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ロシア・モスクワ郊外で、軍事に関するフォーラムの開幕式典で演説するウラジーミル・プーチン大統領(2015年6月16日撮影)〔AFPBB News〕
にわかに危険度の増す米ロ核戦争、発端は間違い 先端技術でなくなり、二線級に任されている核管理
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45679
2016.1.1 堀田 佳男 JBpress
米国とロシアによる偶発的な核戦争の可能性が捨てきれない――。
年末になって、とんでもない言説が核兵器の米専門家から出されている。米ロによる冷戦時代が終わってからすでに25年以上が経っている。それなのに、なぜいま両大国による核戦争というフレーズが使われるのか。
しかも「可能性はある」と聞き捨てならない表現である。言説は偏執的な軍事専門家から出されたものではなく、著名な米大学の研究者によるものである。
1人はマサチューセッツ工科大学(MIT)で物理学と国際安全保障問題を研究するセオドア・ポストル教授だ。
■冷戦時より高い危険度
原子物理学の専門家で、アルゴン国立研究所や国防総省(ペンタゴン)での勤務経験もあるミサイル防衛(MD)問題の第一人者である。筆者も以前、MITの研究室でインタビューしたことがある。
もう1人はプリンストン大学にある世界安全保障研究所のブルース・ブレア所長。
米空軍で大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射管理を担当していた経験もある研究者で、米ロの安全保障問題の専門家だ。同所長はウクライナ紛争以降、ロシアが核兵器への依存度を高めており、冷戦中にも見られなかった核兵器による威嚇を注視している。
両氏が米ロによる核戦争の可能性は捨てきれないと発言しているのだ。
ブレア所長は「冷戦時代よりも今の方が危険」とさえ言う。核兵器管理の現状を把握している両氏だけに、現状を煽っているわけではない。
むしろ、むやみに危機感を増幅させるべきではないとの立場だ。しかし、政治判断や人為的なミスによって核戦争に発展する可能性があると警鐘を鳴らしている。
ポストル教授は米メディアとのインタビューで、米ロの判断次第では危機的な状況に陥ることもあると述べている。
「両国は核の抑止力を十分過ぎるほど理解しています。それでも核戦争につながる可能性はあるのです。その1つが内的な要因です。両国のトップに届く情報が不正確だと、危険度の高い政治判断が下される場合があります。情報はいつも正確とは限りませんから」
それだけではない。もっと深刻な問題は核弾頭を管理する優秀な人材が不足していることだという。
冷戦時代に核開発や管理をしていた専門家の多くは退職の年代に達している。さらに旧ソ連が瓦解した時点で、核戦争というものが過去の幻想のような存在になり、優秀な若者は核開発や管理の分野に興味を示さなくなった。
■古いコンピューターで核を管理
ポストル教授はそこに大きな問題が潜んでいると指摘する。
「冷戦が終わったことで、米国の核兵器研究は大きな転機を迎えたのです。かつては時代の先端を行く学問でしたが、いまや有能な学生は目を向けない分野になりました。同分野の若い研究者たちから強い学究的な意欲を感じることは稀ですし、能力という点からも疑問符がつきます」
さらにペンタゴン内で、核弾頭を管理するシステムが近代化されていないという。
核兵器の管理は重視されず、多額の予算も割かれないため、古いコンピューターがそのまま使われている。いくつかのミスが重なることで、偶発的に核ミサイルが発射されることが起こりうるというのだ。
ブルース・ブレア所長も人為的なミスによる事故を憂慮する。特にウラジーミル・プーチン大統領が核兵器への依存度を強めている点に着目している。
特にウクライナ紛争以降、米国を含めた北太平洋条約機構(NATO)とロシア軍との軍事力の差が明らかになり、プーチン大統領は通常兵器では敵わないと判断するやいなや、核兵器を警戒態勢の中に組み込んできたという。
軍事演習の中に核戦力を加えたほどで、ロシア政府は今後5年で地上配備型の核弾頭搭載弾道ミサイルを一新すると発表した。
ブレア所長はさらに危険な点を米「ポリティコ」誌で指摘している。
「信じられないかもしれませんが、核ミサイル発射の決定から実行までの時間が冷戦時代よりも格段に短縮されています。しかも、ロシア軍の核ミサイル担当司令官の命令だけで核ミサイルを発射できるのです。リモートコントロールされたミサイルを発射するのに、今や20秒しかかかりません」
冷戦時代であれば、核ミサイルを発射するためにはいくつものロックを解除する必要があった。だがミサイル発射は容易に、短時間で進められる。同教授は1つのシミュレーションを紹介する。
「仮想敵国が米国に向けてミサイルを発射したという警告(不正確なものも含む)があると、米軍は3分間での状況分析を迫られます。本物のミサイルと判断されると、米大統領は30秒間で内容説明を受け、直後に政治判断を迫られます。時間にすると3分から6分。複数の選択肢が与えられ、その中から選ばなくはいけません」
■もしどこかの国が発射ボタンを押せば・・・
実は不正確なミサイル発射の警告は頻繁にレーダーで察知されている。これまではすべてニセ警告だったが、人為的ミスや事故により、本物の核ミサイルが他国に発射される可能性は捨てきれない。
最前線を知る2人の専門家が述べるのだから現実味がある。ポステル教授は「仮に」という条件をつけたうえで、米ロ両国どちらかが核兵器発射のボタンを押してしまうと、約30分で両国は破滅的な結果を招くと言う。
同教授は日本の立場についても言及する。
「核兵器はどの国が所有するかで大きく違ってきます。もし私が日本人ならば核兵器は所有しません。日本は今でも米国の『核の傘』の下にあるため、必要ないからです。もし核武装をしてしまうと、中国の核兵器の標的になるばかりか、韓国を刺激して東アジアの安全保障バランスが崩れてしまいます」
オバマ大統領は2009年4月、チェコのプラハで核兵器廃絶宣言をした。その宣言が起因して同大統領はノーベル平和賞を受賞したが、ロシアとの戦略兵器削減交渉(新START)は2011年2月に発効したものの、新たな削減交渉は停滞したままだ。
冷戦が終わったことで、多くの方は核戦争の危険は去ったと思われているかもしれない。だが、実際は目に見えないところで核ミサイル発射のスイッチが押される危険性があることだけは心に留めておくべきだろう。
2016年は福島の原発事故が起きて5年目を迎える。原発事故だけでなく、核ミサイルの人為的なミスが起こらないことを祈りたい。
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