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内戦ではなく、内戦であったことなどなかったシリア
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2016年1月 2日 マスコミに載らない海外記事
Ulson Gunnar
New Eastern Outlook
2015年12月28日
兵器は外国製で、戦士は外国人で、狙いも外国のためだ。シリア軍が国家の支配を取り戻し、国境内で秩序を回復するため戦っている中、“シリア内戦”神話は継続している。シリア政府に反対するシリア人や、政府に反対し、それゆえシリア国民に対し、武器を持って立ち上がるシリア人すらいるだろうことは疑う余地はないが、最初から(実際は、始まる前から)この戦争は外国によって動かされてきたのだ。これを“内戦”と呼ぶのは、武器を持って戦っている連中を“反政府勢力”と呼ぶのと同様、間違った呼び方だ。これは“内戦”ではなく、シリア政府と戦っているのは“反政府勢力”ではない。
これを内戦と、シリア国家と戦っているテロリストを“反政府派”と呼んでいる連中は、その言説を聞いている人々が、連中のウソの先までは決して考えず、それが始まる前から行われていた動きや、そうした動きが一体どこで作られているのかという、この紛争の大きな文脈を理解しないことを願っているのだ。
これは一体いつ始まったのか?
これが、一体いつ実際に始まったのかというのは、もっともな疑問だ。冷戦時代、アメリカ合州国とヨーロッパ(NATO)と、ソ連のみならず、成長しつつある中国との間の東と西の間の戦いが一進一退を繰り返していた。しかし冷戦そのものは、世界対する様々な権力の中心の間で、何世紀にもわたり続けられてきた地政学的闘争の単なる継続だ。中枢には、ヨーロッパのパリ、ロンドンとベルリン、もちろんモスクワ、そして過去二百年間、ワシントンが含まれる。
ところが、この文脈で、地域紛争として描きだされているものは、これらの各特定利益集団中枢の間の、より広大な地政学的闘争の中にびったり納まるのが見えてくる。シリア紛争も例外ではない。
シリアは、冷戦中、ソ連と緊密な関係を維持してきた。つまり、ソ連崩壊後でさえ、シリアは、ロシアとつながりを維持していることを意味している。シリアはロシア兵器と戦術を使用している。シリアは、ロシアと、経済的、戦略的、政治的つながりを維持しており、秩序国家主権の優先を強調する多極的世界の優勢志向を含め、利害が一致している。
このおかげで、欧米の権力中枢は、何十年も(他の多くの国々とともに)シリアをこの軌道から引き離そうとしてきた。オスマン帝国の崩壊とともに、分裂した中東は、ヨーロッパ独立を求める民族主義者の蜂起によって飲み込まれるまで、最初は植民地主義者連中に支配されていた。自分たちが切った植民地とのつながりを、切れたままにしておきたいと願う人々は、ソ連の支援を求め、どんなことをしても権力の座につこうと狙う連中は、概して、欧米の支援を求めたのだ。
2011年の紛争は、シリアにとって最初のものではない。オスマン帝国崩壊以来、イギリス帝国が生み出し、育成したムスリム同胞団は、70年代末と80年代始め、現在のバッシャール・アル・アサド・シリア大統領の父親で、当時のシリア大統領ハフィーズ・アル-アサドを打倒しようとした失敗した企てでも支援されていた。この紛争に参加した武装過激派は、その後の取り締まり強化で散り散りとなり、ムスリム同胞団の多くのメンバーが、アルカイダと呼ばれる新たなアメリカ-サウジアラビアの組織を形成した。同胞団と、アルカイダが、それ以来、現在に到るまで、独立した中東の運命の後を追い続け、阻止しようとつとめることになる。
シリアの戦争には“内戦的”なものは皆無だ。
この文脈で、シリアの最近の紛争は、この広範な闘争の一環であり、決して、力の真空の中で展開している、紛争がはじまった後、始めて外部権益組織が引き入れられた“内戦”ではないことがはっきりとわかる。
2011年以来ずっと、ムスリム同胞団と、それから派生したアルカイダが存在しており、そのせいだと説明されてきた。2011年末には、アルカイダのシリア支部(ヌスラ戦線)が、他のいわゆる反政府集団を小さく見せる、全国規模の作戦を遂行することになる。しかも彼等がここまで大成功したのは、彼等がシリア国境内で見つけた資源と支援のおかげではなく、国境外から、彼等へと流れ込む膨大な資源と支援のおかげだ。
サウジアラビアは、シリアで活動している過激派集団の多くに、当初から、あからさまに武器を供与し、資金提供し、政治的支援をしている。実際、最近、アルカイダそのものの同盟者を含む、こうした集団の多くが、サウジアラビアのスポンサーと連中の共同事業の将来を議論すべく、リヤドに集まった。
ヌスラ戦線とともに、自ら任じる「イスラム国」(IS)がある。ISは、シリア紛争そのものと同様、欧米マスコミによって、できる限り長期間、どこからともなく生じたものとして描かれてきた。連中の軍事的、政治的な強さの根源は、他のことでは全知の欧米諜報機関にとって、謎のままだった。ロシアが紛争への関与を強化して。ロシア戦闘機が、トルコ領から出入りし、ISに向かう車列に猛攻撃を加え始めると、ヒントがあらわれだし、謎はとうとう解決した。ISは、シリアで活動している他の全ての過激派集団と同様、世界中から送り込まれる、気前良く、果てしのない大量の兵器、装備、現金や戦士の受け手だったのだ。
シリア紛争は、外国権益中枢によって、シリア国民の未来のためでなく、彼等を作り出した外国の世界秩序に、より都合良く調和するシリアにするべく、断続的に戦闘をしてきた、何十年も前に生み出された諸組織によって生じたのだ。紛争は、シリア国民自身からではなく、リヤド、アンカラ、ロンドン、パリ、ブリュッセルや、ワシントンにある、外国の特別権益集団の中枢から送られる兵器、現金、支援、更に戦士に到るまでの奔流に支えられてきたのだ。
ありもしない内戦で、どのように和解するのだろう?
もしシリア紛争が、何十年も (シリア内外で)外交政策を実施するための道具として利用してきた過激派集団をあおってきた外国権益集団によって生み出されて、内戦でなく、本質的に代理侵略となっているのであれば、一体どうすれば“和解”が実現できるだろう?
和解するために、シリア政府は一体誰と交渉すべきだろう? ダマスカスと戦っているヌスラ戦線や、ISなどの過激派を明らかに支配している幹部と交渉すべきなのだろうか? それとも、シリア政府は、紛争を永続化させる上で、傑出した要因であり続けてきた連中、リヤド、アンカラ、ロンドン、パリ、ブリュッセルやワシントン、こうした過激派集団の中でも最も過激な連中の支援に関与しているらしき全員と交渉すべきなのだろうか?
もし、ダマスカスが、こうした外国の首都の政治指導者連中と交渉するようなことになれば、ダマスカスは、“内戦”を、それとも、これら外国勢力と戦っている戦争を、終わらせることになるのだろうか? 世界の舞台では、これら外国首都は完全に過激派の肩を持っているのは明らかで、誰も驚きはしないが、これらの過激派連中が、まさに、こうした海外の首都が望んでいることを望んでいるように見える。
シリアが実際に戦っているのは一体どのような紛争なのかに関し正直になることが、それを終わらせるための本当の解決策を見いだす第一歩だ。欧米は、これは“内戦”だと主張し続けている。これにより連中が、紛争の結果と、結論が出た時点で、シリアがいあわせることになる政治的状況に影響を与えようとし続けることが可能になる。シリア政府は、あらゆる正統性を失ったと主張することで、欧米はこの文脈で立場を強化できるのだ。
外国権益枢軸が、シリア政府に対して隊列を組ませた武装過激派集団に対して、立ち上がり、戦っている事実を根拠に、シリア政府から正統性を剥奪しようという企ては、非常に危険で、受け入れがたい前例となろう。もし“シリア・モデル”が成功すれば、次は自国の番であることを、他の国々が理解しているがゆえに、この戦いでシリアの同盟国が増えているのも不思議ではない。
シリアで継続中の紛争は、ダマスカスに対する外国による攻撃の結果であることを認めることで、解決は非常に単純になるだろう。解決策は、国連あるいは戦場で、シリアを狙う暴力に油を注ぐ国々に対して措置を講じながら、ダマスカスが国境内で秩序を回復するのを認めることだ。おそらく、この解決策の明晰さこそが、この紛争の背後にいる連中が、これを内戦として描き出そうと必死になっている理由なのだ。
2011年以来、シリア“内戦”の意味を理解してようとしてきたが、うまく行かなかった人々にとって、説明は単純だ、それは内戦でなく、内戦であったことなど決してなかったのだ。そもそもの始めから(あるいは、そもそも始まる前から)代理紛争なのだと理解することで、理解が明晰となり、明らかな解決策は一体何かを理解する上で、計り知れないほどの助けになるだろうが、それも、人々が、この理解に至った場合に限られる。
Ulson Gunnarは、ニューヨークを本拠とする地政学専門家で、作家で、特にオンライン誌“New Eastern Outlook”に寄稿している。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2015/12/28/syria-its-not-a-civil-war-and-it-never-was/
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