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件名:「サルが助けてくれた」、アマゾンの遭難者が告白
日時:20170328 / ボリビア
媒体:National Geographic
出所:http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/032700111/
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「サルが助けてくれた」、アマゾンの遭難者が告白
密林の中を9日間さまよった男性を無事に保護、ボリビア
うねる大河が山がちの土地を延々と流れ、木々の間に濃い霧が漂うボリビアのアマゾン。このジャングルに入り込めばあっという間に迷ってもおかしくない、と地元の人は言う。深入りしたら、二度と帰って来られないかもしれない。
だが、ボリビアが保護する熱帯雨林の中でもひときわ魅力的なマディディ国立公園を訪れる旅行者にとっては、その奥深くへ踏み込む危険よりも期待の方がむしろ勝っている。それには理由がある。どのツアー業者も、スリリングな冒険を求める観光客に安全を約束しているからだ。これらの業者は、国立公園の端にある小さいが賑やかな町、ルレナバケに拠点に置き奥地へのツアーを催行している。(参考記事:「ボリビア、マディディ国立公園のジャガー」)
実のところ、事故は毎年起きている。別世界のようなマディディの景観は、旅行者の死傷事故と無縁ではない。その分、危険は多いのだ。だが、公園の敷地内で行方不明になることはまれである。過去15年間、行方知れずになった旅行者は1人もいなかった。つい最近までは。
「25歳のチリ人男性、マイコール・コロセオ・アクーニャさんが公園内で突然消息を絶った」という一報がもたらされたとき、私はマディディ国立公園のレンジャーと一緒にいた。それによると、男性は奇妙な状況で姿を消したということだった。
目撃者のあいまいな話が無線で伝えられた。いわく、マイコールさんが最後に目撃されたのは前日の夜8時半ごろで、宿舎であるキャビンの階段に腰掛けていた。地元の旅行代理店「マックス・アドベンチャーズ」の熱帯雨林ツアーに参加していたが、どうやらキャンプ場からいなくなったようだ。追跡の手がかりは一切なし。
「本当に不可解なケースだ」と、マディディ国立公園を管理するマルコス・ウスキアノ氏は私に言った。「昨夜何があったのか分からないが、我々には明らかにする必要がある。誰かが嘘を言っている可能性もある」
マイコールさんが行方不明になったキャンプ場はトゥイチ川の近くだった。ボートでしかたどり着けない乾燥した地域で、一番近い町でも何キロも離れている。
レンジャーたちは何か手がかりをつかもうと、すぐにマイコールさんの捜索に出発することにした。私も同行し、船が川をさかのぼるにつれてルレナバケの町が小さく遠ざかっていった。私たちが乗った木製の長いボートはもやの中を抜け、広い密林を目指して進んだ。
数時間後、私たちはマックス・アドベンチャーズのロッジに到着した。ハンモックがいくつも吊られ、食事をとる中庭があり、大きな木造のキャビンが並ぶ優雅な場所だった。ツアー業者のオーナー、フェイサー・ナバ氏は私たちを温かく迎えると、声を落とし、何があったかを手短にレンジャーに伝えた。
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不可解な蒸発
マイコールさんはマックス・アドベンチャーズのツアーに申し込み、他のツアー参加者とは昨日会ったばかりだったとフェイサー氏は話し始めた。その日の午後、一行はガイドと共に熱帯雨林を探検。キャンプ場に戻ってきたとき、マイコールさんは見るからに興奮した素振りを見せていたという。
「ちょっと変な様子でした」と、フェイサー氏は振り返った。「普通の顔に見えなかったんです」
マイコールさんの行動に注意を払いつつ、フェイサー氏はロッジにいた旅行者たちを「パチャママ」の儀式に招いた。母なる大地であるパチャママが森に入る許しを与えてくれたことに対し、コカの葉、ろうそく、たばこを使って感謝を示す地元の伝統だ。(参考記事:「ボリビア、伝統衣装まとう女性たちの肖像10点」)
マイコールさんにも儀式に参加してほしいと言ったが断られたとフェイサー氏は言う。そして、ガイドが様子を見に彼のキャビンを再度訪ねたとき、マイコールさんはどこにもいなかった。彼が最後に目撃されてから、いなくなったと分かるまでの時間は、たったの5分間だった。
フェイサー氏とガイドたちは大慌てで、ロッジ中を隅々まで探した。だが、見つからなかった。次いで、懐中電灯を持って熱帯雨林に入り、朝の5時まで探し続けたが、成果はなかった。まるで、すっかり消えてしまったかのようだった。
「パチャママの気分を害したからです」とフェイサー氏。「儀式に参加したがらなかったのですから」
マルコスや他のレンジャーたちも、うなずきながら互いにささやき合っていた。
彼らは私に、ここボリビアの低地で人々が抱く自然観を話した。熱帯雨林は強い力を持つ場所で、善悪の両面を持つ神秘的な存在に満ちているというものだ。例えばパチャママに敬意を払わない者がいれば、彼女はデュエンデといういたずら好きの妖精に命じて正気を失わせ、別の次元に隠してしまう。このような信仰は地元の人々の間に深く根付いているため、法律でさえパチャママなどの存在を尊重している。
「私自身やレンジャーたちにとって、これは文化なのです」とマルコスは言った。「デュエンデは実在すると信じています。マイコールさんがデュエンデに連れ去られた可能性はあると思います」(参考記事:「ジャガーになった友、アマゾンの現代版“山月記”」)
シャーマンの懸命な祈り
わらにもすがる思いで、フェイサー氏のガイドの1人が有名なシャーマン、ロムロとティブルシアの夫婦を呼び、マイコールさんを呼び戻してほしいと頼んだ。(参考記事:「シャーマン 精霊に選ばれし者」)
2人は、強力な木の精である「マパホ」のエネルギーをデュエンデが操ってマイコールさんを隠したと信じていた。「彼は私たちの手の届かない遠い所にいます」とシャーマンが告げた。だが、と2人は説明した。複雑な儀式の形で償いをやり遂げれば、彼の魂をこの次元に呼び戻せるだろう。そうして初めて、マイコールさんは森の中で見つかるはずだと。
マイコールさんの父親、継母、姉妹もキャンプ場に到着した。知らせを聞き、チリから飛んできたのだ。いずれもこわばった顔つきではあったが落ち着いていて、行動計画についてレンジャーやガイドと相談していた。
次の1週間、レンジャーとガイドたちは1日に8〜10時間、1日ごとに捜索区域を変えて、熱帯雨林に消えたマイコールさんをしらみつぶしに探し回った。ロムロとティブルシアも、毎晩明け方まで起きてパチャママへの償いを続け、懸命に役目を果たしていた。だが、わずかなヒントすら誰も見つけられなかった。まるで、彼がどこにも存在しないかのようだった。
ガイドたちの不安は高まり、マイコールさんの家族も心配になるばかりだった。ロムロとティブルシアもくたくたになっていた。捜索に慣れている多くのガイドたちは、まったく何の痕跡も見つかっていないことが信じられなかった。あるガイドは私に「こんな経験は20年で初めてだ」と話した。
ところが、マイコールさんが消息を絶ってから苦しみの6日間が過ぎた後、事態が動いた。レンジャーの1人が、泥だらけの靴下の片方を熱帯雨林の林床で見つけたのだ。靴下は家族の元に持ち帰られ、マイコールさんの継母が興奮気味に、息子の物だと確認した。
シャーマンにとっても、靴下が事態を一変させた。所持品は本人の魂につながる窓であり、霊的な翼に乗って彼のところへたどり着き、現実へと呼び戻す手段だからだ。だが、もう時間がないこともシャーマンは分かっていた。マイコールさんはすでにもう1週間も熱帯雨林で過ごしており、食料も水もほぼない状態だ。この先、彼がどれだけ生きていられるか分からない。(参考記事:「自分の腕を切り落として窮地を脱出した男」)
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驚きの突破口
パチャママに祈る眠れぬ夜がさらに二晩続き、ロムロとティブルシアは、「償いが受け入れられ、マイコールさんの魂とようやく接触できました」と一同に告げた。「靴下が出てきたことで、ずっとやりやすくなりました」と。「マイコールさんは近く解放されます。今後数日で、手がかりがもっと多く見つかるはずです」
翌朝、レンジャーたちと私がボートをロッジ近くに係留していると、川沿いから叫び声がした。「ボート! ボート! おーい!」とかすかに聞こえた。レンジャーたちは大急ぎでボートのエンジンをかけ、声の方へと船を出した。
水際で怒号のように叫んでいたのは、マックス・アドベンチャーズの2人のガイドだった。「行方不明者を見つけたぞ!」と2人。レンジャーは信じられなかった。「本当か? 生きてるのか? 死んでるのか?」
「生きてる!」ガイドの大声が返ってきた。
ついにマイコールさんが見つかった。熱帯雨林で9日間生き延びたことになる。発見地点は、マックス・アドベンチャーズのキャンプ場から1マイルも離れていない場所だった。マイコールさんの姉妹のロシオさんも捜索に加わり、フェイサー氏や数人のガイドと行動していたが、叫び声を聞いて走り出した。マイコールさんは大きな棒を杖にして、木々の間に立っていたという。
ロシオさんは後に、「マイコールが私だと分かるかどうか、確信がありませんでした」と私に語った。「彼の心が元のままかどうか分からなかったんです」
マイコールさんはかなり衰弱していた。9日間も熱帯雨林にいたため脱水状態となり、虫刺されや人に寄生するウマバエ、植物のとげなどのせいで皮膚は傷だらけだったし、足首から先も痛々しいほど腫れていた。だが精神的には全く正常だった。疲れ切っていたが、「コーラが飲みたい」と冗談を言った。
マイコールさんがキャンプ場に運ばれて、涙ながらに家族と再会すると、「やった!」という歓喜の声が上がり、レンジャーもガイドも抱き合ってうれし泣きした。中でもフェイサー氏は感極まり、マイコールさんの父親と抱き合ったときには涙にむせんでいた。
「ありがとう、我々を信じてくれて。ありがとう」とフェイサー氏は泣きながら言った。「あなたがたのチームを信用しないわけがありません」と返した父親も涙ぐんでいた。
蒸発から救助までを告白
マイコールさんはハンモックに寝かされ、みんなでその周りに集まって、命拾いした体験を静かに聞いた。彼は最後まで川を見つけられなかった。信じがたい話だが、死なずに済んだのはサルが助けてくれたからだという。サルの群れの後をついていくと、群れが彼に果物を落としてくれたり、隠れ場所や水場に毎日連れて行ってくれたりしたそうだ。
だが、日ごとに彼の体は弱っていった。蚊に食われ、空腹を覚え、希望はどんどん薄れていった。「昨日は本気で神様と約束をした。ひざまずいて、ここから出してくださいと心から願った」と彼は言い、声を詰まらせた。
姿を消した晩に、不思議な、恐ろしい考えが心に忍び込んだとマイコールさんは明かした。熱帯雨林から出たいという衝動を覚え、抑えることができなかったという。
「それで走り出した」とマイコールさん。「サンダルをはいていたけど、『だめだ、これじゃ速く走れない』と言って脱ぎ捨てた。携帯も懐中電灯も捨てた。走りに走ったあと、ある木の下で止まり、『何てことをしたんだ、何をしているんだ』と考え始めた。そして、戻りたいと思ったときにはもう戻れなくなっていた」
捜索に当たった面々は、デュエンデが一時的に彼を惑わせ、別の次元に誘い込んでしまったと信じている。異常な考え、シャーマンの証言、奇妙な蒸発といったすべての兆候が、それを示しているとのことだ。
一方マイコールさんは、そういうことではなかったと主張する。彼はシャーマニズムもボリビア低地の文化も信じず、神だけを信じている。そして、あの晩に自身に何か起こったことが完全には分からないものの、ジャングルで九死に一生を得た経験は決して忘れられないと話した。(参考記事:「シベリアの果てから1万3000キロ! 嘘みたいなサバイバル脱出劇」)
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//memo
サルが果物を落としてくれたと言うが、本当か?
手が滑ったりして、たまさか落としただけのことではないのだろうか。
遭難者にしてみれば、どっちでもいい。ただただ、助かって良かった。
うーむ、でも私は気になる。隠れ場所や水場に毎日連れて行ってくれたりと…
- シートン動物記から100年:京大総長の疑問、猿に心があると言えないだろうか? 手紙 2017/4/06 22:30:39
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