桜井ジャーナル2016.03.06 より一部抜粋 http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201603060000/福島第一原発の事故から5年を経て深刻な影響が現れてきたが、言論統制/自己検閲で事実は隠蔽 東電福島第一原発がいわゆる「過酷事故」を起こしたのは今から5年前、2011年3月11日のことだった。環境中に放出された放射性物質の総量は、1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発事故の1割程度、後に約17%に相当すると発表されているが、算出の前提条件に問題があり、元原発技術者のアーニー・ガンダーセンは少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2?5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している。(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)
放出量を算出する際、漏れた放射背物質は圧力抑制室(トーラス)の水で99%を除去できるとされていたようだが、実際はメルトダウンで格納容器は破壊され、圧力は急上昇してトーラスへ噴出した気体と固体の混合物は爆発的なスピードで、水は吹き飛ばされていたと指摘されている。 また、燃料棒を溶かすほどの高温になっていたわけで、当然のことながら水は沸騰していたはずで、放射性物質を除去できるような状態ではなかったとも言われている。そもそも格納容器も破壊されていたようで、環境中へダイレクトに放射性物質は出ていたはず。チェルノブイリ原発事故より放出された放射性物質の量は6倍から10倍に達するとも考えられる。 その後も放射性物質は止まらず、大気や太平洋を汚染しているとしか考えられない。事故当時、イスラエルのマグナBSPがセキュリティ・システムや原子炉を監視する立体映像カメラが原発内に設置されていた。これはエルサレム・ポスト紙やハーレツ紙が伝えている。事故後に残った50名には、事故の約3週間前にイスラエルでシステムに関する訓練を受けた2名も含まれていたという。 そうしたカメラが設置されていたものの、溶融した燃料棒がどのような状態になっているか不明だとされている。原発で爆発があった直後、政府や東電は上空から撮影した映像などから臨界状態になっていることを確認していた可能性が高いのだが、外部へは公表していない。内部の状況が判明しても発表することはないだろう。溶融した燃料棒は格納容器を突き抜けて地中へ潜り込み、それを冷やす形になっている地下水が放射性物質を海へ運んでいるとも考えられる。 2051年までに廃炉させることになっているようだが、東電福島第一原発の小野明所長でさえ、飛躍的な技術の進歩がない限り、不可能かもしれないと認めたという。イギリスのタイムズ紙は廃炉には200年が必要だとしているが、数百年はかかるだろうと推測する人は少なくない。2051年までに廃炉という主張はホラ話、あるいは妄想にすぎない。その間に新たな大地震、台風などによって原発が破壊されてより深刻な事態になることも考えられる。 東電福島第一原発の場合、放出された放射性物質の相当量は太平洋側へ流れたとされているが、それでも日本列島の汚染は深刻。原発の周辺の状況を徳田虎雄の息子で衆議院議員だった徳田毅は2011年4月17日、「オフィシャルブログ」(現在は削除されている)で次のように書いている: 「3月12日の1度目の水素爆発の際、2km離れた双葉町まで破片や小石が飛んできたという。そしてその爆発直後、原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという。それは衣服や乗用車に付着した放射性物質により二次被曝するほどの高い数値だ。」 12日に爆発したのは1号機で、14日には3号機も爆発している。政府や東電はいずれも水素爆発だとしているが、3号機の場合は1号機と明らかに爆発の様子が違い、別の原因だと考える方が自然。15日には2号機で「異音」、また4号機の建屋で大きな爆発音があったという。 こうした爆発が原因で建屋の外で燃料棒の破片が見つかったと報道されているのだが、2011年7月28日に開かれたNRCの会合で、新炉局のゲイリー・ホラハン副局長は、発見された破片が炉心にあった燃料棒のものだと推測している。 NRCが会議を行った直後、8月1日に東京電力は1、2号機建屋西側の排気筒下部にある配管の付近で1万ミリシーベルト以上(つまり実際の数値は不明)の放射線量を計測したと発表、2日には1号機建屋2階の空調機室で5000ミリシーベル以上を計測したことを明らかにしている。 また、事故当時に双葉町の町長だった井戸川克隆は、心臓発作で死んだ多くの人を知っていると語っている。セシウムは筋肉に集まるようだが、心臓は筋肉の塊。福島には急死する人が沢山いて、その中には若い人も含まれているとも主張、東電の従業員も死んでいるとしているのだが、そうした話を報道すしたのは外国のメディアだった。 原発の敷地内で働く労働者の状況も深刻なようで、相当数の死者が出ているという話が医療関係者から出ている。敷地内で容態が悪化した作業員が現れるとすぐに敷地内から連れ出し、原発事故と無関係と言うようだ。高線量の放射性物質を環境中へ放出し続けている福島第一原発で被曝しながら作業する労働者を確保することは容易でなく、ホームレスを拉致同然に連れてきていることも世界の人びとへ伝えられている。だからこそ、作業員の募集に広域暴力団が介在してくるのだ。 福島第一原発が事故を起こす前、通常運転していた時代にも現場の作業は社会的な弱者に押しつけられていた。下請け労働者、生活困窮者、ホームレスといった人びとを危険な作業に就かせるという仕組みは原発の歴史と同じ長さを持っている。その間、放射線が原因だと疑われる病気で死亡したり、癌にかかった労働者は少なくない。 そうした現場へ労働者として入り込んで調べ、その実態を『原発ジプシー』(現代書館、1979年)として明らかにした堀江邦夫、被曝しながら働かされる労働者の写真を約40年にわたって撮り続けている樋口健二といったジャーナリストはいる。が、マスコミは総じて「安全神話」を広めることに熱心で、多くの人は知らんぷりしてきた。 ローリングストーン誌の日本語版で樋口は次のように語っている。 「原発には政治屋、官僚、財界、学者、大マスコミが関わってる。それに司法と、人出し業の暴力団も絡んでるんだよ。電力会社は、原発をできればやめたいのよ。危ないし、文句ばっかり言われるし。でもなぜやめられないかといえば、原発を造ってる財閥にとって金のなる木だから。」 「東芝はウェスティングハウスを買収、日立はGE、三菱はアレバとくっついて、『国際的に原発をやる』システムを作っちゃったんだ。電力会社からの元請けを三井、三菱、日立、住友と財閥系がやってて、その下には下請け、孫請け、ひ孫請け、人出し業。さらに人出し業が農民、漁民、被差別部落民、元炭坑労働者を含む労働者たちを抱えてる」 「原発労働は差別だからね。」 放射能汚染の人体に対する影響が本格的に現れてくるのは被曝から20年から30年後。チェルノブイリ原発事故の場合は2006年から2016年のあたりからだと見られていたが、その前から深刻な報告されている。 ロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフたちのグループがまとめた報告書『チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する重大な影響』によると、1986年から2004年の期間に、事故が原因で死亡、あるいは生まれられなかった胎児は98万5000人に達する。癌や先天異常だけでなく、心臓病の急増や免疫力の低下が報告されている。 福島県の調査でも甲状腺癌の発生率が大きく上昇していると言わざるをえない状況。少なからぬ子どもがリンパ節転移などのために甲状腺の手術を受ける事態になっているのだが、原発事故の影響を否定したい人びとは「過剰診療」を主張している。 手術を行っている福島県立医大の鈴木真一教授は「とらなくても良いものはとっていない」と反論しているが、手術しなくても問題ないという「専門家」は、手術しなかった場合の結果に責任を持たなければならない。どのように責任をとるのかを明確にしておく必要がある。 事故直後、福島の沖にいたアメリカ海軍の空母ロナルド・レーガンに乗船していた乗組員にも甲状腺癌、睾丸癌、白血病、脳腫瘍といった症状が出ているようで、放射線の影響が疑われ、アメリカで訴訟になっている。カリフォルニアで先天性甲状腺機能低下症の子どもが増えているとする研究報告もある。
[32初期非表示理由]:担当:要点がまとまっていない長文
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