http://www.asyura2.com/16/eg3/msg/107.html
Tweet |
石油メジャー 割れる戦略
トランプ氏の政策受け 欧州勢、再生エネにシフト 米国勢、原油・天然ガス増産
欧州と米国の石油大手の間で戦略の違いが目立ってきた。米国勢は国産資源開発に熱心なトランプ大統領に歩調を合わせ、石油・天然ガスの増産に動く。欧州勢はこれまでと変わらず再生可能エネルギーなど低炭素事業を推進している。温暖化対策と米国の政策変更という2つの要素にどう対応し中長期の戦略を描くか。2017年は欧米勢の分水嶺になりそうだ。
「我々のビジネスモデルを徐々に変えていく」。北欧最大の石油会社スタトイル(ノルウェー)のエルダー・サトゥレ最高経営責任者(CEO)が最近目指すのは「世界で最も二酸化炭素(CO2)排出量の少ない石油会社」だ。
その象徴的な存在が、英国で始める商業ベースで世界初の浮体式洋上風力事業「ハイウインド」。今年後半から英国の約2万世帯に電力を供給する計画だ。英国の天然ガス供給で約2割を占める同社は、再生エネでも英国への関与を強める。
今月17日にはアラブ首長国連邦(UAE)政府系のアブダビ未来エネルギー公社にこの権益の25%譲渡を発表。世界的な仲間づくりを進める。
CO2排出量の多い事業の見直しも急ぐ。今月1日付でカナダの「オイルサンド」を現地企業に売却し、同事業から撤退した。
オイルサンドは超重質油を含む砂の層。砂を蒸し焼きにして石油を抽出する際に多くのCO2が出る。原油価格の上昇で採算は改善しそうだが「全社的な資産見直しは進める」(スタトイル)。
温暖化対策に否定的な発言を繰り返すトランプ大統領のもと、大市場である米国では再生エネ事業に逆風が吹きかねない。欧州勢は「米国の(石油に関する)規制緩和は歓迎」(英BP)と表向きは言うものの、低炭素投資の手綱を緩めてはいない。長期的に温暖化対策の重要性に変わりはないとみているからだ。
「石炭、石油、天然ガスの次は再生エネ。今からすべてのエネルギー資源を用意する」と語るのは仏トタルのパトリック・プヤンネCEO。昨年、産業用蓄電システムの仏サフトを買収した。
トタルはすでに米太陽電池大手を傘下に持っている。今後、太陽光発電で余った電力を蓄電池にためて効率的に使うシステムの構築も進める。
英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなど欧州勢は産油国や新興国も巻き込んで技術の国際展開を目指す。温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の発効にあわせ、サウジアラビアやメキシコ、中国、インドの同業と低炭素技術の開発に10年で総額10億ドルを投資する。
対照的に、米国勢は石油ガスへの投資に傾倒している。特に北米依存度が高いコンチネンタル・リソーシズといった中堅以下はトランプ氏の政策を歓迎。原油価格が持ち直すなか、今後投資を拡大する見込み。英調査会社ウッドマッケンジーの予測では、17年の米国産原油は増える。
「シェール革命」で米国はサウジ、ロシアと並ぶ産油国になり、エネルギー自給率が高まった。エネルギー政策でも自国優先が鮮明なトランプ大統領は、この流れを加速したい考えがある。
もともとトランプ氏はシェール鉱区開発に伴う水質汚染などの環境規制の緩和に理解を示していた。関係する閣僚人事でも「開発優先」の姿勢を明確にしている。
国務長官に米エクソンモービルの前CEO、レックス・ティラーソン氏を就かせたのも、政権と石油大手の距離の近さを物語る。
エクソンや米シェブロンもバイオ燃料への投資をしてはいるが、欧州勢に比べて米国勢の再生エネ分野での存在感はますます薄くなっている。
フランクフルト=加藤貴行
[日経新聞1月31日朝刊P.6]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。