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[地球回覧]「米国のフクシマ」に学ぶ
米ワシントン州東南部の町リッチランドの空港に9月中旬、日本の高等専門学校に通う若者6人が降り立った。マイクロバスに乗り込んで向かった先は郊外の「ハンフォードサイト」。長崎に投下された原子爆弾のプルトニウムを精製し、冷戦期には米国の核兵器の製造拠点だった施設だ。
ベルリンの壁が崩壊した1989年、米政府はこの施設でのプルトニウムの精製を打ち切る。ソ連の脅威は消えたが、9基の原子炉と177個の地下タンクに貯蔵された高レベル放射性廃棄物、行き場のない700立方メートルもの核物質が残された。「米国で最も放射能に汚染された土地」。専門家がこう呼ぶハンフォードサイトを、米ニューズウィーク誌は3年前の特集記事で「米国のフクシマ」と紹介した。
2011年3月に東京電力福島第1原子力発電所で起きた炉心溶融事故。日本政府は昨年、全国28校の高専などが連携し、廃炉作業の担い手となる人材を育成するプログラムを始めた。ハンフォードサイトを訪れた6人は、このプログラムで学ぶ全国200人以上の学生の中から選ばれた。
福島高専で高レベル放射性廃棄物の地層処理について学ぶ木村恵さん(19)は、事故から2年後に訪れた南相馬市の光景が忘れられないという。窓ガラスが割られた店舗、止まったままの時計――。「住人がいないと、町はこれだけさびれるのかとショックを受けた。このままじゃいけないと思った」と振り返る。
香川高専の春日貴章さん(22)はあの日、研修で新潟県の柏崎刈羽原発にいた。原子炉の緊急冷却システムの説明を受けていた時に地震が発生。「1日目はみな比較的冷静だったが、2日目に海水注入が始まったころから雰囲気が変わった」
原発がいかに安全かを学ぶ1週間の実地研修の最後に目撃した福島第1原発建屋の崩壊。春日さんは「どんなに備えても、不測の事態は起こるということを学んだ」と語る。
木村さんらはリッチランド滞在中、ハンフォードサイトにある世界初のプルトニウム生産用原子炉「B原子炉」や、福島第1原発の汚染水処理に関わる米キュリオン社の研究施設などを訪問。放射性廃棄物を安全に処分するためのガラス固化技術やトリチウム除去装置などについて学んだ。
米政府はプルトニウムの精製をやめた直後からハンフォードサイトの除染に取り組んでいるが、計画は遅れている。「ハンフォードの難しさは、その途方もない規模にある。27年間続けてきたが、地下タンクに残された高レベル放射性廃棄物の処分だけでも、あと30〜40年はかかるだろう」。パシフィック・ノースウエスト国立研究所で除染にかかわるウエイン・ジョンソン氏はこう語る。
年間20億ドル(約2100億円)に上る巨額の「クリーンアップ予算」のおかげで、人口約5万人のリッチランドを含む周辺自治体の財政は潤っている。だが、設計上の耐用年数を超え、老朽化した地下タンクから染み出す汚染水の不安は、住民の暮らしに影を落とす。
「ハンフォードの歴史や現状を見て、廃炉や除染、放射性廃棄物の処分が日本だけでなく、世界規模の問題だということを再確認できた。解決に時間がかかる問題だからこそ、目を背けずに世界が力を合わせるべきだ」と春日さんらはいう。
福島第1原発の廃炉と復興も40年以上の長期戦。だが、使命感を持ってその重責を担う人材は着実に育っている。
(シリコンバレー=小川義也)
[日経新聞11月6日朝刊P.4]
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