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サイボーグ化する動物たち エミリー・アンテス著
バイオの急速な進展の実態は
とどまることを知らない勢いのバイオテクノロジーだが、いったい人間が動物に手を入れることはどこまで許されるのか。動物と人間の付き合いは、食べることから徹底した利用まで幅広い。しかし遺伝学や電子工学、コンピューター技術を用いた利用の進展はすさまじく、倫理的観点と有用性の間のせめぎ合いが続く。
多くの人はベジタリアンでない限り、毎日の食事に動物の肉をとることはためらわないであろうし、医療研究のための動物実験も一定程度必要と賛同するであろう。すでに人間に臓器を提供するために飼育される豚が開発され、ミルクに薬成分がでるように改良されたヤギがいる。毎年200万人以上の子供が下痢性疾患で亡くなることを考えると、このヤギのミルクを望む国は多いはずだ。しかし本書が書かれた当時、米国の食品医薬品局はまだ許可を出していない。
いったい何が問題なんだ、と思う人も多いかもしれない。しかし近年の進展は、動物の肉を食するために家畜を品種改良してきたことや、オオカミを犬というペットにしたことと明らかに違う。科学技術はわずか数年、場合によっては数日でそれまでなかった新しいタイプの命を生みだすことができるのだ。
2006年、米国の国防高等研究計画局(通称DARPA)は、コンピューターを人工的に埋め込んで操縦ができる「サイボーグ昆虫」を創る技術開発の提案を求めた。DARPAの呼びかけは国防研究でありながら、画期的なイノベーションを促す科学コンテストでもある。これによって、操縦できる昆虫が生まれ米国メディアは熱狂した。さらにパソコンから右、左と指令を出して操縦できるロボラットや、サイボーグゴキブリも誕生している。
本書は最近のバイオテクノロジーの急速な進化をわかりやすく提示すると同時に倫理の議論や世論調査の結果も紹介している。世論調査で米国の62%の人が医療研究に動物を用いることを道徳的に容認している。一方で人と動物の交雑については強い抵抗があり欧州の53%の人がたとえ医学研究でも反対すると述べた。これは人間の尊厳が脅かされるからだ。
膨大な註(ちゅう)がついた本書は歩いて回った取材現場の情景が浮かぶような描写で、しかも科学ジャーナリストである著者の考えはカラリと乾いて楽天的だ。動物の権利が保護されることは必要だけれども、そのためだけに人間による利用を控えるべきではないと著者は考える。あなたはどう考えるだろうか。
原題=FRANKENSTEIN’S CAT
(西田美緒子訳、白揚社・2500円)
▼著者は科学ジャーナリスト。
《評》東京大学准教授
横山 広美
[日経新聞10月23日朝刊P.21]
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