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小黒一正氏は元大蔵官僚(C)日刊ゲンダイ
注目の人 直撃インタビュー 経済学者・小黒一正氏「高インフレのリスクが迫っている」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/172258
2015年12月28日 日刊ゲンダイ
2%という物価目標なんてあり得ない
黒田日銀の異次元緩和の限界は、このところの株式相場を見れば歴然だが、この人の意見も明確で冷徹だ。元大蔵官僚で気鋭の経済学者・小黒一正氏(法大教授)が看破した「明日なき日本経済の実態」は恐ろしい。
――安倍政権がアベノミクスを正当化する権威として利用してきたポール・クルーグマン教授(ノーベル経済学賞受賞者)が、異次元金融緩和の失敗を認めましたね。先生は早速、ツイッターで取り上げられた。
海外で最も権威のあるクルーグマン氏が、異次元緩和はうまくいかなかったと認めたわけです。安倍首相やリフレ派(金融緩和論者)は、はしごを外された格好です。日本の異次元金融緩和という“実験”は失敗に終わったのです。
――安倍政権は株は上がっているじゃないか、と言いそうですけど。
株価上昇と円安は達成しましたが、GDPを押し上げる効果はなく、いつどんな“手じまい”をするのかという難しい出口戦略の宿題が残りました。金利急上昇・国債暴落・インフレのリスクは確実に高まっていて、一部資産家の中には、海外へ資産逃避を始めた人も出てきているという噂も聞きます。
――なぜ、異次元緩和は失敗したのでしょう?
そもそも「2%物価上昇率」という目標自体が実現困難でした。過去に日本が2%のインフレ率になったことはほとんどない。消費税を導入したバブル期の1989年と、湾岸戦争で原油価格が上がった時だけです。特殊要因が働いた時期を除くと、1%がせいぜいだった。
――だからこそ、黒田日銀総裁は、期間を区切って、思い切って異次元でやったんでしょう?
異次元緩和で円は対ドル70〜80円が120円になり、50%も減価した。それで、この程度の物価上昇率なのかという感じです。日本銀行は毎年、80兆円の国債を買っている。こんな政策がずっと続けられないことは明らかです。10年間、毎年80兆円ずつ買うと、800兆円になって、すべての国債を買い切ってしまうわけですが、金融機関も運用で口座を保有する必要がある。地方債まで買えば限界を少し先延ばしできるかもしれないが、2017年ごろに日銀は国債を買えなくなるという試算も多い。黒田日銀総裁の任期は2018年ですが、その時までに方向を決めないといけない。つまり、国債がほとんど残っていないのだけれども、それでも少しでも出てきたら買い続けるのか。それとも、もうやめるのか。
――やめるなんて言えるんですか?
その時にゼロ金利を維持すると言わなければいけない。そうしないと金利が跳ね上がってしまうから。そうやって、異次元緩和の規模を縮小していくしかないでしょうが、それでも緩やかに金利は上がっていく。今でも1000兆円の債務があるわけですから、1%の金利上昇は10兆円。厳密には数年間で出てくる計算ですが、ものすごいインパクトです。
――国債暴落のリスクも出てきますね?
そうです。だから、ずっと国債を買い続ける政策を続ける可能性もある。そうなれば、日本銀行がすべての国債を持つような方向になる。
――それで景気が良くなればいいですけど?
通常、景気が良くなるのは望ましいですが、そうなれば日銀は膨らんだバランスシートを縮小しなければいけない。でも、縮小できません。国債を売ろうとすれば、暴落して、金利が跳ね上がる。財政当局や政治がそれを許さないでしょう。金融政策を封じられた日銀は、インフレをコントロールできなくなるのです。
――にっちもさっちもいかない。すでにさんずの川を渡ってしまった?
日銀は詰んでいます。そういう方向に進んでいます。
2017年は景気循環でボトムになる
異次元緩和はもう限界(C)日刊ゲンダイ
――クルーグマン教授らリフレ派はあまりにも無責任じゃありませんか?
クルーグマン教授は98年以降、「日銀が無責任であることを信頼できる形で約束することが必要」と唱えてきました。噛み砕いて言うと、「市場に対し、日銀がより慎重にならず、インフレ促進へ動くと信じ込ませるような驚きを与えるべきだ」ということです。これは一種のショック療法です。しかし、11月6日に国際通貨基金(IMF)主催の会合で、「無責任であることを信頼できる形で約束すれば、後は自動的に問題を解決できるという考え方は楽観的すぎる。そうなることはない」と話しました。さらに11月2日付のニューヨーク・タイムズでは、日本を含む先進国が長期停滞に陥っている可能性も示唆しました。
――どう落とし前をつけるんでしょうか?
自分の国ではないから関係ないのでしょう。
――リフレ派の学者の中にはいまだに「財政政策も金融政策ももっと積極的にやればいい」と主張している人もいます。物価が上がらないのを原油安のせいにもしている。
原油価格の下落分を差し引いても物価目標の2%には達していない。いくら日銀が民間銀行の持つ国債を買って、日銀券と交換しても、その現金を持った民間銀行は貸出先がないのです。信用創造でお金が流れていかなければ、景気は良くならないし、物価も上がらない。それに野口悠紀雄先生(一橋大学名誉教授)をはじめ多くの経済学者が指摘していますが、実質GDPを上げた要因分析をすると、アベノミクスの1本目の矢、つまり「金融緩和」よりも2本目の矢、「財政出動(公共事業増加)」の方が効いていた。ただし、過去と同じくカンフル剤的な効果しかなく、成長率上昇につながっていない。「財政政策」をこれ以上進めようにも、限界があります。「どんなに債務残高(借金)が増えても大丈夫」という楽観的意見もありますが、幻想にすぎません。国債の最終的な引受先は我々の貯蓄だからです。
――それじゃあ、景気を良くする処方箋はあるのですか?
このままでは、ある時点で財政破綻に陥り、消費税大幅増か、年金など社会保障費の大幅減かの選択を迫られることになります。ですから、財政再建は不可欠です。過剰投薬など非効率な医療費の削減や65歳から70歳への年金支給年齢引き上げなどの歳出削減を断行する一方、人工知能やビッグデータなどの分野で成長率を上げる必要もあります。日本は人口減少社会に突入し、これから各地に人口が少ない地域が出てきます。人口密度が高くない所は成長率が低い傾向があります。これもマイナス要因になります。それじゃあ、人口集中エリアを優遇すればいいのか、というと、これは一部地方切り捨てにつながるので、政治的に非常にタフな話になります。
――安倍首相に最も嫌われるエコノミストの藻谷浩介氏は、ベストセラー「デフレの正体」の中でデフレの主原因は人口減少と指摘、若者など現役世代の給料アップ施策が必要と提唱していました。
それは有効な施策のひとつです。介護職に若い人が就いても、統制経済で介護報酬は決まっているので低賃金。介護や保育の平均月収は20万円で、全国平均の30万円より低い。社会保障分野で人が働いてもGDPが伸びないのです。ですから、規制緩和で混合介護や混合保育を認めたりして、業者にもう少し違ったビジネスを解禁する。そうすることで、収益性を上げて賃金アップにつなげていくしかありません。実際、九州のある地域では、有料老人ホームの隣に大型商店街やスポーツ施設が設置され、その一帯でお金が回るようになっている。一種のエリアマネジメントといえます。
――来年の経済の見通しはどうですか。
ダブル選挙をするのかしないのか。やりたくない公明党に対し、軽減税率で官邸は恩を売ったので、可能性は五分五分でしょう。今回、軽減税率導入が決まりましたが、消費税増税の17年4月まで1年ちょっとしかない。なんとなく決着したように見えますが、無理に実行すれば、いろいろ問題が生じて混乱するのは確実です。それに景気循環を見てみると、17年に向けて景気がボトム、つまり景気が下り坂になる可能性がある。そこで増税ができるのか。しかし、この財政状況ではやるしかない。今苦しい思いをするのか、後で高インフレで苦しむのか。少なくとも、異次元緩和でハッピーエンドというシナリオはありません。
▽おぐろかずまさ 1974年生まれ。京大理学部卒。その後、同大学院で修士(経済学)、一橋大で博士(同)。大蔵省(現財務省)入省後、財務総合政策研究所主任研究官、一橋大准教授などを経て法大経済学部教授。
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