http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/875.html
Tweet |
どうする原発のごみ 欧州編
<上>フランス粘土層で封じ込め 地震少なく地盤安定
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)は、放射線が十分下がるまで、数万年以上、地下深くに隔離する必要がある。欧州はそのための処分場の候補地を選び、地質調査や研究開発を進めている。日本も科学的に適地とされる地域を年内にも公表するが、地質環境が大きく違い実現へのハードルは高い。先行するフランスとスイスの現場を訪ねた。
核のごみを入れることを想定した横穴を掘り、岩石の安定性などを調べる(仏のビュール地下研究所で)
パリから東へ約230キロメートル。人口約90人のビュール村がある。見渡す限り麦畑や牧草地が続き、目につくのは風力発電と牛くらいだ。この村に国内外から年間1万人の研究者や政府関係者が訪れる。目的はビュール地下研究所だ。
エレベーターで7分かけて地下約500メートルにある研究施設に降りると、1.6キロメートルにわたる坑道があった。作業員が24時間体制で掘削工事などを進める。坑道から直径80センチメートル、深さ40メートルの横穴が多数掘られ、1万点のセンサー類で岩石の圧力や温度の変化などを監視している。
原発から出る核のごみはガラスと混ぜて「ガラス固化体」にし、ステンレス容器に詰め、鋼鉄製容器に入れて安定した地層に掘った横穴に詰め込む。処分場の候補地は研究所の近くにあり、建設に必要な調査などをここで進めている。
地下研究所は、国が設置した放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2000年に建設を始めた。28の候補地が名乗りを上げた中、ビュールが選ばれた最大の理由は、地下の地質環境だ。
石灰岩層に挟まれるように「カロボ・オックスフォーディアン粘土層」という厚さ130〜160メートルの地層が広がる。約1億6000万年前のジュラ紀に海底に降り積もった堆積物によって形成された。ほとんど水を通さず、放射性物質を長期間閉じ込められる。
そのうえ「地震などが皆無の非常に安定した地盤だ」とANDRAのジェラルド・ウズニアン国際部長は話す。水の通り道となるような亀裂も生じない。
日本でも北海道幌延町と岐阜県瑞浪市に地下研究施設がある。ウズニアン氏は、ビュール周辺は「幌延と似たような地層」と言うが、日本の両施設では岩盤の割れ目から大量の地下水が流れ込む。地下水がほぼないビュールとは決定的に異なる。
ANDRAは25年に処分場の操業開始を目指す。仏にある58基の原発から出る核のごみを100年以上にわたって搬入し、2151年に埋め戻して閉鎖する。その量はガラス固化体換算で計1万立方メートル。処分費用は250億ユーロ(約2兆9000億円)を見込む。
処分場は「可逆性」を担保する。ガラス固化体の容器にセラミックスの板を張って摩擦を減らし、横穴から引き出しやすくした。処分場閉鎖までにもっと安全な処分方法が開発されれば取り出すことができ、住民の安心感が高まったという。日本政府も昨年、可逆性の方針を採用した。
ビュールが選ばれたのは、仏でも所得水準の低い地域の一つという事情もある。地下研究所は約400人が働いている。広報担当のポリーヌ・フルニエさんは「高校の同級生は全員地元を離れたが私は残ることができた。農家の父も喜んでいる」と話す。国から周辺自治体に年3000万ユーロ(約35億円)の補助金も出ている。処分場建設時には2000人の雇用も生まれる見通しだ。
原子力がもたらす雇用と補助金で地域が経済的に潤う構図は日本と変わらないが、フランスには最終処分場建設を受け入れる人が多い。一方、日本では抵抗感が強く、手を挙げる自治体はまだない。核のごみの行方は不透明なままだ。
[日経新聞11月21日朝刊P.15]
<下>スイス、自己修復する地層選定 試験施設で変化を監視
「秘密基地みたいでしょう」。スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の榊利博地質科学プロジェクトマネージャーはこう話して笑った。首都ベルンの北約50キロメートル、記者らを乗せたマイクロバスはフランスとの国境近くのトンネル脇にある避難用トンネルへと入っていった。大きな二重扉の先に現れたのがモン・テリ岩盤研究所だった。
スイスでは核のごみなどを収めた容器を粘土層の横穴に入れ、粘土で埋め戻す方法を検討する(モン・テリ岩盤研究所)
この研究所は、数万年以上隔離する必要がある高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分に適した地層を調査する。連邦政府と電力会社が40年以上前に設立したNAGRAのほか、フランスの放射性廃棄物管理機関や日本原子力研究開発機構、電力中央研究所、大林組なども出資する。地層が斜めに重なった山を貫いたトンネルを活用しており、地下深くまで掘らなくても目的の地層に到達できる。
ここで調べているのは、約1億8000万年前のジュラ紀に形成された「オパリナス粘土」と呼ぶ堆積岩などでできた地層だ。太古、この地域は熱帯の浅い海だった。発掘されるアンモナイトの殻がオパールのような光彩を放つことから、粘土の名前が付いた。
オパリナス粘土はほとんど水を通さず、放射性物質を長く閉じ込める。「掘削で亀裂が生じても、流れ込んだ地下水を吸収して膨らみ、元に戻る自己修復機能がある」(榊氏)という。
スイスには花こう岩を調査対象とするグリムゼル岩盤研究所もある。処分場の候補地は3段階で絞り込み、連邦議会の承認などを経て正式に決まる。議会承認から100日以内に5万人の署名が集まれば国民投票にかけることも可能だ。
2015年、NAGRAは第2段階の候補地選定でモン・テリ岩盤研究所に近いジュラ東部と、チューリヒ北東部を提案した。いずれも地下400〜900メートルに十分な厚さのオパリナス粘土が存在する。掘削調査などを経て24年ごろまでには1カ所に決める予定だ。
スイスにある原発は5基で、総発電量の4割弱を占める。しかし連邦政府は、東京電力福島第1原発事故の直後、原発は建て替えずに段階的に撤退する方針を決めた。5基が50年運転すると、核のごみなどを入れた容器が計7325立方メートル発生する計算だ。処分費用は約46億スイスフラン(約5100億円)を見込む。
実際の処分では、パイロット施設に少量の核のごみを運び込み、変化を監視するよう義務付けている。50年間、問題がなければ処分場を本格的に造る。NAGRAのストラティス・フォンフォリス国際支援・協力本部長は「パイロット施設での監視結果をみて、将来世代がどうすべきか判断できる」と利点を強調する。
世界で処分場の選定で先行するのは、建設に着手したフィンランドと建設に向けた安全審査に入ったスウェーデンだ。いずれも最も古いと19億年前となる安定した地層を選んだ。それらに続くフランスとスイスも1億数千万年前の粘土層がある地域を候補地とした。
一方、日本は地震や火山が多く、地層は欧州と大きく異なる。政府は年内にも科学的に適地とされる地域を示すが、日本地図から活断層や火山周辺などを除外したものにすぎない。フォンフォリス氏は「日本でも処分できる場所がどこかにあるはずで、そのための調査が必要だ」と話す。
適地を示しても住民の理解を得ながら実際に地質を調べて処分地を決めるまでに約20年かかるとされる。「トイレなきマンション」という原発への批判解消に向け、ようやくスタートラインに立った段階だ。
浅沼直樹が担当しました。
[日経新聞11月28日朝刊P.13]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素46掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。