「リーマンショック2」は来るのか中国「不信」・原油「底なし」、2つのビッグリスク 2016年2月9日(火)上野 泰也 世界経済に日はいつ昇るのか 昨年から今年に持ち越した「3つのリスク」(@中国経済不安、A下げ止まらない原油価格、B米利上げ後の新興国を含むマネーフロー変調)のうち、Bは、米国の利上げに打ち止め感が出れば、とりあえず歯止めがかかるリスクと言える。 だが、残りの2つはかなりの難物だと筆者はみている。年明け以降の市場で大きな不安材料になり続けている@とAをスピーディーに消し去ることができ、しかも現実味のある解決策は、筆者には思い当たらない。 まず、@中国経済不安は、昨年夏〜秋の局面よりもはるかに事態は深刻であり、中央政府が財政政策を用いて景気を刺激すれば市場の不安心理が沈静化する、というような生易しいものではなくなっている。 「不安」から「不信」へ 市場のセンチメントは、「不安」と形容されるレベルから、中国当局による経済政策運営や人民元という通貨そのものに対する「不信」「信頼感の喪失」へと、悪い方向に一段シフトした。最近出てきた中国問題関連の要人発言などをいくつか挙げた上で、筆者のコメントを加えてみたい。 ◆マルコ・ルビオ米上院議員(共和党の大統領候補指名争いで3位につけている有望株) 「中国が国内で深刻な危機に面している。バブル経済には、別のバブルで埋め合わせをしてきたが、ついに危機がやってきた」(2016年1月7日) 〜 この見方に筆者も賛同する。「リーマンショック」後の危機局面で大規模な景気刺激策を実施したことが、不動産バブルを膨らませた。これが崩壊したものの、抜本的な政策対応を怠り続けた結果、政策面で手詰まり感が強くなり、市場の不安感のみならず不信感をも招いている。 ◆中国の銀行不良債権、2015年の増加幅は前年の倍以上(2016年1月12日 ロイター) 「中国の銀行が抱える不良債権の2015年の増加幅は前年の倍以上となった。匿名の関係者2人がロイターに明らかにした」 「関係者によると、2015年の不良債権の総額は1兆9500億元(2968億ドル)」 「2014年の不良債権は2574億元(391億9000万ドル)増の1兆4300億元であったため、15年の増加幅は5000億元以上とみられる」 「銀行業監督管理委員会はロイターのコメントの求めに応じていない」 〜 日本の経験からすると、不良債権問題を解消するための切り札は、「徹底したディスクロージャー(情報開示)」と「公的資金の大規模な投入」の2つである。だが、中国の当局はいずれにもまだ取り組んでいない。そうした実情をあらためて確認できる報道である。 ◆中国の中央財経指導グループ弁公室の韓俊・副主任(2016年1月11日 ニューヨークの中国領事館で) 「(人民元が対ドルで一段と大幅に下落すると想定するのは)ばかげている」「人民元に対する経済ファンダメンタルズに大きな変動はみられない」「人民元を空売りする試みは成功しないと思う。投資家は人民元を信頼すべきだ」 〜 人民元の対ドル相場下落(=人民元からドルへの資金流出)の問題で、事態の全体像を人民銀行など中国の政策当局がどこまで把握してコントロールできているのかに、市場は疑念を抱きつつある。 IMF(国際通貨基金)がSDR(特別引出権)の構成通貨に人民元を新たに採用することを決定した後で、無理に通貨価値を支える必要性はもはや薄れたという考えから人民銀行が元安ドル高に誘導し始めたというような、単純な話ではなさそうである。 人民元の下落を当局が容認していることへの不信感から、「草の根」レベルで中国から海外への資本逃避(キャピタルフライト)が起こっており、人民銀行は外貨準備を大量に使ってドル売り人民元買い介入などをしてなんとか食い止めようとしているのではないかという見方が浮上している。 中国の外貨準備高(金やSDRなどを含まないベース)は、昨年12月末時点で3兆3304億ドル(前月比▲1079億ドル)。12月の月間減少幅は過去最大で、このペースが続くと3年もたない計算である<図1>。そして、中国の外貨準備高は1月も995億ドルという巨額の減少になったことが、直近データから明らかになっている。 ■図1:中国の外貨準備高 (出所)中国国家外為管理局(SAFE) [画像のクリックで拡大表示] 仮に、中国の外貨準備高の急ピッチの減少が今後も続くようだと、中国は自国通貨の防衛を継続できなくなって人民元はフリーフォール状況に陥るのではないかといった見方が市場で広がりかねない。 日本の20年前に似た雰囲気 また、最近の中国の政府当局者の市場に関する言動を見ていると、「上から目線」を感じることが多い。日本でも少なくとも20年ほど前まではそうした雰囲気が漂っていたと記憶している。だが、内外経済におけるマーケットの影響力の大きさが政治の世界でもよく知られるようになる中で、日本の当局者の姿勢は大きく変わり、マーケットの動向を重視して、参加者の意向を尊重するようになっていった。 中国でも金融市場は自由化されていく流れにある。当局者の姿勢もまた、いずれ変わらざるを得なくなるだろう。また、市場はいわゆる「大本営発表」を安易に信用しない。情報発信の手法などにおいても、中国でいずれ大きな変化が出てくるのではないか。 だが、これらはいずれも長いタイムスパンの話である。中国当局による「市場との対話」は今のところ、それが存在しているのかどうかさえ定かではなく、世界の金融市場を不安定化させる原因の1つになっている。 もう一つの大きなリスク、A原油価格はどうか。原油の価格は崖から落ちるように下落してきており<図2>、この問題は「出口が見えない袋小路」に入った感が強い。サウジアラビアとイランの関係が悪化して外交関係断絶にまで至ったことで、石油輸出国機構(OPEC)が減産に動く可能性はかなり小さくなったというのが、筆者の見方である。 ■図2:OPEC原油バスケット価格 (出所)OPEC [画像のクリックで拡大表示] 原油の減産に動くための前提条件として、サウジアラビアは以前から、ロシアなど非OPEC(OPECに加盟していない)産油国との協調減産の必要性を強調している。だが、OPECと非OPECの協調減産が実現するかどうかのカギを握るとみられるロシアのノバク・エネルギー相は、その実現に否定的なコメントをたびたび発している。 1月15日にテレビ出演したノバク氏は、「OPECの全加盟国が(減産で)合意することさえ見込めない。いわんや非OPECとの協調減産もあり得ない」と指摘。「石油輸入国が世界市場からの輸入を減らしており、現段階では輸入国の影響力が大きい」と述べた。また、同エネルギー相はロシアの石油企業にとって「カギとなる原油価格の水準は、生産コストの水準、すなわち1バレル=5〜15ドルだ」と話した。 仮に、最近報道されているように、経済がかなり苦しくなったベネズエラなど一部加盟国の要請をうけてOPECが2月に緊急会合を開催し、ロシアも参加して協調減産を協議する場合でも、合意までこぎつけるのは至難の業だろう。 欧米などから経済制裁の解除をうけて原油の増産・輸出増加に動き出しているイランは、このタイミングでは減産合意には乗りにくい。イランの増産を認めつつOPEC全体で減産しようとする場合は、主にサウジアラビアが自国の生産枠について、イランの増産分を上回る規模で引き下げを受け入れるという話にならざるを得ない。 だが、両国の関係が悪化している中では、サウジアラビアが一方的に損をかぶる形になる生産枠調整は、実現する可能性がきわめて小さい。イスラム教スンニ派の盟主であるサウジアラビアが、シーア派の盟主である国であるイランに対し、いわば敵に塩を送るような形になるからである。 また、サウジアラビアは市場におけるシェアを重視し続けており、原油価格下落を容認して米国のシェール会社(総じて原油生産のコストが高いとされる)の市場からの退場を促す「持久戦」を、このままさらに続ける意向を示唆している。同国のヌアイミ石油相は1月17日、国際石油市場で供給過剰が続く中、市場安定には「ある程度の時間」がかかると述べた上で、今後について楽観的な見方を示した。 リーマンショック2にはつながらない 株価に話を転じよう。「グローバルな金あまり」状況の継続に鑑みた場合、リスク要因が多い中であっても、内外で株価が一方的に下げ続けることまではないと予想するのが順当だろう。 米国の利上げが続きにくいこと(当コラム1月26日配信「昨年末の米利上げは2000年の日本そっくり」参照)、各国の規制監督当局が金融システムの安定維持に注力していることも考え合わせると、「バブル崩壊でサヨウナラ」的な一方的な株価暴落や、先進国の金融システムへの甚大なダメージは発生しにくいと、筆者は考えている。その意味で、年初からの市場の大きな混乱が「リーマンショック2」につながるとは予想されない。 とはいえ、「中国」と「原油」という2つのビッグリスクが早期に払しょくされそうにない状況下、内外の金融市場の動きは今後も不安定なものにならざるを得ない。したがって、株式の押し目買いなど「逆張り」で投資家が動く際には柔軟性が必要で、無理は禁物である。 上野泰也のエコノミック・ソナー 景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
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円が全面高、リスク回避再燃で対ドル114円台突入−1年3カ月ぶり 2016/02/09 12:24 JST (ブルームバーグ):9日の東京外国為替市場では円が一段高。世界的な株価の下落を背景にリスク回避に伴う円買いがさらに進み、対ドルでは1年3カ月ぶりの高値を更新している。 ドル・円相場は1ドル=114円26銭まで下げ幅を拡大。日本株が一段安となる中で、2014年11月10日以来の円高水準を付けている。午後0時20分現在は114円45銭前後。 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)外国為替部の村田雅志通貨ストラテジストは、市場は「明らかにやり過ぎ」だが、ドル・円は重要な節目の116円を抜けてしまった以上、「まだ下値余地がある」と指摘。目先は2014年2月のドル安値から昨年のドル高値の半値戻しにあたる113円30銭程度をめどに、「下値をトライする動きが続く」とみている。 ブルームバーグ・データによると、円は前日に続き、主要31通貨全てに対して前日終値比で上昇している。ドル・円は前日終値(115円85銭)から1円以上円高が進み、ユーロ・円相場は1ユーロ=129円台後半から一時128円31銭と先月27日以来の水準まで円高に振れている。 麻生太郎財務相は9日の記者会見で、足元の市場の動きは荒いとし、引き続き為替市場の動きをよく注視していきたいと述べた。また、国債市場に対しても配慮しながら経済の舵取りをすると語った。 9日の東京株式相場は大幅反落し、日経平均株価は800円を超える下げとなっている。一方、債券相場は急伸し、長期金利は一時ゼロ%と過去最低水準を付けた。 前日には欧州株式相場が約1年ぶりの安値へ下落。景気回復の力強さをめぐる懸念から売りが膨み、ギリシャ株は1990年以来の安値に沈んだ。また、欧州債券市場では高債務国の国債利回りが上昇した一方、独10年債利回りが昨年4月以来の水準に低下。欧州の銀行や保険会社の優先債の保証コストは13年3月以来の水準まで上昇した。米株式相場も下落し、安全資産への逃避から米10年債利回りは1年ぶり低水準に低下。原油先物相場は3営業日続落となり、1バレル=30ドルを割り込んだ。 三菱UFJ信託銀行資金為替部・為替市場グループの市河伸夫グループマネージャーは、リスクオフの環境下でドル・円は口先介入もさほど効いていないと言い、「節目の115円や週足一目均衡表の雲の下限が位置する114円71銭を割れると、下値リスクがさらに増大しそう」と話していた。 ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.12ドル台前半でユーロ買い・ドル売りが優勢。バークレイズ銀行の門田真一郎為替ストラテジストは、「世界的なリスクセンチメントに影響され、ユーロもリスクオフで買われている」とし、米国の利上げ観測が後退していることもユーロを買われやすくしていると説明している。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net 青木 勝 更新日時: 2016/02/09 12:24 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O293O96JIJVD01.html
Business | 2016年 02月 9日 12:32 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 正午のドルは114円後半、リスク回避強まり節目割り込む
[東京 9日 ロイター] - 正午のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点に比べてドル安/円高の114.83/85円だった。海外時間のリスク回避ムードを引き継いで日経平均株価が一時800円超の大幅安となる中で、ドル/円の下押しが強まり一時114.43円まで落ち込んだ。 安く寄り付いた株価を眺めてドル/円は朝方から下げに勢いがついた。市場では「海外株式市場の動向を踏まえた織り込みより、日経平均の下げがきつかった」(国内金融機関)との声が聞かれた。 仲値公示にかけて国内勢の押し目買いも期待されたが「実需筋を含め様子見の向きが多く、下押し圧力を押し返すほどのドル買いは出なかった」(別の国内金融機関)という。仲値通過後、ドル/円は下げに勢いが増し、目先のレンジ下限とされた115円を割り込んだ。 その後も、相場は戻りに勢いが出ず「節目割れでも達成感が出ている様子がない」(国内金融機関)との声が聞かれた。海外時間にかけても、下値警戒が必要との指摘も出ている。 http://jp.reuters.com/article/forex-mid-idJPKCN0VI05N Business | 2016年 02月 9日 11:49 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 金ETFへの資金流入に拍車、年初来で8%超増加 5年ぶり高水準 [ニューヨーク 8日 ロイター] - 景気の不透明感やドル安、米利上げ観測の後退などを背景に、今年に入ってから金を裏付けとする上場投資信託(ETF)への投資に拍車が掛かっている。金現物XAU=は年初来12%値上がりし、8日には1オンス=1200ドルを超え、7カ月半ぶり高値を付けた。市場筋は、金ETF投資の急増に支援されたとみている。 商品投資会社ロジック・アドバイザーズの共同創業者ビル・オニール氏は「われわれは現在、世界的に不安な心理状態にあり、代替資産としての金への関心が高まっている」と指摘する。 最も直近で入手可能な5日のデータによると、主要な金ETF8本を合計した金保有量HLDTOTALL=XAUは4330万オンスに増加し、昨年7月以来の高水準となった。さらに注目すべきは、年初の5週間における金ETFへの資金の流入ペースが8%超と、2011年3月以来の高水準を記録したことだ。 RBCキャピタル・マーケッツの貴金属ストラテジスト、ジョージ・ゲロ氏は「とりわけ金に流動性があり、持ち運びでき、政治的配慮なしにどの通貨にも交換可能な点を踏まえると、資金の逃避先を求める投資家が金投資に回帰するには十分な理由がある」と分析する。 世界最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェアーズ(GLD)の金保有HLDSPDRGT=XAUは先週4%以上増加し、2009年3月以来の大幅増を記録した。 BMOキャピタル・マーケッツの金属取引責任者、タイ・ウォン氏は「人民元のボラティリティーや元切り下げが必要との見方、株式市場全体の神経質な心理状態、日銀のマイナス金利導入、マイナス金利を導入済みの欧州中央銀行(ECB)の追加緩和観測、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を当面据え置くとの見方があり、これらすべてが金ETFへの資金流入が急増している背景にある」と語った。 http://jp.reuters.com/article/gold-etf-idJPKCN0VI05B
黒田マイナス金利、国債90兆円保有のゆうちょ銀直撃、運用改革急務に 2016/02/09 11:29 JST (ブルームバーグ):日本銀行のマイナス金利政策がゆうちょ銀行の収益を直撃しそうだ。運用資産の半分近くを占める日本国債の利回りが低下しているからだ。他の民間銀行にある融資機能はまだ持っていないため、運用手段の多様化が急務となる。昨秋上場したばかりの同行は早くも試練に直面する。 ゆうちょ銀の運用資産残高(2015年9月末)205兆円のうち国債は92兆7736億円。日銀の黒田東彦総裁が異次元緩和を打ち出した13年4月以降残高を減らしてきたが、比率はまだ45.2%ある。4月からは預け入れ限度額が引き上げられる予定で、資産増加で相対的に収益性の悪化に拍車が掛かる可能性もある。 SMBC日興証券の中村真一郎シニアアナリストは、新政策による経常利益へのマイナス影響度はメガバンク5%、地方銀行10%、ゆうちょ銀は20%と試算。「国内で稼ぐ資金利益の割合が多いところほど影響が大きい」という。波及効果には利ざや縮小なども含まれるが、国債に偏重するゆうちょ銀へのインパクトは大きい。 日銀は景気浮揚や物価上昇を狙い当座預金の一部に年マイナス0.1%の金利を16日から適用する。実際の導入を前に国債市場では、既に長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時史上初のゼロ%を記録。新発2年債はマイナス0.215%にまで低下した。マイナス金利の影響による収益悪化懸念から銀行株は下落傾向を強めた。 リスク資産への投資 同行は18年3月期末までに配当性向は年間純利益の50%以上とする目標を掲げる。これらの原資を確保するため、国債偏重から投資先の多様化を図っていく方針で、リスク資産への投資強化に向け1月から新体制での運用を開始した。こうした中、ゆうちょ銀は今週12日に昨年10−12月期決算を発表する予定だ。 ゆうちょ銀の佐護勝紀副社長は1月のブルームバーグとのインタビューで、株式やオルタナティブ(代替投資)など投資の多様化を進めると述べた。株式は年内にも自家運用を開始したい考えで、プライベートエクイティ(PE)ファンドや不動産投資信託(リート)など投資に向け人材採用と体制整備を進めているという。 同行の昨年9月末の資産構成(ポートフォリオ)は、国債が初めて100兆円を切り比率は過去最低となった。外国証券は昨年3月末から8兆円増やし56兆円となったが、株式残高は金銭信託を含めて約2.1兆円にとどまる。これらリスク資産は17年度中に60兆円に達する見通しとしているが、市場変動を受けやすくもなる。 新戦略への移行が急務 SMBC日興の中村氏は、ゆうちょ銀は今後、「取りあえず含み益のある国債の売却によるキャピタルゲインで資金利益の減少をカバーできる」ものの、「これは不安定な利益だ」と指摘。株主に示した配当目標を達成・維持するためにも「国債の償還資金を外債や株式などに投資する新戦略のスピードアップが必要」と述べた。 ゆうちょ銀は昨秋、親会社などと親子上場を果たした。15年9月期のグループ連結純利益は、ゆうちょ銀が約8割を占める稼ぎ頭のため、マイナス金利の影響はグループ全体に及ぶ可能性もある。同行は融資業務への参入などを視野に入れているが、導入には所管官庁から許認可を得た上で審査体制などを整備する必要がある。 同行は16年3月期に経常利益で4600億円、純利益で3200億円を見込んでいる。 9日の株式相場は円高進行などを背景に一段安となり日経平均株価は一時4.6%下落した。ゆうちょ銀株は同58円(4.4%)安の1269円まで値を下げた。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 河元伸吾 skawamoto2@bloomberg.net;東京 Gareth Allan gallan11@bloomberg.net;東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:宮沢祐介 ymiyazawa3@bloomberg.net 平野和 更新日時: 2016/02/09 11:29 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O21U9R6S972L01.html
日経平均800円超安、安全資産逃避で全面安−114円突入、長期金利ゼロ 2016/02/09 12:02 JST
(ブルームバーグ):9日午前の東京株式相場は大幅反落し、日経平均株価は800円以上下げた。世界的に株式が下落する一方、米国やドイツ国債は急伸(利回りは低下)と安全資産逃避の動きが強まる中、証券や銀行など金融株、輸送用機器など輸出株中心に東証1部33業種は全て安い。国内でも長期金利が史上初めてゼロとなり、ドル・円は2014年11月以来の1ドル=114円台と円高が加速した。 TOPIXの午前終値は前日比69.46ポイント(5%)安の1310.95、日経平均株価は836円9銭(4.9%)安の1万6168円21銭。 大和住銀投信投資顧問・経済調査部の門司総一郎部長は、中央銀行の「力がなくなってきたことを織り込みにいっている。米連邦準備制度理事会(FRB)はともかく、日本銀行と欧州中央銀行(ECB)についてはそれが剥落している」と話した。 8日の欧州株は軒並み3ー4%下げ、ギリシャ株は1990年以来の安値を付けた。債券市場ではポルトガルなど南欧債が急落した半面、ドイツ国債は急伸し、10年債利回りは一時昨年4月以来の0.21%まで下がった。米国市場でもS&P500種株価指数が1.4%安の1853.44など主要株価指数が安く、米国債は急伸した。 きょうの国内市場でも安全資産に逃避する動きが鮮明で、ドル・円は1ドル=114円台まで円高が加速、前日の日本株市場の終値時点は117円42銭だった。長期金利もゼロに低下。投資家の間でグローバル景気、企業業績への先行き不安も強まっている。経済協力開発機構(OECD)が8日に発表した昨年12月の景気先行指数は99.7と前月の99.8から悪化、8日のニューヨーク原油先物は3.9%安の1バレル=29.69ドルと再び30ドルを割れた。 午前の日本株は海外市場の流れを受けて下落して開始。先物主導で下げ足を速めた後、為替動向をにらみながら、前引けにかけてじりじりと下値を切り下げた。SBI証券の藤本誠之シニア・マーケット・アナリストは、「ギリシャ、ドイツ銀行、シェールガス、悪い話だけが聞こえ、投資家は今非常に悩んでいるだろう」と指摘。市場の不安心理は行き過ぎているが、「足元の日経平均のEPSは下がり続けており、なかなか底を付けるのは厳しい」と言う。 ドイツ銀は8日、高リスク債券の利払い能力をめぐる投資家の不安払拭(ふっしょく)を目指し、ことしと来年の利払いに十分対応できる資金力があると表明した。北米企業の債務不履行(デフォルト)に備える社債保証料を表すマークイットCDX北米投資適格級指数のスプレッドは、4年ぶりの高水準に達した。 東証1部33業種は証券・商品先物取引、銀行、その他金融、ガラス・土石製品、非鉄金属、精密機器、その他製品、輸送用機器、鉄鋼、機械などが下落率上位。SBI証の藤本氏は、「きょうは明らかに金融不安。証券、その他金融、不動産と明らかに金融相場の逆で、不安感があるときに一番売られる銘柄が売られている」とみていた。 売買代金上位ではトヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、ソフトバンクグループ、野村ホールディングス、ソニー、富士重工業、ホンダ、ファーストリテイリング、村田製作所、パナソニック、任天堂、オリックス、三菱商事が安い。クックパッドは大幅高、東京ディズニーランド・ディズニーシーの入園料を値上げするオリエンタルランドも逆行して高い。東証1部の午前売買高は14億3528万株、売買代金は1兆3261億円。上昇銘柄数はわずかに38、下落は1878。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎 更新日時: 2016/02/09 12:02 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O293326JIJVE01.html 長期金利が史上初ゼロ%、世界的な金利下げ圧力で−30年入札を見極め 2016/02/09 11:25 JST
(ブルームバーグ):債券相場は上昇。長期金利は史上初めてゼロ%まで達している。前日の米国債相場が堅調に推移した流れを引き継いだほか、円高や株式相場の大幅下落を背景にした世界的な債券買いが金利の下げ圧力となっている。 9日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より1.5ベーシスポイント(bp)低い0.02%で開始。一時は0.00%まで低下し、その後は0.005%を付けている。新発2年物の361回債利回りはマイナス0.215%、新発5年物の126回債利回りはマイナス0.225%と、ともに過去最低を更新している。 みずほ証券の末広徹シニアマーケットエコノミストは、長期金利のゼロ%到達について、「日銀のマイナス金利導入で短中期債を中心にもう少し金利低下の余地があるとして水準感を探っているうちに、海外市場でリスクオフ材料が重なり、株安・円高とともに金利レンジが一段と低下した影響が波及してきている」と話した。 長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比25銭高の151円56銭で取引を開始。その後も買い優勢の展開が続いて、一時は151円96銭まで上昇し、過去最高値を付けた。午前終値は54銭高の151円85銭だった。 ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、債券相場について、「円高進行や米金利低下のスピードが速く、グローバルな金利の方向に沿って買われている。世界的な景気減速懸念は消えておらず、クレジットリスクも意識されやすい」と話した。 8日の米国債相場は上昇。米10年債利回りは前週末比9bp低下の1.75%程度と、昨年2月以来の低水準で引けた。米国株相場の下落に加えて、原油先物相場が下げたことが買い手掛かり。アジア時間の取引では、1.70%まで一時下げた。この日の東京株式相場は大幅下落。日経平均株価は円高進行などを背景に一時4.6%安となった。円は一時1ドル=114円台と一年カ月ぶりの円高・ドル安水準に上昇している。 30年債入札 財務省はこの日の午前10時半から、30年利付国債の価格競争入札を実施。前回入札された49回債のリオープン発行で、表面利率は1.4%に据え置きとなった。発行予定額は8000億円程度。入札結果発表時刻は午後0時45分となる。 30年債入札について、ドイツ証の山下氏は、「30年債は全体的に金利が低下する中で取り残された形になっており、入札は悪くないだろう」と指摘。「ディーリング目的や日銀トレード見合いの需要が見込まれ、あすは日銀買いオペも予想される。多少なりとも実需の投資家に売れれば入札後に金利が低下する余地があり、先回り的な買いも入っている」と話した。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net;東京 船曳三郎 sfunabiki@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net 山中英典 更新日時: 2016/02/09 11:25 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O27V186JIJUT01.html Column | 2016年 02月 9日 10:46 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:銀行株総崩れ、最大の原因は中央銀行か
Dominic Elliott [ロンドン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 今年に入って銀行株が総崩れになっている原因は、隠れているようで実ははっきりと見えているのかもしれない。年初来、世界の株価全般が10%下落したのに対して、銀行株は14%下がった。 欧州銀行株は8日だけで5.7%下落している。世界経済の成長見通しへの銀行株の感応度の高さからすれば、株安を主導している「容疑者」のうち最も明白なのは、各中央銀行とその政策だろう。 もちろん銀行株の下落にはほかにも相応の原因がある。銀行のコモディティ市場に対するエクスポージャーの全容や、資源国などの政府系ファンドの銀行株保有状況が不透明な点を考えると、投資家の頭にはコモディティ価格の急落が影響したのではないかとの考えが浮かんでくる。銀行は石油・天然ガスセクター向け債権についての情報をほとんど公表していない。だがドイツ銀行(DBKGn.DE)によると、欧米銀行の債権総額は4000億ドルを超える。金融機関側の言い分では大半は投資適格級債券だとしても、金額は非常に大きい。ただドイツ銀の試算では、たとえ欧州銀行が保有する石油・天然ガスセクター向け投資適格級債券の4分の1が格下げされる場合でも、彼らの有形資産価値の1.2%に相当する引当金を積み増せばよい。 個別の銀行がそれぞれ抱える問題もある。ポルトガルのノボバンコの優先債権者への一風変わったベイルイン(損失の強制負担)は、欧州銀行の投資家にとっては同じ扱いを受けるのではないかとのパニックにあおられる。一方、欧州中央銀行(ECB)が域内の不良債権問題で何らかの対応に動く可能性があることが、恐らくは今年になってイタリアの銀行株が約33%下落した理由だろう。 もっとも銀行のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)保有者は同じようにおびえてはいない。マークイットによると、劣後債のCDSのプレミアムは100ベーシスポイント(bp)上昇したが、2013年当時に戻っただけで、金融危機時の高水準にはほど遠い。つまりこれは、銀行の破綻がそれほど深刻な懸念ではないことを意味している。それも不思議ではなく、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)からバーゼル銀行監督委員会、あるいは欧州連合(EU)欧州委員会までが昨年終盤以降、銀行の自己資本基準を全面的にかつてないほど高く設定する局面は終わったとのシグナルを発信している。 ただ、昨年12月以降で確かに変わったことが1つある。米連邦準備理事会(FRB)とBOEは利上げが予想されていたものの、今は現在の政策金利水準をより長く維持する可能性が出てきた。一方でECBと日銀は必要があればさらなる緩和に踏み切ると約束している。 この点から、日本までが最近になって加わったマイナス金利導入諸国・地域で、銀行株が下げ圧力を受けているわけが説明できる。 また金利水準がプラスにある地域の銀行も、イールドカーブのフラット化が重圧になっている。米国債の2─10年利回りスプレッドは過去半年で25%近く縮小して111bpとなり、年初来でも10bp縮まった。 投資家はフラット化が銀行の利ざやを圧迫する傾向があると承知しているし、経済活動が本当に減速しているなら、不良債権増加のリスクも高まる。 こうした状況では、なぜドイツ銀行の株価が09年初頭の水準さえ下回り、10年間の同行の株価純資産倍率(PBR)の中央値よりも50%低くなって過去最低圏で推移しているのかは、あまり的確には説明できないかもしれない。 それでも金融危機後に確定利付き商品のリターンが構造的に減少していることで、投資銀行は今までとは別の困難な事態に置かれているという主張は成り立つ。ドイツ銀とクレディ・スイス(CSGN.VX)は双方とも、長きにわたるコスト削減プログラムがまだ始まったばかりの段階にあり、第4・四半期の収入は急減した。 より健全でリテール事業に軸足を置くインテーザ・サンパオロ(ISP.MI)などは様相が異なる。同行の株価は最近下落してもなお、PBRは10年間の平均より20%高い。もしも投資家が、超低金利がもっと長引くことで銀行は近く資本コストに見合う収益を稼げなくなると心配し始めれば、株価は一段と下落する余地が出てくるだろう。 ●背景となるニュース *8日の欧州株は、世界経済の先行きやマイナス金利の影響をめぐる懸念が金融セクターに重くのしかかったため、1年4カ月ぶりの安値に沈んだ。銀行債の保険料は跳ね上がった。ドイツ銀行、コメルツ銀行、クレディ・スイス、HSBC、BNPパリバなどの株価が軒並み下落した。 *欧州金融機関の劣後債の保険料を示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)プレミアム指数は、マークイットによると8日に12%上がって2013年4月以来の高水準に達した。 同じくシニア債のCDSプレミアム指数は13年10月以来の高水準。いずれの指数も過去1週間で40%上昇した。 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 http://jp.reuters.com/article/global-markets-breakingviews-idJPKCN0VI03W Business | 2016年 02月 9日 10:30 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 米国の景気拡大、長期化は失速要因とならず=SF連銀調査 [サンフランシスコ 8日 ロイター] - 米サンフランシスコ地区連銀が8日公表した調査報告書では、米国の景気拡大が7年近く続いていることだけをもって、リセッション(景気後退)が近いと考える理由にはならないとの見解が示された。 同連銀の調査責任者グレン・ルードブッシュ氏は報告書で、ヒトと違って景気拡大は「経年によってぜい弱度が増すことはない」と指摘。「80カ月続く景気拡大が終わる確率は40カ月続く場合と実際には変わらない」とした。 今回の調査結果は、連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が昨年12月の記者会見で、現在の景気拡大期の長さが「わずかな残り時間」を意味するとは考えないと語った根拠の一端を示している。 ルードブッシュ氏は、第2次世界大戦前にはたしかに景気拡大が長引くほど終わる可能性は高かったが、戦後の景気拡大にはこれはあてはまらないと指摘。理由として、戦後の景気回復ではモノの生産よりもサービスの生産が原動力となった点、さらにFRBを含む連邦政府が戦前よりも経済の安定に力を注ぐようになった点を挙げた。 7年近く続く現在の景気拡大は戦後まれにみる長さ。 http://jp.reuters.com/article/usa-fed-recession-idJPKCN0VI03T Business | 2016年 02月 9日 10:14 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス マネーストックM3、1月は前年比2.5%増で横ばい 現金伸び続く [東京 9日 ロイター] - 日銀が9日に発表した1月のマネーストック統計によると、指標となるM3の月中平均残高は1242兆円となり、前年比で2.5%増加した。伸び率は前月から横ばい。景気の回復基調や低金利などを背景に現金通貨は約13年ぶりの高い伸びを示した。 要求払い預金など預金通貨が前年比4.1%増と前月の同4.2%増から小幅伸びが鈍化する一方、定期預金など準通貨は同0.5%増と同0.3%増から伸びが拡大しており、M3全体に大きな変化はなかった。 日銀によると、マネーストックの変動要因をみても、貸出増や純輸出の減少幅の縮小が押し上げに寄与したが、消費税の受け入れ増など財政要因や株安に伴う個人の株式購入増が押し下げに作用している。 こうした中で現金通貨の伸び拡大が続いている。1月は同6.5%増となり、前身のマネーサプライ統計を含めると2003年2月の同7.7%増以来の高い伸びとなった。景気の回復基調や低金利の長期化、賃金の増加などが背景とみられている。 幅広い金融資産を含めた広義流動性も同3.6%増と前月から横ばい。このうち外債は、前年に比べてユーロ相場が円安方向で推移したことから、評価額が増加。同2.2%増となり、前月の同0.1%減から伸び率を高めた。 M3からゆうちょ銀行などを除いたM2は同3.2%増で、前月の同3.1%増から伸びが小幅拡大した。 (伊藤純夫 編集:吉瀬邦彦) http://jp.reuters.com/article/m-idJPKCN0VI02Z 欧州の中央銀行家、過去を通しておぼろに見える影_今日の欧州経済とヒトラー時代の景気回復 2016.2.9(火) Financial Times (2016年2月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 多重危機に見舞われている欧州。もしユーロ圏の大国で極端な政治思想を持つ指導者が政権を握ったら、どうなるか・・・ (c) Can Stock Photo ?ジョン・ワイツによるヒャルマール・シャハトの伝記『Hitler’s Banker(邦訳:ヒトラーを支えた銀行家)』を読み返したら、これまで筆者が考えていなかった1930年代と現在の興味深い共通点に気づいた。 ?ヒトラーが再軍備計画の資金を賄うために、配下の中央銀行総裁だったシャハトに頼ったことは、よく知られている。 ?だが、ワイツは――そしてここが今日のユーロ圏に潜在的に関係するところだが――、シャハトがライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)で非伝統的な政策を追求できたのは、ひとえに独裁者の後ろ盾があったからだとも指摘している。 ?例えばイタリアやフランスなど、ユーロ圏に属する大国で極端な思想を持つ指導者が権力を握り、もし彼らがシャハトの才覚を持った中央銀行総裁を任命したら、どうなるだろうか。そして、そのようなチームが短期的に経済成長を高めることに成功する可能性はどれくらいあるだろうか。 ヒトラー人気を支えた急激な景気回復の立役者 ?最初に言っておきたい。筆者は決して誰かをヒトラーやシャハトと比べているわけではない。筆者の論点は、もし正統的な通念を破る政治的支持を得ていたら、非伝統的な中央銀行家には何ができるか、ということだ。 ヒトラーを支えた中央銀行家シャハト(Wikipediaより) ?シャハトはライヒスバンクの総裁を2度務めた。1920年代に当時ドイツを麻痺させていたハイパーインフレを終わらせた時と、1933年から1939年にかけての再登板だ。 ?シャハトを1つの経済的見解と結びつけるのは難しい。1920年代には金本位制を支持していたが、1930年代前半になると、緊縮・デフレ政策を奨励するコンセンサスに反対した。 ?シャハトはいみじくも、ドイツは1929年に採用された「ヤング案」に明記された賠償金支払いに応じることができないと訴えた。 ?ライヒスバンクに復帰した際、シャハトはドイツ企業が外国人に借りていた民間債務について一方的な債務再編をまとめた。ドイツ経済は既に1931年の金本位制からの離脱の恩恵を受けており、シャハトは次々と景気刺激策を実施した。ドイツにおける当初のヒトラー人気の1つの理由は、大恐慌からの素早い回復であり、それが緩い財政・金融政策に助けられたことは疑う余地がない。 ?欧州北部諸国に共有されているブリュッセルとフランクフルトの現在の正統的政策には、1930年代に一般的だったデフレマインドとの類似点がいくつかある。 ?今日の政治家と中央銀行家は、財政目標と債務削減に固執している。1930年代前半と同様に、正統的な政策には病的なところがある。 ?今日の中央銀行家は、言うことが尽きた時に「構造改革」に言及するが、そうした改革が一体何を達成するのか決して口にしない。 ?原則としては、ユーロ圏の経済問題を解決するのは難しくない。欧州中央銀行(ECB)が市民一人ひとりに1万ユーロの小切手を手渡せばいい。物価の問題はものの数日で解決されるだろう。あるいは、ECBは独自の「IOU(借用証書)」を発行することもできる。シャハトが行ったのは、それだ。 ?または、欧州連合(EU)が債券を発行し、ECBがそれを買い上げてもいい。紙幣を印刷する方法はたくさんある。どれも皆、素晴らしい方法だ。そして違法でもある。 もしイタリア総選挙で「五つ星運動」が勝ったら・・・ ?今日のユーロ圏には、ギリシャを除くと、ナチ政党は存在しない。だが、フランスとイタリアには、明らかに現在の政策コンセンサスの外にいる右派のポピュリスト政党がある。イタリアの「五つ星運動」の指導者ベッペ・グリッロ氏が2018年のイタリア総選挙で勝利するシナリオを想像してみてほしい。 ?イタリア銀行のイグナチオ・ビスコ総裁の任期は同年11月に切れる。グリッロ氏は自身の中銀総裁を任命する立場に置かれる。もしかしたら同氏はシャハトと同じくらい才覚に富む非情な人物を選び、移行期間に並行通貨体制を敷き、その過程で対外債務をデフォルト(債務不履行)することで、イタリアがユーロから離脱する道を描くかもしれない。 ?新体制の下で可能になる通貨切り下げと公共投資の拡大は、瞬く間に経済成長をもたらす可能性がある。 ポピュリスト政権が危険な理由 ?もしマリーヌ・ルペン氏が2017年にフランス大統領になったとしたら、フランス銀行を掌握するまで4年待たねばならないかもしれない。フランソワ・ビルロワ総裁の任期は2021年まで切れない。だが、フランスの大統領に与えられている権力を考えると、ルペン氏は自分の好きなことをするのに中央銀行の支持を必要としないかもしれない。 ?欧州のどんなポピュリスト政権も悲惨な結果を迎えることを筆者は確信しているが、短期的には、それでも経済成長率を高めることに成功するかもしれない。 ?だからこそポピュリスト政権は非常に危険なのだ。 ?だが、過去がそっくりそのまま再現されるとは思わない方がいい。カール・マルクスの言葉を借りれば、最初は悲劇として、次に茶番として歴史が繰り返されることになるだろう。この可愛らしいバージョンの1930年代でさえ、ある種の悲劇となる。欧州において絶えず緊密化する同盟の時期が終わり、ユーロの実験が失敗に終わったことになるのだから。 By Wolfgang Munchau http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46018
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