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(回答先: タイ、かすむ民政復帰 憲法案「軍が監視」色濃く クーデター2年:王朝派が総選挙で勝てる見込みが立つまで続く軍政 投稿者 あっしら 日時 2016 年 5 月 25 日 02:05:16)
タイ「分断」なお根深く
タイのインラック前政権を倒した軍事クーデターから22日で2年。街頭の政治デモは鳴りを潜めている。10年以上も国民を分断してきた政治勢力同士の和解は進んだのか。その答えを見つけるため北部のチェンマイ県を歩いた。
チェンマイ国際空港からほど近いサンカムペーン郡。2001〜06年に国を率いたタクシン元首相の故郷だ。在任中に1回30バーツ(93円)の低額医療の導入、外資誘致、自由貿易協定(FTA)の締結などを推し進めた。半面、強権的な政治手法や汚職体質は既得権益層の猛反発を買った。汚職の罪に問われ、今は海外で亡命生活をおくる。
タクシン氏の妹、インラック氏を引きずり下ろした現軍事政権は、「秩序維持」を理由にタクシン派政党のタイ貢献党の活動に神経をとがらせる。もちろん故郷も例外ではない。
田園風景の中に廃虚のような2階建ての建物を見つけた。かつてタイ貢献党の事務所だった。小型トラックが1台あるが、さびた鉄製の門扉には南京錠がかけられている。人けはなかった。クーデターの日を境に人の出入りがなくなった。
郡中心部のある商店主が重い口を開いた。彼は「今もタクシン氏が好きだ。軍政は非民主的だから嫌いだ」と切り出すと、タクシン氏の地方振興策を挙げて「我々の生活の質を上げてくれた」と評価した。だが、タクシン氏の帰国を望んではいない。いま帰れば現政権による逮捕や拘留が避けられないからだ。彼は「拘留中に暗殺される可能性がある」と真顔で話した。
軍政の言論抑圧の威力を実感できる。人々は名前や職業を伏せる条件でないと記者と話すのをためらう。「いま選挙をしたらどこが勝つと思いますか」。同じ質問に全員が迷うことなく「タイ貢献党」と答えた。
40歳代とみられる住民は「軍政になっても生活は全然良くならない」と不満げ。農村部は農産物価格の下落や干ばつ被害に苦しむ。
タクシン氏の足跡が残る数少ない場所の一つを見つけた。サンカムペーンの中心部にある絹織物の販売店だ。いまも元首相の親戚が営み、入り口にタクシン氏の大きな写真を掲げている。ただ、支持者らが訪れる様子はなかった。
8月7日、軍政は憲法草案を国民投票にかける。草案は上院を一部公選制から任命制に変えるなど、民主主義の後退ともとれる内容だ。軍政は草案や自らへの批判を封じ込めるため、容赦なく強権を振るう。
クーデターから2年、軍政は治安を安定させた「功績」をアピールする。だがサンカムペーンで実感したのは、足元の平穏が国民の和解の産物ではなく、言論や表現の自由を抑え込んだ効果にすぎない可能性があるということだ。いまなお国民の「分断」は根深い。
幼き日のタクシン少年が通った小学校の前を通りかかった。1年生が休み時間におしゃべりしていた。外の露天商から駄菓子を買ってもおとがめはなし。子供らは自由を謳歌していた。彼らが大人になったとき、タイの政治・社会はどう変容しているのだろうか。
(サンカムペーンで、小谷洋司)
「Nikkei Asian Review」(http://asia.nikkei.com/)に
「Surface calm belies deep splits in Thai politics」と題して掲載
[日経新聞5月22日朝刊P.13]
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