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【死せる水トリチウム】三重水素の恐怖の正体とは?矢ヶ崎克馬教授 福島原発事故の真実と放射能健康被害
Q質問(質問者:福島県/10代/大学生)
A回答(回答者:矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授)
トリチウムとは水素の同位体です。まず水素の同位体からご説明しましょう。
水素(H)は原子核の中に陽子1つだけあり、その周りを電子1つが回っている元素です。普通の水素は原子核に陽子だけで中性子がありません。
重水素(じゅうすいそ、ジューテリウム)は、陽子1つと中性子1つが原子核にあります。
三重水素(さんじゅうすいそ、トリチウム)は、原子核に、陽子1つと中性子2つがあり、その周りを電子1つがまわっているものです。
この三重水素がトリチウムと呼ばれ、放射能をもっているんですね。
トリチウムはベータ線を出して→ヘリウム3に変わります。中性子が1個→陽子に変わって陽子が2つになり、陽子2個と中性子1個のヘリウム3になるんです。
ちなみにヘリウムというのは、原子核に陽子が2つで中性子が1個の場合はヘリウム3、中性子が2個の場合はヘリウム4と呼ばれ、その周りを2つの電子がまわっているものです。
トリチウムの放射線のエネルギーは小さく、0.0186MeV(百万エレクトロンボルト)のエネルギーを持つベータ線で、体内では0.01oほどしか飛びません。エネルギーが低いベータ線の特徴はエネルギーの高いベータ線より相互作用が強く、電離の密度が10倍ほどにもなります(電離とは分子切断のこと。放射線を浴びるとなぜ健康被害がでるの?に説明あり)。それがトリチウムの被曝が危険である要因です。
トリチウムの被曝を考えるときでも、セシウムの被曝等、他の人工放射性物質との加え合わされた総合的被曝を考察することが肝要ですね。単独では「大したことないよ」も他の放射線と合わされば非常に危険になります。
トリチウムは原爆爆発での高温・高圧を利用して水素を核融合する水素爆弾に使われることで有名です。このときは水爆の爆弾の中でリチウムに中性子を当ててトリチウムを作ります。
原発では、制御棒のホウ素に中性子が吸収されたり、中性子の減速に重水を利用する重水炉では、重水に中性子が吸収されてトリチウムが生成されます。
高速増殖炉では、冷却材として使われているナトリウム中にトリチウムが生成し、それが冷却水に移行する。
原子炉からは必ずこのトリチウムが出る。
特に高速増殖炉もんじゅでは多量のトリチウムを環境中に放出しているんですね。
トリチウムは通常3重水(HTO)となっていて、水に混じっています。水中のトリチウムを除去できるフィルターがあるか?というと、ない。
水にトリチウムが混ざってしまうと化学的性質(化学反応性が)、物理的性質(原子の半径)が同じで、物理的性質の中の原子の重さだけが違うので、トリチウムだけを除去することもできない。
だたし莫大な費用をかけてウラニウムを濃縮するのと同じプロセス、ガス拡散法やガス遠心分離法などで何十段階も繰り返していくとトリチウムだけを取り出すことは可能ですけれども。
それこそトリチウムを除去するために莫大な費用をかけて対策するよりも、原子力発電をやめてしまったほうが賢い。
原子力発電には、人間がコントロールできない致命的な危険が存在するのですから。
+編集後記
矢ヶ崎克馬教授がトリチウムについて総論を展開して下さいましたので、私のほうではトリチウムの各論について書かせていただこうと思います。
■トリチウムは世界中で垂れ流し
(全世界)ほとんど全ての原子力発電所や核燃料再処理工場ではトリチウムの回収を行なっていないため、トリチウムはすべて環境へ放出される。(百島則幸九州大学教授)※1
つまり矢ヶ崎克馬教授が先ほどおっしゃるようにトリチウムを除去しようと思ったら莫大な費用がかかるから、トリチウムはそのまま垂れ流す、あるいは法定限度未満に薄めて垂れ流すことが今もこの地球上で堂々とおこなわれているということです。
日本のトリチウムの水中放出の濃度限度は1リットル当たり6万ベクレル※2です。ですから逆にいえば1リットル当たり6万ベクレル未満に薄めてしまえば堂々と海洋放出できるわけです。
もちろん東京電力も世界の他の原発と同じようにトリチウムを垂れ流してきました。福島第一原子力発電所の1〜6号機だけでも1年間で2兆ベクレル(2009年度)海洋放出したと原子力規制委員会の『原子力施設運転管理年報』(平成25年度版)の398ページ※3にあります。
じゃあ同じ2009年度、日本の54基の原子力発電所全体ではどうかと言うとトリチウムを392兆1千億ベクレルという天文学的な量を海に垂れ流しています※3。
■垂れ流し…ということはトリチウムは安全?
トリチウムの特性とは一般的に以下のとおり
○化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています
○ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい
○半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.0186MeV)
のベータ線しか出さない
○水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される
○セシウム-134、137に比べ、単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1,000分の1
赤い下線を引いたのは私でなく東京電力です。『トリチウム安全神話』を余すところなく語っています。
では私達はこの東京電力の語る『トリチウム安全神話』を無心で信じても大丈夫なのでしょうか?
忘れてはいけないことが1つあります。この『トリチウム安全神話』はあくまで、トリチウムを捨てる側の立場で語られているということです。
捨てる側だけでなく、捨てられる側の意見も聞いてみなければなりません。
■子供達の命を奪ったのは誰?
2011年12月28日に放送されたNHKの報道ドキメンタリー番組『追跡!真相ファイル』の「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」の中からトリチウムが取り上げられた部分だけを一部引用します。以下が一部引用です。
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トリチウムの恐怖は、これだけでじゃありません。
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