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マスク氏よ、地球の人類はすぐには滅びない
The Economist
恐怖からでなく希望を持って挑みたい
2016年10月6日(木)
米スペースXのイーロン・マスクCEOが9月末、新たなロケットと宇宙船の開発計画を発表した。同氏の動機は、地球滅亡に備えることだ。だが、そもそも地球滅亡の可能性は低い。このような野心的な計画は、もっと前向きに、希望を持って挑むべきだ。
火星への移住計画を発表するイーロン・マスク氏(写真:AP/アフロ)
火星には死がついて回る。19世紀の終わり、米国の天文学者パーシバル・ローウェルは、この赤い惑星が砂漠化して死にかけていると大衆の多くに信じ込ませた。英国のSF(サイエンスフィクション)作家H・G・ウェルズは『宇宙戦争』の中で、火星人の侵略により地球人が死んでいく様子を描いた。
米国のSF作家レイ・ブラッドベリの『火星年代記』では、火星人が滅亡した後の火星で、火星人の亡霊に囲まれて暮らす人間たちが、核戦争によって滅びた地球を眺めていた。
現実の科学もSF小説より明るい話題を提供するわけではなかった。火星はかつて暖かく湿度も高かったが、現在は寒く、クレーターだらけで、ほとんど空気がないことが宇宙探査で明らかになっている。
家を買う程度の費用で火星に行けるように
このため、火星で新生活を始めるという夢はこれほど胸をざわつかせるのだろう。起業家のイーロン・マスク氏はこの夢を実現するために、ロケット会社スペースXをゼロから立ち上げた。
同氏は9月27日、2つの新たな計画の概要を明らかにした。一つは、米国のアポロ計画で使用されたロケット「サターンV」をはるかに上回る巨大ロケットを開発すること。もう1つは、約100人を乗せることができ、軌道上でも火星の上でも燃料補給ができる宇宙船の開発だ。こうしたインフラが整えば、いずれ何千人という移住者が1人20万ドル(約2000万円)で火星に行けるようになると同氏は語った。この金額は米国の住宅価格の中央値とほぼ同じだ。
このような驚くべきことを10年やそこらで実現するのは、火星の軌道に半分到達するのと同様に難しい。しかし、その野心的な計画は、なんとも魅力的だ。
火星の植民地は地球滅亡への備え
マスク氏の意欲の一部が、根拠のない恐怖から生まれているのは奇妙なことだ。彼は火星の植民地を、地球を襲う滅亡に備える策だと説明する。
SFファンは昔から、こうした類の危機への不安に慣れ親しんできた――1950年代、英国のSF作家アーサー・C・クラークはファンたちにこう語りかけた。「地球に閉じこもった人類は、やや脆弱な一つのかごに、あまりに多くの卵を入れているようなものだ」。これに同意する者もいる。
有名な物理学者のスティーブン・ホーキング氏もこうした精神的不安に襲われている1人だ。人類がもしたった一つの惑星にしがみついていれば、スーパーウイルスや邪悪な人工知能(AI)、核戦争の格好の標的になる、と彼は警告している。どれも、いつでも人類の大半を滅ぼしかねない存在だ。
地球が消滅する可能性は極めて低い
だが、くだらない話だ。地球が居住不可能になるというのは、長期的には真実だ。だが、長期とは約10億年を指す。このような万一の事態に不安を感じるのは、健康な度合いを超えた短期主義への反感だ(ちなみに、10億年前の地球で最も複雑な生物は、非常に単純な海藻だった)。
確かに、自然発生したパンデミック、あるいは悪意を持って生み出されたパンデミックは数十万人の死者を生み出すかもしれない。核戦争も同様だ。危機的状況にある気候変動も似たような大惨事を引き起こすかもしれない。しかし、未曾有の大量死といえども人類を滅亡に至らせることはない。人類が滅亡するとは、人類が一人もいなくなることだ。病気であれ戦争であれ、そのような事態を招くことはない。
恐竜を絶滅させたのと同じくらい大きな小惑星であれば、すべての種を消滅させることができるかもしれない。だが人類は、待機中の小惑星を分類し、その行方を予測することができる。それによれば、近い将来、地球に近づくものは全くない。従って、この先数世紀の間に、既知の原因で地球が消滅する可能性は非常に低い。
火星移住は「希望」の精神で
未知の原因はどうだろうか。悪意を持ったAIや、ウェルズが描いた火星人のように「おびただしい数の賢く無慈悲な」知性を持った宇宙人による侵略、昔ながらの神の怒りなどが考えられるかもしれない。これらについては、一つの惑星の表面にいる人類を消し去るほどの事態が、隣の惑星に暮らす人類をそのままにしておくはずがない。
人類滅亡を差し迫った危機として心配するのが現実的でないなら、それから逃れようとするのは恥ずべきことだ。限界的な状況においては、優秀な人材が地球の危機に共同で立ち向かう方が、危機から逃れる方法を持っているよりも好ましい。火星移住の夢はぜひとも、死への恐怖からではなく、新たな生活への希望の精神で実現してもらいたいものだ。
© 2015 The Economist Newspaper Limited.
Oct. 1st, 2016 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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