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「日本の武器輸出は悪」という大いなる勘違い 武器を平和と安全の確立に貢献させるのが国際社会の英知
2015.5.12(火) 田中 伸昌
平和愛するも 「独裁者に武器販売」、スウェーデンの矛盾
スウェーデン・リンシェーピングにあるサーブのグリペン戦闘機製造工場で製造されるグリペン戦闘機(2014年5月5日撮影)〔AFPBB News〕
我が国は昭和51(1976)年に実質的に全面的な武器輸出禁止政策を採用して以来、米国との間における限定された武器および武器技術の輸出を除き、武器輸出を実施してこなかった。
それが平成26(2014)年4月1日の政府による「防衛装備移転三原則」の策定により、新たに定めた3つの原則を満たせば、どの国へも武器を輸出することが可能となった。これによって世界における我が国の地位にふさわしい国際社会に対する貢献ができる体制が整えられるとともに、高度な技術や広範な市場へのアクセスが可能となった。
しかしながら、政策変更後まだ日が浅いとはいえ、現状ではこの政策変更が生かされるような成果がいまだ表れてきていない。
これは、約40年間にわたる実質的な武器輸出の空白期間を経て再開される武器輸出に直面して、武器輸出を実施するための体制がいまだ十分に整えられていないということが主たる要因であろう。
そのほかに、国民の間に「武器輸出イコール死の商人」というイメージ並びに「武器輸出をしないことは平和国家の証し」という極めてナイーブなイメージが浸透していることが、その根底にあるからだと思われる。
“死の商人”とは、金儲けだけが目的で互いに敵対する双方に武器を売る商人に対する蔑称である。
今日、国際社会は、武器輸出がもたらす弊害を排除あるいは局限し、武器輸出による平和の実現あるいは平和への貢献という正の部分を拡大させるため英知を働かせて様々な仕組みや制度を確立しており、先進国をはじめとして多くの国がこの仕組みや制度に加入している。
従って、“武器輸出は悪”であり、“武器輸出イコール死の商人”というイメージでとらえることははなはだしい間違いである。
“武器輸出をしないことは平和国家の証し”は正しいか?
人類の歴史は戦争の歴史であり、人類にとって武力(軍事力、国境警備隊、沿岸警備隊、警察など)なき平和の達成は理想でしかない。武力が抑止力として働き平和が保たれ、秩序が維持される。
平和とは戦争や紛争のない状態のことであり、国家間あるいは集団と国家間あるいは集団間どうしの軍事力の均衡によって戦争や紛争が抑止され、その結果として平和がもたらされるのが国際社会の現状である。
世界の平和はバランスオブパワーの上に成り立っており、力の差が生じれば力による現状変更や侵略が行われるのが現実の世界であり、国家の生存にとって武力は欠くべからざる要件となっている。
国家は警察、軍などの「暴力装置」を独占的に所有し、国家存立のために必要に応じこれを使用することが許される唯一無二の存在である。冷戦後においてもバランスオブパワーの崩れによる抑止力の低下が、戦争や紛争を引き起こした例は枚挙にいとまがない。
最近においてもロシアによるクリミヤの併合、イスラム過激派ゲリラ集団によるシリアやイラクにおける勢力拡大、さらには南シナ海における中国の圧倒的な軍事力による現状の国境変更など、いずれも軍事力の差があるために抑止力が機能しなかった結果生じているものである。
このようなアナーキーな国際社会にあって、世界には自国を防衛するための防衛力を整備するにあたって自国で武器を生産することができない国がある。そういう国は外国から武器を購入しなければならず、外国からの支援を仰がなければならない国がある。
戦後間もない我が国は、朝鮮戦争を眼前にして我が国を防衛し平和を維持するために、警察予備隊を発足させこれを自衛隊へと発展させていった。この時武器を提供してくれたのは同盟国である米国であった。
我が国はその後引き続き米国による武器や武器技術の支援を受けて、防衛力の強化を図り今日に至っている。すなわち、当時国内に防衛装備品を生産する能力がなかったために、自衛のための防衛力整備を米国からの武器および武器技術の提供に依存したわけである。
今日の国際社会の安全保障環境は、当時の冷戦下の状況とは異なり、世界の平和や安全を脅かす要因は複雑かつ多様化し、予測が困難な環境にある。
このような環境下にあって平和を希求しそれを実現するためには、自衛能力を備えることは必定であり、自ら自衛能力、すなわち武器を製造できない国は外国から武器を購入しなければならず、かつての我が国と同じような状況にある国が世界には存在する。
我が国が武器輸出をしないということは、我が国は外国からの武器輸出による支援の恩恵を受けて今日の防衛体制を整備しておきながら、同じような境遇にある外国の防衛力整備に対する武器支援は実施しないというのは、はなはだしい論理矛盾であり、一国平和主義の極みである。
平和国家としてのイメージが強いスイスとスウェーデンの例を見てみよう。
永世中立国スイスは、その中立を守るために国民皆兵を国是とし、徴兵制を敷き、有事には正規軍のほかに予備役を招集するほか一般市民が民兵として国土防衛に参加する体制を整えるとともに、険峻な地形を利用した軍事施設を随所に作り国土の要塞化を図るなど、国土防衛のために万全の備えを行っている。
また、軍隊が装備する兵器は国土国情に適したものを国内企業で開発・生産しており、長い伝統の上に育まれた防衛産業が生産する武器は、国内市場のみならず国際競争力にも優れ、今日の世界における武器輸出額国別ランキングにおいて、スイスは世界で第14位(ストックホルム国際平和研究所、2012年)に位置する武器輸出国である。
一方、スウェーデンは軍事非同盟中立政策をおよそ200年にわたって維持し今日に至っている。戦闘機から船舶、重火器などに至るまで多種多様な装備品を国内で開発・生産し、軍隊で装備してきた。
冷戦終結により安全保障環境が著しく変化したが、軍事非同盟政策は堅持しつつ自存自立による中立政策を脱して、多国間の安全保障・経済・産業等の協力体制を確立し、諸外国や国際機関との連帯により国の安全を保障する体制へと移行した。
高度な技術能力・生産能力を持つ防衛産業は、吸収合併による多国籍化あるいは国際共同開発・生産などに活路を見出して発展を遂げており、自国軍の装備のみならず、武器輸出も積極的に実施しており、世界の武器輸出額ランキングにおいて第12位(ストックホルム国際平和研究所、2012年)を占める武器輸出国である。
この2か国の事例は、先進国として自らの備えをすることはもちろんのこと、他国に対する防衛力整備の支援を通じて、世界平和の構築・安全の増進に寄与するという積極的平和主義の実践を如実に示すものである。
国際社会における武器輸出管理
今日、国際社会は武器輸出管理をどのように行っているであろうか?
冷戦終結後、宗教、人種、民族、領土等に関する問題等、多様な問題が世界で顕在化するとともに、これらに起因する戦争や紛争あるいはテロなどが多発する状況となった。同時に、科学技術の急速な進展に伴って武器の高性能化・複雑化および世界的な平準化が進み、戦いの手段や方法に多様な選択肢を与えることとなった。
さらに経済や産業のグローバル化の進展により、開発・生産拠点の多国籍化や武器市場のグローバル化が進展した。テロや紛争、戦争の手段として使用されるのも武器であるが、これらを制圧しあるいは抑止する手段として使用されるのも武器である。
このような環境にあって、武器の性能や取得に対するニーズは飛躍的に増大している。これに伴って武器の流通が増大するとともに武器の取得機会も増大している。
そのため国際社会は、国際の平和を維持し、安全を増進するために武器の使用、武器の輸出入および移譲、武器の製造などを規制するための施策、そしてそれら施策の実行の透明性を確保しモニターするための施策を各種講じてきた。
現在、世界の多くの国は、次に示すように、国連が定めた武器の製造・貯蔵・移譲などを管理・規制する各種国際条約を締約するとともに、大量破壊兵器や通常兵器の拡散防止の観点から制定された各種国際レジームなどに加入し、国際の平和の維持と安全の増進に寄与せんとしている。
武器輸出に関連する国際条約
(1)核兵器不拡散条約
核兵器保有国の増加すなわち核兵器の拡散を防止することを目的とし、1970年に発効した。締約国は2010年6月現在190か国(日本は1976年に批准)。核不拡散のほか、核軍縮および原子力の平和利用についても規定している。
(2)生物兵器禁止条約
生物および化学兵器の戦争における使用を禁止した1925年のジュネーブ議定書を受け、生物兵器の開発、生産、貯蔵等を禁止するとともにすでに保有されている生物兵器を廃棄することを目的として作成され、1975年3月に発効した。2011年現在締約国は172か国(日本は1982年に批准した)。
(3)化学兵器禁止条約
1925年のジュネーブ議定書で化学兵器の使用は禁止されていたが、開発、生産、貯蔵は禁止されていなかった。この不備を是正するため化学兵器の開発、生産、保有などを包括的に禁止し、同時にロシアや米国などが保有している化学兵器を一定期間内(原則10年以内)に全廃することを定めたものである。
この条約の実施に当たる国際機関として、化学兵器禁止機関が設けられている。この条約は1997年に発効し、2013年10月現在の締約国数は190か国である。日本は1995年に批准している。
(4)対人地雷禁止条約
1980年に採択された「特定通常兵器使用禁止制限条約」の地雷等に関する議定書を1996年に強化改訂して、「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」として採択し、1999年3月に発効した。
2014年8月現在162か国が批准している。日本は1998年9月に批准。なお、中国、ロシア、米国、インド、韓国など40か国は批准していない。
(5)武器貿易条約
通常兵器が大量殺害やテロに使用されることを予防し根絶することを目的に、通常兵器の輸入、輸出および移譲に関する国際基準を設定して規制しようとするものである。日本は他の原提案国6か国とともに起草に努力した。起草時点で4項目の移譲の判断基準として、以下の4項目を定めた。
1.武器の移譲が国家の承認の下に行われること
2.国は国連憲章、安保理決議、条約及び国際人道法、これらに反する武器の移譲を認可しないこと
3.国連憲章・慣習法違反、人権法の侵害、国際人道法の違反、ジェノサイドまたは人道に対する罪等のために武器が使用される場合またはその恐れがある場合には、国は当該武器の移譲を認可しないこと
4.国は武器の移譲を許可する前に受領国の不拡散・武器管理・軍縮における透明性、責任遵守等の過去の記録、武器使用の蓋然性などの要素を考慮すること
さらに条約の実効性を担保するために2つの原則として、以下を定めた。
1.国際登録機関を設置し、各締約国は国際的な武器移譲に関する年次報告を提出し、同機関が年次報告を発表する
2.輸出入、ブローカー行為、武器生産能力の移転、中継・積み替え、これらを管理するメカニズムについて共通基準を設け、条約の原則の実施をモニターする
なお、これらについて継続的に検討を加えることとしている。これらを内容とする「武器貿易条約」が2013年4月の国連総会において採択され、2014年9月時点で締約国が53か国(署名国は121か国)となり、2014年12月に発効した。日本は2014年5月に条約を締結した。中国、ロシアは締約していない。
国際輸出管理レジーム
国際輸出管理レジームは、大量破壊兵器や通常兵器の拡散を防止する観点から、国際間の物品や技術の移転制限について多国間で取り決める安全保障貿易管理の枠組みのことであり、以下4つの枠組みがある。日本は下記のいずれにも加入している。
(1)ワッセナーアレンジメント
通常兵器およびその開発・製造・使用に転用される危険のある汎用品(軍民両用品)の規制を行う。1996年に設立され、欧米諸国をはじめ現在41か国が参加(ロシアおよび旧ソ連邦諸国は加入しているが中国は加入していない)。
(2)原子力供給国グループ
核兵器不拡散条約に基づき、核兵器開発等に転用される危険性の高い汎用品および同関連技術の規制を行う。1978年に設立され、現在48か国が参加(インド、パキスタン、イスラエルといったNPT非締約国は参加していないがロシアおよび中国は参加している)。
(3)オーストラリアグループ
オーストラリアが議長を務めていることからオーストラリアグループと呼ばれるレジームで、生物兵器及び化学兵器の開発・製造に使用し得る関連汎用品および技術の輸出管理を通じて、化学・生物兵器の拡散を防止することを目的とする。
1985年に第1回会合が開催された。2010年現在欧米諸国をはじめ40か国が参加している(ロシアおよび中国は参加していない)。
(4)ミサイル技術管理レジーム
核兵器等(核兵器および生物・化学兵器)の大量破壊兵器不拡散の観点から、大量破壊兵器の運搬手段となるミサイルおよびその開発に寄与し得る関連汎用品・技術の輸出を規制することを目的とする。欧米諸国をはじめ34か国が参加(中国は加入していない)。
その他の国際的な施策
(1)拡散に対する安全保障構想
大量破壊兵器および弾道ミサイルの拡散を阻止するために、国際法および各国国内法の範囲内で参加国が共同して取り得る移転および輸送の阻止のための措置を検討し、実践する取り組みである。
2010年12月現在、欧米諸国およびロシアをはじめ98か国が活動に参加している。日本は2003年に参加(中国は参加していない)。
欧州連合(EU)における武器輸出管理
欧州の28か国で構成される欧州連合(EU)は、EU加盟各国が武器輸出を実施するにあたり最低限守るべき基準として「EUの武器輸出に関する行動規範」(“EU Code of Conduct on Arms Export”)を1998年6月に定めた。
加盟各国はこの規範に則って国内の法体制を整備し、武器輸出を実施している。この規範で武器輸出に関する基本理念として、以下の7つを掲げている。
1.加盟国の通常兵器移転を管理し抑制する
2.加盟国間の情報交換を強化し効率性並びに透明性を高める
3.国内弾圧や侵略のために使用あるいは地域の不安定に寄与する武器輸出を禁止
4.通常兵器輸出で加盟国間の協力関係を強化
5.通常兵器の不法取引を防止
6.産業基盤の一部として防衛産業を維持・強化
7.国連憲章で認められた自衛権行使のための自衛手段を移転する権利を各国は保有していることを認識する
次いで武器輸出に当たっての具体的な判断基準として、以下の8つの項目を掲げている。
1.国際責務の尊重
2.輸入国における人権の尊重
3.輸入国における武力紛争あるいは緊張状態
4.輸入国地域の平和・安定・安全の維持
5.EU加盟国や同盟国及び友好国の安全に対する脅威
6.輸入国のテロ対処・同盟関係・国際法順守状況
7.輸入国による転用又は第三国移転の可能性
8.輸入国の安全保障にとっての必要性及び技術的・経済的受け入れ可能性
なお、EUは2008年12月にこの行動規範を強化・改定し、「武器輸出に関する共通見解」を採択した。
米国の武器輸出管理
米国は武器輸出に関する基本的な事項を1976年に制定した『武器輸出管理法』で定め、細部事項を「武器国際貿易規則」で定めている。
米国の武器輸出に対する基本的な考え方は、「法の支配による平和的手段で争いを解決する戦争のない世界の実現を目標とし、そのために軍備管理・軍縮を促進し軍拡競争を阻止する努力を続ける。しかし現実世界は理想とほど遠いため、国家防衛上の要求を支援して共同防衛を促進して安全の確保・増進を図る。そのために必要な武器輸出は実施する」(『武器輸出管理法』第1条)としている。
次いで、武器輸出は、以下の4つを挙げている。
1.国連憲章で認めている合法的な自衛態勢整備支援
2.輸入国の国内治安維持支援
3.国際協定や措置への参加に伴う支援
4.発展途上国の経済的・社会的支援、これらを目的として実施する
その際の具体的な判断基準として、は以下の7つを挙げている。
1.各種国際協定・取り決め等による規制
2.年度武器輸出総額限度額
3.軍拡競争に寄与しない
4.大量破壊兵器開発に対する懸念
5.国際テロ支援に対する懸念
6.戦争勃発又は拡大への寄与懸念
7.輸入国による最終用途確認
我が国の武器輸出管理
戦後我が国は武器輸出を実施していたが、佐藤栄作内閣による「武器輸出三原則」(昭和42年4月)の適用を厳しくした三木武夫内閣の「武器輸出に関する政府統一見解」(昭和51年2月)及び「武器輸出三原則に係る国会決議」(昭和56年3月)を経て、実質的に武器輸出を全面的に禁止してきた。
その後、米国との“武器技術の相互交流”および“防衛装備品に関する共同研究”さらに“共同開発・生産”へと武器輸出禁止政策を緩和してきたが、野田佳彦内閣に至り、「防衛装備品等の海外移転についての基準」(平成23年12月27日)を定めて、平和貢献及び国際協力に伴う案件並びに国際共同開発・生産に伴う案件については、包括的に“武器輸出三原則等”を適用しないとする例外化措置を講じることとする緩和政策を決定した。
その後、安倍晋三内閣は“武器輸出三原則等”そのものを廃して新たに「防衛装備移転三原則」を策定(平成26年4月1日)し、新たに定めた三つの原則に適合するものについては海外移転を認めるとした。
安倍内閣の定めた新しい政策の下で実施される武器輸出とはどんなものなのか、ということを考えてみる。
まず我が国は、先に述べた武器輸出に関する国際条約はすべて締結するとともに、武器輸出管理に関するレジームなどへもすべて加入し、これらを誠実に履行している。
国内法においては、「外国為替及び外国貿易法」(略称:外為法)により武器輸出を管理している。そして我が国が締結あるいは加入した武器輸出に関する国際条約及び国際レジームを履行するための規則、並びに外為法に基づく規則を定めている。
そしてこれら条約・レジーム、国内法・規則類を運用するにあたって守るべき原則として「防衛装備移転三原則」を新たに定めた。
この「防衛装備移転三原則」は、第1原則:移転を禁止する場合、第2原則:移転を認める場合、第3原則:目的外使用及び第三国移転に係る適正管理、これら3つの守るべき原則を定めている。
第1の原則は、条約及び国際約束に違反する場合及び国連安保理決議に違反する場合並びに紛争当事国に対する移転を禁止するものであり、これは世界共通の普遍的な原則である。
第2の原則は、海外移転を認める案件を次の場合に限定している。まず1つ目は、平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する海外移転の場合である。
これは国連安保理決議に基づく国際平和維持活動、国際緊急援助活動等に伴う自衛隊の装備品の当該国への移転、及び活動終了後要請があった場合の使用装備品の当該国への提供等がこれに該当する。
これらの活動は1991年のペルシャ湾掃海艇派遣以来2012年までで32件に上っている。
次に2つ目は、わが国との安全保障協力関係国との間におけるわが国の安全保障に資する海外移転であって、国際共同開発・生産に係る移転、共同訓練等の際に生じ得る物品や役務の共同訓練等の相手国との間における相互提供、武器技術の米国への提供、米国製装備品のライセンス生産による部品や役務の米国への提供、及び救難・輸送・警戒・監視・掃海に係る装備品の移転、がこれに含まれる。
さらに自衛隊を含む政府機関の海外における活動に係る装備品の一時的な輸出もこれに含まれる。
これら防衛装備品の海外移転のうち、米国製装備品のライセンス生産に係る部品や役務の米国への移転以外はすべて旧武器輸出三原則等政策下において例外化措置として海外移転を認めてきた案件である。
第3の原則は、海外移転する場合の移転先国政府としての適格条件であって、日本からの移転装備品の適正な管理が確保される場合に限り移転を認めるとするものである。
ここでは原則として目的外使用および第三国移転について我が国の事前同意を義務付けるとしている。
米国やEU諸国では、その他の適格条件として、輸入国が輸出国と同程度の秘密保全体制を整えていることとか、受け入れ装備品の維持・整備能力があること、もしくは能力を育成できる基盤があることなども挙げている。
これら原則の運用に当たって、重要な海外移転案件については、関係省庁と協議し国家安全保障会議において審議するとともに、海外移転状況について年次報告を作成し公表するとしている。
独立主権国家が自国を防衛することは当然の責務であって、これを自国のみでできない国に対しては自衛手段を提供できる国がこれを支援するというのは、提供できる国の責務であろう。
世界のどの国も国連憲章で認められた自衛権と整合性のとれた自衛手段を移転する権利を保有している。その権利を行使するかしないかは、当該国家の判断に委ねられるが、国際社会はその権利を行使する場合およびしない場合の条件を様々な規制やレジームとして定め、世界各国の協力を得てより安全で平和な世界の達成を目指している。
世界平和の維持・構築に貢献することは経済力も技術力もある先進国の責務である。
わが国は武器輸出管理に関する各種国際規約等を締結するとともに国際レジームにも加盟し、これらを誠実に履行している。
その上で、「防衛装備移転三原則」を定めてこれまでの武器輸出政策を転換して、明文化された「国家安全保障戦略」によって武器輸出に大義名分を与えるとともに、実施に当たっての明確な指針を示したことは、我が国が国際社会の安全の増進に国力にふさわしい貢献をすることを世界に向けて明確に意思表示するものであって、これまでの一国平和主義あるいは、「“武器輸出三原則等”の例外化によって武器輸出を実施する」という外国にとって分かりづらい政策から決別するものである。
今後様々な防衛装備移転プロジェクトが提案されてくると思われるが、防衛装備移転に関わる新しい体制の下において最も重要なことは、申請されてきた防衛装備移転プロジェクトに対して「防衛装備移転三原則」をいかに適用するかということである。
すなわち、第1原則である「海外移転を禁止する場合」、第2原則である「海外移転を認める場合」、第3原則である「海外移転を認める場合の付帯条件」、これらの原則のどれに該当するのかという判断がまずなされなければならない。
次いで、海外移転を認める場合、防衛装備移転の目的は、(1)わが国の安全の実現、(2)地域および国際社会の平和と安定と繁栄の確保、(3)わが国の防衛生産・技術基盤の維持・強化、ということができるが、これはまさに「国家安全保障戦略」で定義している“国益”と合致するものであり、申請されたプロジェクトは、どの目的(国益)をどの程度達成できるのかという判断が的確になされなければならない。
そしてこの判断に基づきプロジェクトに優先順位を付ける必要がある。このためには防衛・安全保障、外交、産業・経済、財政、科学技術、などそれぞれの分野の専門的な知見者から成る審議のための機構、並びにこれらを大所高所から判断する権威者から成る意思決定機構(国家安全保障会議がこれに該当しよう)が必要である。
「国家安全保障戦略」に基づき策定された「防衛装備移転三原則」は、画期的な政策決定であるが、出来上がったこの制度・枠組みをいかに運用するか、ということが極めて重要である。
運用に錯誤や滞り、遅滞などがあってはならない。もしそうなった場合、我が国の防衛・安全保障、ひいては地域や国際社会の平和と安全そして繁栄にとって少なからぬ影響を及ぼすことになる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43692
#「武器を平和と安全の確立に貢献させるのが国際社会の英知」だが、
人類の英知は、あまり当てにはならない
- 「人類の知性」が抱える「3つの病」とは何か? rei 2015/5/12 11:42:06
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