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借金抱える企業救済
中国17年ぶり、債務の株式化解禁
【上海=張勇祥】中国は企業の借金を株式に転換する「債務の株式化」に動き出した。解禁は17年ぶりで、過剰な借金を抱える企業を実質的に救済する。第1陣として宝山鋼鉄と統合する武漢鋼鉄などが具体策の検討に入った。規模は最大で年2千億元(3兆円超)に達する見込み。非効率な企業の延命につながり、構造改革が先送りされるとの懸念も強い。
武漢鋼鉄は中国建設銀行と進める。両社で基金を創設。武漢鋼鉄は建設銀の借金を基金に移し、一部を株式に転換する計画とされる。総額で240億元の借金を減らす。
武漢鋼鉄は宝山鋼鉄との統合後に粗鋼生産能力を2割超減らす計画。設備の統廃合には多額の費用が必要になる。債務の株式化で借金を減らし、リストラに必要な資金の調達余力を高める。
雲南省政府系の国有企業、雲南錫業も債務の株式化で50億元の借金を減らす。上場子会社は2015年12月期が20億元近い最終赤字となるなど経営難が続いている。貸し手の建設銀は同社を実質的に救済する。
中国全体で債務の株式化の規模は「年に1千億〜2千億元にのぼる」(金融関係者)との見方が多い。中国では銀行の不良債権が問題になった1999年にも債務の株式化を活用した。
国務院(政府)は10月上旬に債務の株式化を17年ぶりに解禁する方針を表明した。戴柏華財政次官補は「全面的な税制優遇を研究している」とした。債務の株式化を使う企業は一定の条件を満たせば、企業所得税などを軽くする。
中国が政府主導で債務の株式化を推進する背景には、企業の深刻な債務依存がある。国際決済銀行(BIS)によると民間債務の国内総生産(GDP)比は16年3月末で209.8%となり、5年間で60ポイントも上昇した。銀行の不良債権も増え続けている。中国政府は債務の株式化を通じて銀行の不良債権処理が進む効果にも期待する。
ただ、安易な活用は過剰な借金を抱えて経営が悪化した「ゾンビ企業」の温存につながると懸念される。雲南錫業は過去にも債務の株式化を利用したが、業績不振に陥った。天津市が再建する渤海鋼鉄のほか、国有の不動産関連企業などが救済対象として続くとの観測も浮上している。
政府はゾンビ企業に債務の株式化を適用しないとしているが、明確な線引きは示していない。経営再建にめどが立たない企業にまで活用が広がれば、政府が掲げる過剰生産能力の削減など構造改革の妨げになりかねない。
債務の株式化とは
債務の株式化 企業の借金を株式に転換する財務手法。破産などの法的整理をせずに企業の借金を減らし、財務内容を改善できる。例えば、銀行がある企業への貸出債権をファンドに売却、ファンドは債権を株式に転換し、企業のオーナーとして再生にあたる企業再建の手法などがある。日本でもバブル崩壊後の1990年代後半、過剰債務を抱えた企業の救済に使われた。
「ゾンビ企業」延命の恐れ 線引き曖昧、恣意的な判断に
【北京=原田逸策】債務の株式化には借金だらけで利益が出ない「ゾンビ企業」を延命し、経済の非効率を温存するリスクがつきまとう。どんな企業が対象になるか線引きが曖昧で、恣意的な判断が働きやすい。
17年ぶりに解禁した今回の債務の株式化について中国政府は「市場」と「法の規律」を繰り返し強調している。国家発展改革委員会財政金融局の孫学工副局長は「(銀行、企業、債権回収会社の)市場参加者が自主的に話し合い、債務の具合、会社の経営状態、業界の状況などから株式化が必要か決める」とした。
背景には1999年の1回目の債務の株式化の教訓がある。当時は国が対象企業をすべて選んだ。対象は国有銀行による国有企業向けの融資がほとんど。不良債権を簿価で買い取り、株式に転換したため「国有企業と国有銀行を政府が救済した」と批判された。
今回はゾンビ企業や生産能力の過剰を助長する企業は対象にしないと説明している。指導意見を公表した10月10日に3月から計9回も債券の元利払いができなかった東北特殊鋼の破産手続きを始めたのは「ゾンビ企業を救済しない」方針を強調する狙いとみられる。
一方、経営不振が続くのに債務の株式化の候補に挙がる鉄鋼会社もある。孫副局長も「ゾンビ企業を排除する決まったやり方はなく、一定の困難が伴う」と認める。中国人民大学の聶輝華教授は「地方政府は地元企業を救済するよう銀行に圧力をかける」と言う。
債務の株式化は習近平指導部にも慎重な意見がある。5月には共産党機関紙、人民日報の1面に「権威人士」なる匿名人物のインタビュー記事が載り「安易に債務の株式化をしない」よう求めた。
[日経新聞10月31日朝刊P.4]
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