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日本スポーツ振興センター「新国立競技場国際デザイン・コンクール」より
スッパ抜き「内定!」 新国立競技場「完成図」はこうなる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44460
2015年08月03日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
旧競技場は既に解体され、デザイン案も白紙撤回となった。本当にゼロとなってしまった東京五輪のシンボルは最終的にどのような姿に生まれ変わるのか。日本中が注目するその未来図を紹介しよう。
■予算オーバーなし
「白紙に戻してコンペからやり直すなんて、本当に間に合うんですか?」
新国立競技場を巡って、懐疑的な声が日本中で飛び交っている。
2500億円を超える建設費、実現可能性にも疑問符がついたキールアーチなど、確かに「すべて白紙に戻したらどうか」と思っていた人は多いだろう。ただ、安倍総理の「支持率アップにつなげたい」という下心はともかく、デザインからやり直すなどということが、時間的に可能なのか。
万一、本番の2020年に間に合わなければ前代未聞、日本という国が世界中に恥をさらすことになる。
「下村大臣の説明では、設計者選定はデザインだけのコンペではなく、施工者となる建設会社と設計者が一体となって応募する形になるようです。しかし、やり直すにしても、前回と同じ条件で募集するわけにはいきませんから、設計の前提条件の見直しが必要になります」(建築家で東京大学名誉教授の大野秀敏氏)
募集要項から作り直した上でコンペを実施する。さらに今度は、デザインだけでなく設計や工程上の問題まで同時並行で審査する必要がある。安倍総理が言うゼロベースからのやり直しは、あまりにも現実性が乏しい。
「文科省の職員はみな『絶対に間に合わない』と言っていますよ。官邸は急がなきゃと言っていますけど、具体的な話はまったく見えてこない。
もはや、国際コンペをやり直すのは時間的に厳しい。できるとすれば、これまでに提出された案をベースにして突貫工事で進める。それしか間に合わせる道はありません」(文科省関係者)
そんな中、ザハ氏の案に代わるデザインとして注目が集まっているプランがある。それは前回のコンペで最終審査まで残った、日本の建築家である伊東豊雄氏が提案したデザイン案だ。
なぜこのデザイン案が浮上してきたのか。その理由を順に説明しよう。
まず、工期の問題の他に、今回の問題がここまで大きくなった理由の一つとして建設費がある。
伊東氏をはじめ前回のコンペのデザイン案は1300億円の試算で設計されているが、ザハ氏の案は設計見直しの段階でなぜか建設費が大幅に高騰した。その点、伊東氏の案は予算の範囲内で実現できるように計算されており、費用高騰の恐れは低いと見られている。
別の関係者は「実は、最終的には1800億円まではコストをかけられると踏んでいます」と語る。
「当然、建設費はなるべく安いほうが望ましいので、さすがに2520億円を認めることはできません。しかし、間に合わないということだけは絶対に避けなければいけないので、1800億円くらいは覚悟しなければならないと考えています。
安倍総理も5月の国際交流会議のスピーチで『(日本に)安かろう悪かろう、はいりません』と言っていた。費用を削って質の悪いものを作ってもしょうがないと総理自身が話していたのですから、新国立競技場だって同じでしょう。それを引き合いに出して、官邸には内々に納得してもらっています」
予算が増えたとなれば、さらなる改善も可能となるだろう。
■神宮の森にふさわしく
しかし一方で、コンペの候補を再検討するとなれば、1位だったザハ案が潰れた以上、次はまず2位のプランが採用されるのではないかという声もある。だが、今回はそう単純ではない。ザハ氏同様、他の作品もコストや技術的な面からみて、不透明な部分を秘めているからだ。
「2位のオーストラリアのアラステル・レイ・リチャードソン氏によるデザインは、建物の形状がシンプルなので設計はしやすいです。しかし周り全面をガラスで覆った構造をしており、規模も敷地ギリギリまで広がる大きさ。ガラスの透明性を保ちながら全ての機構を実現するのはコスト的にも技術的にも不安は残ります」(建築エコノミストの森山高至氏)
コスト面、技術面のバランスから見て、前回コンペの上位陣はザハ案と同じような問題と不安を抱えているものがあるということだ。それらと比べても伊東氏のデザイン案は相対的に優位に立っているといえる。
二つ目に、国立競技場の建設場所の特殊性が関係してくる。国立競技場は東京の中心にありながら周りを樹木に囲まれており、歴史的にも価値のある場所だ。神宮外苑の景観やその歴史、なりたちを無視しないでほしい、という声は根強い。だからこそ、外国人に頼らず日本人による設計を望む声も多い。
「ベイエリアに作るならまだしも、今回は神宮外苑という特別な場所に建てるわけです。周りを木々や建築物に囲まれた環境にどうスタジアムを溶けこませるのかは非常に重要なこと。伊東さんの案はその点がしっかり考えられていたと思います」(建築家で東京藝術大学名誉教授の元倉眞琴氏)
景観を無視して、巨大で近未来的なランドマークを建てることが正解ではない。それよりも周辺環境との調和やそこに住む人々のことを考えたデザインこそが、日本らしい「和」の建造物といえる。
■実は最も評価が高かった
最終審査に残った他の作品を見てみると、伊東氏のデザインは一見、地味である。だが、そのような形状にはれっきとした根拠があると前出の森山氏が説明する。
「この中で実際に建てるとしたら、伊東さんの案しかない。応募案の中では、最も機能を優先したデザインになっています。
例えば、問題となっている屋根の開閉機構は実現性を高めるため水平可動にしています。ピッチの芝を健全に育成させる日光を確保するにはこれくらいの大型開口が必要なのと、ピッチに妙な影を落とさない工夫です。しかも、ザハ案に比べて全体的にコンパクトであり、高さも条件の75mよりもずっと抑えて50mになっている」
さらに伊東氏の案ではスタジアムの壁面に無数の穴が開いており、その周りを薄い透明膜が簾のように取り囲んでいる。壁面と透明膜の間には水辺や樹木からなる公共スペースが設置され、外からの風が通気性のある透明膜を通り、水で冷やされ、壁面の穴からスタンドまで通り抜ける構造となっている。天井に設置された太陽光パネル同様、自然エネルギーを活用し、メンテナンスコストを抑える試みだ。
この伊東プラン、そもそも先のコンペ途中までは最も評価が高かったという。
「一次審査の前に作品の実現性や募集要項の規定条件を満たしているかを確認する技術調査が行われました。可動席や屋根の開閉機構、工期など、全16項目を『○△×』の3段階で評価するのですが、この段階では伊東さんの案が全項目で『○』を獲得して最も評価が高かった。一方でザハ氏は『○』と『△』が半分ずつでした」(前出・森山氏)
ここでの「△」は「設計段階で重大な調整が必要」という評価。他の候補作品にもこのような応募条件を逸脱したものがあったという。
こうして様々な条件を鑑みると、伊東氏の案が最も現実的で内定に近いということになるのだ。
今回、実際に設計をした伊東氏本人にも話を聞いた。
「このデザイン案は周辺環境の調和と省エネをテーマにしています。スタジアムが使われない時にどのような環境を提供できるのかということはすごく重要なこと。だから、極力高さを抑え、自然エネルギーの活用と維持費の軽減を目指しました。
今回の騒動で、いつの間にかデザインという言葉が上空からみた建物の『形』という意味にすり替わっているように感じるのですが、本来デザインはそういうものではないんです。実際に地面に立った人の視点からは、上空から見た外観はなんだったんだと思うくらい、スタジアムの見え方は違います。私はそういう人の視線に基づいたデザインこそ、最も大切だと思っています」
五輪がわずか5年後に迫っていることを考えれば、今度は失敗が許されない。国民が納得し、世界に恥をさらさない形で新国立競技場を建設する責任が、政府にはある。
「週刊現代」2015年8月8日号より
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