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日本の政治には「株式会社」的な論理が働いている?
効率、スピード重視?「株式会社化」する日本の政治〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151229-00000007-sasahi-pol
AERA 2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋
日本は70年前、平和国家として再出発した。その安全保障政策を大きく変える法律を、国会議員たちがこの秋に成立させた。選挙で選ばれた多数派がものごとを決める。確かに、それが民主主義だ。しかし、それだけが民主主義なのか? 近年の日本政治には、どこか「株式会社」的な論理が働いているように見える。
自民党内のハト派を代表する派閥・宏池会の会長まで務め、野党との折衝を担う国会対策畑が長かった古賀誠・元幹事長はこう苦言を呈する。
「これほど重要な法案を国会に出す前には、かつての自民党なら侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がなされたはずです。しかし、今回は党内の議論はほとんどなかった。同じ党から1人しか立候補できない小選挙区制のもとで、人事と資金を握る官邸や党執行部の力が強くなりすぎ、リーダーの独走を抑える機能が働かなくなってしまったからです。国会審議にしても、私が国対委員長ならあと一国会でも二国会でも時間をかけたでしょう」
安保法制だけではない。安倍政権のもとで荒っぽい政治手法が目立つ。沖縄県側が強く反対する米軍普天間飛行場の県内移設は、異例の「国対県の法廷闘争」に持ち込んでまで推し進める。憲法の規定にのっとって野党が10月に求めた臨時国会の召集も、安倍首相や閣僚が外交で忙しいといった理由で拒んだ。
「今は政権内部に競合相手はいないし、野党も弱い。誰かにとって代わられるかもしれない、という緊張感がない。安倍政権の立場から見れば、合理的な行動なのです」
東京工業大学の西田亮介准教授(情報社会論)はそう解説する。
とはいえ、ここにきていきなり政治の風景ががらりと変わったわけでもない。郵政民営化を断行した小泉純一郎元首相、バラ色のマニフェストを掲げて自民党から政権をもぎ取った民主党、大阪都構想の実現に執念を燃やした橋下徹・前大阪市長……。時に激しい言葉で自らの主張に反対する勢力を攻撃し、対立をあおる。多少手荒な手段を使ってでも、選挙での勝利をテコに実現を目指す。そんな傾向が強まっているように見える。
少数意見や迷いを振り払い、効率的にスピーディーにものごとを決断する。まるで、1円でも多くの利益を追求する「株式会社」の論理が、日本全体を埋め尽くし始めているようだ。
言うまでもなく多数決は民主主義の基本原理だ。他方、多数派が少数意見を丁寧にくみとり、より多くの人が納得できる結論にまとめていくことも大切だ、という考え方も広く認められてきたのではなかったか。
「特に会社がまだ小さな時期は、経営者の決断のスピードはとても重要です。私も自らの責任において何度も重要な決断を下してきました。モーターボートの運転と同じで、経営者が右へ左へさっと舵を切らなければ、会社は波にのまれて沈んでしまう。でも、政治は違います。大きなタンカーは船長一人で動かせるわけではありません」
タリーズコーヒージャパンの創業者で、今はミニ政党「日本を元気にする会」代表の松田公太参院議員はそう語る。
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