損失をカバーできればいいのだが……」
ある証券会社の幹部はこうもらすが、新規の手数料設定を個人投資家などがすんなり認めるかどうかは怪しいし、そうなれば、コスト構造の軽いオンライン証券が「手数料ナシ」あるいは「低い手数料」をセールストークに一段と攻勢を仕掛けてくることは明らかだ。
「異次元緩和でデフレからインフレに変わり、貯蓄から投資が本格化する」
黒田東彦日銀総裁が2013年4月に異次元緩和を導入したとき、2014年10月に黒田バズーカ第2弾を放ったときにも、証券業界の関係者はこう強調して、自分たちの時代の到来を謳歌し、明るい未来を語っていた。だが、今はその声もかすれている。
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