http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/622.html
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とても興味深い記事です。地球温暖化について、その真相の一部が暴かれていると言っていいかも知れません。
ぜひ、リンク元の記事もお読みください。
なお、この記事の著者の方の他の記事で、印刷禁止どころか、コピー禁止になっていてコピーできないため、阿修羅掲示板へ転載できないものが多かったのですが、今回のものはコピーが出来るものであったため、転載できました。
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/astron/astron3/astron3_P13-24.pdf
地球温暖化の太陽活動原因説
松田卓也(神戸大学名誉教授)
要約
近年メディアなどで盛んに話題になっている地球温暖化現象が、人間活
動による二酸化炭素のせいであるとする立場を、正統派とよぶとすると、
それに賛成しない懐疑派や否定派が無視できない程度に存在する。本稿で
は地球の気候は、太陽活動と銀河宇宙線によって決まるとするスベンスマ
ークの説を紹介する。この立場を彼は宇宙気候学と名付けた。地球史的に
は 6千万年ほど前から気温は低下し続けており、現在が特に高温ではない
ことを述べる。そして地球温暖化問題の政治的意味についての私見を述べ
る。さらに 2008年 5月に幕張メッセで開催された「地球温暖化の真相」と
題するシンポジワムの報告もする。
はじめに
地球温暖化問題が科学的のみならず、政治的にも大きな問題になってい
る。国連の主催する「気候変動に関する政府間パネルJ(IPCC)では、世界
中の多くの科学者を集めて地球温暖化問題を研究し、近年の地球温暖化の
原因は人間の活動に伴って排出される温暖化ガス、とりわけ二酸化炭素で
あるとしている。その結論に基づき、西欧、日本を中心とする政府は、二
酸化炭素削減に取り組む計画を立てている。またメディアの報道も、この
立場一色である。
ところが IPCCの結論に賛成しない人々もいる。たとえばアメリカのブ
ッシュ政権は、 IPCCの結論に賛成せず、従って京都議定書も批准していな
い。もっともブッシュ政権は科学的な理由と言うよりは、政治・経済的な
理由に基づいて反対しているのであり、アメリカでも科学者やメディアの
多くは IPCCの結論に同意している。地球温暖化問題はアメリカのアル・
ゴア元副大統領が推進してきたものであり、民主党の路線でもある。アメ
リカでもブッシュ政権が異常なのであり、近い将来にアメリカは民主党政
権になるとすれば、ヨーロッパと共同歩調を取る路線に戻るであろう。ち
なみに二酸化炭素を今後は大量に排出するであろう中国もインドも京都議
定書を批准していない。これが発展途上国の立場である。
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地球温暖化問題に関する懐疑派、否定派
科学者の中にも IPCCの結論に疑問を唱える人々が、無視できない程度
に存在することをご存じであろうか。ここで地球温暖化問題を次の 3点か
ら考えてみよう。
1) この 100年程度で地球の平均気温は大幅に上昇しているか。つまり地
球温暖化現象は本当に存在しているか。
2) 地球が近年、温暖化しているとしても、その原因は、人間活動に基づ
いて発生した二酸化炭素などの温暖化ガスか?
3) 地球が今後 100年程度で数度 C温暖化したとして、それが人類に取っ
て有害か?
この 3つの質問すべてに対してイエスと答える人々を地球温暖化問題の
肯定派あるいは正統派とよぶことにする。それに対して、この 3つの質問
のいずれかに疑問を呈する人たちを懐疑派左呼ぶことにする。またこの 3
つの質問のいずれかに、完全にノーと答える人たちを否定派とよぶことに
する 1,2,S)。
まず私の立場を明らかにしておけば、私は懐疑派である。地球狙暖化は
起きているであろうが、その原因は後に述べるように太陽などの宇宙現象
と関係しているのではないかと推測している。しかし確証はない。メディ
アでは「地球温暖化の原因は人間起源の二酸化炭素であることは科学的に
確証された、いまは議論の時ではなく行動の時である」といった論調が主
流である。私は「それは本当なの?J と問うているのである。
正統派からは、懐疑派は石油産業から金をもらっているとか、プッ、ンュ
の犬であるとか、疑似科学者であるとか、不正義であるとか見られること
が多い。今や地球温暖化問題は科学的な議論より、国益か否かという政治
的基準、儲かるか損をするかという経済的基準、信じるカ吋言じないかとい
う宗教的基準、正義か不正義かという倫理的基準で語られることが多い。
私の立場は、地球温暖化の原因はまだよく分からないので、まだまだ科学
的議論が必要だというものである。
この問題を調べ始めると、日本のマスメディアが喧伝するほどには、議
論は決着がついていないことが分かる。欧米のネットを調べると、激しい
論争が延々と続いている。懐疑派、否定派が結構多いこと、それも結構著
名な学者にも多いことが分かつた。例えば、後で紹介するのだが、日本の
有力な地球物理学者、宇宙物理学者に懐疑派、否定派がいる。オーロラ研
究で有名なアラスカ大学名誉教授の赤祖父とか、日本気象学会の元理事長
の康凶とか、そうそうたる人物もその中に含まれる。次の章で、私がどの
ようにして、この泥沼のような問題に足を踏み入れたかを述べよう。
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私の地琢温暖化問題
私がこの問題に関心を持ったのは、国際政治ウオッチャーの田中宇(たな
かさかい)氏のホームベージを読んだときである。田中氏は公刊された情報
から世界政治の裏側を読むというスタンスで毎週、興味あるニュースを配
信している。そのなかで問中氏は場違いとも思える「地球温暖化のエセ科
学」というタイトノレで、地球温暖化の正統派を批判する記事を書いた (2007
年 2月初日号)ぺ調べてみると、問中氏はすでに 10年ほども前から同様
の主張を繰り返している町。田中氏の地球温暖化正統派への疑問は、主とし
て西欧の政治的動機への疑問から来ているのだが、その記事の中で私はマ
ンのホッケーースティ yタ図とかスペンスマークの理論を始めて知った。
マンのホッケー・スティック図とは、過去 1000年間の地球の平均気温を
樹木の年輪などから割り出したグラフである。この図では 1000年から 1900
年までは、気温はほぼ一定であるが、 20世紀になって急に気温は上昇して
いると読み取れる。この図を IPCCは、その報告において地球温暖化の有
力な証拠として採用した。しかし、歴史的に明らかな中世温暖期や江戸時
代初期の小氷期などの存在が無視されているとして批判もされている九
つぎに私の目を引いたのは、物理学会誌に掲載された槌回敦氏の論文で
ある。そこでは近年の平均気温と一酸化炭素の変化の関係を示したキーリ
ングのグラフを示し、まず気ILilが k昇してから二酸化炭素量が増えている
ことを主張した。つまり三酸化炭素が気温上昇の原因ではなく結果だとい
うのである九槌田氏は個性の強い研究渚として毅誉褒販があり、氏の主張
をそのまま信ずるわけにはいかないが、私は正直、ヘエーそんな考えもあ
るのだと思ってしまった。
天文学者ならだれでもその名前を聞いたことがあるであろう、英国のマ
ーティン・リースはその著書の中の「いまだに不明な気候要因の変動」と
題した章の中で、中世温暖期にはグリーンランドで農耕が行われ、小氷期
にはテムズ川が凍ったことを例に挙げて、その原因を太陽活動に求めてい
る。彼は次のように記しているぺ
『黒点やフレア活動の有無が気候になぜこれほどの影響を与えるのか、
本当のところ誰も知らない白黒点は太陽の磁気活動とフレアに関連してい
る。フレアは地球に衝突する高速度の粒子を発牛A させているが、粒子自体
が選ぶ太陽エネルギ}はごくわずかにすぎない。しかし、大気圏上層部に
「増幅器」のようなものがあり、その作用で粒子が雲量に大きな変化を与
える、という可能性を考えてみても良いのではないか。
いまは説明が付かないからと自の前の証拠を退け、科学者はこれまでさ
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んざん墓穴を掘ってきたのだ。この最たる例が大陸移動説である。ジグソ
ーパズノレのごとく、ヨーロツノ対ミらアフリカにかけての海岸線と南北アメ
リカの海岸線がぴたりと合い、その様はかつてそれぞれの大陸がひとつに
つながっていて、それがのちに分裂して移動していったかのように見える。
1960年代までは、だれひとりとして移動のメカニズムが分からず、地球物
理学界の大御所陣も目の前の証拠を無視し、洞察力がないため思いっかな
い何かが作用して、大陸が移動したとは認めようとしなかった)0 ~
スペンスマークの地球温暖化太陽原因説
昨年 2月に英国王立天文学会の会誌である A&Gに、デンマークの太陽気
候センター所長の H.スベンスマークの解説論文が現れたヘスペンスマー
クの説の重要点は次のようなものだ。
太陽活動に伴って作られる太陽表面の磁場が太陽風によって地球に運ば
れる。その磁場は、銀河宇宙線を跳ね返す作用がある。銀河宇宙線は地球
大気をイオン化する。イオン化された大気は雲の凝結核を作る。雲が出来
ると太陽光に対する反射能(アノレベド)が増大する。すると気温が低下する。
つまり太陽活動が増加すると、地球近辺の磁場が強くなり、地球に到達す
る銀河宇宙線が減少し、雲が少なくなり、気温が上昇する。実際 20世紀は
太陽活動が盛んな世紀であった。
太陽活動と気候の関係を示唆したのはスペンスマークが初めてではない。
彼の論文の新しい点は、銀河宇宙線強度と低層の雲量に相闘があるという
観測結果を示したこと、また放射線が雲の凝結核をつくるという実験結果
を示したことにある白
スベンスマークの論文は、長い間、気象関係の学界からは冷遇され、リ
ジェクトされてきた。しかし、英国のある雑誌で掲載決定になってから、
とくに天文学者の注意を引いた巴それが、地球温暖化問題が英国王立天文
学会誌という一見場違いな雑誌に、彼の解説論文が掲載された理由である
ようだ。
従来の気候学の立場は、地球の気候は地球内部の要因によって決まると
する内因説であると規定するなら、スベンスマークの説は外因説といえる。
外因説をさらに推し進めた天文学者がいる。全球凍結のような大氷河期は
太陽系が銀河の渦状腕に突入すると発生するとシャピプは主張した問。銀
河の腕の中は星生成が盛んで、銀河宇宙線も多いからである。さらに、わ
れわれの銀河の伴銀河である大小マゼラン雲の接近も、地球の気候に影響
を与えるのではないかと推測している。
16
スベンスマークの実験は小規模なものであった。ジュネープにある
CERNの研究者たちは、その加速器を利用してスベンスマークの仮設を確
かめるために、 CLOUDという大々的な国際的共同研究を計画している。
もし地球気候の内因説が正しいなら、われわれ天文学者、宇宙物理学者
の出る幕はない。しかし、恐竜絶滅が内因説から隔石衝突による外因説に
変わったことを見ても、地球温暖化の宇宙起源説は捨てがたい。そうすれ
ば我々の出番なのである。
太陽活動と気候の関係
地球の気候が太陽に支配されていることは疑いようがない。しかしその
ことと、近年の地球温暖化が、近年の太陽活動の増大によるとはすぐには
いえない。しかし、太陽活動と気候が密接に関係しているという間接的な
証拠は多い。太陽黒点はガリレオが発見した。それ以後、黒点の数は詳細
に記録されている。それによると 17世紀にマワンダ一極小期とよばれる、
太陽総点がほとんど無い時期があった 11,回。それと小氷期とよばれる寒冷
期が一致している。
黒点、が増えると、太陽からの可視光の放射は、常識に反して増える。黒
点周辺の温度が上昇するからである。しかし放射の変化量はわずかであり、
これが気視に大幅な影響を及ぼすとは考えにくい。このことが、地球気候
に対する太陽の影響を無視する有力な理由とされてきた。スベンスマーク
の説は、太陽放射ではなく、太陽磁場の重要性を指摘した点で新しい。研
究者の中には、太陽紫外線の変化が重要な役割を果たすと主張するものも
いる。
地球史的な温度変化
最近、地球温暖化問題がかまびすしいので、現在はとてつもなく高温期
であるか、それに向かっていると思われるかもしれない。しかし、歴史的
に凡でも、先に述べた中世1日暖期は現在と同様、あるいはそれ以とに高温
であった可能性もある。
歴史時代からさらに遡ってみると、過去1.1万年前に地球は氷河期から
脱して閑氷期に突入した。今から 5-9千年前は気候最適期とよばれ、現在
より高温であった可能性がある叫。この時期にはサハラ砂漠に湖があり、
ワニやカパが住んでいた証拠がある。
さらに遡ると、過去数百万年前に地球は氷河期に突入して、十万年前後
続く氷河期と、その間に一万年程度続く関氷期を数十回も繰り返してきた
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国。現在の我々は間氷期の終わり近くにいると考えられる。この数百万年は
氷河期が常態なのであり、間氷期にいるわれわれはきわめて幸せな時期に
住んでいるといえるロというか、そんな高温期であったからこそ、人類は
栄えたのだといえるであろう。
これらの気候変動は、ミランコピッチ・サイクルとして知られる地球軌
道の変化によって起こされたと考えられている 16)。間氷期はすでに 1万年
を超えたので、時期的に考えれば、いつ氷河期に突入してもおかしくない
し、実際に 21世紀半ばには小氷期が再来すると主張する学者もいる問。ま
た人類による農業活動に伴った二酸化炭素ガスの放出が、氷河期の再来を
妨げているとする説すらある同。
もっと長期的な視点でみるなら、地球は温暖化しているどころか寒冷化
しているのである叫。 5億年前から現在に至る温度変化を概観すると、気
温は大きく変動してきた。その問、全地球が凍結するというとてつもない
氷河時代、全球凍結の時代が数度あったとされる叫。いっぽう過去 5千万
年前の始新世高温期には現在の気温よりはるかに高く、シベリアの平均気
温は 18皮 Cもあり、極地方には氷はなかった。現在の気温上昇など目では
ないのである。ではその当時は死の世界であったかというと、まったく逆
で、生命に満ちあふれた時代であった。一酸化炭素も現在の 10倍近くあっ
たのではないかと言われている。二酸化炭素の多さと高温は植物にとって
好適なので、植物は繁茂した。するとその植物を食べる生物が繁栄し、さ
らにそれらをエサにする肉食動物も繁栄した。生命一般にとっても人類に
とっても、 「温暖化は善、寒冷化は悪Jなのである。
今まで見たように地球史的に見て現在はとくに高温ではなく、長い目で
見れば、ほぽ一貫して寒冷化が続いているロしかし、もっと短い時間スケ
ールで見ると、ここ面年程度で温度上昇が起きていると言うことだ。
私の考える地球温暖化問題の真相
それではなぜ、地球狙暖化の危機が叫ばれるのか。それは人類、とくに
温帯地方に住んで、その温和な気候を利用して発展した先進国は、現在の
気候に適応しているからである。現在の気温上昇は地質学的な悠長なもの
ではなく、 100年程度の時間で起きる変動である。つまり、そのような気候
変動に先進国は適応できないのではないかという危機感が、地球温暖化問
題の真の原因であると私は考える。つまり先進国の人聞にとっては、現在
の温度、環境が最適であり、それを壊して欲しくないと考えているのだ。
田中宇流に言ってみよう。中国やインドなどの発展途上国は、これから
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化石燃料をもやして発展して、西欧先進悶並の生活をしたいと考えている。
しかし、先進国にとって見れば、これ以上、一酸化炭素を増やして現在の
環境を彼壊して欲しくないと考える。だから地球温暖化問題とは、政治的
に見るならば、ヨーロッパを中心とする先進国の既得権擁護運動であると
私は考えている。それに政治的正義の衣をかぶせたのが地球温暖化防止運
動である。田中字は、地球温暖化問題とは、西欧とくにイギリスの陰謀で
あるとさえ主張する。
つぎにこれらの主張は特に特異なものではなく、日本の著名な学者たち
によっても語られていることを次に紹介する。
『地球温暖化問題の真相Jシンポジウム
私は以上に紹介したような地球温暖化問題に関する私の疑問を、花山星
空ネットワークのメーリングリストで紹介した。すると、それを読んだ人
からの紹介で、東工大地球惑星科学教室の丸山茂徳教授が同様な考えの持
ち主だと言うことを知った。正直なところ、このメーリングリストの威力
に驚いた次第である。そこで丸山教授に連絡を取ったところ、教授は 2008
年 5月に幕張メ yセで聞かれる地球惑星科学合同大会で「地球温暖化問題
の真相Jと題するシンポジウムを計画しているので、私にも講演しないか
と勧められた。
そのシンボジウムの主催者とその講演者を見て驚いた。主催者には惑星
科学で有名な東大の松井孝典、天文学者で旧知の戎崎俊一、草野完也、寺
沢敏夫、評論家の桜井よし子などが名を連ねている。講演者の人選も度肝
を抜くものであった。科学者は当然として、鳩山法相や前原民主党元代表
を始めとする政治家、ジャーナリスト、官僚などが名を連ねている。もっ
とも正直なところ、政治家の二名(自民党の村上誠一郎と小野晋也)を除い
ては、普通の正統派の立場を述べるか、おざなりな話をしただけであった。
それより私が驚いたのは、これらの人々を駆り出した主催者の政治力であ
る。私が講演したのは、これら政治家やマスメディアの人たちが登場した
「世界の環境変動と 21世紀の国策Jと題したシンポジウムであったa
丸山の主張叫
丸山の基本的な主張は次のようなものだ。現在の地球温暖化の原因は、
三酸化炭素ではなく、自然的要因である。その有力な候補として太陽活動
が考えられ、そのメカニズムはスベンスマークの説が有力である。 20世紀
の太陽活動は非常に盛んであったが、現時点では黒点の数は極めて少ない。
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次の太陽サイクノレからは、太陽活動が弱まる可能性があり、 21世紀は温暖
化というよりは、寒冷化の可能性が高い。
人類の歴史をひもとくと、温暖化は善、寒冷化は悪である。中国の王朝
の崩壊は、寒冷化と軌をーにしている。寒冷化すると飢越になり、農民は
食べられなくなり、王朝に対して反乱を起こす。ロ}マ帝国の崩壊もそう
である。中央アジアが特に寒冷化に敏感である。地球が寒冷化すると、ま
ず中央アジアで食えなくなり、遊牧民が移動を始める。フン族が西進して
ゲノレマンを追いはらい、ゲノレマンはローマに入り込んで、ローマは滅んだ。
蒙古帝国の興隆も寒冷化が原因である。
21世紀の我々にとって真の脅威は瓶暖化ではない。地球人口の爆発的増
加である。 70年代にローマクラブがマサチュセッツ工科大学のメドウスた
ちに依頼して計算した、人類の未来予想図がある。この計算では、人口、
資源、工業生産、農業生産、汚染などの変数聞の関係を仮定して、これら
の変数が将来どうなるかを求める、システム工学的手法による未来予測で
ある。その結果、驚くべき事に、ほとんどの計算例において、人類の人口
は爆発的増加をして、資源を食いつぶし、汚染を増大させ、農業生産はや
がて減少する。そのため 2050年あたりに人口が 90億人程度に達し、それ
をピークとして、人口は年間 4000万人程度のわりで激減していく。それに
対して未来学者のトアラーたちは、そのシミュレーションを批判して、人
類は賢明だから、そのような事態にはならないと主張した。しかしほぽ 40
年後の現在、人口増加はローマクラブの予想とほとんど違わない。 トアラ
ーの主張は誤りである。
人類の今後の歴史は 2020年あたりが転換点で、資源と食料の減少が顕著
になり、 2035年を経て、 2050年のカタストロフィーIこいたる。温暖化は食
料生産の増加を通じて、その時期を少し遅らせるが、寒冷化は促進する。
化石燃料が枯渇した段階で、日本が維持できる人口は江戸時代と同様な 3
千万人である。西欧先進国では 2020年問題を真剣jに見据えて対策を取って
いるが、日本は危機感が少ない。少子高齢化対策で人口を増やす政策をと
っているが、本来は逆で、いかに穏やかに人口を 3せ千万人に軟着陸させる
かである。その危機感に基づき丸山は「百年生存学会」の設立を提言する。
私は丸山の言う 2020年問題の萌芽がすでに見えていると忠弘昨今の石
油、資源と食料の値上がりである。もちろんこれには様々な複雑な要因が
絡んでいる。しかし、最終的には人口増加による需要の増大と、資源枯渇
による供給の減少から、かならず資源と食料の値段は上がる。先進国はそ
れでも、しばらくはその富で、これらを買い続けるこ kは可能かもしれな
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い。真っ先に食えなくなるのは発展途上国である。すでに食糧暴動が出始
めている。その先にあるのは、大量の民族移動である。現在の国際関係か
らそれが難しいとしたら、必然的に戦争が起きる。 21世紀は戦争の世紀で
あると丸山は主張する。
その他の興味ある講演
私は残念ながら、初日に行われた科学セッションには参加することが出
来なかった。しかしその後の分野横断的なセッションは極めて興味深い物
であった。講演の中から私が興味を持ったものについて簡単に解説しよう。
科学技術文明研究所所長の米本昌平は脅威一定の法則を提案する。冷戦
時代には戦争の脅威があったが、冷戦の終駕とともに、別の脅威が必要と
なり、地球温暖化問題がそれであるという。冷戦は悪性の脅威であるが、
地球温暖化問題は良性の脅威である。冷戦に対して科学技術を動員した結
果は、膨大な核兵器の山という負の遺産である。しかし地球温暖化研究は
その予測が誤りであっても、省エネや公害防止のノウハウが残る。
富山大学の清家彰敏の「温暖化と寒冷化の経済現象の史的分析・-地球
経済の 2つの未来予想図」という講演で、清家は温暖化が進むと利用可能
な資源が豊富になり、リーダーシyプの分散化が起きるが、寒冷化が進む
と資源が不足して、リーダーシップの集中化がおきて、例えば欧州におけ
る絶対王政が登場する、と述べた。
宮山大学の大藤茂は「組織の本能と現代」と題して、機能体(ゲゼノレシャ
フト)と共同体(ゲマインシャフト)について論じた。機能体とは大学、会社、
役所、軍隊のように、何かある目的に向かつて仕事をする組織である。共
同体とは家族、町内会のように構成員の幸せを第ーに追求して、楽しく暮
らすことが目的の組織である。堺展太ーの組織論では、日本が第三次大戦
に敗れた原因のーっとして、日本軍の共同体化があるという。本来機能体
であるべき組織が共同体化すると、相互不干渉、官僚化、権力化、安定志
向、相互批判無し、成功体験への埋没、外部の介入を嫌う、年功人事、情
報の内部秘匿、総花主義、集中の不能、不適材不適所人事、私の話に怒り
出す、などが生じる。大学もその例に漏れないのではないか。気象学界が
温暖化二酸化炭素犯人説に固執するのは、気象学界の共同体化にあると、
著者は述ベたいのであろう。
東大の磯崎茂雄は「文明の盛衰と気候変動レピュー」と題して講演した。
1万年前に氷河期が終わり、異常に安定で温暖な気候が始まり、そのピ}ク
は 6千年前で、気温は現在より 2度 C高かった。そのときに農業、牧畜が
21
始まり、人類は始めて豊かな食料と共に生活できるようになった。 5千年前
にエジプトとメソポタミア地方は緑に満ちた農耕地帯であり、都市革命が
始まった。貨幣、文字の発明、法律の整備、経済の発明、職業の分化が始
まり、今日の文明の基礎が作られた。 2500年前に寒冷化が始まり、民族移
動、戦争、貧困と病気が蔓延して、宗教や思想が発達した。過去 300年の
産業革命と 21世紀の情報革命で、人間活動は限界にまで進んだ。文明の興
隆のためには豊かな物質供給が必要で、そのためにも温暖化が必要である。
しかしときどき起きる寒冷化は、中央アジアの半砂漠地帯からの遊牧民の
民族移動を促し、戦争の原因となった。地球の気温は過去に上下 z度程度
の変動は普遍的であり、寒冷化から瓶暖化への変化が文明誕生の主要閣で
ある。地球環境は今後も変動を繰り返すであろう。恐れるべきは温暖化で
はなく寒冷化であるロ
磯崎と丸山は「科学論争としての地球温暖化問題J と題して、プレート
テクトニクスによる科学革命と、現在の地球温暖化論争を比較している。
1960年代のプレートテタトェクスの提唱は、既存の地質学界が依拠する地
向斜、造山運動論を根本的に否定するパラダイム転換であったがゆえに、
地質学界の反発を招いた。地球温暖化論争においても、気象学界は地球気
候を地球内に閉じた現象として理解しようとするのに対して、宇宙物理学
者は地球の気候を宇宙の中で捉えようとしている。そのために気象学者共
同体とそれに属する学者が一丸となって反対しているのである。恐竜が滅
んだ原因は、それまでは地球に内在する原因 e考えられていたが、アノレパ
レスにより巨大限石の衝突が原因であることが明らかにされた。これは内
因説対外因説の対立で、外因説の勝った例である。地球温暖化論争が特別
な点は、科学の問題にとどまらず、マスメディアや政治を巻き込んだ争い
になっている点であるロその重要性を考えると、ガリレオの地動説やダー
ウィンの進化論に匹敵するかもしれない。マスメディアの本来の役割は権
力の監視にあったのだが、現在ではマスメディア自体が権力になっている。
とはいえ、メディアを味方につけなければ戦いに勝てないことも事実であ
る。
終わりに
始めにも述べたように、地球温暖化の原因が二酸化炭素ではないなどと
主張することは、変人か、悪人か、ブッシュの犬であるというごとき風潮
である。丸山は私に向かって「自分は命をかけている」といったa 私が「そ
んなにたいそうなことですか?J と聞くと、 「だって、地球温暖化で食って
22
いる人々がいるからJ!::答えた。
しかし、最近そういった風潮も少しずつ変わり始めている。日本でも懐
疑派、否定派の本がいろいろと出版されるようになった。それらを紹介し
て本稿を閉じよう 21200
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ト
勺
Pliocene Pleistocene Holocene
Climatic
Optimum?
K
出25凹 4日4冊 1日却02叩 1叩 1日1凹剖珂叩羽田 10 1 500 250 10 1 0.15
Million Years Before Present Thousand Years Before Present (CE2000)
5億 4千万年前から現在に至る地球の気温の変遷。
横軸は時間で、右端が現代。単位は 100万年、ただし右では 1000年。右に
行くに従って時間のスケールが引き延ばされていることに注意。地球は基
本的には寒冷化し続けている。出典[19]
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