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軍(暫定政権)=バンコク王朝派であり、暫定政権が民政移管に踏み切れないのは、総選挙を実施してもタクシン派が勝ってしまう世論状況に確たる変化が見られないからである。
憲法草案の「上院の公選制は廃止し約20年ぶりに任命制に戻す。定員250人で、国軍最高司令官ら治安当局トップ6人が議席を確保し、軍政が残る244人を選ぶ」というのも、下院(総選挙)で勝てる見通しがないゆえのあがきである。
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タイ、かすむ民政復帰 憲法案「軍が監視」色濃く
クーデター2年、対立続き厳しい言論統制
【バンコク=小谷洋司】タイの軍事クーデターから22日で2年。「軍監視下の民主主義」を容認する憲法草案への賛否を問う国民投票を8月に控え、軍事政権と民主派勢力の対立が激しさを増す。軍政の強硬な言論統制は国際社会にも波紋を広げる。経済は成長が滞る「中所得国のわな」から抜け出せない。日本にとって東南アジア最大の投資先をなお閉塞感が覆う。
18日、首都バンコクのホテルにタイ内務省が全国から動員した約500人が集まった。憲法草案について各地で講義する「先生」に選ばれた人々だ。軍政が指名した憲法起草委員会のミーチャイ委員長は「皆さんは国の将来を握っている。人々に草案の良さを伝えてほしい」と激励した。
だが、おのおのの地元で起草委の代弁者となる彼らの前途は多難だ。タクシン元首相派を含む民主派勢力は、草案に猛反発しているためだ。
最大の争点は、新憲法施行後の5年間適用する非民主的な暫定措置を盛り込んだことだ。上院の公選制は廃止し約20年ぶりに任命制に戻す。定員250人で、国軍最高司令官ら治安当局トップ6人が議席を確保し、軍政が残る244人を選ぶ。
「上院は事実上『国軍党』として機能する」とある識者はみる。予算や法案の審議、各種独立委員会の人事などに軍政の影響力が残る。上院は首相指名に関わる可能性もある。選挙で選ばれた下院与党は、軍監視下での政策運営を迫られる。
国民投票の行方は予断を許さない。タクシン元首相派のタイ貢献党とライバルの民主党の二大政党はそろって草案に反対。軍政は草案への賛否を訴える政治運動などを禁じ討論会も制限した。市民が公に意見を交わす機会はほとんどない。
4月末には反軍政の活動家8人が交流サイト(SNS)のフェイスブックに不適切な書き込みをしたとして当局に拘束された。地元メディアは「批判に対する抑圧は国の恥だ」(3日付の英字紙バンコク・ポスト社説)と反発を強めた。
厳しい言論統制は国際社会との摩擦も生んでいる。11日、人権問題を話し合う国連会合で、タイに厳しい声が飛んだ。言論の自由や政治集会の権利を認めるよう欧米の代表らが次々と要求した。
「社会の分断を避けるため、権利の制限は避けられない」「善良な市民に影響はない」。タイ側はこう理解を求めた。
翌日には米国のデービース駐タイ大使が人権状況への「懸念」を表明。タイのプラユット暫定首相は「タイは米の植民地か」と不快感をあらわにした。
軍政に強権発動を正当化させているのは、かつて流血の事態を招いたタクシン派と反対派の政治対立だ。対話を軽視した前歴を持つ既存政党に対し不信感を持つ国民は「治安維持」を優先して軍政を支持している。
憲法草案の国民投票は軍政への信任投票の性格も帯びる。軍政はここにきて、草案が否決されると来年半ばごろとしてきた総選挙が遠のくと言い始めた。否決なら軍政が長期化し、可決なら「軍監視下の民主主義」が待つ。「民政復帰」という言葉がかすんでいる。
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タイの2014年軍事クーデターとは
▼タイの2014年軍事クーデター タクシン元首相派のインラック政権打倒を目指す反対派デモが13年後半から拡大。インラック首相の失職後もタクシン派と反対派のデモで治安悪化の恐れがあるとして、軍が全権を掌握し、憲法を廃止した。
1932年の立憲君主制移行後、クーデターは19回目。当時陸軍司令官だったプラユット氏が主導し、その後暫定首相に就いた。軍事政権は新憲法を早期に制定するとの方針を示したが、遅れている。軍政は、新憲法下で17年半ばに総選挙を実施して「民政移管」すると約束している。
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改革遅れ経済低迷 知識集約型産業 育たず
【バンコク=京塚環】帝国データバンクによれば、タイへの日本企業進出数は4月末時点で東南アジア諸国連合(ASEAN)最多の4788社だった。大洪水や政情混乱を経てもなお、タイの動向は日本企業にとり大きな関心事だ。
経済担当のソムキット副首相は最近「タイランド4.0」という標語をよく強調する。賃金上昇と労働力不足に陥るタイの産業構造を労働集約型から知識集約型に移行する取り組みだ。
その一環で、医療や航空宇宙、自動車など高度技術を必要とする分野で研究開発投資を呼び込む政策をとる。しかし「適用条件が複雑すぎて申請には至らない」(日系企業関係者)。申請件数は16年3月までの15カ月間で11件にとどまる。
技術者の不足も逆風だ。「採用後に一から教育し直しており(学校が)無駄になっている」。タイを代表する経営者、素材大手サイアム・セメント・グループのガン前最高経営責任者(CEO)は不満を口にする。軍政は教育改革を掲げるが具体策が出ない。
政策の空回りで、タイ経済のエンジンの一つである外資受け入れは低迷。個人消費もインラック前政権によるばらまき政策の後遺症から立ち直れず、成長率は3%前後と、かつて巡航速度といわれた5%はほど遠い。
大手銀行系のカシコンリサーチセンターのピモワン副所長は「内需の回復は難しく今後3年間は成長率3%以下が続く」と厳しい見方を示す。
1人当たりの国内総生産が約6000ドルに達したタイ。軍政は掛け声だけにとどまらず実行力と継続性を伴った産業構造改革が必要だ。民選政権が行き詰まる度にクーデターが起こり経済政策が変わるタイに厳しい命題が突きつけられている。
[日経新聞5月22日朝刊P.5]
- タイ「分断」なお根深く:チェンマイだから当然だが、いま選挙をしたらタイ貢献党が勝つと全員が回答 あっしら 2016/5/25 03:46:38
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