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予想外の日銀のマイナス金利導入で上昇した日経平均株価。海外市場も買いが先行した(写真:アフロ)
「黒田バズーカ」第3弾を生んだ崖っぷち事情 計り知れないマイナス金利導入のインパクト
http://toyokeizai.net/articles/-/102969
2016年01月31日 平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト 東洋経済
またも市場の意表を突いた、黒田バズーカ第3弾「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入だった。1月29日、日銀は「金利」「量」「質」の新々3本の矢によってアベノミクスへの最大の援護射撃をした。
しかしこの日、アベノミクス最大の危機を迎えていたことを理解すると、出るべくして出た政策だったことがわかる。それは前日の28日、政権の中核を担い、安倍首相の信頼の最も厚かった甘利経済再生相の退任理由が「政治とカネ」と言う、海外ファンドが最も嫌う理由だったからだ。
■アベノミクス移動平均を割り込むリスクを回避
もし黒田日銀総裁がゼロ回答をしたら、当然株価は再び1万6000円を目指しただろう。安倍首相が変身した姿で再登場してから3年、アベノミクス移動平均と言われる36カ月(3年)移動平均は1万6300円台にある。
欧米の多くのファンドは現在、原油安や中国リスクで、ロングポジションを調整している。アベノミクスの一角が崩れたとなると、再び売り攻勢をかけ長期にアベノミクス移動平均を割り込むリスクが多分にあった。そうなると、アベノミクスを信じて来た多くの投資家の失望(損失)を買い、夏の参議院選挙はとても戦えなくなる。
こんな崖っぷちの事情が、賛成5反対4と言う決定会合内部の厳しい環境を押し切って出したマイナス金利導入だったと筆者は推測する。このマイナス金利導入で、短期的には甘利退陣と言う政治不信材料を吹き飛ばしてしまった。また、長期的には、金利政策の幅を大きく広げ、今後いくらでも「追加緩和」が出来る異次元緩和のスケールアップとなった。俗的に言えば、参院選前に何でも出来る状態を作り上げたことになる。
静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速度運動を続ける慣性の法則が物理学にはあるが、相場にも慣性の法則と言うべき、20%の法則がある。上昇を続けていた相場が、高値から20%以上下がると下落が続くと言われ、調整局面に入ったとして弱気相場と称される。日経平均が、昨年来高値(2万0946円)から20%ラインぎりぎりまで下がった昨年9月の安値を下回った年初からの波乱で、弱気相場に入ったと言われる所以(ゆえん)である。
この20%の法則は上げ方向にも適用できる。イランの輸出再開を織り込んで26ドル台まで売られたWTI原油先物は、34ドル台をつけた後、33ドル台後半で強含んでいる。安値より20%以上の上昇となって、法則を適用すると底を打ったことになる。サウジやロシアの減産報道もあり、需要が一瞬で消えたリーマンショック時でも30ドルを切らなかったことも考えると、26ドル台で底を打ったと考えてもいいだろう。
■上海総合指数は3000ポイント回復なるか
ECBのクリーンヒットで始まった中央銀行の強力(協力?)打線は、アウトにはなったがFRBの当たりも悪くなかった。そして日銀の痛烈二塁打でショーは終わった。今週も週初の中国PMI、週末の米雇用統計が、日経平均の本格反騰への道を決める気の抜けない週となる。特に、原油価格の底が見えた現在、残りの不安は中国株だ。せめて早期に上海総合指数が3000ポイントを回復することが重要で、月曜日のPMIは注目だ。
ただ、年初からの波乱連続の過程で、多くのファンドはヘッジ売りに勤しんだ。1万6000円までのヘッジはすでに終っていると考えられる。再び1万6000円割れが見えない限り、もう大きな売り物は出ないと考えられる。逆にヘッジを解く必要があり、展開はかなり明るくなった。
また、先週引け後、日通決算の上方修正が発表された。佳境を迎える企業決算で、日本における原油安メリットがいかに反映されてくるか。期待と不安が高まっている。最後に。緊張したメインフィールドの隣で中小型株中心の草野球を楽しんでいる人たちもいる。筆者がカバーしている銘柄の中では、桧家ホールディングス(1413)、その子会社の日本アクア(1429)あたりは多少楽しめるかもしれない。
今週の日経平均予想レンジは1万7500円〜1万8400円。
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