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横浜市に対して放射性廃棄物の学校外へ移管を求める「学校・保育園の放射能対策 横浜の会」
放射能汚染物、小中学校等に保管・埋め立て…環境省と横浜市、事実把握し5年間放置
http://biz-journal.jp/2016/10/post_17008.html
2016.10.27 文=青木泰/環境ジャーナリスト Business Journal
高濃度放射能汚染物である指定廃棄物が横浜市の小中学校に保管・放置されていた事実が、6月21日付神奈川新聞が1面トップで報道し、神奈川県全域で大問題となった。同紙は、『指定廃棄物を学校に“放置” 横浜市、5年以上も』と見出しをつけ、次のように報道した。
「2011年3月の東京電力福島第1原発事故によって放射性物質に汚染された『指定廃棄物』が、横浜市の市立小中学校など17校に合計3トン置かれたままになっている。指定廃棄物は1キロ当たりの放射性セシウム濃度8000ベクレル超で、汚染濃度が高く、処理の責任は政府にある。ところが、処理法や場所が決まらず、同市が5年以上も『暫定管理』している。指定廃棄物を公立校に置いているケースは全国になく、専門家は『環境省の怠慢。一日も早く教育現場から撤去すべきだ』と指摘している」(松島佳子記者)
その後、学校に保管されていたのは、国が処理責任を持つ「1キログラム当たり8000ベクレル」を超える指定廃棄物だけではなく、同3000ベクレルを超える廃棄物を含めると汚染廃棄物だけで約10トン、それに校庭や園庭の除染処理に伴って掻き出した高濃度の除染土壌も、小中学校や保育園に保管されていたことがわかった(表1:横浜市の放射能汚染物<廃棄物、除染土壌>の保管状況 参照)。
ある小学校のポンプ室に、ドラム缶に封入して保管されている放射能汚染物
現行の放射性廃棄物の処理基準は、原子力発電施設や医療施設、民間の研究施設から排出されるものについて「1キログラム当たり100ベクレル」と定められ、処理基準以上のものは、ドラム缶等に封入し、数百年の保管が義務づけられている。この基準の数十倍の放射性廃棄物、つまり核廃棄物を、放射能の影響をもっとも受ける子どもたちの通う教育施設に、5年間も保管してきたのである。一方、除染土壌は、同じ放射能汚染物でありながら、環境省は廃棄物でないとして処理基準すら設けていない。
広島、長崎、チェルノブイリでの被ばく問題を追跡し、福島県における甲状腺がんの多発問題に新たな提案をするゴフマン研究会のジャーナリスト・蔵田計成氏は、「放射線被ばくは、現世代に対し、限りなく反生命体的な毒性作用を持っている」「遺伝子を損傷するため、生殖細胞の損傷が世代を超えて伝達される。若い命があふれる校庭や園庭の敷地内に放置することは、無神経な蛮行であり、行政が犯した犯罪行為と言える」と語り、驚きを隠さない。しかし9月になり、早く学校・保育園から撤去したいという市民の願いは、横浜市、同様に除染土壌を保管していた横須賀市で実現しつつある。
■なぜ、教育施設内に高濃度放射性廃棄物(=汚泥)が保管
数年間放置されてきた放射性廃棄物。これまでは「持って行く場所がない」という国や横浜市による説明が行われてきたが、その点を検証する前に、小中学校の施設内になぜ、高濃度の放射性廃棄物が発生し、保管・放置されていたのかについて説明する。
横浜市では、370万人を擁する政令指定都市として、小中学校は「雨水利用施設」を設けていた。校舎屋上に降った雨水を集水し、その水をトイレの洗浄水として利用する施設である。雨水をためておく貯水槽の底にたまっていた汚泥が、いずれも高濃度の放射能汚染を示したのである。学校の屋上は、2011年の東京電力福島原発事故当時、原発から放出された放射性物質が東日本各地に風で運ばれ、遠く神奈川、東京、埼玉まで運ばれ、大地を汚染した。屋上に降り落ちた雨水や砂塵に混じった汚染物が、貯留槽の底に汚泥としてたまり、その汚泥が高濃度に放射能汚染されていたのである。
東日本各地の汚染マップ、早川由紀夫群馬大学教授作成
汚泥は廃棄物としてときどき抜き取り処理されるが、原発事故後、民間の廃棄物処理業者が汚泥の放射能濃度測定を要望したという。通常の汚染されていない汚泥は、堆肥の原材料などにも使われることがあり、汚染度が高ければ使えないため引き取りを拒否されたのである。
そこで横浜市が測定したところ、現行の基準100ベクレルの数十倍、数千ベクレルを超える学校が43校もあり、その内17校は、放射性物質汚染対処特措法(註1、以下:特措法)による暫定基準値8000ベクレルを超え、国(環境省)が処理責任を負うことになった。ところが、環境省は、その指定廃棄物を「処理体制が整うまでの間は、施設管理者に保管をお願いせざるを得ない」と伝え、横浜市では各学校施設内のポンプ室や倉庫などに、放射性廃棄物の保管を続けることになった。今年5月にも、環境省は「処分の見通しが立っていない」と説明し、保管の継続を横浜市に頼んでいた。
これが、横浜市の学校施設内に指定廃棄物等の放射性廃棄物(=汚泥)が、発生時から5年間も保管・放置されている経過概要である。
■行政による失政
同特措法では、暫定基準の8000ベクレル以上の廃棄物は環境省が処分し、それ以下のものは当該市町村が埋め立て処分場などの一般公衆が接触することのない場所に保管することになっていたが、環境省が学校内での保管を見過ごしてきたことをよいことに、横浜市も学校内に保管・放置してきたといえる。
一方、学校内に放置されてきたのは、汚泥などの放射性廃棄物だけでなく、除染された除染土壌もあった。福島原発事故がもたらした放射性物質の放出・飛散によって汚染されたのは、もちろん雨水利用施設を持つ校舎の屋上だけではない。校庭の樹木や表土も汚染された。汚染度が高くなった場所、「マイクロスポット」では、汚染された表土をはぎ取り、一定の基準内に収める努力が行われてきた。そうしたマイクロスポットでは、はぎ取った除染土壌は、ペール缶や土のうやビニール袋に入れて、学校や保育園の施設内の倉庫などや校庭・園庭などに埋め立て保管してきた。それが今日まで放置されてきたのである。
つまり、横浜市のように雨水利用施設から排出される「汚泥」、そして敷地内の汚染度の高い表土から掻き出された除染土壌などが、「一時的」にその場に保管された。しかし国や市町村がその保管場所を、ただちに処分場等に移すことを検討することはなかった。一時的(数日から1週間ほど)ならと許された学校保管が、行政自らチェックすることなく、今日まで長年にわたり、放置されてきたといえる。行政による無責任体制がもたらした、失政といえる事態である。
■横浜市、ようやく動き出す
この問題に数年前から取り組んできた「学校・保育園の放射能対策 横浜の会」(樋口敦子共同代表)では、これら放射能汚染物を、廃棄物(=汚泥)、除染土壌にかかわりなく学校や保育園の施設外に運び出すように求めてきたが、神奈川新聞の報道などもきっかけとなり、保護者らの署名活動が広がり、7月8日までに4296筆の署名が横浜市に提出された。また、「週刊女性」(主婦と生活社/7月12日号)、テレビ番組『噂の!東京マガジン』(TBS系/7月31日放送)、月刊誌「紙の爆弾」(鹿砦社/9月号)でも特集され、横浜市は8月29日、横浜市の北部汚泥資源化センター(敷地面積18万5000平方メートル)内に、約100平方メートルの保管用コンクリート建屋を建設し、16年度中にその場に移管することを発表した。
これまで問題を指摘する市議会議員や保護者の声に対して横浜市は、「環境省には、移管をお願いしている」「市も独自に移管場所を検討しているが、移管先の住民の声を聞く必要があり、なかなか見つからない」「各学校では安全に管理していると聞いている」などと応じてきたが、複数のメディアに取り上げられることによって、保護者らの批判の声がさらに広がることを恐れ、行政がようやく動き出したといえる。行政の失政をチェックしたのは、市民であった。
横須賀市でも、学校内の除染作業によって取り除いた除染土壌を、土のうやビニール袋に入れて、校庭内の一角に埋め立て保管してきた。校庭内に埋め立てても、その場所には立ち入り禁止の標識を付け、子どもたちが入れないように柵を設けるなど安全対策を図るということであった。
しかし、9月2日の横須賀市議会で、小室たかえ市議の質問によって、埋め立てている除染土壌の放射能汚染濃度も測っていないし、標識や柵を設けていないところもあり、安全対策も不十分にしか行われていない実態が明らかになった。また、9月23日には藤野英明市議が、移管場所について具体的に質問するなかで、横須賀市は学校内に埋め立て保管している汚染土壌を、市の下町浄化センターに移管すると発表した。
泉田裕彦新潟県知事は、放射能汚染の恐れがある災害がれきが全国の市町村に運ばれ、焼却によって汚染濃縮された焼却灰が各地の処分場に埋め立てられることに対して、「日本は、全国の処分場を核廃棄物の処分場にするのか」と批判した。
しかし今回の問題は、それに輪をかけてひどい。「日本は、全国の学校や保育園を核廃棄物の保管所にしている」のである。実態が公けとなり、保護者を中心とした市民や市議会議員が抗議の声を上げ、マスコミがそれを取り上げれば、今まで移管場所がないと言っていた行政の発言が嘘のように棚上げされ、移管場所が「見つかる」のである。
放射性廃棄物や除染土壌を学校や保育園に保管しているのは、実は横浜市や横須賀市など神奈川県に限らない。調査でも千葉県白井市、東京都大田区、埼玉県八潮市では埋め立て保管されていることがわかっているが、これら東日本全地域における放射性廃棄物の学校保管をやめさせようとする声は、横浜市、横須賀市における移管をきっかけに、広がりつつある。
■【続報】一部学校では、引き続き埋め立て保管
横浜市では、前出「横浜の会」が10月17日、横浜市に対して放射性廃棄物の学校外へ移管を求める追加署名分742人分を加え、5038筆分を提出し、要請行動を行った。
横浜市は、その後の説明で、ポンプ室や倉庫などに保管していたものは、北部汚泥資源化センターに移管するが、100カ所以上の校庭や園庭などに「埋め立て保管」(実態は10cmの厚さに覆土しただけのものも)した分は、そのまま放置すると発表した。移管先の建物のスペースは十分に広く、移管は不可能ではない。
しかも横浜市の基準では、安全だとしていた除染土壌は、市民がサンプルを受け取り民間測定所で測定したところ1キログラム当たり2万3000ベクレルに上るものもあった。この値は、原子力発電施設などの電離放射線規則の適用施設でしか取り扱えない、レベルの高い汚染濃度である。そこで10月17日、横浜の会は署名提出の際に、現在学校や保育園で保管している汚染物は、保管の状態のいかんにかかわらず、すべて移管するように求めて交渉した。
なお、横浜市よりは遅れて移管を決定した横須賀市は、学校の除染土壌を埋め立て保管していたが、これらをすべて掘り返して移管することを決定している。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)
【註1】12年1月1日施行。東京電力福島第1原発事故によって放出された放射性物質による汚染については、この特措法によって別枠の基準を設けた。そのため期限のある特別措置法とした。
●青木泰(あおき・やすし)
民間時計会社の研究技術者を経て、環境ジャーナリスト。NPO法人ごみ問題5市連絡会、廃棄物資源循環学会会員。『プラスティックごみは燃やしてよいのか』『空気と食べ物の放射能汚染』(共にリサイクル文化社)、『引き裂かれた「絆」―がれきトリック、環境省との攻防1000日―』(鹿砦社)などの著作。
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