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閉会中審査で浮かび上がったこの国が論ずべき多彩な論点
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakayoshitsugu/20151112-00051367/
2015年11月12日 2時34分配信 田中良紹 | ジャーナリスト
安倍政権は野党5党が要求した臨時国会を召集せず、閉会中審査を衆参で1日ずつ開いてそれに代え、そこをTTPと一億総活躍社会の宣伝の場と位置付けた。しかし閉会中審査はこの国に議論すべき論点が多々ある事を浮き彫りにした。
安倍総理が限りなく忠誠を誓う米国では、大統領の人事に議会の承認が必要とされる場合がある。行政府の長官、副長官、次官、また軍の将官、そして最高裁判事、それに大使、公使、領事などは上院の過半数の賛成がなければ人事が認められない。
従って大統領と上院の多数党が異なる「ねじれ」の場合、大統領は承認されない事がはっきりした人物を指名せず、また議会もいたずらに「反対」を貫いて人事を混乱させない。しかし指名された人物がどのような考えの持ち主で、役職にふさわしいかどうかは議会の承認公聴会で徹底して追及される。
そのため国民は自国の政府高官、軍幹部、最高裁判事、各国大使らがどのような人物であるかを知り、これらの人物が大統領と近いだけでなく、議会の承認も得て役職にふさわしい人物であるとみなす事が出来る。
私はかねてから日本の国会もこの仕組みを採用すべきと考えてきた。総理が任命する大臣はもとより、自衛隊の最高幹部や最高裁判事、それに国家を代表して外国に赴任する大使には就任に際し自分の役割と何をやろうとしているかについて国会で証言してもらうのである。
それをしないから日本国民は自分たちの税金で動いている公務の司令塔に関心がない。まるで雲の上の遠い存在なのである。それが国民を政府に対する極端な盲信に走らせるか、あるいは極端な反発に走らせるかになってしまうと私は思うのである。
ともかく米国議会と同じになることがすぐには無理だとしても、内閣改造で新たな大臣が就任した以上、新大臣がどのような考えを持っているかを国会で披露する事は議会制民主主義の最低の務めである。ところが安倍政権は衆参1日ずつの閉会中審査でそれを誤魔化そうとした。
新大臣に対するスキャンダル追及を恐れたからだという説がある。それを先送りすればスキャンダルは消えてしまうのか。そう思っているのなら安倍政権は国民をまるでおめでたい人種と馬鹿にしている。そして国民の見えないところに沈めて忘れさせたつもりになっても、悪材料が積もり積もると一気にあふれ出る時がある事を知らないようだ。来年の通常国会にまで悪材料を持ち越せば通常国会はマグマの溜まった活火山になる。
たった2日間の閉会中審査に期待をかけるつもりはなかったが、通して見てみると、この国には議論すべき論点があふれている事を再認識した。TPPと一億総活躍社会は、安倍政権がいま最も宣伝したいテーマであるから、取り上げられるのは予想通りである。与党は支持する立場から野党は否定的な立場から論ずる事も予想通りである。
しかし聞いていると与党の議論には来年の選挙を意識した選挙用フレーズが多用されている事を強く感じた。例えばTPP交渉で日本は他国に比べ関税撤廃の例外を認めさせ、国会決議を遵守することが出来たと成果を強調する一方で、農家の「不安に寄り添い」真に必要な対策を取りまとめると言って予算配分の姿勢を強調する。
「不安に寄り添う」というあたりが農家向けの選挙用フレーズである。政府与党の面倒見の良い所を見せつけようとしている。しかしこの交渉の結果、日本の食料自給率がどうなるか、そちらの方が大問題である。
私がかつて取材した米国は他国の食料自給率を下げさせることに執念を燃やす国である。それが米国の安全保障戦略の基底にあるからだ。食料を外国に依存する国は帝国主義時代の植民地と同じ運命になる。その植民地を作る事に米国は力を入れている。それを考えずに安い食料を有難がるのは亡国の論理と言うしかない。
一億総活躍社会についても「自立した個人の参加型社会」という欧米の民主主義社会を思わせるフレーズが使われた。具体的な事は何も分からせないのに、夢のような言葉をふりまくところに安倍政権の特質はあるが、これも来年の選挙用フレーズにしようと考えているように私には思えた。
そしてたった2日の審議だったのに、委員会では様々な問題が取り上げられた。憲法改正問題で安倍総理は「国民的議論を深めることが重要」と発言する一方、「緊急事態条項からやるべきだ」と9条改正に言及し、また南シナ海問題では米軍の活動に自衛隊が参加する可能性について、「現時点で計画はない」としながらも「様々な選択肢を念頭に置きながら検討したい」と前向きな答弁を行った。
審議の中で多くの議員が取り上げたのは辺野古の新基地建設問題である。埋め立て承認の取り消しを巡り政府と沖縄県が全面対立する中で安倍総理は「翁長知事の承認取り消しは違法であり、知事に代わって代執行を行うのは適切」と述べ、質問する野党議員とは全くの平行線だった。
また経済では、巨額の財政赤字を抱える我が国の財政健全化をどう実現するか、アベノミクス第一の矢である日銀の金融緩和策は有効か、消費増税と軽減税率をどうするかなどが議論され、それ以外にも高速増殖炉もんじゅ、横浜のマンション傾斜問題、BPOが取り上げたメディアに対する政治圧力などについて議論された。
そして注目されていた高木復興担当大臣のスキャンダルも連日追及されたが、時間的制約のため議論はすべて未消化に終わり盛り上がりに欠ける国会ではあった。しかしその不燃焼感が逆に現在の日本には議論を要する多彩な論点が存在する事を印象付け、国会の必要性を感じさせるという妙な感覚を私は持った。
それにしても憲法53条をどう読んでも「臨時国会を開かなくても良い」と憲法が言っている訳ではない。しかも外遊日程を開かない理由にしているところは、冗談にもほどがあるという感じだ。別に安倍総理が出席しなくとも、閣僚がそれぞれの仕事をこなしているのだから、閣僚の答弁で結構である。
これだけ議論すべき論点がある時に国会を開かないのは国民と国家の距離を遠ざける。それが安倍政権の狙いという事か。
田中良紹
ジャーナリスト
「1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材。89年 米国の政治専門テレビ局C−SPANの配給権を取得し、日本に米国議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年からCS放送で「国会TV」を放送。07年退職し現在はブログを執筆しながら政治塾を主宰」
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