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フランスの原子力発電最大手を襲う難問
The Economist
EDFが保有する原子炉58基のうち18基が稼働停止
2016年12月9日(金)
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フラマンビル原子力発電の建設風景(写真:ロイター/アフロ、2013年)
フランス電力(EDF)にとって辛い時期が続いている。同社はフランス全世帯の88%に電力を供給し、市場をほぼ独占する企業だ。現在、同社が所有する原子炉58基(国内電力の4分の3を供給する)のうち少なくとも18基が稼働を停止しており、発電量が激減している。同社によると、昨年は417テラワット時(TWh)だった原発による年間発電量が今年は378TWhまで落ち込む可能性がある。
現在は8基が未使用の状態にある。数基については数週間、数カ月にわたって再稼働できない場合があり得る。
発電所は1980年代以来、最も高いペースで石炭を燃やしている。電力の輸入が急増し電気料金が急騰する中、寒波による停電を心配する国民に対し、政府はその可能性を否定しなければならない事態に陥っている。
鍛造品に強度不足の欠陥
こうした危機的状況が生じた原因はEDFが保有する原子炉全般に使われている部品にある欠陥と見られ、容易には解決できないことが窺える。今年の夏、フランスの原子力規制機関、原子力安全局(ASN)は原子炉の部品、主に円筒型蒸気発生器の基礎部分について緊急検査を命じた。
仏原子力大手アレバ傘下の仏メーカー、クルゾ・フォルジュと日本のサプライヤー、日本鋳鍛鋼が製造した鍛造品の炭素濃度が高いことが判明、検査官の懸念を集めている。一部には炭素堆積物が許容水準を50%以上超えているものもあり、鍛造品の温度が急激に変化した場合に亀裂が生じる危険性がある。
こうした欠陥がどの範囲まで広がっているのか、またアレバの従業員がデータを改ざんしたのかについては今のところ不明である。ASNはアレバがこの問題の存在を見抜けなかったことに驚きを隠さない。ASNは現在、過去数十年分のファイル数千件について監査を進めており、今後も新たな欠陥が浮上すると見ている。
EDFが負担するコストは増加している。原発の閉鎖によって利益が失われた。加えて、発電機1基を切り替えるのに最大6ヵ月の期間と1億5000万ユーロ(約180億円)の費用を要する(原子炉1基は発電機3基を持つこともある)。
EDFは11月にアレバの原子炉プラント部門(アレバNP。アレバの大部分でクルゾ・フォルジュを含む)を25億ユーロ(約3000億円)で買収することを決めている。巨額の資金をつぎ込んで、わざわざ“放射能性物質入りのディナー”を一気に呑み込むこととなった。
欧州加圧水型原子炉が抱える不安
アレバとEDFは欧州加圧水型原子炉(EPR)という重要な合弁事業を進めている。アレバが建設するもので、そのほとんどをEDFが運用する。そしてここでも鍛造品の欠陥が問題となっている。欠陥が初めて発見されたのは昨年、シェルブール近くで建設中のEPR、フラマンビル原発3号機に設置された原子炉容器においてであった。これに加えて、安全弁の設計も深刻な不安材料となっている。
当局はフラマンビル原発の今後に関する方針を2017年半ばに決定する予定だ。さらなる検査や設計変更が必要となれば、操業開始は2018年をはるかに超えるかもしれない。そうなれば原発先進国としてのフランスの名声は新たな打撃を受けることになる。
欧州にあるもう一つのEPRはフィンランドのオルキルオトに建設されている。完成が予定より数年遅れているうえ、コストも予算の3倍に膨れ上がっている。
各方面の遅延はEDFが進める新たなEPR建設にも障害となり得る。同社は245億ポンド(約3兆5500億円)を投じて、英ヒンクリーポイントにおいてEPR2基を建設する計画だ。英国で借入保証を得るには一定の条件を満たす必要がある。2020年までにフラマンビル原発を稼働させることも条件の一つと伝えられている。
ロンドンに拠点を置くエネルギー専門家のスティーブ・トーマス氏はEPRを「失敗作」と呼ぶ。多くの原発業界関係者が同様の見解を持つ。EDFはそれでもEPR計画を推し進めており、経済的な負担は増える一方だ。3月にはEDFのトーマス・ピケマルCFO(最高財務責任者)が辞任した。同氏はこの時、ヒンクリーポイント原発について「費用を負担しきれるものではない」と語っている。
危機感はこれから増していくだろう。パリで活動する原子力エネルギー専門家のイーブズ・マリニャック氏によると、EDFは財務面で既に行き詰まっているという。EDFの信用格付けが急低下しないのは政府の支援を受けているからにすぎないとアナリストは指摘する。
そしてEDFに目をつけているのはASNだけではない。11月22日にはフランスの規制当局がEDFの事務所に踏み込んだ。当局はEDFが支配的な地位を利用して競合他社を圧迫し、(ここ数年の電気料金の下落で収益を減らしながらも)本来あるべき水準を超えて料金を吊り上げていることを示す証拠を捜索した。EDFの株価はこの2年間で半額にまで値を下げている。
続々と寿命を迎える仏原子力発電所
将来の見通しは暗い。今後10年間、毎年いくつかの原子力発電所が寿命を迎える。フランスの原発の約5分の4は1970年代終わりから10年ほどの間に建設された。原発の耐用年数は40年間だ。
エネルギー政策担当者は50年もしくはそれ以上使い続けられるよう延命措置がとられるだろうと想定している。だが今回の欠陥部品の問題を受け、ASNは延長を躊躇するかもしれない。あるいはより高いコストを課すことも考えられる。
原発反対の立場をとる活動団体グリーンピースに所属する原子力技師のシリル・コーミエール氏は、全てを修理すればEDFは600億〜2000億ユーロ(約7兆4000億〜24兆5000億円)の費用を負担することになりかねないと言う。
廃炉にするにも巨額の経費が必要だ。フランスはこれまでに大型の原発を閉鎖したことがない。EDFは廃炉に必要なコストを拠出できないかもしれない。留保している360億ユーロ(約4兆4000億円)の資金は、フランスほどの規模の原発を持たない隣国ドイツが備える450億ユーロ(約5兆5000億円)よりも少ない。
そのうえ核廃棄物の問題がある。前出のマリニャック氏は、アレバのラ・アーグ再処理工場に設置された、使用済み燃料を保管する5つのプールはほぼ満杯の状態だと指摘する。不幸は重なるものだ。
© 2016 The Economist Newspaper Limited.
Dec 3rd – 9th 2016 | PARIS
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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