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川内は結局止まる…「原発20〜22%」は実現不可
「燃やさない文明」のビジネス戦略
2016年9月8日(木)
村沢 義久
九州電力川内原子力発電所
(出所:九州電力)
福井県の高浜原発が大津地方裁判所の仮処分により停止したのが今年の3月。それから5カ月後の8月26日、鹿児島県の三反園知事は、九州電力の瓜生道明社長に、川内原発の運転を一時停止して施設を点検するよう申し入れた。高浜が「司法ショック」なら、川内は「行政ショック」だ。
停止要請は拒否も、止まる「川内原発」
三反園知事は7月の県知事選で川内原発の一時停止と再点検などを公約として当選。8月下旬 から9月上旬をめどに、九電に一時停止を申し入れる考えを示していたが、今回の申し入れで公約を守ったことになる。
知事が特に問題視しているのが、万一の場合の避難対策で、8月19日には原発から半径5km圏内にある薩摩川内市の集落や、30km圏内に入る隣のいちき串木野市内を視察。事故の際に使われる予定の避難道路の検証などを行い、前知事時代に作成された原発事故時の避難計画を見直す考えを示した。
4月の熊本地震後、川内原発の安全性に対する不安の声が強まっていることが背景にあるが、不安なのは九州の住人だけではない。日本の天気は偏西風の影響で西から東に変わっていく。本土の西端に位置する川内で激甚事故が起こると、西からの風に乗って日本の広範囲に汚染が広がる恐れがある。
知事からの申し入れに対し九州電力は9月5日、要請には応じないと正式に回答。ただし、熊本地震に対応した設備の特別点検や避難計画の見直しには協力する方針を伝えた。これに対し三反園知事は9月7日、追加の安全対策を再度要請した。
今回の申し入れに関しては、知事に運転停止の法的な権限はない。ただ、川内原発は1号機が10月に、2号機は12月に、定期点検のために停止することになっている。だから、「今年中に止まるか?」という質問に対する答えは「Yes」だ。知事の影響力が発揮されるのは、定期点検後の再々稼働時。運転再開には薩摩川内市長と鹿児島県知事の同意が必要になるからだ。
こう考えると、今回の知事の「一時停止」要請自体は大きな問題ではない。むしろ、九電が心配すべきは停止の長期化。新知事は、地震の影響や活断層の状況などについて再点検を求め、重大事故が起きた際の住民の避難計画も専門家による委員会を設けて改めて検証するという。検証すべきは避難経路だけではない。板張り体育館にプライバシーゼロという受け入れ施設はNG。一流ホテル並みとは言わないまでも、しっかり生活できる施設を準備する必要があるが、そうなると容易なことではない。
停止期間は長期化する可能性が高い。通常だと点検期間は3〜4カ月なので、来年春ごろまでには2基とも稼働しているはずだが、検証の結果、現在の対策が不十分ということになれば大幅な改善が必要となる。川内原発の再々稼働は、かなり先のことになるのではないかと考える。
伊方3号機は営業運転に移行したが…
9月7日現在、稼働中の原発は川内の2基と四国電力の伊方3号機(愛媛県伊方町)の合計3基。四国電力は8月22日、その伊方3号機がフル稼働したと発表した。伊方3号機は8月12日に再稼働したもので、9月7日から本格的な営業運転に移行した。
しかし、伊方についても、先の道は平坦ではない。まず、5年3カ月ぶりの稼働には不安が残る。実際、再稼働前の7月17日には3号機の1次冷却水ポンプから、内部洗浄用の水が漏れる事故が発生している。「環境への影響はない」というが、ポンプの部品交換が必要で、7月26日に予定されていた再稼働は2週間以上遅れることとなった。水漏れは、8月26日にも起こっている。
さらに、司法の壁が迫る。伊方原発では以前、その安全性をめぐって住民代表と四電が松山地裁で争い、住民側の敗訴に終わっている。しかし、2011年末に再び訴訟が起こされ、2016年現在係争中である。
訴訟は、地元以外の県からも起こされている。2016年3月11日、広島地裁にて伊方原発の運転差し止めを求める訴訟が起こされた。原告には、広島県・長崎県の被爆者や福島県からの避難者が含まれている。また、3号機に対する再稼働差し止めの仮処分申請も申し立てた。
6月30日には、3号機について、大分県の住民が同様の仮処分を大分地裁に申請した。運転差し止めを求める本訴も、年内を目標に大分地裁に起こす方針だという。
伊方原発から大分県の佐賀関半島先端までは約42kmしかない。大分県は愛媛県の「広域避難先」になっており、実際に、昨年11月には伊方町民が大分市まで避難する訓練を行っているから「対岸の火事」で済まされる状況ではない。
原発事故の影響は広範囲に及ぶことを考えると、「立地地元」以外の地域から訴訟が起こるのは当然で、高浜のように、他県の裁判所による停止命令があってもおかしくない。
さらに、伊方原発には、その存続に関わる大きな問題がある。沖合約6kmの海底には世界的規模の活断層「中央構造線断層帯」がある。筆者は、伊方の危険度は川内より高いと考える。
高浜は当分動かない
高浜原発(福井県高浜町)の動きは、日本の原発事情を象徴するかのような混乱ぶりを呈している。発端は、2015年4月14日にさかのぼる。この日、福井地裁が高浜発電所の3号機と4号機について、再稼働を認めないという仮処分の決定を出したのである。
関西電力は、その仮処分を不服として異議を申請。同年12月24日、福井地裁は異議を認め、仮処分決定を取り消した。そして、1カ月後の2016年1月29日に3号機が、続いて2月26日には4号機も再稼働した。
関電側の逆転勝訴だったが、この後に再々逆転が続く。3月9日、大津地方裁判所(山本善彦裁判長)が、3号機と4号機の運転停止を命じる仮処分の決定を出したのである。「まさか他県から仮処分とは」というのが関電の本音だったろう。その結果、翌10日には3号機が停止した(4号機は、2016年2月29日、変圧器周辺でトラブルが起き自動停止していた)。
関電は、その仮処分決定に対し、執行停止の申し立てを行ったが、6月17日、大津地裁はその申請を却下。続いて、7月12日には、異議についても退け、再び2基の運転を認めない決定を行った。
関電は、大阪高裁に保全抗告する方針を示したがその手続きには時間がかかる。これで、高浜原発は当分の間稼動できないこととなった。
運転停止の長期化を悟った関電は、3、4号機に装着している核燃料棒(各157体)を、原子炉格納容器から取り出すことを決定。実際に、8月17日から19日に4号機からの取り出しを完了。3号機についても、9月5日から7日に取り出すこととした。
伊方の次はない?!
さて、日本の原発は今後どうなるか。最初に2017年初頭の状況を考えてみると、その時点で動いているのは、伊方原発の1基だけ。川内については、前述のように、遅くとも12月までには2基とも定期点検で停止する。高浜については、仮処分が継続し停止したままだろう。
では、その先はどうか。次の候補と目されるのは、九電玄海3、4号機(佐賀県玄海町)で、早ければ2016年秋の合格が見込まれる。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「合格に問題はない」との見方を示し、九電も年度内の再稼働を目指す。
しかし、思惑通りに行くだろうか。
玄海原発でも鍵を握るのは、周辺の自治体。九電は、佐賀県と玄海町を再稼働の際に同意を得る「地元」とし、安全協定を結んでいるが、「地元でない」佐賀県伊万里市から反対の声が上がっている。
伊万里市は玄海原発から30km圏内にある。その伊万里市の塚部芳和市長は7月4日の定例会見で「玄海原発の再稼働は認められない」と再稼働に反対している。九電は再稼働の同意権限を県と玄海町に限定しているが、原発事故の深刻さから考えて、本来30km圏内は「地元」のはず。
塚部市長は会見で、「原発が止まっても地域経済や市民生活へ大きな支障はなかった」「もし事故が起きたら取り返しがつかない」という主旨のコメントをしている。九電は伊万里市長の反対を無視できるのか。
これが玄海の状況だが、「玄海の次」となると、全くメドが立っていない。北海道電力泊3号機は審査の終盤に入っているが、地震による津波対策や液状化などに不安が残っている。関電大飯3、4号機(福井県)の審査も終盤にきて停滞している。
原発でカバーできる電力はせいぜい数%
このように、日本の原発は「モグラたたき」状態が続く。これまでのところ、5匹(5基)のモグラが頭を出し、そのうち2匹(高浜3、4号機)が司法にたたかれて頭を引っ込め、次の2匹(川内1、2号機)の上にも知事のハンマーが振り下ろされようとしている、というところ。
筆者は、CO2の排出抑制と減原発のバランスを考慮し、全電力需要の10%程度を原発で賄うことが適切と考えている。そのために必要な原発数は10基程度。稼働率60%として17基を再稼動させ、そのうち常に10基程度が動いているという計算だ。しかし、この構想は実現しそうもない。各原発の状況を見ると、近いうちに15基が再稼動できるとは到底思えないからだ。
最大の問題は、事故から5年以上経った福島第一原発の対応が収束しないこと。地下水対策の切り札と考えられた凍土壁はほとんど機能せず、さらには、事故直後のメルトダウン隠蔽が明らかになり、当時の東電幹部が強制起訴されるなど、国民の原発に対する信頼は、回復するどころが益々悪化している。
高浜を止めた大津地方裁判所、川内に停止要請を出した三反園知事に対し、原発推進の立場からは、「司法リスク」「知事リスク」とする批判もあるが、客観的に見れば、司法も知事も国民の声に耳を傾け始めたということではないか。
廃炉作業に数十年かかることを考えると、国民の不安は当分解消されず、従って、稼働環境が急速に改善するとは考えられない。政府が2030年の電源構成(ベストミックス)として望ましいという20~22%など論外としか言いようがない。太陽光発電を中心とした現実的なエネルギー政策に移行する時期に来ている。
このコラムについて
「燃やさない文明」のビジネス戦略
いま、大きな変革の節目を迎えようとしている。時代を突き動かしているのは、ひとつは言うまでもなく地球環境問題である。人口の増大や途上国の成長が必然だとしたら、いかに地球規模の安定を確保するかは世界共通の問題意識となった。そしてもう一つは、グローバル化する世界経済、情報が瞬時に駆け巡るフラット化した世界である。これは地球環境という世界共通の問題を巡って、世界が協調する基盤を広げるとともに、技術開発やルールづくりでは熾烈な競争を促す側面もある。
筆者は「燃やさない文明」を提唱し、20世紀型の石油文明からの転換を訴える。このコラムではそのための歩みを企業や国、社会の変化やとるべき戦略として綴ってもらう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/225434/090600012
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