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ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦【第15回】 2015年7月14日 北野幸伯 [国際関係アナリスト]
「安保関連法案」で安倍総理が犯した2つのミス
4月末の米議会演説で戦略的勝利をおさめたのもつかの間。安保関連法案に関する強硬姿勢でそっぽを向く国民が増え、安倍総理は窮地に陥っている。わずか数ヵ月のあいだに、安倍内閣が犯した間違いについて、解説する。
安倍内閣の支持率が急落している。朝日新聞が6月20、21日に実施した世論調査によると、内閣支持率は1ヵ月で6ポイント低下し、39%になった。7月4、5日に実施した毎日新聞の調査では、不支持が支持を上回り、第2次安部内閣発足後、初めて逆転した。
米議会での”希望の同盟演説”で大勝利を収めたのもつかの間。安倍総理は再び、窮地に陥っている
Photo:AP/AFLO
支持率が下がっている理由は、「安保関連法案問題」である。直接的な理由は、衆院憲法審査会で憲法学者3人が、安保関連法を「憲法違反」と指摘し、政府がそれを事実上「無視」していること。また、自民党若手議員の勉強会で、法案に批判的なマスコミへの圧力を支持する発言が相次いだことなどだろう。しかし、この問題は、長期的視点で見ると、もっと根が深い。
過去数年の劣勢を一気に逆転
安倍演説で「戦略的勝利」をした4月
「私たちの同盟を、『希望の同盟』と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟。一緒でなら、きっとできます」
4月29日、安倍総理は絶頂にあった。米議会における「希望の同盟」演説は大成功。オバマ大統領は、ホワイトハウスのツイッターに「歴史的な訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固だったことはない」と書き込んだ。
しかし、ここに来るまでの道は、平坦ではなかった。2012年12月に第2次安倍内閣が誕生した時、日中関係はすでに、「尖閣国有化問題」(12年9月)で「最悪」になっていた。
12年11月、中国は、モスクワで仰天の「対日戦略」を提案している。その骨子は、@中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる A日本の北方4島、竹島、沖縄の領土要求を退ける(つまり、沖縄は中国領) B米国を「反日統一共同戦線」に引き入れる――である(中国、対日戦略の詳細はこちらの記事を参照)。
この戦略に沿って中韓は、全世界で「反日プロパガンダ」を展開し、大きな成果をあげた。13年12月26日、安倍総理が米国のバイデン副大統領の「警告」を無視して靖国を参拝すると、世界的「日本バッシング」が起こる。
中韓に加え、米国、英国、EU、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが、靖国参拝を非難した。この時、安倍総理は「右翼」「軍国主義者」「歴史修正主義者」とレッテルを貼られ、世界的に孤立した。
しかし、14年3月、ロシアがクリミアを併合すると、日米関係は好転する。「対ロシア制裁」に、日本の協力が必要だからだ。そして15年3月、今度は「AIIB事件」が起こった。英国、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、続々と米国を裏切り、中国主導のAIIBに参加していく。
その中で、日本だけは、米国以外の大国で唯一「AIIB不参加」を決めた。これで、米国にとって日本は、「英国よりもイスラエルよりも大事な国」になった。そして、4月29日の「希望の同盟」演説。オバマがいうように、日米関係は、これまでにないほど「強固」になったように思えた。
中国の戦略は、「日米分断」である。
よって、日本の戦略は、「日米一体化」である。
安倍総理は、「希望の同盟」演説で日米一体化を成し遂げ、「戦略的勝利」をおさめた。しかし、「2つの失敗」を犯したことで、現在は再び苦境に陥っている。
再び苦境に陥った安倍総理
「2つの失敗」とは何か?
実をいうと、1つ目の失敗は、「希望の同盟演説」の中にある。(太字筆者。以下同じ)
<日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。
戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます。>
「この夏までに、成就させます」。これは、安倍総理が米国に「約束」したのだ。この約束が、「1つ目の失敗」である。
なぜか?当たり前のことだが、約束は「守らなければならない」。つまり演説後、4ヵ月で「安保関連法案」を成立させる(「夏までに」というと、「夏に入る6月までに」という解釈もできるが、ここでは「夏中に」と考えることにする)。
だから、急がなければならない。急ぐと、あせる。あせると、国民への説明が不十分になる。野党への根回しがイイカゲンになる。それでも「なんとか米国との約束を果たさねば」と必死になると、言動が「強引」「独裁的」になる。反対するマスコミが憎らしく思え、「懲らしめてやれ!」と思ったり、そう発言したりする議員が出てくる。結果、国民が、ますます内閣への疑念と嫌悪感を強めていくという悪循環になっている。
そして、総理は、「米国との約束を果たすため」に急いでいるというのも重要なポイントだ。この態度は、いかにも「属国的」だ。実をいうと、国民は皆「日本=米国の属国」であることに気がついている。しかし、国政の長には、「自立した国のトップ」としてふるまってほしいのである。
2つ目の失敗は、「中国との関係改善」である。二階俊博・自民党総務会長率いる約3000人の使節団が5月22〜24日、中国を訪問した。習近平は5月23日、使節団の前に姿を現し、日本に「ラブコール」を送った。
<「朋あり遠方より来る、また楽しからずや。
3000人余りの日本各界の方々遠路はるばるいらっしゃり、友好交流大会を開催する運びになった。われわれが大変喜びとするところだ。>
なぜ日中関係改善が、「失敗」なのか?この時期、米中関係はどうなっていたのか、思い出してほしい。
<米中激突なら1週間で米軍が制圧 中国艦隊は魚雷の餌食 緊迫の南シナ海
夕刊フジ 5月28日(木)16時56分配信
南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺の領有権をめぐり、米中両国間で緊張が走っている。
軍事力を背景に覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を牽制するべく、米国のオバマ政権が同海域への米軍派遣を示唆したが、中国側は対抗措置も辞さない構えで偶発的な軍事衝突も排除できない状況だ。>
これは、5月28日の夕刊フジ。つまり、訪中団が、習近平と「日中関係改善」について話し合ってから、わずか5日後だ。実際、「習近平ラブコール」の日、既に米中関係は十分悪化していた。その時、米国の「希望の同盟国」であるはずの日本は「3000人」の「大訪中団」を送り込み、「戦略的互恵関係」について協議していたのだ。
日本に猜疑心を覚えた米国
「二階訪中団」が裏目に
この状況、米国のリーダーの目にはどう映るだろうか?「安倍の演説は、ウソなのではないか?」「日本は、米国を『バックパッシング』しようとしているのではないか?」と考えるだろう。
前回も書いたが、もう一度、おさらいをしよう。大国が敵と戦う戦略には、大きく2つある。
1. バランシング(直接均衡)…自国が「主人公」になって、敵の脅威と戦う。
2. バックパッシング(責任転嫁)…「他国と敵を戦わせる」こと。自国が直接、戦争によるダメージを受けずに済む。
この場合の「バックパッシング」とはつまり、「日本は、米中を戦わせて、自分だけ漁夫の利を得ようとしている」ということ。もちろん、日本側にそのような「狡猾さ」はない。ただ単に、「中国と仲良くしたい」と考えただけだ。しかし、米国は、そうは取らないだろう。
安倍総理は、「希望の同盟」演説で、日米同盟を改善させたのだから、しばらくは「米国への一途さ」を示すべきだった。もちろん、中国を挑発するのは論外だが、「3000人の訪中団」はやりすぎだろう。この訪中団で、「希望の同盟演説」で醸成された米国側の「日本愛」は、かなり冷めたと見るべきだ。
第2の失敗「日中関係改善」が引き起こした、もう一つの現象は「国民が『安保関連法案』の意義を理解できなくなった」ことだ。
「集団的自衛権行使」を実現するための「安保関連法案」。反対派と賛成派の論理は、真っ向から対立している。反対派の論理は、「米国の戦争に巻き込まれる」である。米国は、21世紀に入って、アフガン、イラク、リビア(=北アフリカに位置)で戦争をしている。そして、13年にはシリアと戦争直前の状態になった。現在は、少し関係が改善しているが、イスラエルロビーのプッシュで、イラン戦争が起こる可能性も否定できない。
つまり、「米国の戦争に巻き込まれる」というのは「中東戦争に自衛隊が送られることへの恐怖」といえるだろう。
一方、賛成派の主張は、「尖閣、沖縄を狙う中国と対抗するために、日米関係をもっと緊密にしなければならない」。つまり、「中国の脅威があるから、安保関連法が必要だ」という論理だ。ところが、習近平のスピーチとスマイルで、日中関係が改善してしまった。これは、「安保関連法案」の視点からすると、「対中国で必要」という賛成派の主張への大きな打撃である。
「安保関連法案を通さなければならない時期」に、なぜ大訪中団を送ったのか、とても理解に苦しむ。
強行採決すれば祖父と同じ道?
安倍総理が危機を脱出する方法
では、安倍総理は、これからどう動けばいいのだろうか?問題の本質はなんだろう?論点は大きく分けて、2つに整理される。
1つ目は、安倍総理が米国に「安保関連法案を、夏までに成立させる」と約束したこと。もし約束が守れなかったら、どうなるのだろう?元外務省国際情報局局長・孫崎享氏の著書「アメリカに潰された政治家たち」(小学館)は、こんな印象深いフレーズからはじまる。
<皆さんは、「日本の総理大臣」は誰が決めているのか、ご存知でしょうか?>(「アメリカに潰された政治家たち」8p)
<国民の与り知らぬところで何かが起き、いつのまにか総理の首がすげ替えられることは日本ではよくあります。しかも、政権が代わるたびに、日本におけるアメリカのプレゼンスが増大しているのです。(中略)
そして、そのときに失脚した政治家は、おしなべてアメリカを激怒させる“虎の尾”を踏んでいました。>(同上10p)
孫崎氏は、要するに「日本の総理大臣を決めているのは米国だ」と主張している。本当かどうか確認することはできないが、市井の「陰謀論者」ではなく、元外務省国際情報局局長の言葉であることが重要だ。そして国民も、「親米派の内閣は長続きするよね」と感じている(例、中曽根内閣、小泉内閣)。
つまり、安倍総理は、米国との約束を破ることで、政権が崩壊することを恐れているのではないだろうか?(もちろん、総理の心の内面までわかるはずもないが)
2つ目は安保関連法案を強行採決することで、さらに支持率が下がり、政権が崩壊すること。自民と公明は、安保関連法案を強行採決して成立させることができる。だが、それをやると、「独裁的だ」「やはり軍国主義者だ」との批判が高まり、安倍内閣は崩壊に向かうかもしれない。
ちなみに、安倍氏の祖父である、故・岸信介元首相は1960年5月19日、「新安保条約」を強行採決した。しかし、2ヵ月後には総辞職している。安倍総理も、祖父と同じ道を行くかもしれない(あるいは、強行採決して支持率が下がっても、サバイバルする方法を見つけるかもしれないが)。
もう一度整理すると、
1、米国との約束を破れば、安倍内閣は崩壊するかもしれない。
2、しかし、国民を無視して「強行採決」すれば、民意によって安倍内閣は崩壊するかもしれない。
要するに、「止まっても崩壊」「進んでも崩壊」だ。もちろん、必ずそうなるわけではないが、非常に舵取りが難しい局面であることは間違いない。
筆者が安倍総理にお勧めしたいのは、日本国民と米国、両方によい道である。たとえば、こんな会話だ。
日本:「親中派の巻き返しが激しく、約束は果たせない」
米国:「強行採決したらどうなるか?」
日本:「強行採決は可能だが、それをやると国民の反発が高まり、退陣に追い込まれる可能性がある」
米国:「あなたが辞めたらどうなるか?誰が次の総理になるか?」
ここで、「3000人訪中団を率いたバリバリの親中派・二階氏が最有力候補だ」と伝えるのだ。すると米国は、「二階氏が総理になると日本はどうなるか?」と質問してくるだろう。総理は、「鳩山・小沢時代のごとく、日米同盟はメチャクチャになるだろう」と伝える。
要するに、「約束は守れないが、私が総理を続投しなければ大変なことになる」と主張するのだ。「小鳩時代の悪夢再現」を恐れる米国は、納得してくれるのではないだろうか。こうして時間を確保した総理は、腰をすえて「安保理関連法案」成立に取り組むことができる。
国民への説明と野党への根回しをより丁寧にしていくことで、「独裁」「軍国主義者」という批判を和らげることができるだろう。
P.S
.ちなみに筆者は、「安保関連法案」を支持している。それは、「集団的自衛行使容認」を支持するのと同じ理由である。総理の「手法」に不満な方も、是非こちらの記事を参考にしていただきたい。
http://diamond.jp/articles/-/74860
ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦
【第3回】 2014年6月30日 北野幸伯 [国際関係アナリスト]
「集団的自衛権」行使容認は日本の「安全」のため
戦争準備に入った中国を牽制する唯一の道
「消費税倍増!」「TPP!」「残業代ゼロ!」「移民毎年20万人受け入れ!」。筆者から見ると、「変なことばかりやっているな」と思える安倍内閣。しかし、「これだけは是非実現してほしい」と思っていた政策が、ようやく閣議決定への見通しが立ってきた「集団的自衛権行使容認」である。今回は、「集団的自衛権行使を容認すると、なぜ日本は『安全』になるのか?」を解説する。
世界情勢の変化と日本の危機
まず、「世界で何が起こっているのか?」大局を理解しよう。筆者の住むロシアでは、「2008年の前と後は、別の時代」といわれる。第2次大戦が終わった1945年から、ソ連が崩壊した91年までを、一般的に「冷戦時代」とよぶ。別の言葉で、米ソ「二極時代」。二極のうち一極(ソ連)が消滅したので、世界は「一極時代」になった。そう、「米国一極時代」の到来である。
90年代は、米一極時代のピークだった。米国のみが、「ITバブル」によって空前の繁栄を謳歌していたからだ。しかし、新世紀に入ると、米一極時代は危機を迎える。まず、「ITバブル」が崩壊した。ついで米国は、アフガン戦争(01年)、イラク戦争(03年)を開始。07年には「サブプライム問題」が顕在化。08年9月に起きた「リーマンショック」から米国と世界は、いわゆる「100年に1度の大不況」に突入していく。ロシアでは、「これで、米国の『一極世界』が崩壊したのだ」といわれている。
ここ数年、世界で起こったもっとも重要な変化。それは、「米国が衰退し、一極時代が終わったこと」だ。日本人は、このことをしっかり脳みそに刻んでおかなければならない。米国は、「ロシア-グルジア戦争」の時、グルジアを守っただろうか?米国は、ロシアの「クリミア併合」を止めることができただろうか?いずれもNO。そう、米国のパワーは年々衰えているのだ。
米国一極時代の終焉に伴って、第2の変化が起きている。それは、中国とロシアが「狂暴化している」こと。なぜこれが「米国の衰退」と関係しているのか?
米国が強力であれば、中ロは恐れておとなしくしている。しかし、米国が弱くなれば、中ロは「国益」を遠慮なく追求できるようになる。だから、中国は東シナ海、南シナ海で暴れ、ロシアはクリミアを併合できたのだ。
もう一度まとめると、(1)米国が衰退した。
そして(2)中国とロシアが狂暴化した。
この二つが、世界情勢でもっとも重要な変化である。
では、この変化は、日本にどのような影響を与えたのか?答えは簡単で、「日中関係が悪化した」。中国は、「米国は弱体化して、同盟国の日本を助けられないだろう」と予想し、攻勢をかけてきたのだ。10年9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。どう見ても中国が悪いのだが、同国は「レアアース禁輸」など、過酷な制裁を次々と日本に課した。さらに、世界にむけて「尖閣は中国固有の領土であり、『核心的利益』だ!」と宣言した。
12年9月、日本政府が尖閣を「国有化」すると、両国関係は最悪になる。その後、中国は「領海侵犯」「領空侵犯」を常態化させた。13年1月、いわゆる「レーダー照射事件」が発生。同年11月、中国は尖閣を含む空域に「防空識別圏」を設定。今年5月、6月には、中国の戦闘機が自衛隊機に異常接近し、問題になった。
こうした中国の動きには一貫性があり、「尖閣を奪いに来ている」と見るのが妥当だろう。実際、中国は世界に向けて「日本と戦争しますからよろしく!」と宣言している。
信じられない?では、証拠をお見せしよう。(太字筆者、以下同じ)
<中国専門家「尖閣侵攻で強さ見せつける」 “戦争”発言に凍りついた瞬間 産経新聞 2014年2月23日(日)9時1分配信
スイスで1月に開かれた「世界経済フォーラム年次総会」(ダボス会議)で、取材にあたった米メディア幹部がぞっとする「影響力を持つ中国人の専門家」の談話を伝えた。
この専門家は「多くの中国人は尖閣諸島への侵攻で軍事的な優位を地域に見せつけ、シンボル的な島を確保することができると信じている」と語った。
世界大戦の引き金になりかねない話の行方に、周辺は凍り付いたという。>
つまり、多くの中国人は、尖閣侵攻は「よいこと」と考えている。
<テーブルの出席者は静まりかえり、マイクを握った参加者の1人が
「岩だけで価値を持たない島のために世界戦争を起こす可能性を認識しているのか」
と質問したところ、この専門家は「理解している」と回答。
尖閣諸島はシンボル的な価値があると繰り返した。>(同上)
実をいうと、これは「過激右翼の少数意見」ではない。中国を頻繁に訪れるロシア人たちに聞くと、「日本との戦争は不可避。戦争になっても中国は絶対負けない!」という機運が満ち満ちているという(中国人は、「ロシア=味方」と思っているので、ロシア人には本音をもらす)。
日本人には信じられない話だが、むこうはとっくに「戦争準備」を進めている。10年から現在に至るまでの中国の動きは、すべて「尖閣強奪」に向けた「計画的行動」と見るべきなのである。
日本が中国の脅威を克服するには
次に、日本が中国の脅威を克服する方法を考えてみよう。これは、簡単だ。日米同盟が強固であればいい。衰えたとはいえ、米国一国の軍事費は、世界総軍事費の40%以上を占めている。中国は、既に軍事費世界2位だが、それでも米国の5分の1の水準に過ぎない。そして日本は、(米国に見捨てられた)グルジアやウクライナと違い、軍事費世界6位の強国である。
日本一国で、中国と戦えば勝てない可能性が高い。通常兵器での戦いには勝てるかもしれない。しかし、中国が「尖閣を渡さなければ、東京に核を落とす!」とこっそり恐喝したらどうだろう?日本の政治家は「やれるもんならやってみろ!」と言えるだろうか?だが、日米が一体化して中国と戦えば、必ず圧勝できる。そう、大切なのは「尖閣有事の際、米国は日本を助ける可能性が高い」と中国が信じることなのだ。それが、尖閣侵攻を思いとどまらせる抑止力になる。
では、「日米同盟」は「強固」なのだろうか?日本国民全員が、「昔ほどではない」ことを知っている。「日米中正三角形主義者」の鳩山由紀夫元総理、そして自称「人民解放軍の野戦軍司令官」の小沢一郎氏が、ぶち壊したからだ。安倍総理は、必死に日米関係改善を目指しているが、「右翼」「軍国主義者」「歴史修正主義者」など、不本意なレッテルを貼られて苦しんでいる。
どうすれば日米同盟を決定的に「強固」にできるのか?その答えが「集団的自衛権行使」だ。
「日米安保」とは「日米軍事同盟」のことである。しかし、両国の関係は対等ではない。日本が他国から攻撃されたとき、米国は日本を助けなければならない。ところが、米国が攻撃されたとき、日本は米国を助けてはいけないのだ。これは、「保護者」と「子ども」の関係である。
では日本が「集団的自衛権」の行使を認めればどうなるか?日本が攻撃されたとき、米国は日本を守る。米国が攻撃されたとき、日本は米国を守る。これは「大人の関係」「同志の関係」「対等な関係」である。
考えてほしい。「私(日本)が襲われたら、あなた(米国)は命をかけて私を助けなさい!でも、あなた(米国)が襲われたとき、私(日本)はあなたを決して助けないけどね!」こんなことを公言している国を本気で守ろうと思うだろうか?しかし、「私(日本)が襲われたら、あなた(米国)は命をかけて私を助けてくれる。そのかわり、あなた(米国)が襲われたら、私(日本)も、命をかけてあなたを守りましょう!」
こうなってこそ、日米同盟は強固なものなる。そして、中国は尖閣を侵略することが、とても難しくなるのだ(だから、集団的自衛権に関して、必死で反対している)。
似て非なる「憲法改正」と「憲法解釈変更」
「集団的自衛権」行使を認めるためには、大きく二つの方法がある。一つは、「憲法改正」すること。もう一つは、「憲法解釈」を変えること。この二つは似ているように見えるが、結果はとても異なる。
まずは「憲法改正」。ここで筆者は米国製「日本憲法」を神聖視していないことを強調しておく。しかし、だからといって、情勢を考えずドンドン変えればいいわけではない。「憲法改正」は、それが「米国製」であるが故に問題が起こる。つまり、中国、韓国だけでなく、米国もまた「米国製日本国憲法」の改正には反対なのだ。
米国はこう考える。「なぜ日本は、米国製憲法を改定したいのか?常識的に考えれば、米国の支配から脱却したいからだろう」。
たとえば、米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員は13年7月、安倍総理について、「河野・村山両談話の継承と靖国不参拝を明言するべき」「安保政策では、憲法9条改正よりも集団的自衛権の行使容認を優先すべき」と語った。つまり、「憲法改正」は「脱米国」なので「悪」。「解釈変更」による「集団的自衛権行使容認」は「善」であるということだ。
「憲法改正」は、確かに「脱米国」であり、多くの日本人の願いでもある。ところが、日本は今、中国と戦争前夜にある。そんな緊迫した時期に、わざわざ中国と米国二国を敵に回すのは自殺行為だ。
また、安倍総理の「靖国参拝」時の反応を見てもわかるように、米国が反対すれば、欧州もオーストラリアも同調する。つまり、「憲法改正」は、中国、韓国だけでなく、米国、欧州、オーストラリアなども敵にまわすリスクがある。おそらく、「安倍は軍国主義者、右翼、歴史修正主義者!」と、再び世界的反日プロパガンダが展開されることだろう。そうなると、ほぼ確実に「さよなら尖閣!」である。
一方、「憲法解釈変更」による「集団的自衛権行使容認」は、米国も歓迎している。なぜか?これも常識的に考えればわかる。日本には今も、「個別的自衛権」はある。だから、中国が攻めてきたら反撃できる。では、集団的自衛権は何のためなのか?普通に考えれば、「同盟国の米国をもっと助けるため」となるだろう。集団的自衛権行使容認にも、中韓は猛反発している。しかし、米国、欧州、オーストラリアなどは反対しないので、日本は孤立しない。よって、尖閣を奪われることもない。
ただ、日米政府が「集団的自衛権」を拡大解釈し、自衛隊が米国の戦争に駆り出されるリスクは確かにある。ちなみに「アフガン戦争」は「アルカイダが米国を攻撃した」ことに対する、「自衛権の発動」と解釈されている。
そして、「集団的自衛権行使」によって、NATO軍も参加した。日本が当時、既に「集団的自衛権行使」を認めていれば、当然戦闘に参加することになっただろう。そういうリスクを考えてもなお、筆者は集団的自衛権行使を認めるべきだと考える。
プーチン・ロシアとの関係改善が日本を守る
「集団的自衛権容認」で、日米同盟は強固になり、中国は尖閣侵略を躊躇するようになるだろう。仮に侵略を企てても、日米で撃退できる。しかし、もう一国、とても気になる存在がいる。それが、プーチン・ロシアだ。
ウクライナ問題で孤立したプーチンは、中国に急接近している。日米vs中国であれば、日米は圧勝できる。しかし、日米vs中ロであれば、どちらが勝つかわからない。だから、「日本は、中ロを分裂させ、ロシアを日米陣営にひきずりこまなければならない」。こう主張しているのは、「世界3大戦略家」といわれるエドワード・ルトワック氏である。同氏は、「自滅する中国」の中で、「日本は生き残ることができるか?」についてこう書いている。
<もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。>(自滅する中国188p)
要するに、ルトワック氏は、「ロシアが日米側につくか、中国につくかが勝敗を決める」といっているわけだ。だから日本は、中ロを分裂させるため、今秋予定されているプーチンの日本訪問を実現させるべきだ。しかし、その前に、プーチンとケンカしているオバマ大統領にルトワックの本を読ませよう。そして、「プーチンを招くのは、米国が永遠に覇権国家でいるためです。中ロを同時に敵にまわしてはいけないと、世界3大戦略家がいっています!」と説明し、宗主国を懐柔しなければならない。これがもっとも大変なのだが…。
http://diamond.jp/articles/-/55118
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