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高浜原発をはじめとして次々と原発の再稼働が進んでいる。しかし、だからといって脱原発を諦めるべきではないし、これで負けが確定したわけでもない。原発を止めるチャンスはまだまだ残されている。
ここでは、脱原発運動を主導してきた弁護士の河合弘之氏のインタビューを紹介したい。
『月刊日本』3月号
河合弘之「それでも私は高浜原発停止を諦めない」より
http://gekkan-nippon.com/?p=8628
<運転差止仮処分を取り消した裁判官たちの責任>
── 昨年4月に、関西電力の高浜原発(福井県)3・4号機の運転差止仮処分命令が発令されました。ところが、昨年12月に仮処分命令は取り消されてしまいました。
【河合】 福井地方裁判所の樋口英明裁判長が出した高浜原発の運転差止仮処分決定は、原発を推進したい権力と「原子力ムラ」にとっては、大きなショックだったでしょう。そこで、この決定を覆すために、関電は異議の審理を申し立てたのです。これに合わせて、樋口裁判長を名古屋家裁に転出させる形で封じ込め、元最高裁事務総局、民事局、刑事局などにいたエリート裁判官を三人そろえて異議審の担当に振り向けたのです。林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官の三人です。露骨な人事工作であり、非常に汚いやり方です。
樋口裁判長の決定を覆したこの三人の名前をよく覚えておいてもらいたい。万が一、高浜原発で事故が起きたら、その責任は彼らにあります。彼らには止める権限があったのですから。
── 林裁判長らは、いかなる理屈で仮処分命令を取り消したのですか。
【河合】 原子力規制委員会の新規制基準が合理的だと判断したのです。一番の問題は基準地震動の決め方です。基準地震動とは、耐震設計の目安となる揺れで、例えば「この原発は1000ガルを超えたらだめ」という基準です。樋口裁判長はこの基準の決め方は従来と同じで曖昧かつ緩過ぎであり、これに適合しても安全性は確保されないと判断していました。その判断を、林裁判長らは覆してしまった。
樋口裁判長の判断基準は、「二度と福島原発事故のような悲惨な事故を起こしてはいけない」「そのためにどのような安全基準が必要か」という点にありました。裁判官の基本姿勢が問われているのです。福島原発事故を直視し、あのような事故を二度と起こしてはいけないと思うのか、そうではないのか。林裁判長たちは、福島原発事故の悲惨さをもう忘れてしまったのです。
再稼働推進派は、「絶対的に安全なものなんかない」という考え方です。実際、林裁判長らは「危険性が社会通念上無視できる程度まで管理されているかどうか」が判断基準だと主張しているのです。社会通念上無視できる程度まで管理されていれば、福島原発事故のような事故が起きてもいいと考えているのです。
我々は、再稼働を始めた高浜原発をもう一度止める戦いを続けます。差止仮処分が異議審でひっくり返されたので、それに対する抗告が名古屋高裁金沢支部で継続されています。そこで、再びひっくり返さなくてはいけない。
<九電による免震重要棟の建設撤回は詐欺だ>
── 九州電力の川内原発(鹿児島県)の再稼働には、免震重要棟の建設が条件になっていました。ところが、九電は免震重要棟建設計画を撤回してしまいました。
【河合】 これは、詐欺です。規制委員会はバカにされています。規制委員会は、直ちに再稼働許可を取り消すべきです。免震重要棟建設を条件として許可したわけですから。規制委員会の対応は生ぬる過ぎます。
免震重要棟は放射線管理機能と通信情報設備を備えた緊急時対策所です。最前線の中央操作室から一歩下がったところに免震重要棟は設けられ、そこから指令を出すのです。免震構造でなければ、地震によってドアなどが壊れて室内に入れなくなり使いものにならなくなってしまいます。
福島原発事故があそこで留まったのは、免震重要棟があったからです。緊急時には不可欠な施設なのです。九電が勝手に免震重要棟建設を撤回してしまったのは、余計な費用をかけたくないからでしょう。しかし、こんなことを許したら他の原発も真似しますよ。我々は、川内原発を止めるために、負けた仮処分決定の抗告審を、福岡高裁宮崎支部で闘っています。(以下略)
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