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「マイナス金利」導入を発表する黒田東彦日銀総裁
マイナス金利の究極の効果は「財政救済」だ 市場を歪める政策をどこまで続けるのか
http://toyokeizai.net/articles/-/102976
2016年01月31日 徳勝 礼子 :BNPパリバ証券投資調査部レラティブ・バリュー・アナリスト 東洋経済
日銀がマイナス金利政策の導入を決めた。しかし、それはデフレ脱却を絶対目標とする、副作用を顧みない政策だ。メリットを得るのは借金漬けの日本国であり、弊害を受けるのは国民だ――『マイナス金利』(東洋経済新報社刊)の著者が、新たな政策の究極の効果を指摘する。
■城が内側から自壊したかのような政策導入
円のマイナス金利は、市場が財政リスクを懸念しているからこそ現実化した。金融市場からの警告を読み解いた異色の日本経済論。
日本銀行は2016年1月29日の金融政策決定会合で、マイナス金利の導入を決定した。といっても超過準備預金のすべてにマイナス金利を付するわけではない。これまでプラス0.1%の金利を付けてきた超過準備預金の2015年平均残存額と比べた増加分に対して、マイナス0.1%を課するという方式だ。
それでも「マイナス金利」という衝撃的なヘッドラインの威力は凄まじく、市場はマイナス金利が全面的に適用されたかのように反応した。すでに0.2%しかなかった10年国債金利が、さらに0.1%まで低下した。
実は、マイナス金利はこれまでにも円金利市場で発生していたが、それは金融機関同士の取引で生じる「実質的」なもので、一般投資家からは見えにくかった。日本人が海外ビジネスに必要なドル資金を調達するために「円をマイナス金利で貸す」という必殺技を繰り出したことが、円金利をマイナス化させたのである。
その円のマイナス金利は国債市場へとじわじわ浸透し始め、一部の短期国債は常にマイナス金利で取引されるようになった。そうしたなかで今回、日銀はマイナス金利を一気に表舞台に引きずり出した。
政策金利のマイナス化は、日本経済にとって決して良くない円のマイナス金利の取引を拡大させる方向に働く。マイナス政策金利の導入は、いわば外堀から少しずつ埋められていた城が、内側から自壊したようなものなのだ。
■預金が目減りするからと消費しても、楽しくない
日銀の黒田総裁は2013年に就任して異次元緩和を開始した当時、「投資を促進するために、実質金利を下げる。しかし、金利はすでにかなり低く、これ以上低くすることが困難であるため、期待インフレ率を上げることで実質金利を下げる」といった趣旨の発言をしていた(実質金利=名目金利−期待インフレ率)。
今、この発言を思い起こすと理解に苦しむことが2つある。
ひとつめはマイナス金利を導入して実質金利を低下させれば、本当に投資や消費が促進されるのかどうかだ。名目金利がプラスであっても実質金利がマイナスになると、おカネを貸すほうが渋ってしまう。借金して住宅を購入するなどの投資意欲は高まっても、需要と供給がマッチするという経済の大原則に歪みを生じさせ、結局は取引の縮小を招くだろう。
預金が実質的に目減りするのであれば、人々は「使わないと損」だという強迫観念から消費を増やすだろうという想定もされていたようだ。しかし、そうして行った消費の満足度が高いとは思えない。また、使いながらも「いくらかでも残しておかなければ」という考えがよぎり、むしろ不安感が高まるのではないだろうか。
もうひとつは、黒田総裁の「これ以上金利を低くすることが難しいため、期待インフレ率を上げる」というロジックの逆説感だ。
異次元緩和の開始以降、2014年にドル円レートが120円台の円安に動き、また、一定の賃上げが行われたことを背景にインフレ期待は一旦は上昇した。その後、原油価格の70%下落などを受けて、インフレ期待は後退した。
先に述べた2013年の黒田発言を裏返すと、結局は「期待インフレ率を上げることによっては、実質金利を下げることができなくなったので、結局金利そのものを下げてしまいました」というように聞こえてしまう。
したがって、金利を下げれば再びインフレ・マインドが作られるというのは、かなり苦しいシナリオだといえるだろう。
ローンで何かを買う時、金利が低いことと商品の値段が安いことは、消費者にとって結局は同じだ。マイナス金利の自動車ローンは、自動車の実質値下げに限りなく近い。マイナス金利はデフレ脱却に効果を発するどころか、形を変えてデフレに化ける可能性を持っている。
■注目を浴びる日銀に隠れて利益を得ているのは
今回の金融政策を説明するなら、そこまで苦しい弁明になる。そのように景気刺激効果が疑問だらけのマイナス金利を、なぜわざわざ導入しなければならなかったのか。
そこを詰めると、究極的には財政問題と切り離せないところがあるのでは、と考えざるを得ない。マイナス金利によってメリットを得るのは借金をしている人で、最大の借り手は日本国だ。
これまで日本の財政問題の究極の懸念は国債暴落(金利急騰)やハイパー・インフレーションだった。マイナス金利はその真逆だ。しかし、むしろ、マイナス金利は借金を返さない、ソフトな債務不履行を大々的に認めてしまうことでもある。
貸し手に「少しずつなら構わないでしょう」とばかりに、長期にわたって負荷をかける。そのような多くの貸し手によって支えられている経済に活力が芽生えるとは、とても考えにくい。結果的に日本経済が衰弱死に向かう懸念を抱かざるを得ない。
マイナス金利政策が発表され、今、日銀だけに焦点が集まっている。それに隠れて国は、とてつもなく膨張した債務を、誰からも批判を浴びずに削減することに成功しつつあるように見える。それはハイパー・インフレーションよりも怖いことだ。
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