http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/840.html
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※関連参照記事
「仏電力公社、アレバ原子炉部門買収:根本的欠陥説まで飛び交う欧州加圧水型原子炉EPRで青息吐息のアレバを救済」
http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/833.html
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欧州「安全な原発」迷走
工事複雑、完成遅れ費用3倍
フランスやフィンランド、中国などで安全性の高い最新鋭の原子炉の建設が進んでいる。航空機の衝突などのテロや過酷な事故にも対応できるという。しかし、建設費が当初想定よりも大幅に膨らみ、逆風も強まる。チェルノブイリで起きた史上最悪の原子力発電所事故から30年がたち、5年前には東京電力福島第1原発事故も起きた。安全をうたう原子炉の行方はどうなるのだろうか。
フランス北西部、イギリス海峡に突き出たコタンタン(ノルマンディー)半島。連合軍の上陸作戦で有名な半島の西先端に、要塞のような巨大な原子炉建屋がそびえ立つ。仏電力公社(EDF)が建設中のフラマンビル3号機だ。出力は165万キロワットと世界最大級となる。「最先端の安全システムを組み込んだ」とベルトラン・ミショー上級エンジニアは話す。
同原発は「欧州加圧水型原子炉(EPR)」と呼ぶ次世代原子炉のひとつだ。仏原子力メーカーのアレバの前身である旧フラマトムと旧独シーメンス原子力部門が1980年代から共同開発してきた。
原子炉建屋は世界最大の旅客機「A380」がぶつかっても耐えられるという。壁は強化コンクリートの二重構造で、厚さはいずれも2メートル以上ある。2001年の米同時多発テロをきっかけに導入された対策だ。
事故で炉心溶融(メルトダウン)が起きても、溶け落ちた核燃料は「コアキャッチャー」と呼ぶ特殊な皿で受け止めて冷やす。日本の原発にはない設備だ。福島第1原発では、溶け落ちた核燃料の位置や量が把握できないため、廃炉作業が難航している。
原子炉の外側を覆う格納容器で発生した熱を長期間冷やし続けるシステムも備わる。福島第1原発では、電源を復旧できずに冷却システムが停止し、炉心溶融が発生した。EPRでは、こうした問題が起こらないとされる。
非常時の電力や給水などの安全上重要な設備は独立して4系統あり、日本の原発を上回る。非常用も含めて発電機はいずれも、水が入りにくい別の建屋に置く。地震がほとんど起こらない地域にあるが、それでも最大8メートルの大波を想定し、防波堤の高さを17メートルに設定した。
EPRは寿命が60年と既存の原発よりも20年長い。重大事故の発生確率を下げ、稼働率を高められるという。アレバの原子炉製造子会社アレバNPのフレデリック・ルリエーブル副社長は「9割を超す高い稼働率も可能だ」と強調し、仏電力公社と連携して各国に販売攻勢をかける。
ただ、その先行きは明るいわけではない。最大の障壁が膨大なコストだ。
フラマンビル3号機は完成予定が18年末と当初計画から約6年遅れ、建設費は35億ユーロ(約4100億円)から105億ユーロ(約1兆2300億円)とほぼ3倍に膨らんだ。4000人以上の作業員が建設に携わるが、工事が複雑なうえ、部品の落下事故などトラブルが相次ぐ。原子炉容器に使う鋼材の強度不足も指摘されている。「想定外のことが多く起こった」と仏電力公社のミショー上級エンジニアは振り返る。
EPRはフィンランドのオルキルオト原発でも建設が進んでいる。しかしトラブルが相次ぎ、完成が18年と当初計画よりも約10年遅れる見通しだ。建設費は85億ユーロ(約1兆円)と3倍近くに膨らんだ。工事遅延を巡って発注したフィンランドの電力会社と受注したアレバなどが対立し、訴訟合戦を繰り広げている。
英国では、南西部にあるヒンクリーポイント原発で2基を建設し、25年の稼働を目指す。原発建設は約20年ぶりとなる。総事業費180億ポンド(約2兆4700億円)を投じ、電力需要の1割近くを賄う計画だ。だが、巨額の建設費への懸念は大きい。メルケル独首相のアドバイザーを務めるポツダム気候変動研究所のハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー所長は「経済的には狂気の沙汰だ」と指摘する。
膨らむEPRの建設費がアレバや同社を支援する仏電力公社の経営の重荷となっている。仏電力公社の原子力部門を担当するグザヴィエ・ユルサ上級副社長は「アレバと協力し、コストと建設期間を減らす新しいモデルの検討を進めている」と明かす。
テロや過酷事故に備え、安全性を最大限追求するのは不可欠だが、1基1兆円かかる原発の経済合理性はどこまであるのか。一方で、先進国では脱原発という逆風も吹き、原子力大国フランスでも原子力依存度を現在の75%から25年までに50%に下げる方針だ。次世代原子炉の未来はまだみえない。
(浅沼直樹)
[キーワード]次世代原子炉、2010年代から「第3世代プラス」
1950年代に第1世代の商用原子炉が運転を始めてから安全性の向上などを目的に、メーカー各社は新しいタイプの原子炉開発に取り組んできた。60年代からの第2世代、90年代からの第3世代を経て、2010年代からは「第3世代プラス」や「第3.5世代」と呼ばれる原子炉の開発が進んでいる。
第3世代プラスには、仏アレバの「欧州加圧水型原子炉(EPR)」のほか、米ウエスチングハウスの「加圧水型原子炉(AP1000)」などがある。過酷事故対策や機器の信頼性に強みを持つ。30年に実用化を目指すナトリウム冷却高速炉などは、第4世代に位置づけられる。
[日経新聞11月20日朝刊P.25]
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