http://www.asyura2.com/15/senkyo193/msg/936.html
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※わかりにくいので、タイトル内で「負担」という言葉を使ったが、実際は「負担の転嫁」であり、「重税化」も「負担転嫁の累増」と読み替えていただきたい。
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阿修羅でもお見受けするが、リベラルとおぼしきひとたちのなかに、低中所得者の消費税負担軽減策として「軽減税率」(複数税率)制度の導入を求めるひとがけっこうおられることに驚かされる。
ひょっとしたら、欧州諸国で「軽減税率」(複数税率)制度が定着していることから、比較的教育レベルが高い5億人が騙されているなんてありえないと思っているのかもしれない。
「軽減税率」(複数税率)制度は、日本よりもリベラルな政策が行われているEU諸国で採用されているのだから低中所得者に害を及ぼすようなものであるはずがない、あっしらが言うような酷い制度なら、平均的教育レベルが高く民主政治も機能しているEU諸国ではとっくに葬り去られているはずだという判断(思い込み)が支えになっているのだろう。
27日日曜に日経新聞に掲載された記事のなかから関連する部分を引用する。(後ろに全文転載)
「 消費者の税負担はいかなるものか。東京大学教授の神取道宏氏(週刊ダイヤモンド9月26日号)は、消費税の税負担が消費者にどう及ぶかを、ミクロ経済学に基づき解説する。
消費税が上がったとき、それを消費者が負担するか、売り手の企業が吸収するかは、本来、需要と供給で自動的に決まる。売り手が、消費税を全て消費者に転嫁しようと値上げすれば、売れ残りが増える。したがって、需要や供給が価格上昇にどれだけ感応的かによって、誰がどれだけ負担するかが決まる。消費税がどれだけ消費者に転嫁されるかは政府が統制できるものではなく、軽減税率を採用しても、消費者が購入の都度負担軽減の恩恵を実感するか否かは需給の関係次第である。制度設計は、消費税制において負担軽減の実感にこだわるより、低所得者にどれだけ給付して購買力を担保するかに注力する方が賢明だ。」
日本を含む社会主義国家でも統制経済国家でもない国のものの価格は自由に設定できる。
ものの価格は「原価+荒利」で構成され、販売を重ねて稼いだ荒利の集積から「賃金・消費税を含む諸税・賃金以外の諸経費」に充当される。
原価は仕入で確定しており、荒利をどれだけ上乗せするかは事業者の自由で、販売力と需要で規定されるだけである。
消費税の税率アップが実施されたとき、増税前の荒利と同じ金額を確保しようと増税分の負担を丸々価格に転嫁しようとしても、期待するほど売れなければ最終的な荒利を減らして納税するしかない。一方、増税で増えた負担の転嫁レベルを超える価格引き上げを行っても、それで思うように売れるのならまったく問題ない。
「軽減税率」(複数税率)が有効なものを挙げると、軽減税率の対象になっていないが、価格が統制されている電力・ガス・水道などである。
これらの場合は、事業者が得る最終利益が規制されているので、軽減税率の適用を受けると価格が下がる可能性が大きい(仕入で転嫁される消費税税率がアップするのですぐに(確実に)下がるとは言えない)
逆に、価格が統制されている電力・ガス・水道などは、適用される消費税の税率がアップされたとき、論説にあるような需要−供給の論理ではなく、公定価格として自動的に引き上げられることになる。
消費税制度そのものに反対だが、低中所得者の負担緩和策としては、神取東大教授が言うように「消費税制において負担軽減の実感にこだわるより、低所得者にどれだけ給付して購買力を担保するかに注力する方が賢明」なのである。
(仕組みが悪すぎることはおくとして、財務省案は政治的思惑で「日本型軽減税率」とか「還付」とか説明されているが、内実は「還付」ではなく「給付」である。わかりにくいが、神取東大教授がより賢明と判断している給付策には、財務省案の「日本型軽減税率」
も含まれている)
何より、「軽減税率」制度の導入で消費税負担が軽減される(消費税増税が続けばゆくゆくは還付まで受ける)事業者が生まれることで、消費税税収の落ち込みを招き、標準税率の引き上げにつながっていくのだから、緩和策としては比較にすらならない。
さらに言えば、標準税率の引き上げは軽減税率の適用を受けるものを販売する事業者の“消費税利得”を増大することになるので、さらに標準税率を引き上げないと思うように税収が上げられないという悪循環に陥る。
財務省も、公明党が要求するいわゆる「軽減税率」制度の害悪をきちんと説明すれば一発で国民の了解が得られるのだが、それを行えば、「輸出免税」制度の害悪も同時に知られることになるからできないのである。
(国内で自動車を購入したとき負担した(支払った)つもりでいる消費税は、1円たりとも国庫に入っていない:自動車ディーラー・自動車メーカー・素材機械メーカーなどを合算したうえで...:こんな税制が政府の歳入や社会保障制度の持続性を支えるものになるわけがないのである)
※参照投稿リスト
「消費税制度は“悪魔の税制”:「軽減税率」(複数税率)制度は、悪魔にさらなる武器と栄養を与える大愚策」
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/868.html
「消費税軽減、財務省案に反対 新聞協会声明、新聞に軽減税率を:財政危機を煽る一方、己の消費税特権は要求する恥ずべきメディア」
http://www.asyura2.com/15/senkyo193/msg/178.html
「混乱もたらす生鮮品の軽減税率:受益者である新聞社・宗教法人・政党は別だが、被害者(一般消費者)の一部まで歓迎という倒錯」
http://www.asyura2.com/15/senkyo186/msg/321.html
「「きっこのブログ」批判:低所得者対策というウソをまとった「軽減税率」制度は特定企業への究極の“バラマキ”政策」
http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/844.html
「アマゾンのネット通販売上高、日本で最大 昨年7300億円:その付加価値の大半は消費税も法人税も非課税という“一大特典”」
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/310.html
「サーバー国外設置の国内事業者は可能だが、国内物販分さえ徴税できないアマゾンから徴税できないことを承知で採った課税措置」
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/135.html
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[経済論壇から]アベノミクスへの注文
優れた経営者の条件は 慶応義塾大学教授 土居丈朗
9月19日未明に安全保障関連法が、参議院で可決、成立した。安全保障関連法は、賛否が大きく分かれた。審議の過程では、法案は民主主義を破壊するとの意見もあった。しかし、法案は、選挙で国民から選ばれた国会議員の多数決によって、採決された。
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そもそも、民主主義とは何か。慶応義塾大学教授の坂井豊貴氏(9月21日付経済教室)は、多数決と民主主義を区別してみる必要性を説く。多数決は、一番得票の多い選択肢が勝つとする制度であり、民主主義は、私たちで私たちのことを決めるという理念である。理念はそれ自体では実現せず、制度が必要である。しかし、理念に適合した制度を採用しないと、理念にそぐわない結果が生じる。
物事を決めるというゲームに、どのようなルールがふさわしいか。この視点から見るゲーム理論を活用することで、制度の長短を明らかにしたり、解決策を提示できる。坂井氏は、多数決は「票の割れ」に弱いため、選択肢に対する好みの順位を集計して、有権者の選好を細かくくみ取る投票制度を提示している。
安倍晋三首相は、安保法制成立後は経済で成果をあげていきたいとの意向を示している。ただ、中国発の世界的な株安連鎖や米国の金融政策の転換など、日本経済の行方は不確実性を増している。
景況を懸念してか、早くも景気対策を求める声が出ている。景気対策として用いられる財政政策の効果を、マクロ経済学の基本から平易に解説するのは、政策研究大学院大学教授の井堀利宏氏(週刊ダイヤモンド9月26日号)である。公債を発行して財政支出を増やす景気対策が狙うのは、雪だるま式に国民の所得が膨らむサイクル「乗数効果」だ。これにより、国内総生産(GDP)の増加が見込まれる。これと合わせて、目下、政府・日銀がインフレ率の目標を2%と掲げている。インフレ率がプラスの状態が長く続いて物価の上昇が続けば、個人や企業はこれからもインフレが続くとの予測「インフレ期待」を抱き、目先の消費や投資を増やそうとする。
井堀氏は、インフレ期待の下で積極的な財政金融政策をとると短期的には需要が増え、GDPは増えるが、期待インフレ率がずっと上がり続けでもしない限り、長期的には効果が薄れる、との論理的帰結を紹介。政策の有効性に留意を促している。
今月税制で話題を呼んだのは、消費税の軽減税率をめぐる議論である。欧州型の軽減税率では、消費者が税率軽減の恩恵を実感できるが、高所得者にも恩恵が及び、税収が失われ、流通業者の事務負担が大きく増える。そこで、財務省から「還付型」案が示された。しかし、消費者は税負担軽減を実感できないとして批判が出た。
消費者の税負担はいかなるものか。東京大学教授の神取道宏氏(週刊ダイヤモンド9月26日号)は、消費税の税負担が消費者にどう及ぶかを、ミクロ経済学に基づき解説する。消費税が上がったとき、それを消費者が負担するか、売り手の企業が吸収するかは、本来、需要と供給で自動的に決まる。売り手が、消費税を全て消費者に転嫁しようと値上げすれば、売れ残りが増える。したがって、需要や供給が価格上昇にどれだけ感応的かによって、誰がどれだけ負担するかが決まる。消費税がどれだけ消費者に転嫁されるかは政府が統制できるものではなく、軽減税率を採用しても、消費者が購入の都度負担軽減の恩恵を実感するか否かは需給の関係次第である。制度設計は、消費税制において負担軽減の実感にこだわるより、低所得者にどれだけ給付して購買力を担保するかに注力する方が賢明だ。
「アベノミクス」は、デフレ脱却を目指して需要不足の解消に重きを置いた「第1ステージ」から、人口減少下における供給制約を乗り越えるための対策を講ずる「第2ステージ」に入る。安倍内閣は、「『日本再興戦略』改訂2015」でこう打ち出している。
慶応義塾大学教授の磯辺剛彦氏(週刊東洋経済9月12日号)は、「戦略」のまん延を憂い、目標やビジョンを戦略と勘違いし、数多くの戦略を盛り込んだ戦略のごった煮が「悪い戦略」の典型との見方を示す。戦略論によって提示できるのは、具体的な問題解決の方法である「どうすべきか」ではなく、問題設定のあり方「どのようにとらえるか」であるという。その上で、日本企業の成功パターンをみると、企業としての社会的使命やミッションを土台として、経営資源や企業が置かれたポジションを踏まえ、経済合理性やルールに基づいた戦略があるという。
「アベノミクス第2ステージ」では、設備や技術、人材などに対する「未来投資による生産性革命の実現」を目指して、人口減少下における供給制約の打開を図ろうとしている。我が国における人工知能やロボットなどの開発や活用も検討されている。
慶応義塾大学教授の鶴光太郎氏(9月15日付経済教室)は、人工知能やロボットといった新しい技術によって、労働者の仕事が取って代わられ、職が奪われる懸念への対応策を示す。米マサチューセッツ工科大学教授のデイビッド・オーター氏の議論を嚆矢(こうし)として、今後の技術変化で代替されるのではなく補完的になるスキルを生み出すような教育が必要とのわが国への示唆を引き出している。人工知能やロボットの開発に合わせて、新技術と補完的な役割が果たせる人材育成の重要性を強調する。
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人材という意味では、一橋大学教授の楠木建氏(週刊東洋経済9月12日号)は、洋の東西を問わず、最も希少性のある経営資源は、優れた経営者であると指摘する。楠木氏は、優れた経営者が持つセンスは、具体と抽象を往復することで育まれるという。ビジネスでの具体的な課題や解決法を、抽象化した論理に置き換え、物事の本質を理解する。優秀な経営者は、物事に接すると背後にある抽象的な論理をみる。起きている現象は新しくても、抽象的論理は変わらない。今の成熟した日本企業は、分業体制が敷かれ、商売を丸ごと見る機会が極端に少ない点で、優れた経営者が育ちにくいという。それを乗り越え、どう人材を確保するかが、問われよう。
[日経新聞9月27日朝刊P.21]
- どうなる? 消費税の軽減税率:NHK今井 純子解説委員のデタラメな軽減税率制度の説明 あっしら 2015/10/01 02:43:22
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