http://www.asyura2.com/15/senkyo188/msg/510.html
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現行の自衛隊法第76条には、日本の自衛隊が武力行使をしてもよい条件が書かれています[1]。
自衛隊が武力行使するための出動を、「防衛出動」といいます。
自衛隊法の第76条では、自衛隊が武力行使するために「防衛出動」してよい条件は、日本に対する武力攻撃があったか、武力攻撃されることが明白な事態であることと決められています。
それでは、自衛隊法の第76条にもとづいて、「防衛出動」した自衛隊の武力行使の内容には、自衛隊法では、どのように限定されているのでしょうか。
じつは現行の自衛隊法の第88条には、自衛隊は防衛出動した場合に武力行使をしてもよいと書かれていますが、その際の武力行使の内容の限定には、国際法や国際慣例を守ること、必要と判断される限度をこえてはならないということしか書かれていません[1]。
「防衛出動」以外では禁じられている他国軍隊と一体化した武力行使は、「防衛出動」の場合には禁じられていません。
また、自衛隊が武力行使してもよい地理的範囲は、自衛隊法では明文で制限されていません。
従来の政府の憲法解釈では、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるとしてきました[2]。
しかし、日本の領域内での実力行使のみでは外部からの不正な侵害を完全に排除できることは少ないと考えられるので、政府は従来から、こうした場合には、自衛隊は必要に応じて領域外、すなわち公海または公空において行動し、対処することも許容されると解してきました([3]p.41)。
さらに政府は、必要やむを得ない場合には、自衛のための行動が日本の周辺の公海・公空を超えて他国に及ぶことが許されないわけではなく、敵国のミサイルによる攻撃を防御するために、その発射基地の攻撃、すなわち敵基地攻撃も自衛隊が行い得る必要最小限度の武力行使の範囲であるという見解をとってきました([3]p.42)。
このような見解を受けて、自衛隊法では「防衛出動」した自衛隊の武力行使について、その地理的範囲や内容を、明文的に制限していません。
つまり、自衛隊法では、自衛隊が「防衛出動」ができる条件は厳しいものの、「防衛出動」した場合に、公海・公空や、他国の領土、領海、領空で武力行使することは禁じられていません。
このことを利用して、安倍内閣では、自衛隊法第76条を変更して、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」においても、自衛隊が「防衛出動」して、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵できるようにする法案を提出しました[4]。
安倍内閣は、この法案を成立させることにより、米国、韓国、オーストラリア、フィリピン、台湾などの国や地域とともに、日本はフランスやドイツが加盟しているNATO(北大西洋条約機構)のような多国間軍事同盟に加わっている国々と同じようなの軍事作戦を、アジア・太平洋地域における軍事作戦で可能にしようとしています。
その背景には、米国はアフガン戦争やイラク戦争で生じた米軍の地上部隊の損失を避けるため、米国には、今後起こるかもしれない、第二次朝鮮戦争や台湾戦争、フィリピン戦争では、地上部隊の主力を日本や韓国、オーストラリアに担わせようとする戦略があります[5−7]。
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【参考文献】
[1]自衛隊法(現行法)
(防衛出動)
第七十六条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認め られるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成十五年法律第七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
2 内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。
(防衛出動時の武力行使)
第八十八条 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。
2 前項の武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。
(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO165.html)
[2]防衛省・自衛隊「憲法と自衛権」
憲法第9条の趣旨についての政府見解
自衛権を行使できる地理的範囲
わが国が自衛権の行使としてわが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使できる地理的範囲は、必ずしもわが国の領土、領海、領空に限られませんが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので、一概には言えません。
しかし、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されないと考えています。
(http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html)
[3]阪田雅祐(著)『政府の憲法解釈』(有斐閣,2013).
[4]我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案
(自衛隊法の一部改正)
第七十六条第一項中「我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた」を「次に掲げる」に、「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」を「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」に改め、同項に次の各号を加える。
一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態
二 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18905072.htm)(本文)
[5]同盟国として米のリバランスをどう補完 元防相
(エコノミックニュース,2015年6月23日)
森本敏元防衛大臣(拓殖大特任教授)は22日、衆院安保特別委員会で参考人出席し、「政策論の観点から重要と思われる点を指摘したい」としたうえで、安保法案を成立させなければならない事務的根拠と具体的な根拠(安全保障環境の変化)をあげ、安保法制整備の必要を指摘した。
(http://economic.jp/?p=50456)
[6]米リバランスは多国間で補完を 前防衛相、拓殖大学特任教授・森本敏
(産経ニュース,2014年3月18日)
(http://www.sankei.com/economy/news/140318/ecn1403180059-n1.html)
[7] 多国間協力で「日米」補完 拓殖大大学院教授 森本敏氏
どこへ行く 日本の安保 インタビュー(上)
(日本経済新聞,2010年11月30日)
「米国は基本的にこの40年間、ソマリアやイラク、アフガンなどいたるところで戦争を続けてきた。海空軍は一度も負けていないが、陸上兵力は傷つき、疲弊している。その傷を癒やすため、今後、容易には陸上兵力を伴う軍事介入はしなくなるのではないか」(森本敏氏)
「中国が軍事力を強めるにつれ、これからアジアを舞台にした米中の攻防が激しくなる。日本は地政学的に米中の中間にいるので、真っ先に中国軍の脅威にさらされる」(森本敏氏)
「日本は日米同盟を強化するだけでは足りない。中国軍の増強などに懸念を持つ韓国や東南アジア諸国、インド、オーストラリアとも連携しなければならない。そうした国々との多国間協力を強めることで、日米同盟を補完するしかない」(森本敏氏)
(http://www.nikkei.com/article/DGXDZO19110000Q0A131C1PE8000/)
[8]自由民主党・安全保障法制整備推進本部
第4回 安全保障法制への取組み(森本敏拓殖大学教授/前防衛大臣)
米国が、日本の集団安全保障問題を「歓迎し、支持する」と言っている理由は、米国がリバランス政策にもかかわらず、国防予算の厳しい状況に直面し、米国のアジア太平洋におけるプレゼンスに充当しうるアセットが減っていくということが避けられないこと及びアジア太平洋において日米間で各種の共同訓練が常続的に行われ、米国にとっては部隊運用上と後方活動の両面にわたって日米協力が作戦基盤となっているということによるものであり、米国は日本の支援と協力が一層充実されることを期待していることによるものと思います。
(http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/national_security_act/124707.html)
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