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マイナンバーは赤字健保を救えるか 高齢者医療の負担、ダラダラIT活用では無理
2015年6月18日(木)飯山 辰之介
実家にいる記者の祖母は90歳となった今もかくしゃくとしている。一人で家事をこなし、毎日散歩に出かける。今はさすがに止めたが数年前まで車の運転もしていた。丈夫な身体に恵まれ、明るい性格で前向きに生活できるのが元気の秘訣なのだろうと思う。
ただ、祖母が健康なのはそればかりではない。実家に帰省したある日、記者は驚いた。医師からもらった大量の薬を祖母はストックしており、自らの体調に合わせて飲んでいたのだ。クッキーの箱に入った薬の量は明らかに過剰だ。こうした大量の薬と、毎日のように通う様々な病院の医師のおかげで、祖母は健康を維持しているともいえる。
祖母がいつまでも達者でいることは孫である私にとっては本当にうれしいことだ。ただクッキー箱に収められた明らかに多すぎる薬の代金と、複数の病院に通う際の診察代はどれほどになっているのだろうか。高齢者の医療費は増大しており、その負担により我々のような企業の会社員が加入する健康保険組合(企業健保)は大赤字に苦しんでいる。複雑な思いもよぎった。
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大幅赤字に苦しむ健保
企業健保の財政は悪化の一途を辿っている。健康保険組合連合会の早期集計によれば、2015年度は1384組合のうち、945組合が赤字になる見通し。ちなみに全体では2008年度以来、8期連続の赤字が続く。保険料率を引き上げた組合は2008年から200組合を下回ることはない。積立金の取り崩しでは足りず、毎年料率を引き上げざるを得ない組合も少なくない。一人当たりの年間保険料は15年度に約48万円と2008年度の約38万円から10万円も増える。
健保の赤字が膨らむ最大の要因が、「後期高齢者支援金」、「前期高齢者納付金」という高齢者の医療費負担だ。その割合は2015年度で健保の経常支出の4割を上回る見通し。各健保は増大を続ける支援金、納付金負担を賄うために保険料率を引き上げざるを得ない。
「保養所の売却や組合員への健康サービスの削減ではまかないきれない。積立金も底をつきそうだ。保険料率の引き上げてなんとかしのいでいる」。こう語る健保関係者は多い。「保険料は給料から天引きなので、毎年上がり続けていることに気が付かない組合員も多い。消費税よりも反発が少ない財源だと(国は)見ているのではないか」と批判する関係者もいる。
もう一つの不均衡
高齢者の医療費の増加と、それを支える就労人口の減少は以前から指摘される課題だが、不均衡はそこだけにはない。目をインターネットやIT(情報技術)など最先端分野に移すと、実はそこでは国民の健康増進や医療費の削減に寄与するであろうサービスが次々と生まれている。こうしたサービスがスムーズには高齢者に行き渡らないところにも、課題があるのではないかと思う。
たとえば2012年に設立されたネット関連企業のFiNCは遺伝子検査や薬剤師、栄養士による健康指導や食事指導、スポーツトレーナーによる運動管理など一連のサービスをスマートフォンを通じて提供している。個人向けサービスが中心だったが、昨年末には法人向けに進出。企業や健保での採用が増えているという。健康、医療情報をビッグデータとして解析し、その向上に役立てたり、一人ひとりのデータに基づいて健康指導などを提供したりする企業はベンチャー、大手を問わず数多く生まれている。だが、こうしたネットIT関連の新サービスが高齢者の間ではうまく普及が進んでいないのではないか。
若年層ではスマホなど最新端末の普及が進んでおり、新しい技術やサービスを利用する心理的なハードルも低い。ただ高齢者の場合は医療・健康系サービスの需要が高い一方で、端末の普及、サービスの利用ともに若年層よりハードルが高い傾向があるだろう。FiNCは「高齢者向けは正直まだ弱い。サービスを提供したいという思いはあるが、スマホの普及がまだ進んでいないなど、(サービスを提供する)とっかかりがない。将来的にはデバイスごと貸与して展開する方法も検討している」(広報担当者)という。
制度整えば一気に普及の可能性
民間での普及が難しいのならば、国や行政が動く必要がある。ただヘルスケア分野でのネットIT活用の歩みは遅いように思う。ようやく国家戦略特区で病院や薬局に行かなくてもスマホやパソコンで医師の処方箋が必要な医療用医薬品を買えるようにする規制緩和策が登場しそうだが、ドラッグストアなどで買える一般用医薬品(大衆薬)のネット販売すら、実現するのに大変な紆余曲折があり、実現までに約5年もかかった。その間、ネット販売に否定的だった厚生労働省は裁判まで戦っている(最高裁で敗訴)。
大衆薬のネット販売は解禁されたが、処方薬については議論もほとんどないままに禁止されている。一方で、薬の購入履歴を電子的に管理するサービスは楽天傘下で医薬品ネット販売を手掛けるケンコーコムやパナソニック、電通などが既に展開している。処方箋の電子化とか、それを活用した処方薬のネット販売などが実現すれば、上述の企業だけでなく多くの新規参入が見込めるだろう。医師や薬剤師の指導を仰げるなど、付加価値を高めたサービスの登場も期待できる。
最新のネットIT関連の健康、医療サービスと高齢者とを結びつける一つの方策として、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度の活用が挙げられる。これを健康、医療分野のプラットフォームとして整備し、そこに情報管理の審査などを経たうえで民間のサービスを接続できるようにすれば、幅広い人々に最新のサービスを提供できるかもしれない。マイナンバーが医療・健康サービスの出発点になり得るわけだ。
年金の個人情報流出などでマイナンバー制度に対する不安は高まっているが、新しい技術、イノベーションを活用して医療費の増大に歯止めをかけなければ制度は破たんしてしまう。少なくとも、大衆薬のネット販売に5年もかけるような悠長なことを続けるわけにはいかないだろう。
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/061700002/
- 年を取って病院へ行く回数が増えると、出費もどんどん増える? rei 2015/6/18 07:10:40
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