Business | 2016年 02月 3日 09:17 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 寄り付きの日経平均は大幅続落、3営業日ぶり1万7500円割れ [東京 3日 ロイター] - 寄り付きの東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比253円27銭安の1万7497円41銭となり、大幅に続落して始まった。原油相場の下落を受け前日の米国株式市場ではダウが大幅安。ドル/円JPY=EBSも119円台まで円高が進行している。外部環境の悪化を嫌気し、幅広い銘柄で売りが出ており、日経平均は取引時間中としては3営業日ぶりに1万7500円を下回った。東証業種別指数は33業種全てが下落している。 http://jp.reuters.com/article/tokyo-nikkei-opening-idJPKCN0VC013 Business | 2016年 02月 3日 07:37 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 米国株は大幅下落、エクソンの設備投資削減と原油安が重し
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米国株式市場は大幅下落した。エクソン・モービル(XOM.N)が設備投資の大幅削減を発表したほか、原油が再び大きく下げて相場の重しになった。 エクソン・モービルは第4・四半期の利益が過去10年あまりで最小に落ち込み、今年は設備投資を前年から25%削減すると発表。株価は2.2%下落した。 前週末に赤字決算を発表したシェブロン(CVX.N)も4.7%下げた。 原油相場は、石油輸出国機構(OPEC)とロシアが減産で合意するとの期待がしぼみ、WTICLc1と北海ブレントLCOc1がいずれも下落。S&Pエネルギー株指数は3.3%の低下となった。 投資家は中国の景気減速による世界経済の成長鈍化、さえない米経済指標、米国の利上げペースなどを懸念している。トムソン・ロイターによると、S&P総合500種構成企業の第4・四半期利益は前年比4.4%減少する見込み。 投資家は米大統領選の行方にも注目している。リバティービュー・キャピタル・マネジメントのリック・メクラー社長はアイオワ州での候補指名争いについて、はっきりした勝者がおらず、不透明感が残ったと指摘。「投資家は大統領選かエネルギー市場のいずれかでもう少し確実性が高まることを望んでいる」とした。 前日引け後に予想を上回る好決算を発表したアルファベット(旧グーグル)(GOOGL.O)は1.3%上昇し、時価総額でアップル(AAPL.O)を抜き首位に立った。 騰落銘柄数はニューヨーク証券取引所が下げ2478で上げ603(比率は4.11 対1)、ナスダックが下げ2237で上げ577(3.88対1)だった。 米取引所の合計出来高は約85億株で、過去20営業日平均の92億株を下回った。 終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード ダウ工業株30種 16153.54 -295.64 -1.80 16420.21 16420.21 16108.44 .DJI 前営業日終値 16449.18 ナスダック総合 4516.95 -103.42 -2.24 4588.69 4589.90 4503.12 .IXIC 前営業日終値 4620.37 S&P総合500種 1903.03 -36.35 -1.87 1935.26 1935.26 1897.29 .SPX 前営業日終値 1939.38 http://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN0VB2MW 債券は上昇スタート、米債高で買い先行−5年債利回りは過去最低更新 2016/02/03 09:17 JST
(ブルームバーグ):債券相場は上昇スタート。新発5年債利回りは過去最低水準を更新している。前日の米国債相場が原油安・株安を背景に堅調に推移したことや、円債先物が夜間取引で最高値を付けた流れを引き継ぎ、買いが先行した。 3日の長期国債先物市場で中心限月の3月物は、前日比14銭高の150円70銭で取引を開始し、一時は150円77銭まで上昇した。前日の夜間取引では150円80銭を付け、過去最高値を更新した。 現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より1ベーシスポイント(bp)低い0.065%で開始し、その後は0.06%で推移している。日銀が1月末の金融政策決定会合でマイナス金利策の導入を決めたことを受けて、1日には0.05%と2営業日連続で過去最低を記録した。新発5年物の126回債利回りは1bp低いマイナス0.115%と過去最低を更新して始まった。 東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、「外部環境のフォローから今日の相場は堅調」と予想。イールドカーブについては「フラット化復活の公算」が大きいとみている。 2日の米国債相場は大幅上昇。米10年物国債利回りは前日比10bp低い1.84%程度と、昨年4月以来の低水準で引けた。原油価格と株式相場が再び下落基調を強めたために世界経済の見通しが悪化し、安全な逃避先を求める動きから国債に買いが入った。ニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が大幅続落し、1バレル当たり30ドルの節目を割り込んで引けた。 日銀国債買い入れ 日銀は今日午前10時10分の金融調節で、今月2回目となる長期国債買い入れオペ実施を通知する可能性がある。その場合、前日に10年債入札が行われたことから、長期ゾーンを対象としたオペなどが実施される見通し。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「昨日の後場に債券先物は弱い10年利付国債入札後も値持ちの良さを示した。今日は日銀が長期国債買い入れオペを通知する見込み。底堅い値動きをたどりそうだ」と指摘した。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net;東京 山中英典 h.y@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net 山中英典 更新日時: 2016/02/03 09:17 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1WULP6JTSEO01.html
【第198回】 2016年2月3日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト] マイナス金利が抱えるアキレス腱 なぜ制御が難しくなるのか? 熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 日銀は追加緩和予想を上手にコントロールできると、信じているのだろうか わが国の金融緩和は、副作用が大きく、将来の金利変動リスクを溜め込むような不健全な領域にまで迷い込んでしまったと感じられる。日銀は、これ以上金融緩和が進まないという観測が生じるのを恐れるあまり、今度はマイナス金利幅を際限なく引き下げることができるという予想を振り撒き、先行きの緩和予想を演出しようとアピールしている。 本当に日銀は、マイナス金利の幅を動かして、追加緩和予想を上手にコントロールできると信じているのだろうか。筆者は、マイナス金利政策には、まだあまり認識されていない弱点がいくつかあると考えている。 まず、マイナス金利政策は、先行きどのくらいまで長く継続できるのであろうか。10年債利回りは、2月1日に一時0.050%と、過去最低まで下がった( 図表1参照)。イールドカーブは、8年物までマイナス金利になっている(図表2参照)。金利形成は、マイナス金利が長期化することを織り込んでいると理解できる。 ◆図表1:日本の債券利回りの推移 出所:日経QUICK ◆図表2:イールドカーブの形状の変化 出所:日経QUICK しかしこれは、マイナス金利の継続期間をあまりに長く織り込み過ぎてはいないだろうか。たとえば、金融機関の収益基盤がマイナス金利で損なわれることになれば、信用秩序の面から、マイナス金利を継続することが困難になる。副作用の大きな薬物を長期間投与することが危険視されて、事後的に時間軸が短くなる可能性を持っているということだ。 日本でも予期せぬ金利上昇が? 2015年ドイツの金利上昇に学ぶ 今後、経済情勢が改善すると、何年間もマイナス金利を継続する必要がなくなるという観測が、急に浮上する局面があるかもしれない。円安による輸入物価の上昇や、原油価格の上昇が、マイナス金利継続が何年も先まで続くと織り込んだ時間軸を、ある日突然修正させる。そうなると、予期せぬ金利上昇が長期ゾーンを中心に起こる可能性がある。 欧州における長期金利の変動を振り返ってみよう。ECBのマイナス金利は2014年6月に開始された。ドイツの長期金利は、その後、2015年4月に0.0735%という歴史的な低水準をつけたが、5・6月と急上昇して0.98%までリバウンドしている( 図表3参照)。 ◆図表3:ドイツの債券利回りの推移 出所:日経QUICK 当時は、マイナスだった消費者物価の前年比がプラスに反転し、一旦デフレの定着が回避できたという認識が強まった時期である。ドイツの長期金利は、目先の情勢変化を受けて、先行きの金利予想が塗り替えられるようになったため、急上昇をしたのである。ドイツの長期金利が急上昇した教訓は、情勢変化によって過度に織り込まれ過ぎたデフレ予想が修正されたときに、大きな金利変動が起 こり得ることを伝えるものだ。 現在のわが国の長期金利低下を見て思うのは、欧州の長期金利が当初はそうであったように、現在は反動を溜め込んでいるのではないかという懸念である。 一見合理的に見えるが…… 金利のマイナス幅にある不安定さ 金利水準がマイナスになることによって、イールドカーブ全体が沈み込むことが、物価見通しによるのではなく、もっぱら日銀やECBのマイナス金利政策の要因で起こっている。このマイナス幅は、マーケットの予想に応じて変化するので、一見それが合理的に決定されているように錯覚する。 たとえば、現在のECBの預金ファシリティの金利は▲0.3%である。一方、2年物の金利は▲0.47%(2月1日)とより大きくなっている。これは、債券市場の取引が、追加的に預金ファシリティのマイナス幅を拡大させるという見通しに基づいて行われ、先々、▲0.3%よりもマイナス幅が広がることを市場参加者が予想しながら、▲0.47%という金利形成が成り立っている。 しかし、よく考えてみると、ECBはどのようなルールに準拠して、預金ファシリティのマイナス幅を決めているのかはよくわからない。実はその決定は、「ドラギ総裁は次に何を仕掛けてくるか」という極めて裁量的な行動を予想するという、曖昧な基準に基づいている。 仮に、ドラギ総裁がサプライズを起こそうと狙っているとき、事前に予想された金利見通しは常に予定通りに運ばなくなる可能性を持っているという、不安定さもある。中央銀行が政策見通しに自己言及して金利形成をしたとき、実は中央銀行は予想を裏切って追加的な緩和効果を狙いたくなる誘因が強まってしまうという矛盾を抱える。 ポイントは、マイナス金利とプラス金利は異なる (※)という点だ。通常、プラスの債券利回りは、将来のインフレ率の予想によって、債券価格が決まり、金利形成が成される。それに対して、債券利回りは、将来の物価予想には必ずしも拠らず、中央銀行がどういった金利政策を打ち出すかの予想に強く依存する。この点は大きな相違点である。 表現を変えて言えば、将来の金融政策の生起確率がよくわからないのに、債券市場は金融政策の先行き予想を行うことを強いられて、便宜的に将来は▲0.4%とか、▲0.5%になると予想を組み立てているから、景気情勢や金融情勢、または政治環境が変わったとき、債券市場の予想もがらりと変わって金利変動が大きくなるということだろう。 先に、2015年5・6月にドイツの長期金利が上昇したことを紹介した。市場の期待形成が変わったとき、裁量的に決められているマイナス金利幅の見通し自体が成り立たなくなって、金利変動が大きくなる。言わば債券市場は、「ちゃぶ台返し」の波乱に見舞われたということだ。 (※)量的緩和は、長期国債の買い入れが金利形成に与える影響が実際は曖昧だったが、だからテーパリング(買入れ縮小)をしても金利形成にはあまり影響が及ばない。ところが、マイナス金利政策は直截的に金利低下に作用する。マイナス金利の幅をどう調整するかという曖昧さの問題は、量的緩和では問題にならないとしても、マイナス金利政策では大問題になる。 追加緩和の手段がなくなり 追い詰められてのマイナス金利 このことは、黒田総裁が2016年1月の決定会合で、マイナス金利を導入したことを考えると、もっと明瞭に不安定さが理解できる。日銀が今になってマイナス金利を導入したのは、1999年や2001年にゼロ金利政策や量的緩和政策を採用したときに比べて、経済状況が悪化したからなのであろうか。実情は、追加緩和の手段がなくなったから、追い詰められてマイナス金利という奇策に打って出たのである。 今後、マイナス金利をどのように刻んで変更するのかというルールは確立されていない。将来、デフレ状況が解消されたときに、どのようにマイナス金利を縮小・解除していくのだろうか。そのことに関するコンセンサスは、今のところはない。 今わかっているのは、多くの人が理解しているのは、日銀が追い詰められたら、再びマイナス幅を広げるだろうということくらいである。マイナス幅は、物価のデフレ予想に基づいて広がっていくような、客観的な基準などには基づかないから、かえってそのことが、マイナスの債券利回りを本質的に不安定にさせる。 後々危うい副作用が? マイナス金利と資産価格の関係 株価などの資産価格がどのように決まるかを単純に示すと、配当を金利で割り引くことで決定されると表現できる。配当割引モデルである。ここでの割引金利には、安全資産の利回りにリスクプレミアムが加味される。 今、日銀が安全資産の利回りを大きなマイナスに誘導すると、割引金利自体がマイナスになって、単純な配当割引モデルが成立しなくなる可能性がある。しかし、割引率が正であると考えると、次のようなことが起こることは容易に想像できるだろう。 リスクプレミアムがマイナス金利に喰われてしまい、割引金利自体がごく小さくなる状況である。つまり、資産価格はより大きく水ぶくれするということだ。これは、マイナス金利下ではリスク性資産への資金シフトが必要以上に促されて、資産価格が過大評価されやすいという傾向が生まれることを意味する。 しかし、厳密に考えると、ここでのリスクプレミアムは、安全資産の利回りが変動するリスクを含んでいるはずだ。日銀がマイナス金利を誘導すると、前述のように債券利回りのボラティリティが大きくなることが後々わかってくる。そうなると、マイナス金利政策を始めた当初は、リスクプレミアムが過小評価されて、資産価格は上昇するが、時間が経過して投資家たちが債券利回りのボラティリティが高まることを認識して、資産価格は下がってしまうことになる。 筆者は、マイナス金利政策ではあまりに極端な介入政策を実施しているように思えてならない。普通の風邪を引いたのに、カフェインの強いドリンク剤を飲んだ上、さらにきつめの風邪薬を服用するような過剰投与の危うさを感じる。金融緩和の弾を撃ち尽くしたから、より副作用の強い薬を飲まなくてはいけないという理屈がよく理解できない。 http://diamond.jp/articles/-/85646
宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説 【第29回】 2016年2月3日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト] “中国株”を混乱させる人民元安と原油安をどう克服するか ?1月29日に日本銀行はマイナス金利を導入する金融政策を導入した(詳しい解説は第28回宿輪ゼミ)。日本の為替・株式など金融市場が年初より混乱していたが、その対応でもあることは間違いない。物価上昇への効果は弱い。 ?その混乱する日本の金融市場であるが、特に日本株に影響を与えていたのが「中国株」である。年初からの中国株の下落は、日本株下落の引き金になった。今回は、その中国株の構造と今後の動きを考えてみよう。 アベノミクス以降の株価上昇分も吹っ飛ぶ ?世界の株式市場が大幅に下落している。その原因は中国株(上海株)である。年初来発生した上海株の下落を始めとした金融市場の混乱は、昨年の8月に続くものである。昨年8月の混乱を「チャイナショック」、今回の混乱は「サーキットブレーカー」の制度を中止したことがさらに混乱を増長させたことから「サーキットブレーカー・ショック」といわれている。 ?実際、米国株も日本株も中国株の混乱を反映するような形で、“つられて”弱気の相場になっている。ここまで日本株は、日本銀行総裁に財務省出身の黒田東彦氏が就任し、アベノミクスの一環で量的・質的金融緩和を導入し、為替を円安に誘導し、資金の流入により日本株も大幅に上昇させた。しかし、今回の年初からの日本株の下落は、アベノミクス以降の株価の上昇分を吹っ飛ばした形となっている。 ?個別株式は“個別企業の業績”の反映ともいえるが、その国の代表的な株価指数となると、“国全体の景気”を表すことになる。中国経済(景気)は、今後は「新常態(ニューノーマル)に入った」という習近平総書記や李克強首相の発言でも分かるように、決して以前のようには、景気が良くない。特に製造業と不動産・建築業の“2つの過剰”がマクロ経済(景気)の足を引っ張っている。 ?しかも、人民元を基軸通貨にするという30年計画に沿って、人民元はIMF(International Monetary fund : 国際通貨基金)のバスケット通貨SDR(Special Drawing Right:特別引出権)の構成通貨に昨年内定した。これが基軸通貨化の中間目標であった。ただし、正式に構成通貨になるためには「国際通貨」であること、という条件が付いている。つまり、自由な金融市場を前提として、自由な資本移動ができる変動相場制であることが必要となり、中国政府はこれを徐々に進めている。 ?現在の中国のようにファンダメンタルズ対比“高いレベル”で固定的に運営されている通貨に、投機筋が狙いを定めるのは、ある意味、当然でもある。人民元安が継続するということは資本の流出が継続しているということ、そして企業の外貨建ての債権(借金)が膨らみ負担が増しているということで、上海株はさらに下落するという“悪循環”が続くと予想するからである。 ?上海株の時価総額の多くを占めるのは、国営の「銀行」に加え、国営の「石油会社」である。この銀行と石油会社の業績が特に悪化している。 「銀行」にとってみれば、「金融市場の自由化」は金利の自由化などによって銀行収益が落ちることになる。中国では、国有銀行を始めとした十数行で上海株の時価総額の約4割を占めている。すなわち銀行株の下落は上海株の下落につながる。これはいわば金融の自由化の「帰らざる河」なのである。 ?さらに、2007年にはWTIで147ドルという史上最高値を付けた原油も現在は30ドルを切った。2007年当時、誰がこのような状況を想定しただろうか。このような状況で銀行に次いで規模が大きい「石油会社」も当然、業績が悪化し株価が下落することになる。 ?しかも、原油価格を需要面で見ると、中国、および中国の影響を受けた新興国が石油などの輸入を増やせない。また供給面でも、米国はシェールオイルを増産し、OPECは原油の増産を続け、さらにイランの原油の輸出が始まる。この両面から原油価格が戻るとは考えにくい。 中国政府は人民元相場を管理下に置いた ?中国は世界の国際金融や政策を詳しく学んでおり、特に最近の国際金融市場に対する対応はよく勉強している。実は、最近、人民元相場を管理下(コントロール)においた様子が感じられる。 ?中国の人民元は、日本も以前そうであったが、新興国の場合には、国内市場と海外市場を遮断し、国内市場を守り、混乱しないようにしている。国内市場をオンショア(On Shore)、海外市場をオフショア(Off Shore)として遮断する。しかし、最近、徐々に国際通貨になるためにもその仕切りを低くしてきている。それは日本でいうと、諫早湾における埋立地と日本海を仕切っている“防波堤”を低くするようなもので水の行き来が盛んになる。 ?通常、オンショアでは規制が厳しく、為替介入も行う。オフショアでは自由に取引ができ通常介入も行われないため、実勢(市場)レートに近いものになる。もし、国際通貨になるのであれば、このオンショアとオフショアの仕切り自体もあってはならないものである。つまり、いつかは仕切りが無くなり、一つの市場になるものと投機筋も見越していた。 ?最近、このような背景があり、投機筋はまず香港やロンドンなどのオフショア市場で人民元を売り込んでいった。実際、オフショア市場の動向にオンショア市場が引っ張られるように下落していた。 ?しかし、1月12日に中国人民銀行が香港のオフショア市場において大規模な為替介入を行った。これは予想外のことであった。実は、この為替介入は良く考えられた国際金融戦略であった。 ?これは、下落する人民元を支えるためなので、人民元買い・ドル売りの介入である。香港を始めとするオフショア市場の人民元の流通量は少ない。その少ないオフショア市場の人民元を大量に人民銀行は買い上げた。結果としてオフショア市場の人民元は枯渇し、短期金利(翌日物金利)は上昇し66.8%にもなった。以降、高い金利が続いている。 ?高い金利が続くと、投機筋が“売るための人民元”を調達する負担が大きくなり、実質的に調達できなくなる。しかも、オフショア人民元は高金利通貨となり、そもそも売りにくくなった。 ?ドル人民元の為替レートで見た場合、筆者は1ドル=6.6人民元を防衛線としていると見ていたが、このオフショア人民元介入以降、この防衛線を見事に守り切っているのである。つまり、人民元の下落からの上海株安というルートを抑えつつある。 人民元安には歯止め、しかし、 原油安は上海株を下落させ、日本株にも影響 ?実は今回のオフショア介入のお手本となったと筆者が考えている事例が、1997年に発生したアジア通貨危機の香港市場における「ドラゴンショック(Dragon Shock)」である。 ?この時は、投機筋が対象としたのは、対ドル固定相場制を採用していた香港ドルである。当然、投機筋が香港ドルを売り浴びせた。実は、香港ドルは固定相場制でも、厳格な固定相場制である「カレンシーボード制」という制度を採用している。この時も通貨当局である香港金融監督局(HKMA:Hong Kong Monetary Authority)でもある投機筋の売りに対して、当然、香港ドルを買い、外貨準備の米ドルを売っていた。この制度は国内の香港ドルの流通量を厳格に外貨準備量(米ドル)に一致させる制度である。つまり、米ドルが少なくなってくると、域内に流通する香港ドルも少なくなり、香港ドルの金利も上昇する。この時も短期金利は23%まで上昇した。 ?このドラゴンショックの時は、投機筋はさらに賢い戦略を取ってきた。金利が上昇すると、当然、景気が悪化し株価も下落する。実際、株価は大幅に下落した。それを予想して投機筋は、株価の先物も同時に売っていた。これは通貨制度を十分に理解した手法である。この時は、香港金融監督局は、非常事態ということで株価の買い支えまでも実施した。これは通常、通貨当局は行わない。 ?今回のオフショア人民元の場合には、この株式の問題は発生しない。上海株などの中国株はオンショアだからである。しかも、IMFも一時的に資本規制は許容するとの話も流れてきている。 ?しかし、原油価格はそうはいかない。いくつかの指標があるとはいえ、世界共通の市場だからである。前述したが、最近の原油価格は戻る展開が考えにくい。上海株の焦点は、人民元から原油価格に移行しつつある。 ?つまり、原油価格が下落を続けるならば、上海株は下落を続け(ニューヨーク株も下落する可能性が高い)、その影響は日本株にも及ぶ。そのようによく考えていくと「原油価格」の動向が、日本株を決める可能性が高いのではないか。 ※「宿輪ゼミ」は2015年9月に、会員が“1万人”を超えました。 ※ 本連載は「宿輪ゼミ」を開催する第1・第3水曜日に合わせて、リリースされています。連載は自身の研究に基づく個人的なものであり、所属する組織とは全く関係ありません。 【著者紹介】 しゅくわ・じゅんいち ??博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、来年の4月で10周年、まもなく200回開催、9月に会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。 Facebook宿輪ゼミ:https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/ 公式サイト:http://www.shukuwa.jp/ 連絡先:info@shukuwa.jp
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円上昇、原油安・株安でリスク回避強まる−対ドルで119円台後半 2016/02/03 08:20 JST
(ブルームバーグ):日本時間3日の外国為替市場では円が上昇。原油安や欧米株の下落を受けてリスク回避の動きが強まっており、ドル・円相場は1ドル=120円台を割り込んでいる。 ドル・円相場は一時119円69銭と日本銀行がマイナス金利政策の導入を発表した1月29日以来の水準まで円買いが進行。午前8時15分現在は119円79銭前後となっている。 三井住友銀行市場営業部NYトレーディンググループの柳谷政人グループ長(ニューヨーク在勤)は、「簡単に言えば、先週センチメントが改善しつつあったが、それがまた元に戻りつつある」とし、ドル・円は「2日間くらい踊った分」が巻き戻されていると説明。「日銀の話でここまで上がってきているのであれば、値持ちはする可能性はあると思うが、実効性には乏しいと思っているので、いつかどこかのタイミングでは元に戻るのではないか」とし、「あとはリスクオフがどこまで進行するかだ」と語る。 ユーロ・円相場は1ユーロ=131円台を割り込み、一時130円78銭と3営業日ぶりの水準までユーロ売り・円買いが進行。同時刻現在は130円85銭前後で取引されている。ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.0923ドル前後。 リスクオフ再燃 2日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が大幅続落し、1バレル当たり30ドルの節目を割り込んで引けた。3日の米エネルギー情報局(EIA)の統計発表を前に、米原油在庫が拡大し世界的な供給超過のさらなる悪化が示されるとの見方が広がった。原油安を嫌気して、同日の欧米株は下落。米国債相場は反発し、10年債利回りはほぼ10カ月ぶりの水準に低下した。 ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が3月の緩和強化を示唆した先月21日以降、市場では原油安・株安の流れが一服。日銀行マイナス金利政策の導入を発表した先週末には世界的に株価が大幅上昇し、外国為替市場では円が急落していた。 柳谷氏は、米国では製造業景況指数の50割れが定着しつつあり、米国株も買っていくには「コンビクション(確信)が得られない」と指摘。中国に対してもそこまでの信頼がないのは事実で、原油相場も減産の話が具体化しない限りは反転は難しいと語る。 この日は日銀の黒田東彦総裁の講演が予定されている。また、金融政策決定会合(12月17、18日分)の議事要旨が公表される。 一方、米国では1月のADP雇用統計と供給管理協会(ISM)非製造業景況指数が発表される 。ADP雇用統計は5日発表の雇用統計の前哨戦となる。週初に発表された1月の米供給管理協会(ISM)製造業景況指数は4カ月連続で縮小し、雇用指数は景気の谷となった2009年6月以来の低水準となった。 柳谷氏は、根っこにリスクオフの話が流れ続けている中で、それにあらがうだけのパワーを持った材料が出てこなければドル・円が上昇していくのは厳しいとし、「米国サイドが引っ張るといっても、雇用統計だけでセンチメントをがっつり変えるというのはちょっと難しい」と指摘。「雇用統計は悪い方向であれば注目される」とみている。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1XZTM6KLVRX01.html FRB副議長、失業率の想定以上の低下を容認
By JON HILSENRATH 2016 年 2 月 3 日 09:08 JST 米国の失業率はここ1年の下落ペースが続けば、年内に4%近辺まで下がるだろう。その場合、連邦準備制度理事会(FRB)関係者らが自然失業率、つまり低く安定したインフレ率に整合する失業率と考える水準を大きく下回ることとなる。 FRBのフィッシャー副議長は1日、これについて外交問題評議会での講演で、「少しのオーバーシュート(行き過ぎ)は妥当だろう」と述べ、そうなったとしても自身はあまり驚きや不安を感じることはないと示唆した。 FRBは安定的なインフレと整合する失業率を4.9%と考えている。2015年12月の失業率は5%だった。インフレ率がFRBの目指す2%に一向に届かない中、5%割れの失業率は経済のスラック(余剰資源)の縮小やインフレ押し上げに一役買うかもしれない。フィッシャー副議長は、インフレ率が目標の2%をいつまでも下回っている状況についてFRBが不満を抱いていることを聴衆に再認識させた。FRBは1月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表した「長期的目標と金融政策戦略に関する声明」にこの点を盛り込んだ。失業状況を表す通常の指標からは見えてこない雇用市場のスラックを改善させる可能性もある。 米労働省が5日に発表する1月の雇用統計を吟味するにあたり、このことは念頭に置いておく価値がある。FRBが昨年12月に利上げに踏み切った最大の要因は、失業率が5%に低下したことだった。失業率が今後も下がり続ければ、FRBは利上げを継続したい気持ちに傾くだろう。だが、金融状況の引き締まり、海外諸国の経済成長減速、一向に上向かないインフレ率など、米経済が現在抱えるその他の脅威を考えれば、FRBはそれほど利上げを急いではいない。 関連記事 FRBのインフレ目標は「シンメトリック」=長期目標声明 米FRB特集 金融市場の変動、米経済への影響不明=FRB副議長 FRBは利上げ続けるべき=米地区連銀総裁 By MICHAEL S. DERBY 2016 年 2 月 3 日 06:02 JST 【ニューヨーク】カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は2日、このところの金融市場の混乱は驚きではないと語った。また、今年この先も、連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを押し進めて行くよう主張した。 ジョージ総裁はカンザスシティーの催しで講演し、「最近の一連の不安定な動きは全く予想外だったわけではなく、必ずしも懸念すべきものでもない。FRBが実体経済を刺激する手段として資産価格押し上げに焦点をあてて低金利と債券買い入れ策をとっているためだ」と述べた。「金融政策の変更に伴い資産価格は調整されるので、リスクの織り込み方もこの異なる金利環境に合わせ再調整が見込まれる」と語った。 米経済について、さらなる成長と「着実な」雇用の伸び、インフレの上昇を予想する楽観的見通しを示し、したがってFRBは昨年12月にまず行った利上げを今後も続けるべきだと主張した。 総裁はさらに、FRBは「経済活動と物価上昇に沿う形で金利を引き上げる段階的な調整を続けるべき」だと論じ、「こうした行動は難しいことが多いが、米経済の成長を長期的な潜在成長率に一致させ、物価安定を促すために必要でもある」と続けた。 さらに、先週の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きの判断を支持したが、見通しは明るく、米国が逆風にも十分耐え得る公算が大きいことを意味すると説明し、「ここ最近の変動が示す兆候を考慮することは確実だが、金融政策が市場の現象に逐一反応することはできない」と述べた。 「米経済はここ数年、海外の成長鈍化など様々な衝撃に耐え得ることを証明してきた。今年の海外経済の見通しは2015年より堅調であることが多くの推計に表れている」とし、「現在の米経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は今後も十分にプラス成長を維持する強さがあるようだ」と話した。 一方、強い雇用の伸びがやや緩んでも驚きではないとの認識も示した。インフレ率は過去3年余りにわたりFRBが目標とする2%を下回っており、向こう数年は目標に達しないと想定されているが、物価指数は「好調でおおむね物価安定に即している」との見方を示した。 1月の米自動車販売、10年ぶり高水準に By ANNE STEELE 2016 年 2 月 3 日 02:48 JST 1月の米国新車販売台数はやや伸び悩んだ。営業日数が前年より少なかったうえ、大雪の影響で自動車ディーラーの客足が鈍った。 それでも各社は1月としてはここ10年で最高の販売台数を記録する見込みだ。市場調査会社のJDパワーとLMCオートモーティブによると、1月の業界全体の自動車販売台数は季節調整済み年率換算(SAAR)ベースで1680万台とみられている。前年の1670万台を上回り、2006年以来の好調さとなる見通し。ゼネラル・モーターズ(GM)はSAARベースの販売台数を1750万台と推計している。 より高額な大型車の売れ行きが引き続き堅調で、ケリー・ブルー・ブック(KBB)によれば1月の新車の平均販売価格は3万4112ドル(約400万円)と前年同月比2%上昇した。排ガス不正問題の影響が続くフォルクスワーゲン(VW)を除く全メーカーで前年同月比の販売価格が上昇した。 メーカー別販売台数では、GMが前年同月比0.5%増の20万3745台。ピックアップトラックの「シボレー・シルバラード」と「GMCシエラ」の販売台数が合わせて7%増加した。 フォード・モーターは2.8%減の17万2478台。ただ「フォード」ブランドのスポーツタイプ多目的車(SUV)は1月としては04年以来の最高を記録し、「エッジ」が26%増と躍進した。 フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は6.9%増の15万5037台。前年比での増加は5年10カ月続いている。「ジープ」ブランドが15%増、ピックアップトラック「ラム」も健闘した。1月の販売台数としては両ブランドとも過去最高となった。 日産自動車は1.6%増の10万5734台。クロスオーバー車、トラック、SUVは合わせて18%増加し、販売台数が1月として過去最高だった。 トヨタ自動車は4.7%減の16万1283台。 JDパワーのジョン・ハンフリー上級副社長は、豪雪の影響で東海岸では新車販売台数が通常より30%(1万5000台)減少したと指摘した。 http://art.wsj.net/api/photos/gams-files/BN-MJ564_2mBHl_M_20160201123501.jpg?width=1260&height=839 ミレニアル世代は住宅取得の夢をあきらめたのか 米国社会に大きな異変、18〜34歳の持ち家比率が急低下 2016.2.3(水) Financial Times (2016年2月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
OECD経済見通し、世界的には低調 記事に登場するリック・スパイズさんのような世代は、米国のサブプライムローン危機の落とし子〔AFPBB News〕 ?リック・スパイズさんは2005年に大学を卒業した後、自分は両親と同じような道をたどって大人の米国人になるのだろうと考えていた。首都ワシントンにほど近い裕福な人が住む街、バージニア州アレクサンドリアの郊外にマンションを買うわけだ。当時はサブプライムローンの全盛期。給料は年3万ドルだったが、その10倍の住宅ローンを簡単に組むことができた。住宅価格もうなぎ登りだった。 ?あれから10年。スパイズさんは3人の子供に恵まれ、勤務先もシンクタンクから住宅ローン販売会社に代わった。 ?しかし、住んでいるのは自分名義の家ではなく、コロラド州にある両親の自宅だ。 ?いま住宅を買うのは非常にリスクが大きいように感じられるという。「宝くじの『パワーボール』を当てて、現金で買うなら別だけどね」。 ?そう考えるのはスパイズさんだけではない。米国の18〜34歳――同国では最も人口が多い年齢層――の持ち家比率は現在、1982年以来の低水準にとどまっている。いわゆる「ミレニアル世代」の3分の1近くは両親と同居している。これは景気後退の最悪期に当たる7年前よりも高い値で、米国の国勢調査でデータ収集が始まった1968年以降で見ても最も高い。 サブプライムローン危機の落とし子 ?同世代の多くの人々と同様に、30代半ばのスパイズさんはサブプライムローン危機の落とし子だ。仕事を辞めて住宅ローンの返済が滞るようになったことから、自宅は2008年1月に手放した。市場暴落の最悪期は避けられた格好だ。 ?「親許に居候するのではなく、今後も長く住める」家を持ちたいのはやまやまだが、自分のクレジットスコア*1はまだ非常に低く、現段階では住宅ローンを組ませてくれる銀行はなかなか見つからないだろうと話している。 ?ミレニアル世代に住宅の買い手が少ないことに、エコノミストたちは首をひねっている。確かに、景気後退期に失業して最大級の打撃を受けた世代ではあるものの、景気はその後、急回復している。米国のミレニアル世代の失業率は昨年、7.7%にまで低下した。最悪期からの低下幅は5ポイント近くで、国民全体のそれとほぼ同じだ。 *1=その人の信用力を表した点数のこと ?「労働市場が改善するにつれて、親と同居する人の数は減るだろうと思っていたが、実際にはそうなっていない」。調査会社ピュー・リサーチ・センターのエコノミスト、リチャード・フライ氏はこう指摘する。「だから、何かほかの要因がからんでいる」。 ?ミレニアル世代に当惑しているのはエコノミストだけではない。 ?企業は何年も前から、今後数十年間で30兆ドルもの資産を相続することになるこの世代の好みを理解しようと努力してきた。 ?さまざまな調査によれば、この世代は権利意識が強く、スマートフォンにくぎ付けだが、健康に対する意識は高く、精神的に傷つきやすいうえに楽観的だとされている。 ?誇張される一方で、ミレニアル世代の見通しは不透明になっている。また、総合的な統計指標は好調なものの、米国経済の実情は複雑だ。 ?第1に、景気は一様に回復しているわけではない。雇用は好調で株価も上昇しているが、所得格差は記録的なレベルに拡大し、中間層が縮小している。コロンビア大学のクリス・メイヤー教授は「失業率が示唆するほどには、国民の暮らし向きはよくない」と言う。「大学を出れば将来が約束されるという考え方は・・・ミレニアル世代が願っていたようなものにはなっていない」。 ギグ・エコノミーの台頭で雇用が不安定化、学生ローンも重荷に ?いわゆる「ギグ・エコノミー*2」の台頭でフリーランスやパートタイムの職が増えたことも、雇用の安定性を低下させている。 ?24歳のコンピューター・プログラマーで姓は明かそうとしないジョシュさんは、幸いなことに自分の仕事にはかなり需要があるが、友人の間では「取れる仕事はどんなものでも引き受けるという状況があるらしい」と話している。ジョシュさん自身も、このまま1つの分野から抜けられなくなり、仕事を見つけられなくなる事態を心配しているという。 ?ミレニアル世代には、学費を払うために組んだローンが残っており、毎月の返済が結構な額になるため住宅の頭金をためたり信用力を高めたりすることが難しいという人も多い。昨年のデータによれば、大学新卒者10人のうち7人前後はローンの返済を抱えており、ローン残高の1人当たり平均額は3万ドルを超える。 *2=gig economyは、インターネット上のマーケットプレイスなどを通じ、単発や日雇いの仕事を請け負う市場経済のこと ?住宅を買う余力のあるミレニアル世代でさえ、金融危機後の大不況を経験したせいで慎重になったり関心をなくしたりしている。ピュー・リサーチ・センターによれば、この世代は転職についてもベビーブーマーの世代より消極的だ。 ?強い労働市場と低金利のせいで不動産価格がバブル気味に上昇していることから、米国内のいくつかの都市では、住宅がミレニアル世代の手の届かないものになっている。 ?また、住宅取得より賃貸を選ぶ人が増えているせいで、一部の大都市では家賃相場も同様に上昇しており、住宅購入のための貯蓄もままならなくなっている。 ?エコノミストらは、ミレニアル世代が住宅所有から遠ざかる傾向が、景気循環的ではなく構造的な変化になるかどうか思案している。ゴールドマン・サックスのエコノミストらに言わせると、欧州ではそれが明白で、若年成人が親元で暮らすことが社会的に受け入れられ、長期的な変化をもたらした。米国では、親との同居が「ニューノーマル」になりつつあるとプログラマーのジョシュさんは語る。 不動産業界はなお期待 ?一方、ニューヨークの不動産エージェント、カイル・ヒソック氏によれば、以前の予想は「期待に沿わなかった」ものの、不動産業界は引き続き、ミレニアル世代がいずれ住宅市場を席巻すると確信しているという。業界幹部らは、若年成人の過半数が向こう数年で家を買うつもりだと答え、「アメリカンドリーム」をあきらめたわけでないことを示唆する調査を引き合いに出す。もっとも、この夢が実現するかどうかは、まだ分からない。 ?スパイズさんにも似たような目標がある。生活状況について誰かに聞かれるたびに、彼は「まだ顔が燃えるようにほてるのを感じる」が、今後数年内に自分名義の家に引っ越すつもりだ。「さあ、どうなるかな」とスパイズさんは話している。 By Anna Nicolaou in New York http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45960
Column | 2016年 02月 3日 08:40 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:米アイオワ州党員集会、敗者はウォール街
Gina Chon
[ワシントン 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米大統領選の候補者指名争いの初戦となった中西部アイオワ州の党員集会は、共和党ではテッド・クルーズ上院議員が不動産王ドナルド・トランプ氏を破り、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官前国務長官とバーニー・サンダース上院議員がほぼ互角となった。明確な敗者はウォール街の金融機関だ。 ワシントンの政治家にとって、銀行システムの問題はおおむね過去のものとなった。だが大統領選を戦う候補者にとっては違う。民主党、共和党ともに候補者がお互いに「大き過ぎでつぶせない」金融機関との関係を非難し合っている。 クルーズ氏は2012年の上院議員選挙でシティグループ(C.N)と同議員の妻が働くゴールドマン・サックス(GS.N)から最大100万ドル借り入れたとしてトランプ氏から批判された。トランプ氏はアイオワでの集会で「ゴールドマン・サックスが(クルーズ議員を)所有している」と皮肉った。 この作戦はほぼ成功した。先週の世論調査によると、クルーズ氏が融資について連邦選挙委員会に報告していなかったことを気にしているとの回答が半数以上に上った。トランプ氏と同様にクルーズ氏も、ウォール街の世話になっていないアウトサイダーと自身を位置付け、それが同氏の支持拡大につながってきた。 クルーズ氏は討論会でバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)(BAC.N)のような金融機関が経営危機の瀬戸際にあれば、破綻させると言明した。またゴールドマンについて、縁故資本主義という罪を犯していると批判した。 一方借り入れによって不動産帝国を築き上げたトランプ氏は、プライベートエクイティーやヘッジファンドの運用担当者に有利な税制上の抜け穴をふさぐと主張し、有権者の信頼を勝ち取ろうと努めてきた。 民主党も大差はない。サンダース氏は銀行の分割を主張し経営陣が投獄されなかったことに疑問を呈したほか、クリントン氏が金融機関から献金を受けたことを繰り返し批判し、同氏がウォール街を監督できるか疑問を投げ掛けた。またクリントン氏がゴールドマンから講演料として60万ドルを受け取ったことをやり玉に挙げた。 アイオワにウォール街バッシングが鳴り響いた。これから指名争いがニューハンプシャー、ネバダ、サウスカロライナ各州へ、そしてさらには3月1日スーパーチューズデーに向かうにつれて、候補者たちは批判の声を強めていくだろう。こうしたメッセージに銀行関係者たちはうんざりかもしれないが、有権者たちはこの先もどんどん集まってくる。 ●背景となるニュース *米大統領選の候補指名争いの初戦となる中西部アイオワ州党員集会が1日開かれ、共和党ではクルーズ氏がトランプ氏を破った。 *民主党は米東部時間午前0時時点でクリントン氏とサンダース氏がほぼ互角。 *民主党のマーティン・オマリー前メリーランド州知事と共和党のマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事は選挙戦からの撤退を表明した。 *第2戦となる東部ニューハンプシャー州の予備選は9日に行われる。 http://jp.reuters.com/article/column-iowa-wall-street-idJPKCN0VB2PM?sp=true ECBの刺激策拡大、決定していない=メルシュ専務理事 By TOM FAIRLESS and BRIAN BLACKSTONE 2016 年 2 月 3 日 05:52 JST 【フランクフルト】欧州中央銀行(ECB)のメルシュ専務理事は、来月のECB理事会で追加刺激策が大幅に拡大されると決めつけないよう投資家をけん制した。まだ何らの決定も下されておらず、あらゆる選択肢が残されていると強調した。 メルシュ専務理事はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューに応じ、「時に思うことだが、3月へ向け何も決定されていないとわれわれが述べている以上、それを理解できるよう金融市場関係者は英語の理解力を磨かなくてはならない」とし、「われわれと市場との対話が不完全なのではなく、既得権益のある人々が誘発する過大な期待が問題だ」と語った。 ドラギECB総裁は最近の講演で、根強い低インフレに対処するためECBは来月にも刺激策を拡大する用意があると発言していた。メルシュ専務理事の見解は、当局者が状況変化に対応できるよう政策の柔軟性を維持しつつ、発言を通して市場を導こうとすることの難しさを浮き彫りにしている。 メルシュ専務理事は、3月10日の次回理事会では、物価上昇の弱まりを示す可能性が高い新たな経済見通しに照らして刺激策の内容を「明らかにECBは再検討するだろう」と述べた。 また、ユーロ圏経済における「多くの前向きな展開」と原油価格の持ち直しに言及し、投資家はECBが12月に実施した緩和拡大の効果を見誤っていると指摘した。株式相場は過去最高値を10%ばかり下回っているに過ぎず、「厳密には暴落ではない」と述べた。 「われわれが伝える内容を見れば、これは極めて明確なことだ。状況は12月時点から変化しており、われわれは再検討や再点検をし、必要とあらば修正する可能性もある」とした。 12月の債券買い入れ拡大は約6800億ユーロに上るとし、「12月に決定した政策措置の一部は2019年まで継続する」と指摘した。 一方、インフレ率は春から初夏にかけてマイナスに落ち込むであろうとの見方を示し、「われわれを不安にさせる領域だ」と懸念をにじませた。1月のユーロ圏総合消費者物価指数(HICP)速報値は、前年同月比で0.4%上昇した。 Business | 2016年 02月 3日 04:21 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス ECBの行動に制限はない━メルシュ専務理事=WSJ [2日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのメルシュ専務理事は、ECBが行動すると決めた場合、何ら制限には直面しないとの認識を示した。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に対し述べた。 昨年12月以降、複数の要因が度合いを増したと指摘。原油相場の動向と中国を含む新興国景気に言及し、原油安は定着するリスクが恐れがあるとした。 買い入れ対象の資産を拡大するかとの問いをめぐっては、「政策手段の活用や種類、規模において制限はない」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-action-idJPKCN0VB29U カンザスシティー連銀総裁:金融混乱、利上げ先延ばしの理由にならず 2016/02/03 05:08 JST
(ブルームバーグ):米カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、最近の金融混乱は予期されていたものであり、追加利上げを先延ばしする理由にはならないとの認識を示した。 総裁はミズーリ州カンザスシティーで講演。事前に配布された原稿によれば、「そうしたボラティリティからシグナルを捉えるのは当然だが、金融市場で急激な変動が起きるたびに金融政策が対応することは不可能だ」と指摘。「実体経済を刺激する手段としての資産価格押し上げに焦点を合わせた、米当局の低金利および債券購入の政策を踏まえれば、最近見られるボラティリティは特に予想外だったわけではなく、必ずしも懸念すべきことでもない」と述べた。ジョージ総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ。 総裁は先週のFOMC会合で、政策金利据え置きの決定を支持した。 ジョージ総裁は最近の原油価格下落やドル上昇について、米国の成長を減速させる可能性はあるものの、成長が継続するという全般的な予想が変わることはないと説明した。 総裁は「そうした向かい風にもかかわらず、米経済はここ数年、国外の成長低迷を含む様々なショックに対する打たれ強さを見せてきた」と指摘した。 また昨年12月の利上げ開始は遅かったとし、追加利上げまで長く待ち過ぎるのは誤りだと警告した。 ジョージ総裁は「金融政策は時間差を伴って経済に影響を与えるため、必然的に政策決定は予測とそれに関連したリスクに基づかなくてはならない。目指したものが実現するまで待つべきではない」とし、「完全な裏付けが得られるデータが出てくるまで政策決定を下さないのは、恐らく長く待ち過ぎたということになる」と続けた。 原題:Fed’s George Says Financial Turmoil No Reason to Slow Rate Rises(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先: Atlanta Steve Matthews smatthews@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Carlos Torres ctorres2@bloomberg.net 更新日時: 2016/02/03 05:08 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1XQ5ZSYF01W01.html Business | 2016年 02月 3日 03:40 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 市場変動しても利上げ推進すべき=米カンザスシティー連銀総裁 [2日 ロイター] - ジョージ米カンザスシティー地区連銀総裁は2日、金融市場が変動しても米経済のファンダメンタルズは力強いため、連邦準備理事会(FRB)は利上げを推し進めるべきとの考えを示した。
総裁は「米連邦公開市場委員会(FOMC)は金利上昇に向けた段階的調整を継続すべきというのがわたしの考えだ」と述べた。総裁は今年のFOMCで投票権を持っている。 さらに米経済見通しに大幅な変更が生じれば、自身の考えは変わる可能性があると指摘。金融市場の変動に注意を払っているほか、米エネルギーセクターの人員削減が経済全体に悪影響を及ぼさないか見守っているとした。 ただ金融市場の大幅な変動については「まったく予想外ではないし、必ずしも懸念すべきでない」と指摘。「米経済のファンダメンタルズは足元、先行きの前向きな成長を維持する上で十分力強いとみられる」との考えを示した。 今年、具体的に何回の利上げが正当化されると考えるかについては明言せず、段階的な利上げを支持すると述べるにとどめた。 http://jp.reuters.com/article/usa-fed-george-idJPKCN0VB26R World | 2016年 02月 3日 01:19 JST 関連トピックス: トップニュース スイスフランなお過大評価、通貨戦争のリスクない=中銀総裁 [ジュネーブ 2日 ロイター] - スイス国立銀行(中銀)のジョルダン総裁は2日、スイスフランはユーロに対して依然として「かなり過大評価されている」と述べ、必要に応じて為替介入を行う用意があるとの見解を明らかにした。プレスクラブでの講演で述べた。 総裁はスイス中銀がマイナス金利を採用していることや、為替介入への意欲を示していることに加え、相場が買われ過ぎとなっていたことなどにより、過去数週間でフランが下落したと分析。 「中国の構造的な調整が世界的な産業活動や投資に対し引き続き重しとなる可能性があるほか、欧州でもぜい弱な状態は続いている」とし、「状況はまだ大幅なリスクをはらんでいる」との認識を示した。 ただ、最近スイス中銀が介入を行ったかは明らかにしなかった。 1115GMT(日本時間午後8時15分)時点でフラン相場は1ユーロ=1.116フランとなっている。 また日銀が欧州中央銀行(ECB)に続き、マイナス金利の導入を決定したことなどをめぐっては、各国の中銀は国内の状況に対応しているとして、通貨戦争のリスクはないと述べた。 http://jp.reuters.com/article/snb-jordan-idJPKCN0VB18M 日銀と喧嘩してはいけない、10年金利年内マイナスも−東海東京・佐野氏 2016/02/03 00:00 JST
(ブルームバーグ):東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、長期金利が年内にもマイナス圏に陥るとみている。日本銀行のマイナス金利政策導入を受け、金利の下げ圧力が10年物国債にまで広がるのは時間の問題と言う。 「年内にも10年債利回りはマイナスに突入するのではないか。マイナス0.1%までの低下を予想している」。佐野氏は、従来の金利予想の下限を引き下げ、2016年1−6月にマイナス0.1−プラス0.5%、16年4月−17年3月にマイナス0.1−プラス0.75%のレンジを見込んでいる。 「中央銀行と喧嘩(けんか)してはいけない。日銀は、より長い年限を買う方向なので、30年債、40年債などの満期保有が正しい」と、佐野氏は説明。「ボラティリティが高い時に、投げ売りすると負けになる。途中で投げないことが重要」と語った。 原油安などを受けた世界的な景気低迷懸念や国際金融市場の混乱を背景に、日銀は1月の金融政策決定会合で、初めて0.1%のマイナス金利による追加緩和を賛成多数で決定した。金融機関の日銀当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用する。 長期金利は、日銀の追加緩和の発表を受けて初めて0.1%を割り込み、1日には一時0.05%と、2営業日連続で過去最低を更新した。利回り曲線上では、8年ゾーンまでの国債利回りがマイナスに低下している。 国内機関投資家は、日銀が毎月8兆−12兆円程度実施している買い入れオペに対して、国債を売却することに慎重になっている。1日のオペでは、残存期間1年以下のゾーンの応札倍率は1.64倍と、14年12月以来の低水準にとどまった。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net; Tokyo Chikako Mogi cmogi@bloomberg.net;東京 三浦和美 kmiura1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net 山中英典, 青木 勝 更新日時: 2016/02/03 00:00 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1MY9Y6JIJVZ01.html
冷え込むアート市場 中国人収集家の姿勢一変 By KELLY CROW 2016 年 2 月 3 日 08:45 JST アート市場が冷え込み始めているようだ。これまで6年間は中国を中心とした新興富裕層の収集家が大量に市場に参入し、明朝時代の花瓶からクロード・モネの絵画に至るまであらゆる作品が値上がりした。しかし今は、オークションの場で番号札が上がっても、すぐに下ろされてしまうようだ。 原油価格の下落や株式市場の乱高下、中国経済の減速がアート市場を圧迫し、名作や新作の美術品に惜しげもなく金を出すと期待されていた世界の富裕層がおびえている。競売会社クリスティーズが昨年販売した美術品の総額は74億ドル(約8950億円)で、前年より10億ドル減少した。同業のサザビーズの販売額は横ばいの67億ドルだった。 クリスティーズとサザビーズは2日、ロンドンで冬のオークションシーズンを開始する。扱うのは印象派や近現代の美術品だが、ここ数年で初めて出品数が減少、予想落札価格も下がっている。最も高額な作品はピカソの絵画「女の頭部」で、サザビーズは予想落札価格を2340万ドルに設定した。ピカソの作品といってもさまざまだが、昨年5月にクリスティーズのオークションで1億8000万ドル近い価格で落札された「アルジェの女たち(バージョンO)」と比べると、「女の頭部」の予想落札価格はその13%でしかない。 広告 ルクセンブルク大学ルクセンブルク・スクール・オブ・ファイナンスの准教授でエコノミストのローマン・クラウスル氏は現在のアート市場が「バブルの中でも『マニアフェーズ』にあると99%確信している」と話す。クラウスル氏は大学の同僚2人と共に、過去30年間に行われたオークションの100万超の記録を分析、その研究結果を先月、ジャーナル・オブ・エンピリカル・ファイナンスで発表した。クラウスル氏らは美術品の価値が株と同じように大きく変動することを明らかにしており、次にアート市場が減速するときその兆候を見極められるかどうかに関心があった。研究の結果、アート市場は既に減速していて、他の分野より速いペースで価値が上昇していた現代美術や米国美術の市場が著しく減速していることが分かった。 クラウスル氏によると、研究では、市場の調整が最終的に他の収集分野にも影響が及ぶ恐れがあるが、アート市場全体の暴落にまでは至らない可能性が高いことが示されたという。富裕層にはまだ現金を預ける場所が必要で、その点での美術品の権威は健在だという。 シティ・プライベート・バンクが2カ月前に発表したレポートによると、オークションでの販売額で見た2000年以降の世界のアート市場は年平均13%のペースで拡大を続けている。ただ、現在の成長率は9%で落ち着いているそうだ。同じ時期の世界の経済成長率が年3.5%、輸出の伸び率が8.1%だったことを考えると、そう悪くはない。 アート市場を一変させたのは中国人収集家の動向の変化だ。経験を積んだ中国人収集家はまだ美術品の購入を続けている。しかし、シティのプライベートバンク業務で美術品投資について助言や融資を行う部門のトップを務め、先のレポートにも参加したスザンヌ・ジョルジー氏によると、以前より見る目が厳しくなり、作品をよく分かった上で買っているという。昨年の北京でのサザビーズの販売額は前年比69%減少となった。 ジョルジー氏によると、中国をはじめ各国の収集家が一流作品の価格上昇に若干驚いており、市場は自然と天井を打つ可能性がある。ジョルジー氏は「市場に一定の健全性をもたらすために若干の調整を期待していた」と話す。「価格のあがり方といい、全てが『人工的(artificial)』になり始めていた」。 アートの世界では「artificial」とは演出されているという意味で使われ、売約済みの作品が出品されているオークションに対して使われることが多い。販売期間中に他に購入の意思を示す人が現れなければ、事前に決めた第3者の投資家に美術品を販売することを保証するのだ。クリスティーズが春のオークションで作品の半分にこうした保証をしていたときが「保証レース」のピークで、今ではあまり行われなくなっているようだ。 ロンドンのオークション調査会社アートタクティックは2016年の世界アート市場についてのレポートの中で、競売会社が「今後1年、この種のリスクを取りたがらなくなる」と予想した。となれば、弱気な売り手は自らの戦利品を売りに出そうとは思わなくなるかもしれない。サザビーズは今年これまでに9200万ドル相当の美術品に保証を行っていることを明らかにした。これにはロンドンで売りに出される4つの作品も含まれている。昨年秋には、サザビーズはオーナーだったA・アルフレッド・トーブマン氏の遺産に対して相続人に5億1500万ドルの保証を行っていたが、販売額が期待外れな結果となり、900万ドルを失った。まだその傷が十分に癒えていない。 収集家は今年、安全策として、シンガポールやインド、アフリカ、イランなどまだそれほど値上がりしていないものの人気が出始めたアート市場に関心を向けるだろう。また、ピカソやアンディ・ウォーホールなど世界の有名画家50人の作品は、市場にもまれていない新人ほど値下がりすることはなさそうだけに人気を集めると予想される。 競売会社は既に購入意欲の減退に備えており、ロンドンのオークションでは有名どころの作品を取りそろえた。サザビーズは3日、アンリ・マティスの1923年の作品「ピアノのレッスン」をオークションにかける。予想落札額は1760万ドルに設定されている。 一方、クリスティーズの2日のオークションの目玉はエゴン・シーレの「指を広げている自画像」だ。オーストリア出身のシーレが1909年に黒と金色で自らを描いた。この作品は9年前に890万ドルで落札されたが、今回の予想落札額は850万ドルに設定されている。 現代美術では、サザビーズの専門家シャイアン・ウェストファル氏はゲルハルト・リヒターなどの「よく売れることが分かっている芸術家に集中する」戦術を取るという。サザビーズは10日、アルベルト・ブッリの麻袋を使った作品などを販売する。ブッリの作品「袋と赤」の予想落札価格は1360万ドル。 11日に行われるクリスティーズの現代美術オークションの責任者エドモンド・フランシー氏によると、目玉はピーター・ドイグ、フランシス・ベーコンなどの英国人作家の作品だという。ドイグ氏の1991年の作品「渓谷にある建築家の家」がオークションにかけられるのはこの10年で3回目となる。2007年には360万ドル、3年前には1190万ドルで落札された。今回の予想落札価格は1420万ドルだが、競売会社の手配で売り手は確実な入札者を確保しているため、心配には及ばない。 フランシー氏は「ときには市場を安心させることも必要だ」と話していた。 関連記事 アリババ会長と中国人気画家の共作、オークションで高額落札 有名オークションに出品されるアジアの美術品 アートと食べ物のつながり http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MH937_012916_M_20160127182454.jpg
山崎元のマルチスコープ 2016年2月3日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] マイナス金利時代の個人資産運用はどうすべきか 日本の金融政策で初のマイナス金利 “普通の個人”のお金はどうしたらいいのか? 「マイナス金利時代」の資産運用術とは ?1月29日、日銀は「黒田バズーカ第3弾!」とも呼ぶべき、マイナス金利政策を発表した。具体的には、民間銀行が日銀に保有する過剰な準備預金部分に対してマイナス0.1%の利息を徴求するものだが、日本の金融政策としては初のマイナス金利だ。
?その効果は、銀行が余剰資金を安心して置くことができる有力な場所に、場所代が掛かるようになることだ。デフレ脱却に向けた政策の文脈では、直接的には、銀行が余剰資金を貸し出しに振り向け、市中に出回るお金が増えることが期待される。しかし、優良・有望な貸出先や資金需要が急に増えることはないので、この効果は限定的だろう。 ?銀行は、余剰資金を日銀当座預金に置いておくとコストが掛かるので、相対的にはお金の安全な置き場所である国債には買いが殺到する理屈であり、現に、長期国債の利回りは急落した。2月2日現在、10年国債の流通利回りは0.08%である。 ?他方、為替市場の主たる参加者である銀行にあっては、円の運用が一段と困難になる。従って、マイナス金利政策には、為替レートを円安に動かす影響力があるはずだ。現実に、対米ドルの為替レートは1ドル120円を超える円安に向かい、これに伴って、株価が急騰した。 ?資本市場の動きを見る限り、「バズーカ」の名に値するかどうかはともかくとして、今回のマイナス金利導入は、デフレ脱却に向けた金融緩和策として、一定の効果はあると見ていいだろう。 ?本稿では、こうした金融環境の変化を受けて、普通の個人がお金の運用をどうしたらいいのかについて考えてみたい。 「マイナス金利の世界」で何が起きるか 今後を考えるためのお薦め参考書 ?ところで、率直に言って筆者は、資金取引市場の住人だったことがない。マイナス金利の影響については、リアルに想像できない世界がある。「マイナス金利」を考えるに当たって、良い参考書を見つけたので、読者に推薦しておく。 ?徳勝礼子氏の「マイナス金利 ハイパーインフレよりも怖い日本経済の末路」(東洋経済新報社)が、資金取引市場の仕組みと機微について大変参考になる。 ?実は、資金取引市場では、以前から円の実質マイナス金利は発生している。本書は、そのメカニズムを詳しく述べつつ(余剰な円資金の運用難とドル資金へのニーズから発生する「ジャパンプレミアム」が重要な原因だ)、資金の取引市場がどのように動いているかを分かりやすく教えてくれる。 ?また、欧州の事例等も紹介しつつ、各種の「本質的な問い」に答えながら(第3章「マイナス金利の世界へようこそ」では、お金が価値の保存手段でなくなるとどうなるか、割引現在価値は増えるのか、等に答えている)、本格的なマイナス金利が起こった場合の各種の影響を説明している。 ?著者は、外資系金融機関でプロ向けに市場分析の提供を行っているクオンツアナリスト(数量分析アナリスト)であり、金融知識の深さと正確さは折り紙付きだ。加えて、上品なユーモアが漂う文章で、平易かつ大胆にマーケットと金融政策を分析している。日銀に対しても、煽るように批判するのでも、妙に持ち上げるのでもなく、ほどよい距離感で客観的に論じている。 ?読者の中にも、資金取引の実態がどうなっているのかを具体的に知っている人は少ないと思われる。マーケット情報を深く楽しむためにも、マイナス金利の世界の今後を考えるためにも、ご一読をお勧めする。 「ハイパーインフレよりも怖い日本経済の末路」という過剰に大袈裟なサブタイトルを見て「引いて」しまう人がいるかもしれないが、それで本書を読まないのは、大変もったいないと申し上げておく。 無リスク資産の置き場所としては 変動金利10年満期型国債が圧倒的優位に ?さて、日銀のマイナス金利政策が発表されて、最初に筆者の頭に浮かんだのは、「これで、個人向け国債・変動金利10年満期型が、いっそう良い運用対象になるな」ということだった。 ?なぜかというと、この債券は利回りに0.05%という下限が設定されているからだ。日銀当座預金のマイナス金利が定着して、信用リスクが「ほぼ無リスク」の資産が買い尽くされると、この商品は、「当面の利回りが0.05%もあって、元本割れせず、しかも、利回りはプラスにしか変動しない」という圧倒的なポジションを得る可能性がある。スイスやドイツなどのマイナス金利の例を見ると、10年以内の国債はマイナス金利になる可能性が少なからずある。 ?もちろん、インフレ期待が上向きになって、10年債の利回りが上昇に向かったとしても、この債券は、元本割れしないし、10年債利回りの66%のクーポンが支払われる。 ?他方、銀行は、マイナス金利の環境下で利ザヤが潰れることもあり、預貸率が小さく、メガバンクのように収益源の多角化(海外ビジネス収益や手数料収入)が進んでいない地方銀行を中心に、収益環境が悪化し、今後の資産運用でより大きなリスクを取り込むことが予想される。今回のマイナス金利導入には、銀行の収益を圧迫する効果がある。従って、発表を受けて、銀行株の株価が下がった。 ?マイナス金利環境によって、銀行預金の将来の安全性は低下したと考えるべきだろう。株価だけでなく、預金の安全性を通じた価値が若干下がったと考えることが妥当だ。 ?さすがの財務省も、「個人向け国債は、銀行預金よりも安心です」とまでは宣伝しないが、今後いっそうの利回り低下が予想される銀行預金に対する、個人向け国債・変動金利10年満期型の優位性は、今回のマイナス金利導入で拡大したとみられる。 ?無リスクで無難に運用したい資産の運用先としては、個人向け国債・変動金利10年満期型が圧倒的に優れている。 ?他方、MRFやMMFは、運用対象が限られている分、今後の運用に苦労することが予想される。今後、小さな元本割れは起こる可能性があり、運用担当者は嫌な気分だろう。 ?個人は、当面使う可能性のあるお金を銀行の普通預金に置き、使わないお金で安全に運用したいものは個人向け国債・変動金利10年満期型で運用する、と決めておいていいだろう。 ?なお、マイナス金利の決定を受けて利ザヤが縮小するので、銀行は投資信託や保険の販売などの、手数料稼ぎのビジネスにいっそう注力することが予想される。筆者の知る限り、銀行が店頭で扱い、また銀行員が顧客にセールスする投資信託や保険で、「買ってもいい」と思えるものは1本もない(手数料稼ぎの道具なのだから当然だ)。 ?読者には、「銀行で、投信・保険を買ってはいけない」ということをいっそうしっかり覚えておいてほしい(高齢でお金持ちの親御さんがいらっしゃる方は、親御さんにもお伝えください)。 株や為替などのリスク資産は 起こり得る「変化」に関心を集中すべき ?マイナス金利で、株価や為替レートの行方がどうなるかは、もちろん大いに興味深い問題だ。 ?前述のように、デフレ脱却に向けた政策としては、マイナス金利だけでなく、直接的な資金需要につながるような財政政策を組み合わせる必要がある、と筆者は考えているが、「マイナス金利」が変化の方向の上で円安・株高材料なのは、前述の通りだ。 ?好意的に解釈すると、今回の政策には、実施までに時間がかかる財政的な政策を追加するまでの、時間を稼いだ面がある。 ?ただし、もちろん、株価にあっても、為替レートにあっても、「どの程度?」、「いつまで?」といったところまで予想することは難しい。 ?リスク資産の運用において考えるとすると、今後に起こり得る「変化」に関心を集中するべきだろう。 ?例えば、マイナス金利は、今後どの程度追加的な金融緩和手段として使えるのか。徳勝氏の前掲書(「マイナス金利」、東洋経済新報社)でも考察されているが、マイナス金利には、現金を安全に保蔵するコスト(「タンス預金」のコスト)との関係から生じる限界がある。 ?マイナス1%は、たぶん過大だろうから、限界をマイナス0.5%程度と見て、今後しばらく、ここまでの範囲で、マイナス金利の拡大が発動される可能性はあると見るべきだろう。1度で使うと効果は大きいだろうし、小出しに2、3度使う手もある。読者の中には少ないと思うが、空売りで勝負する向きは、絶えず注意が必要だ。 ?また、年の後半にかけて、原油価格の下落のプラスの影響が各所に出てくることが予想される。 ?加えて、それ自体が望ましい政策だが、7月の参院選挙あるいはそれに絡めた「衆参ダブル選挙」の可能性とも関連して、消費税率引き上げの先送りが決定される可能性がある。 ?このコラムに何度も書いてきたように、リスク資産の運用は、国内株式と外国株式のインデックスファンドの組み合わせ(5:5ないし4:6くらい)でいいが、マイナス金利での「戻り」を見て、リスク資産を売り切ってしまうと、年後半にかけてさびしい思いをするかもしれない。 将来的には「出口」のリスクが増した 株式投資のポジションでも心づもりを ?ただし、いささか先の心配になるが、インフレ率が十分上昇した暁には、マイナス金利の撤回から政策金利の引き上げ、日銀による長期国債の買い入れ停止、同じくETFを通じた株式及びREIT(不動産投資信託)の買い入れの停止(株式は国債のようには償還されない。どうするのだろう?)、と資本市場に大きな影響を与えそうな「出口」の材料が目白押しである。 ?マイナス金利によって、将来の金融緩和政策の「出口」のインパクトはいっそう大きくなったことを覚えておく必要がある。今年の後半にかけて株価が上昇する局面があれば、持っている株式投資のポジションを「少し減らす」くらいの心づもりをしておくのが良さそうに思う。 ?それにしても、これでますます「普通に取引されていたら形成されるはずの自然な金利水準」が分かりにくくなったのは、不気味である。例えば、現在の株価は、長期国債の利回りと比較すると「割安」に見えるが、近い将来に国債利回りが正常化した時に、安いのか高いのかが判然としない。 http://diamond.jp/articles/-/85641
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