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(回答先: 「日本の武器輸出は悪」という大いなる勘違い 武器を平和と安全の確立に貢献させるのが国際社会の英知 投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 12 日 11:40:53)
「人類の知性」が抱える「3つの病」とは何か?
2015年5月11日(月) 田坂 広志
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150507/280772/?ST=top
世界中に衝撃を与えた一冊の本
田坂先生は、昨年出版された著書、『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書)において、これからの時代には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「7つのレベルの知性」を垂直統合した「スーパージェネラリスト」が求められると言われています。
また、今月19日に出版される新著、『人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」』(同)においては、その「知性の垂直統合」のために必要な「多重人格のマネジメント」について語られています。
この連載では、ここまで、「7つのレベルの知性」の垂直統合と、「多重人格のマネジメント」について、その要点を伺ってきました。今回は、「人類の知性」について、思想的な視点から話を伺えるそうですが、いよいよ、先生の「思想家モード」の人格での話が伺えるのですね……(笑)。
田坂:「思想家モード」ですか……(笑)。今回は、それほど大袈裟ではありませんが、少し真面目なモードで、話をしてみたいと思います。
実は、今回の連載の「知性」というテーマに、私自身、深い興味を抱いたのは、若き日に出会った一冊の本なのですね。
我々の人生は、「人との出会い」によって決まるとも言われますが、ときに、「本との出会い」によって決まるのですね……。
その意味で、私の人生を変えた、一冊の本があるのです。
ほう、それは、どのような本でしょうか?
田坂:それは、40年余り前に発表され、世界中に衝撃を与えた、『成長の限界』という本です。
これは、当時の世界的なシンクタンク「ローマ・クラブ」が発表した報告書なのですが、当時、MIT教授であったデニス・メドウズ博士らによって予見された「人類の未来」に関する報告書です。
「人類の未来」に関する報告書ですか……?
田坂:そうです。そして、この報告書が予見した「人類の未来」は、実に衝撃的なものだったのですね。
この報告書には、次のように書かれていました。
人類が、このまま成長を続けていけば、人口爆発、食糧危機、資源枯渇、エネルギー不足、環境破壊などの「地球規模の諸問題」によって、100年以内に、経済の成長は限界に達し、突然の制御不能な人口減少が生じるだろう。
「100年以内に、経済の成長が限界に達する」ですか……。それは、たしかに衝撃的な予測ですね……。
田坂:そうですね。この報告書は、当時、世界中に大きな衝撃を与えたのですが、実は、この報告書を読んだことが、一人の若者に、原子力工学の道を歩ませたのですね。
それが、大学時代、田坂先生が原子力工学の道を選んだ理由ですね……。
田坂:そうです。この報告書が述べていたのは、将来、人類は、「5つの原因」によって経済成長の限界に直面するということでした。5つとは、人口爆発、食糧危機、資源枯渇、エネルギー不足、環境破壊の5つです。
そして、この報告書を読んだ結果、環境問題を生み出すことなくエネルギー危機を解決するために、私は、「原子力の環境問題」を大学院での研究テーマに選んだのですね。
それは、まだ、原子力の未来がバラ色に見えていた時代ですね……。
田坂:そうですね。私が、この「原子力の環境問題」を研究テーマに選んだ1974年頃は、まだ、スリーマイル事故も、チェルノブイリ事故も、フクシマ事故も無かった時代です。まだ、多くの人々が、原子力に希望を見出していた時代でしたね……。
40年間に何も解決しなかった「地球規模の諸問題」
田坂:話を戻しましょう。あの『成長の限界』という報告書が発表された1972年から、すでに多くの歳月を重ね、あの当時、20歳を迎えたばかりであった一人の青年が、いま、60歳を超え、思うのですね。
あの報告書が発表されてから40年余り。
我々は、あの報告書が予見した諸問題を、解決することができたのだろうか?
我々は、諸問題の解決を妨げるシステムを、変革することができたのだろうか?
そう思うとき、残念ながら、一つの現実が、目の前にあることに気がつきます。
我々は、40年という歳月の間に、「地球規模の諸問題」を、何一つ解決できなかった。
いや、そればかりか、「地球温暖化」の問題に象徴されるように、問題は、ますます、その深刻さを増している。
そのことに気がつくのですね……。
たしかに、何も変わっていないですね……。
田坂:そうですね……。では、なぜ、人類は、20世紀に、これらの諸問題を解決できなかったのでしょうか?
もとより、20世紀を生きた人々が、これらの諸問題の解決に取り組まなかったわけではないのですね。
問題を解決するための「技術開発」
問題を解決するための「制度改革」
いずれも、20世紀を生きた人々は、相応の努力を尽くしてきたと思うのです。
では、何が問題なのでしょうか?
田坂:それが、今回のテーマ「人類の知性」と深く関わる問題なのですね。
端的に申し上げましょう。
「知の変革」
我々人類社会において、そのことが進んでいないのですね。
「知の変革」ですか……?
田坂:そうです。すなわち、「技術の在り方」や「制度の在り方」を超えて、我々人類の「知の在り方」そのものが、大きく変わらなければならないのですね。しかし、この40年の歳月を重ねても、その「知の変革」が進んでいないのです。
そこにこそ、「問題の解決」と「システムの変革」が実現できない、最も根深い原因があったのではないかと言われるのですね?
田坂:その通りです。そして、その思いから、22年前に出版した著書が、『生命論パラダイムの時代』であり、18年前に出版した著書が、『複雑系の知』だったのですね。
田坂先生の著書の中では、最も思想的なジャンルの著書ですね。
では、伺いますが、21世紀、我々人類の「知の在り方」は、どう変わらなければならないのでしょうか?
「20世紀の知性」が抱えていた「3つの病」
田坂:これも端的に申し上げましょう。
「分離の病」
我々は、まず、その「病」を克服していかなければならないのですね。
「分離の病」ですか……?
田坂:そうです。「分離の病」です。
すなわち、20世紀の人類の「知の在り方」は、「3つの分離の病」を抱えていたのですね。
第1の病は、「知と知の分離」と呼ぶべきものです。
言葉を換えれば、「専門主義」と呼ばれる病です。
本来、一つの「全体性」を持ったものであるべき知の世界が、細かい「専門領域」に分断されてしまい、どれほど「学際研究」や「総合的アプローチ」という言葉を掲げてみても、「専門意識」の垣根に阻まれ、互いの対話と協働が進まないという病です。
世の中には、「総合研究所」や「学際的研究」という言葉は、数多く目につくのですが……。
田坂:たしかに「総合研究」や「学際研究」という言葉を掲げた研究組織は、数多く存在するのですが、実際には、様々な専門分野の研究者が、同じ組織に所属し、同じビルの中で働いているだけにとどまり、互いの「境界」を超えた研究が行われている例は、まだ、極めて少ないのが実態ですね。
この点で、「学際研究」の実践的なスタイルを真に模索し、確立しているのは、米国のサンタフェ研究所ですね。
例の「複雑系研究」のセンターですね。もともと、「複雑系研究」は、まさに「学際的」な研究だからですね。
では、第2の「分離の病」とは?
行動とは、最も洗練された認識のスタイル
田坂:第2の病は、「知と行の分離」と呼ぶべきものです。
言葉を換えれば、「分業主義」と呼ばれる病です。
「知と行の分離」ですか……。
田坂:そうです。これは、「理論」を担う人間と「実践」を担う人間が分業してしまうという病です。
例えば、政策立案者と行政職員、経営学者と経営者。社会評論家と社会活動家など、それぞれ「理論を考える人間」と「実践する人間」が分離してしまい、一人の人間が「理論」と「実践」を統合することができない状況に陥ってしまい、別の人間が分業した場合には、互いに密接に協力・協働することができない状況に陥ってしまうという病です。
その病に罹ると、何か起こるのでしょうか?
田坂:一つは、「実践」の検証によって「理論」を鍛えることができなくなります。逆に言えば、「理論」とは「実践」の検証によってのみ、鍛えられていくものなのですが、「理論家」と呼ばれる人間は、しばしば、無意識に、その「鍛錬」を避ける傾向があります。
たしかに、「現実」から遊離し、ただ「理論」を「理論」として扱うことのみに安住する「理論家」がいますね……(苦笑)。
田坂:もう一つは、「行動」を通じて「認識」を深めていくことができなくなります。言葉を換えれば、「行動」することによって、言葉で表せない「暗黙知」を身につけることができるのですが、「知と行の分離」に陥ると、「暗黙知」のレベルの認識が、極めて貧弱になってしまうのですね。
その問題を避けるために、日本企業などでは、「現場体験」を重視してきたのですね。
田坂:そうです。日本型経営においては、「体で掴め」「呼吸で覚えろ」「身につけろ」といった言葉がしばしば語られますが、その理由は、まさに、その「暗黙知」を重視しているからなのですね。
その意味で、「行動とは、最も洗練された認識のスタイルである」ということを、我々は、深く理解すべきでしょう。
なるほど、「行動とは、最も洗練された認識のスタイル」ですか……。
では、第3の病とは?
「専門主義」「分業主義」、そして、「客観主義」の落し穴
田坂:第3の病は、「知と情の分離」と呼ぶべきものです。
言葉を換えれば、「客観主義」と呼ばれる病です。
これは、企業や市場、社会や歴史についての「理論」を客観的な視点で語る人間が、その企業や市場、社会や歴史の「現場」において、かけがえの無い人生を背負い、喜怒哀楽の瑞々しい感情を持って生きる生身の人間がいることを忘れてしまうという病ですね。
かつて、ベトナム戦争において、当時のマクナマラ国防長官が、「Killing Ratio」という言葉を使い、「単位投入弾薬当たりの殺傷率」を計算し、オペレーションズ・リサーチの手法を用いて、それを最大化する戦略を検討しましたが、これなども、「知と情の分離」の典型的なものです。
ただし、マクナマラは、後に、こうした自分の姿勢を深く反省していますが……。
ケネディ政権の国防長官ですね……。彼は、あの「キューバ危機」のときにも、全面核戦争の淵で、ケネディを支えた人物ですね。
田坂:そうですね。その辺りのことは、映画『Thirteen Days』でも、生々しく描かれていますね。
ただ、そうした「知と情の分離」の病は、国際政治だけでなく、日々の企業活動や行政活動においても、見られますね……。
田坂:その通りです。この病の結果、「社員切り捨ての経営戦略論」や「消費者軽視の市場戦略論」、「住民不在の政策論」などが生まれてくるのですね。
なるほど……。「知と知の分離」「知と行の分離」「知と情の分離」、その3つが、20世紀の「知の在り方」が冒されていた「分離の病」なのですね。
では、これからの21世紀、我々は、いかにして、この「3つの分離の病」を克服していくことができるのでしょうか?
心に刻むべき「ガンジーの言葉」
田坂:まさに、その一つの方法として、私は、昨年、『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』という本を出版したのであり、今回の連載でも、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「7つのレベルの知性」を垂直統合した人材が、この社会において輩出することの重要性を述べてきたのですね。
やはり、「スーパージェネラリスト」という人材が育つことが、一つの解決策だと言われるのですね?
田坂:そうです。もし、我々が、21世紀の人類が「3つの分離の病」を克服していくべきであると思うならば、まず、我々自身が、そうした「スーパージェネラリスト」への成長の道を歩むべきでしょう。
それは、なぜ?
田坂:かつて、ガンジーが、大切な言葉を遺しています。
あなたがこの世で見たいと願う変化に、
あなた自身が、なりなさい。
その通りなのですね。もし、我々が、「21世紀の知の在り方」を論じるのであれば、まず、我々自身が、その「21世紀の知の在り方」を実践し、体現する人間となるべきなのです。
そして、その一つの人間像が、今回の連載で語ってきた「スーパージェネラリスト」です。「知と知」を結びつけ、「知と行」を合一させ、「知と情」を一つにした人間像、すなわち、「7つのレベルの知性」を垂直統合した人間像をめざし、我々自身が、成長していかなければならないのですね。
なるほど、先生が、今回の連載において、いかにすれば、その「スーパージェネラリスト」へと成長していけるかを語って来られた背景には、そうした「人類の知の在り方」という思想やビジョンがあったのですね。
田坂:そうですね。しかし、私自身、その「スーパージェネラリスト」への成長の「道半ば」の人間です。いまだ、修業中の人間なのですね。
ただ、20世紀に、我々人類が解決できなかった諸問題、積み残された諸問題を前に、これからも人類の「知の在り方」を問い続けていきたいと思いますが、同時に、一人の人間として、この「スーパージェネラリスト」への成長の道を、歩み続けていきたいと思っています。
それは、インタビュアーである私への問いかけでもありますね……。
しかし、いつもは、耳の痛い話に聞こえることが、今回は、なぜか、素直に心に入ってきます……(笑)。今回は先生が「思想家モード」で語られているからでしょうか……。
田坂:そうかもしれませんね。では、最終回となる次回も、その「思想家モード」で語りたいと思います(笑)。
そうでしたね。次回は、最終回でしたね……。では、最終回は、どのようなテーマでしょうか?
田坂:最終回は、
「21世紀の知性」とは、いかなる知性か
をテーマとして話をしたいと思います。
では、次回、いよいよ最終回、よろしくお願いします。
知性を磨く スーパージェネラリストへの成長戦略
いま、ビジネスプロフェッショナルに求められる「知性」とは何か? 21世紀、企業や組織、政府や自治体、国家や社会が抱えている多くの難題を前に、ビジネスプロフェッショナルに求められているのは、何よりも、「目の前の現実を変革する知の力」、すなわち「変革の知性」であろう。では、「変革の知性」とは何か? それは、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「7つのレベルの知性」を垂直統合した「スーパージェネラリストの知性」に他ならない。
この連載においては、
(1)「知性」とは、そもそも、いかなる力か?
(2)「7つの知性」とは、それぞれ、いかなる知性か?
(3)「7つの知性」を、それぞれ、いかにして磨いていくか?
(4)「7つの知性」を、いかにして垂直統合していくか?
(5)「7つの知性」を垂直統合した「スーパージェネラリスト」とは、いかなる人材か?
(6)「スーパージェネラリスト」が身につけるべき「多重人格のマネジメント」とは、いかなる技法か?
(7)「多重人格のマネジメント」によって、なぜ、「多様な才能」が開花するのか?
といったテーマを中心に、田坂教授に、縦横に語ってもらう。
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