新聞
東京都新宿区歌舞伎町を拠点とする「闇の代理出産ビジネス」を利用して、子どもをもうけた中国人依頼主2人が毎日新聞のインタビューに応じた。いずれも中国共産党中央で要職に就く幹部の親族という。子どもは日本国籍を取得しており、30代女性は、中国からの逃避準備が目的と証言した。また40代男性は、代理出産で生まれた子どもの口座に20億円超の資産を移したことを明かした。代理出産ベビーを足がかりにした中国から日本への逃避ルート形成の一端が浮き彫りになった。【中国取材班】
中国人仲介業者との半年近い交渉を経て、4月26日に香港で依頼主の女性にインタビューした。
取り分けた麺を食べ終えた男児は退屈したのか、2年前に日本で放送されていた特撮ヒーロー「トッキュウジャー」の絵本(中国語版)を広げたり、閉じたりしていた。「日本と全く切り離してしまうのも何となく申し訳ないような気がして」と女性。
夫は貿易会社役員で、おじは共産党中央と政府の要職を兼務する人物だという。そのおじから「日本国籍の子どもが家族にいれば、国家が破綻した時に避難しやすい」と言われ、日本へ行くよう求められた。女性は「共産党の偉い人ほど、国のために殉じる発想がない」と苦笑いした。
闇の代理出産ビジネスでは、子どもの遺伝上の親は依頼主の中国人夫妻だが、日本の戸籍上の母親には代理母を務めた在日中国人、父親には第三者の日本人があてがわれる。一方の親が日本人なので日本国籍が取得できる。日本人の家族がいれば、資産を安全に日本国内に移転することが可能になるうえ、日本での不動産の売買や会社設立も容易になり、米国など第三国にも拠点が築きやすい。
彼女が東京・歌舞伎町で在日中国人の代理母に会ったのは2013年5月。若い代理母と握手して「元気な子どもをお願いします」とだけ伝えた。借金苦から代理母になる人が多いと聞き「若くてキュートなのに」と同情したという。14年4月に仲介業者を通じて出産の報告をもらった。なぜか特別な感情はわいてこなかった。
しかし、昨年5月に関東地方の託児所から北京に引き取った際、夫によく似た男児を初めて見て「どんな過程で生まれても家族は家族なのだ」と思い直したという。それと同時に難題にも直面した。
「この子を戸惑わせたくないから、代理出産の事実は伝えないつもり。ただ、(日本国籍の男児を利用して)一族で日本を頼る時は緊急事態なので、謝りながら伝えようと夫とは相談している」。女性は別れ際にそう言って息子と坂道を上っていった。
□
賃貸オフィスが集まる東京・新橋の5階建て雑居ビル最上階。今月11日、代理出産を依頼した遺伝上の父親である中国人男性へのインタビューが1時間近く過ぎたころだった。子どもの口座残高を見たいと頼むと、男性は「何を言っている。財産情報だぞ」と語気を強めた。
何度かやりとりして、残高の端数を報じない条件でネットバンキングの口座にアクセスしてもらった。男性のスマートフォンの画面をのぞき込むと、2歳に満たない幼児の口座に20億円超の残高が表示されていた。しかも、この金額は世界に分散させた資産の一部にすぎないという。
「怪しまれないか」と思わず聞くと「金融機関に理解者がいるから大丈夫」と鼻で笑った。遺伝上の両親との関係がたどれない日本国籍の子どもの口座なら中国当局の手も及びにくい。
日本の金融機関には犯罪に絡む「疑わしい取引」を金融庁に報告する義務があるが、実際には「口座を管理する支店の判断」(大手行関係者)だ。支店担当者が犯罪と無関係と判断すれば金融庁に報告されることはまずない。中国要人の亡命・逃避先としては米国が有名だが、男性は「日本の方がいろいろ緩いからいい」と申し訳なさそうに笑った。
◇
フォローアップ:
このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。
▲上へ ★阿修羅♪ > 中国9掲示板 次へ 前へ