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2015-16年は英国の特撮テレビ番組・国際救助隊「サンダーバード」の製作・放映から50周年にあたり、
テレビでの再放映も含めていろいろなイベントが行なわれたようだ。
私も久しぶりに観てみたが、第6話 「原子炉の危機」 で原子炉の爆発事故が大変リアルに描写されおり、
少なからずショックを受けた。
[第6話 あらすじ] (ネタバレ注意)
「オーストラリアの海水淡水化プラントで原子炉が稼働中。この施設に忍び込み、盗撮していた
悪漢フッドと警備員が撃ち合いになり、流れ弾により爆発・火災が発生。
事故は制御不能になり作業員は飛行機で脱出。原子炉は大爆発を起こしキノコ雲が発生。
放射能雲はメルボルンに向かうが、幸運にも風向きが変わり、海に流れて救われる。
1年後、サハラ砂漠の淡水化プラント。またもフッドの仕掛けた爆弾で原子炉が危機的状態に陥り、
今度は国際救助隊が救助にやってくる、、、」
マスコミ見学者に向かって職員が原子炉は絶対安全だと説明したり、原子炉火災が
手をつけられない状態になり、作業員がすべてを放棄して脱出する場面は、
どこかの電力会社とそっくりで思わず苦笑した。
キノコ雲の発生、そして放射能雲がメルボルンに向かう場面は、あまりに生々しく息をのむ。
見ていて顔がひきつるのが自分でわかったほどだ。
1960年代当時、人類は原子力によるバラ色の未来を夢見ていた。
将来のエネルギー・動力源はすべてコンパクトな燃料の原子力に置き換わると期待されていた。
天才エンジニアのブレインズが設計したサンダーバードの最新装備も、すべて原子力が動力源
という設定である。番組の中でも原子力飛行機などが当たり前のように登場する。
そういった時代背景にもかかわらず、しかもスリーマイル島原発事故が起きる10年以上も前に、
子供向けの番組が原子炉の危険性をこれだけ真正面から取り上げ、描写したことは驚嘆に値する。
原子力事故をここまでリアルに描けたのは、英国の番組だったからかもしれない。
というのも、1957年、ウィンズケール(現・セラフィールド)で英国史上最悪の原子炉火災事故が起き、
英国民を心底震え上がらせたからである[1]。
原子炉2基の炉心で黒煙減速材の加熱で火災が発生、16時間燃え続け大量の放射性物質を
外部に放出。例によって環境汚染も犠牲者もないと発表されたが、少なくとも数十人が
白血病で死亡。現在でも白血病発生率は全国平均の3倍だという。
事故の詳細は政府により30年間も隠ぺいされた。
この番組の製作当時、彼らの記憶の中に事故の恐怖がまだ生々しく残っていたに違いない。
科学技術への過信から大事故が起き、国際救助隊が最新装備を駆使して危機一髪で人命を救う、
というのがこの番組の基本的なパターンであり、原子力事故は最も適したテーマだったかもしれない。
批判的にみれば、原子力の危険性を指摘しながら原子力を使う、原子力事故を原子力で回避する
という矛盾があるわけだが、そのちぐはぐ感がまた60年代らしい。
ちなみに現実の世界では、原子力飛行機は、放射線遮蔽体が重く、乗員の被ばく、大気汚染、
墜落時の汚染拡散などの問題が解決できず、実用化されることはなかった。
ウィンズケールの事故は、当時原子力発電を導入しようとしていた国々を震撼させた。
日本政府も、1960年、原子炉が破局的な事故を起こした場合の全損害額を試算し、
報告書にまとめている[2]。
その結果、被害総額は最悪3兆7千億円(当時の国家予算の2倍以上)にもなることがわかり、
反原発運動を刺激しないよう極秘扱いとされ、1999年まで公開されなかった。
原発が姿も形もないころから、すでに事故が起きれば壊滅的な被害となることを政府は知っていた。
事故の可能性・危険性に目を閉じ、国民にも知らせず、ひたすら推進してきたのが原子力だったのだ。
極めて悪質な確信犯である。
日本で初の商業用原子力発電が始まったのは、この番組が製作された翌年の1966年である。
初の原発が稼働する前に、すでに原子力事故が予告されていたのだ。しかも子供番組で。
サンダーバードを観ていると、次から次へと出てくる最新装備に胸を躍らせた子供時代の感動が
よみがえってくる。しかし本当に感動したのはそれらのメカではなく、自分の身を危険にさらしても
人の命を救おうとする国際救助隊のヒューマニズムと勇気であった。
金儲けのためには国民の命を平気で見捨てるどこかの国の政府や電力会社と何たる違いか。
はたしてこれが同じ人間のすることなのか。穴があったらはいりたい気持ちである。
福島第一原発は、もはや現代の人類の持つ技術では収束不可能である。
未来から国際救助隊がやってきて、どうか助けてくれないだろうか。
地下深く沈下した溶融燃料を、あの「ジェットもぐら」を使って回収してくれないだろうか。
なつかしい気持ちで番組を見ながら、しばしそんな空想にふける私であった。
(関連情報)
[1] 「ウィンズケール原子炉火災事故」 (ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89%E7%81%AB%E7%81%BD%E4%BA%8B%E6%95%85
[2] 「50年前の政府極秘報告書 - 大型原子炉事故の最悪被害額は国家予算の2倍以上と試算」
(拙稿 2012/10/7)
http://www.asyura2.com/12/genpatu27/msg/781.html
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