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by 木村 公司 2016/10/18 [年金]
国民年金の強制徴収拡大で9万人が対象
近年は60%程度に低迷している、国民年金の保険料の納付率を向上させるため、厚生労働省と日本年金機構は強制徴収する対象を、平成29年度から拡大する方針のようです。
具体的には強制徴収する基準が、「年間所得が350万円以上で、未納月数が7カ月以上」から、「年間所得が300万円以上で、未納月数が13カ月以上」に変更される予定です。
未納月数の方は基準が緩やかになっておりますが、基準が変更になると新たに9万人程度の方が、強制徴収の対象になると試算されております。
最終催告状を無視すると強制徴収の手続きが始まる
国民年金の保険料の強制徴収とは、期限を指定して「督促状」を送付し、その期限内に納付しない場合には、預貯金、自動車、給与などの財産を、差し押さえするというものです。
なお国民年金の保険料は配偶者や世帯主が、連帯して納付する義務を負うので、自分自身の財産だけではなく、配偶者や世帯主の財産も、強制徴収される可能性があります。
また督促した際には保険料に加えて、年14.6%(納期限の翌日から3カ月が経過するまでは年7.3%)の延滞金が徴収されるので、かなり厳しい処置です。
督促状送付の流れ
国民年金の保険料の滞納者に対して、いきなり督促状を送付することはなく、一般的には「催告状 → 特別催告状 → 最終催告状 → 督促状」という手順を踏みます。
この中の最終催告状は、自主的な納付を促す最後の通知になり、これに指定された納付期間までに保険料を納付しないと、強制徴収の手続きが始まりますので、無視するのはとても危険です。
強制徴収の基準は毎年変更され厳しさを増している
国民年金法には従来から、こういった強制徴収の規定はあったのですが、厳しい取り立てはあまり実施されておりませんでした。
しかし近年は厚生労働省や日本年金機構の方針が変わり、特に収入があるのに保険料を納付しない悪質な滞納者に対しては、厳しい取り立てを実施しているのです。
大きく方針が変わったのは平成26年度からで、「年間所得が400万円以上で、未納月数が13カ月以上」に該当し、かつ自主的な納付に応じない方に対しては、強制徴収の取り組みを強化しました。
その後は次のように、強制徴収の基準を毎年変更しており、年々基準が厳しくなっております。
平成27年度〜
年間所得が400万円以上で、未納月数が7カ月以上
平成28年度〜
年間所得が350万円以上で、未納月数が7カ月以上
平成29年度〜(予定)
年間所得が300万円以上で、未納月数が13カ月以上
年間所得とは自営業者であれば、年収から必要経費を引いたものになり、また会社員であれば年収から、給与所得控除を引いたものになります。
そのため年収で考えれば、もう少し金額は高くなりますが、決して高額所得者に対してだけ、強制徴収を実施しているわけではないのです。
なお会社員の方は、年末調整の際などに渡される源泉徴収票の、「給与所得控除後の金額」という欄を見ると、自分の年間所得がわかります。
ペナルティとして市区町村は保険証の返還を求める
国民健康保険の保険料の納付を滞納した時は、市区町村から納付を催促され、それでも納付しなかった場合には、市区町村は「被保険者証」いわゆる保険証の返還を求め、その代わりに数カ月で有効期限が切れる、「短期被保険者証」を交付します。
このように短期被保険者証を交付するのは、定期的に市区町村の窓口に来る機会を作り、その時に保険料の納付を催促したいからです。
また短期被保険者証を交付した後に市区町村は、滞納者に災害その他の政令で定める特別の事情があるかを確認し、それがなければ短期被保険者証の返還を求め、その代わりに「被保険者資格証明書」を交付します。
被保険者資格証明書の交付を受けている間は、診療にかかった費用の全額を、病院などの窓口で支払う必要があり、後日に申請を行って、一部負担金(医療費の2〜3割)を除いた、医療費の8〜7割の還付を受けることになります。
国民年金の滞納者にも保険証の返還を求められる
国民年金と国民健康保険は別々の制度のため、このように保険料の納付を滞納した場合の取り扱いも、制度によって違ってきます。
しかし法律上では国民年金の保険料の滞納者に対して、国民健康保険で使われるペナルティを課すことができるのです。
その法律とは平成19年7月に制定された、「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律(国民年金事業等運営改善法)」になります。
この法律を読むと市区町村は、国民年金の保険料の納付を滞納している方に対して、国民健康保険の保険証を還付させ、短期被保険者証を交付できると記載されているのです。
詳細については厚生労働省のサイトの中にある、「国民健康保険(市町村)との連携について 国民年金保険料等の未納者に対する国保短期被保険者証の活用(pdf)」というページを参照して下さい。
市区町村の判断なので…
あくまで「短期被保険者証を交付できる」であって、「短期被保険者証を交付しなければならない」ではないので、市区町村の判断にまかされております。
またほとんどの市区町村は、住民からの反発を恐れ、国民年金の保険料の滞納者に対して、保険証の返還を求めることに、抵抗を感じております。
しかし国民年金の保険料の納付率を向上させたい、厚生労働省と日本年金機構の意向を受け、あなたが住む市区町村でも、国民年金の保険料の納付を滞納した時に、国民健康保険の保険証を取り上げられる日が来るかもしません。
どの世代でも払い損にはならない国民年金
厚生労働省のサイトの中にある、「年金制度における世代間の給付と負担の関係について(pdf)」というページを見ると、国民年金の加入者が60歳時点の平均余命、つまり80歳程度まで生きた場合、若い世代でも納付した保険料の1.5倍の年金が受け取れると試算されております。
つまり決して払い損になることはなく、また社会保険料控除による節税分を加味すれば、更にお金が戻ってくるので、やはり国民年金の保険料は、きちんと納付すべきだと思うのです。
また保険料を納付するだけの金銭的な余裕のない方は、住所地の市区町村の窓口に行くか、もしくは郵送により、免除申請の手続きを行いましょう。(執筆者:木村 公司)
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