2016.2.20 10:00 巨大氷山がコロニーに衝突、南極のペンギン15万羽死ぬ 氷増加を裏付けか 果てしなく広がる節減をよちよち歩きながら餌場に向かうアデリーペンギンの群れ。氷山の衝突で一部コロニーは全滅の危機にある(芹沢伸生撮影) 南極大陸にあるアデリーペンギンのコロニー(生息地)の一つに巨大な氷山が衝突し、生息していた16万羽のうち、約15万羽が死んでしまったことが、英科学誌に発表された論文で明らかになった。氷山が餌場の海をふさぎ、多くが餓死したとみられる。栄養状態も悪化しており、繁殖にも影響を及ぼしかねないという。氷山が自然に崩壊するか、移動しない限り、残りの1万羽も20年以内には全滅する可能性もあると、論文は警鐘を鳴らしている。
■残るは1万羽 アデリーペンギンは、体長60〜70センチ、体重5キロほどの中型のペンギン。群れを作って暮らし、海に入りオキアミや魚類、甲殻類などを捕食する。 豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(SMH、電子版)やフランス通信などによると、論文を発表したのは、豪ニューサウスウエールズ大学気候変動研究センターと、ニュージーランドのウエストコーストペンギン基金の研究者たちだ。 コロニーは、南極東部にあるコモンウエルス湾のデニソン岬にあり、約100年前に確認された。その沿岸部には、約20年前から「B09B」と呼ばれ、沖縄県(2281平方キロ)より広い約2900平方キロの巨大な氷山が漂っていた。これが2010年12月、突然コロニーに衝突したのだ。 これまでは目の前に餌場の海があったのに、氷山のせいで、ペンギンたちは強い寒風が吹く中、片道60キロもよちよち歩かなければならなくなった。このため、餌場にたどり着く前に力尽きるペンギンが相次ぎ、16万羽がとうとう1万羽にまで激減してしまった。現在残っている1万羽も、飢えた状態で繁殖にも深刻な影響がでる可能性も指摘されている。 ■天に委ねるしか… 今回の論文執筆者の一人で、気候変動研究センターのクリス・ターネイ教授はSMHに「コロニーは今、不気味な沈黙に包まれている。ペンギンたちは何とか次の世代を孵(ふ)化(か)させようとしていた。でも、死んで地面に横たわるペンギンの多さに悲しくなった」と語った。 研究論文では、氷山がほかの場所に動くか、自然に崩壊しなければ、このコロニーは全滅すると予測している。人工的に氷山を崩すこともできず、全ては“天に委ねる”しかないという。 氷山の動向についてターネイ教授は、英科学系サイト「IFLサイエンス」に「今年移動するかもしれないし、何十年、何世紀も居座るかもしれない。全く見当がつかない」と困惑を隠さない。 だが一方では、別の執筆者のクリス・フォグウィル博士はSMHに「巨大な氷山に昨年、速く動く別の氷山がぶつかり、一部が壊れ始めている」と推測。今後も、巨大氷山が崩壊を続けるとの見方を示した。 ■氷増加裏付け? 今回のペンギン大量死を招いた氷山衝突は、昨年11月に米航空宇宙局(NASA)が「南極の氷はむしろ増えている」とする発表の“裏付け”とする声もある。南極では解ける氷より、降雪量の方が多く、氷が増えているという説もある。南極の沿岸で続く海面上昇は「南極周辺の氷が解けているからだろう。海面が上昇することで、氷山の動くスピードも上がり氷山同士や、沿岸部への衝突が今後増える可能性は極めて高い」(関係者)という。 いずれにせよ、ペンギン15万羽の大量死は、極地だけでなく、地球全体の変動に対する“警告”といえるだろう。(SANKEI EXPRESS) http://www.sankei.com/premium/print/160220/prm1602200023-c.html
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