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H3ロケット 再挑戦成功! 衛星打ち上げビジネスで世界と競うには 何が課題となるのか解説します/水野倫之・nhk
2024年02月20日 (火)
水野 倫之 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/491925.html
去年初号機の打ち上げに失敗した日本の新型の大型ロケットH3が打ち上げ再挑戦に成功。小型、大型と相次ぐ失敗で危機的状況だった日本の宇宙開発はギリギリのところで踏みとどまった。ただ当初予定より3年遅れでようやくスタートラインにたてた状況で、衛星打ち上げビジネスで世界と競うには多くの課題を乗り越えなければならない。
きょうは、
▽再挑戦へ異例の対策
▽激変する衛星打ち上げ市場
▽世界と競うには
以上3点から新型ロケットへの期待と課題について、宇宙担当の水野倫之解説委員が解説。
先週、種子島宇宙センターから打ち上げられたH3の2号機。順調に上昇し、補助ロケットに続いて、第1段のメインエンジンを分離。
その後、初号機失敗の原因となった第2段エンジンにも無事点火。燃焼を終えてロケットは予定の軌道に乗り、搭載した衛星全てを分離し打ち上げは成功。
JAXAの岡田プロジェクトマネージャは「ようやくおぎゃあと産声をあげることができた。すごく重い肩の荷が下りた。」と安どの表情を見せた。
それもそのはず、今回の打ち上げ再開に日本の宇宙開発の命運がかかっていたからだ。
H3は今後20年間、日本の宇宙輸送の主力となるロケットとして、JAXAと三菱重工業が共同開発。これまでの主力 H2A より衛星搭載能力が3割アップ。
H3を新規開発したのは、H2Aが成功率98%と信頼性は高かったものの打ち上げコストが1回100億円と高く、商業打ち上げは5回にとどまり、衛星打ち上げビジネスで苦戦を強いられたから。
これを教訓にH3は、H2Aの半額の50億円が目標に。例えば心臓部の第1段メインエンジンの部品を3分の1に減らし、構造をシンプルにしてすることで信頼性とコスト削減の両立を目指し、当初より2年遅れとなったものの、去年3月初号機の打ち上げにこぎ着けた。
5か月前に小型のイプシロンロケットが失敗していた分、期待も高まったが、あえなく失敗。原因はH2Aでも使われ、一部を改良した第2段エンジンに着火しなかったことだった。
JAXAや三菱重工では地上で再現試験を繰り返して原因究明を進めた結果、点火装置のショートなどが直接の原因と判明。
そのシナリオとして、打ち上げの衝撃で点火装置の部品が損傷したケースや電子部品の電圧が想定を超えたケースなど3つに絞り込んだ。
そしてここから、政府とJAXAは再開に向け異例の対応を取る。
シナリオを一つに絞り込むことまではせず、すべてに対応できるよう部品の絶縁強化などの再発防止策を取った。
また今回、搭載予定だった大型の地球観測衛星はのせず、かわりに同じ重さのダミー衛星を搭載するなど信頼性確認に徹して打ち上げに再挑戦し、リベンジを果たしたわけ。
この異例の対応によって、地球観測衛星の打ち上げがさらに遅れるなど、ただでさえ初号機の失敗で影響を受けた日本の宇宙利用の影響が拡大することにもなった。
ただ、原因を最後まで絞り込まなかったことで打ち上げ再開を早めることができたほか、H3の信頼性の確認もできて、衛星打ち上げ市場参入へ何とか踏みとどまることができたわけで、妥当な判断だったと思う。
ただ失敗、再挑戦と足踏みし当初から3年遅れる間に、世界の衛星打ち上げ市場は激変した。
まず、衛星打ち上げ需要が急増。特に重さ数百キロ以下の小型衛星を多数打ち上げて地球規模の通信網を構築したりするサービスが急拡大。
アメリカの起業家イーロン・マスク氏のスペースX社はすでに5000機以上を打ち上げ、世界のほぼどこでも高速のネット利用を実現、日本でもサービスの利用が増えている。
また日本の複数のベンチャーも小型衛星でビジネスを始めており、通信や災害時の観測、それにロケットの残骸などいわゆるスペースデブリの観測を行うなどビジネスの範囲も広がりを見せている。
こうした小型衛星の打ち上げは、今では年間2000機を上回っており、さらに増えるとみられる。
これに伴い、世界のロケット打ち上げ回数も増え続け、去年は212回成功と、過去最多を更新。
最も多いのがアメリカ、中でもスペースX社が96回と最多、数日に1回のペースで打ち上げていて、ひとり勝ち状態。主力ロケット・ファルコン9の機体を再利用することで、打ち上げコストを削減。低コストと早さを武器に、日本を含む世界から多くの衛星を受注している。
これに対して日本は去年、H2Aの2回の成功にとどまり、世界との差は歴然。
H3にチャンスは残されているのか。
実際のところ、スペースXとすぐに真っ向勝負するのは現実的ではないと思う。
ただ衛星打ち上げ需要は旺盛で、スペースXだけで打ち上げきれるわけではなく、まずはこうした衛星をヨーロッパなどのロケットと競って、とっていき、力をつけていけるかが当面の勝負になると思う。
私は対応を急げば挽回は十分可能だと思う。
というのもウクライナ危機でロシアが衛星の打ち上げサービスを停止し、影響でロケット不足は続いている。いずれJAXAから移管を受けて商業打ち上げを行う三菱重工に対しても世界の衛星事業者からH3の再開状況について問い合わせがきつづけているといいます。
また円安も当面は続きそうで、ドル建てで海外の衛星事業者と契約することを想定しているH3にとっては有利な状況が続くわけで、このチャンスをものにしなければならない。
そのためにはH3も低コストと早さを早期に実現しなければならない。
まずは目標価格50億円の早期達成。
今回は信頼性の確認を優先したため、メインエンジンも安全に余裕を持たせてあり50億円は達成できていない。今後エンジンの主要部品を3Dプリンターで自動成形してコスト削減することも計画され、三菱重工は15号機までに達成したいというが、地上試験を急ぐなどしてエンジンの仕様の無駄を省き、達成時期を前倒ししていかなければならない。
また電子部品などに、より多くの民生部品を利用して、コストを下げていくことも必要。
そして衛星事業者が打ち上げたい時に打ち上げられる早さも重要で、そのためにも打ち上げ回数を増やせる発射場が必要。
今、種子島宇宙センターではH3の移動発射台は一つ、機体を追尾する設備も別の発射場と共用で、年間6回の打ち上げが限界だという。これを少しでも増やせるよう、こうした施設を充実させる必要。
ただコストもかかる。
政府は去年、民間の商業化を支援するため3000億円の宇宙基金を作った。どんなプログラムを支援するかは今後日本としての戦略を策定して決めていくというが、H3の商業化へこの基金の利用も検討するなどスピーディに対応していくことが求められる。
ここまでH3の課題をみてきたが、今回成功したとは言ってもようやくスタートラインに立てたにすぎない。まずは信頼性を上げていくことが最も重要。そのためにも今回の飛行データの解析を急いで今後の機体の調整に反映し、来年度予定している3回の打ち上げはもちろん、その後も成功を重ねて、信頼性を世界にアピールしていくことが求められる。
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